ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

第162回芥川賞受賞作決定。

2020-01-15 | 純文学って何?
 しかし私も立場上、もう少し芥川賞の動向に気を配らねばいけませんなあ……。こうアニメの話ばっかしてちゃねえ……。でも正直、つまんないんだよなあ。ここ10年で「これは。」と思ったのは小野正嗣さんの「九年前の祈り」だけだもの。まあ、まだ読んでないのもあるし、いいかげんなことを言ってるんですけどね。なんかこう、いまどきの純文学のハナシになると、ふて腐れたみたいになっちゃって、よくない傾向なんだけども。
 というわけで、2019(令和1)年下半期の芥川龍之介賞は、古川真人さんの「背高泡立草」に決まりました。


 これで2010年代の受賞作はこうなりますね。


第162回(2019年下半期)- 古川真人「背高泡立草」
第161回(2019年上半期)- 今村夏子「むらさきのスカートの女」
第160回(2018年下半期)- 上田岳弘「ニムロッド」/町屋良平「1R1分34秒」
第159回(2018年上半期)- 高橋弘希「送り火」
第158回(2017年下半期)- 石井遊佳「百年泥」/若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」
第157回(2017年上半期)- 沼田真佑「影裏」
第156回(2016年下半期)- 山下澄人「しんせかい」
第155回(2016年上半期)- 村田沙耶香「コンビニ人間」
第154回(2015年下半期)- 滝口悠生「死んでいない者」/本谷有希子「異類婚姻譚」
第153回(2015年上半期)- 羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」/又吉直樹「火花」
第152回(2014年下半期)- 小野正嗣「九年前の祈り」
第151回(2014年上半期)- 柴崎友香「春の庭」
第150回(2013年下半期)- 小山田浩子「穴」
第149回(2013年上半期)- 藤野可織「爪と目」
第148回(2012年下半期)- 黒田夏子「abさんご」
第147回(2012年上半期)- 鹿島田真希「冥土めぐり」
第146回(2011年下半期)- 円城塔「道化師の蝶」/田中慎弥「共喰い」
第145回(2011年上半期) - 該当作品なし
第144回(2010年下半期) - 朝吹真理子「きことわ」/西村賢太「苦役列車」
第143回(2010年上半期) - 赤染晶子「乙女の密告」




 うん、沼田さんの「影裏」からこっちはぜんぜん読んでねえわ。あははは。これでいっぱしのこと言っちゃダメだね。なるべく早く読むようにしよう。


 「芥川賞」で検索してたら、面白い記事を見つけました。西日本新聞の文化欄なんだけど。




◎芥川賞、記者が選んだ作品は? 候補作読み比べ座談会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/575508/





 1ページめが座談形式での短評。2ページめが各候補作のあらすじ。こういう時事性の高いものは早めに削除されることが多いんで、わかりづらい箇所に少しだけ手を加えてコピペしておきましょう。




 第162回芥川賞候補作品のあらすじ


 木村友祐「幼な子の聖戦」(すばる11月号)
 東京暮らしをやめて故郷の東北で村議をする史郎は、県議に弱みを握られ、村長選に出た幼なじみの選挙妨害を命じられる。暗い充実感を覚えるが、権力と人間のエゴを前にゆらぐ。


 高尾長良「音に聞く」(文学界9月号)
 翻訳家の有智子と、その妹で作曲家を志す真名は、生き別れとなっていた音楽理論研究者の父が住むウィーンに行く。父に複雑な思いを抱く有智子はこの音楽の都で音と言葉についての思索を深め、父を知る。


 千葉雅也「デッドライン」(新潮9月号)
 主人公はフランス現代思想を学ぶゲイの大学院生。「自分は動物なのか女性なのか」と、性的少数者として哲学的に悩みながら、修士論文の締め切りに死線(デッドライン)を重ね合わせて苦闘する。


 乗代雄介「最高の任務」(群像12月号)
 大学の卒業式の日に景子は家族と小旅行に出かける。旅のなかで思い出すのは亡き叔母の面影。やがて叔母の優しい計らいの数々を知り、その思いにかなう姪になりたいと願う。


 ◎古川真人「背高泡立草」(すばる10月号)
 奈美は長崎の離島にある母の実家の空き家で草刈りをする。草刈りと並行して島と家の歴史が重層的に語られ、江戸時代の捕鯨や戦時中の満州移住などが短編連作の形で描かれる。






 今回のばあい、売れっ子哲学者の千葉雅也さんがわりと話題になってたのかな? 前回と前々回は社会学者の古市憲寿さんでしたっけ。これまで画家とかミュージシャンとかパンク歌手とか劇団関係者とか芸人とか、異業種のひとの参入は珍しくないし(むしろ業界のほうが積極的に迎え入れてる傾向アリ)、文学畑の学者だったら松浦寿輝さん(この方は詩人でもありますが)とか堀江敏幸さん(この方は早くからエッセイの名手として名を馳せてましたが)とかがいらっしゃったけど、文学プロパーじゃない学者さんってのは意外となかったんだよね。面白い流れだと思いますけども。
 いずれにせよ、いい小説だったら誰が書いたものでもいいんだけどね。署名がなくてもいいくらいでね。でもリアルタイムの純文学で、そういうのになかなか出会えないんで、「物語」に行っちゃうんだよなあ。