栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

断絶の米国(その1)(Suzuki_Taketo)

2021年04月28日 | 鈴木(武)・関口・高野

 鈴木(武)さんから表記タイトルの投稿がありました。長くて読み応えがあります。執筆者のご了解をいただき複数回に分けてて掲載させていただきます。

 断絶の米国 (その1)

1:はじめに

2021年3月21日コロラド州で10名(内警官1名)に及ぶ死者を出したスーパーマーケットでの銃乱射事件が発生しました。本件は日本でも大きく報道され、とんでもない事件と思いましたが、同様のテロの規模の「言われなき大量殺人」が、この数日後にはカルフォルニアでも発生、米国内のニュースを見るとこの種の事件が連日発生して居ることがわかります。驚く事に2020年の全米での銃犯罪の死亡者数は19379人(非営利団体Gun Violence Archive発表値)と2万人近く、しかもこの数字は自殺者24090人(同)とは別だそうで、2021年は更に増加すると言われて居ます。自動車社会の米国での交通事故死者数が年間4万人くらいですから、いかに銃による死亡者が多くなっているかが判ります。人口の上でいつの間にか日本の3倍に増えた米国ですが、銃による死者の数の増加は驚くばかりです。過去日本人も犠牲になりました。また警官による黒人への暴行や殺害が「Black lives matter」として世界的な人種差別反対運動として報道されましたが、この種事件も頻発しています。2021年1月16日には大統領選挙での敗戦を認めないトランプのごたごたから彼の「米国を守るためにCapitol Hill=議事堂の丘へ行くべし」の演説に従った超保守の白人による議事堂乱入騒動に至り、警察官1名を含む4人の犠牲者をもたらしました。これはいわば政治を暴力で左右させようとしたクーデター未遂の様なもので、この事件は今まで抱いて来た民主主義の宗主・米国のイメージをすっかり壊してしまいました。

2:米国人のストレス

では何故今の米国でこの様な忌まわしい事件が日常化しているのでしょうか?米国では、その歴史から、銃砲の所持が自己防衛、いわば基本的人権の様に憲法で保障されていることにもあるのでしょうが、もっと深く考えると、その背後には米国人の間に溜ったストレスがあると考えられます。何故なら、911の時の様な宗教的背景が最近の事件には見られないからです。ストレスには種々のものがあるでしょうが、今はコロナでしょう。トランプはマスクが嫌いの様でこれを不要とし、結果として自分も感染したものの、たった数日の入院・治療で回復し、「この病は大した事は無い」と退院時に断言するスピーチをしました。誰もがそう思いたい所でしょう、彼のスピーチ・強気は支持者から熱狂的に歓迎されました。

白人のマスク嫌いは、もしかしたら会話はお互いの口を見て行う習慣が有るからかも知れないとの説があります。日本人はその点、お互いの目を見て話をしますからマスクがあっても障害にはならないのかも知れません。そういえば透き通るようなブルーの瞳は覗き込んでも透明で、引き込まれる感じはあっても意思が通じにくい、更に北欧にみられる灰色の瞳では目を見ても何も分からない感じがしました。

その後コロナは猛威をふるい、ついにはトランプ大統領のホワイトハウス退去の18日の直前、2021年1月13日に新規感染者数23万人のピークを記録しました。その後はワクチンの効果が出るまで連日8万人を超え、2020年度末で計50万人以上の死者を出しました。この数字はベトナム戦争、一次/二次世界大戦での米国人の死者よりも多いそうです。その状況で多くの州や市ではマスクの着用義務化、外出制限、レストラン等の閉鎖も行う様になって、これは空襲の経験の無い米国人にとって初めての事で、ストレスは最高潮に達しました。さらに、トランプがその新型コロナの起源を武漢、更には国立研究所からの流出とし、チャイナウイルスとしたことからアジア人の区別が出来ない米国人の一部がアジア人全般を憎み、これへの暴行や殺人事件も頻発し「Black Lives Matter」に加えて「Asian Lives Matter」の運動も起こりました。これもストレスの成せる技でしょう。

移民数の多い中国人への虐殺事件は1871年の中国人虐殺, 1885年のロックスプリングス虐殺が有名ですが、その後も幾つかのチャイナタウンでの暴動騒ぎも時々起きています。それらは我々にとっては第二次世界大戦時の日本人排撃運動、財産剥奪・収容キャンプ所等も思い出させます。日本の場合は太平洋戦争と収容キャンプの問題からか、いわゆる日系人の名誉回復に関る活動以外に団体を作って政治的活動をする事は余りありません。また日本からのビジネスマンが積極的に政治活動に取り組み事もありませんし、日系人との交流も余り目立ちません。これに対し中国人や韓国人は地区毎に夫々強固なコミュニティ、また移民手続きや経済的援助団体、さらに本国からの支援も受ける形で、その全国組織をもっており、それは選挙の際にも強固な活動を行っています。いずれにしろ、人種差別や暴動の背後には経済問題、失業や貧困があり、その原因を低賃金で働く移民や黒人、更には中国等に向け、結果的に人種間の差別や分断、憎しみを生じている事も浮かび上がります。思い起こせばトランプ氏は大統領出馬の際にこの様なストレスをついて支持者を集めて大統領になった様にも思えます。リンカーン大統領以来、人種差別を無くすとのコンセンサスがあり、KKK等の超白人主義、即ち極右は存在しても隠れた存在でした。しかしながら、トランプはその存在を表に出し認め、結果として多様な人種に対する差別主義が全米に広まりつつある状況となってしまい、最近はコロナをもじって「The Racism Virus」という言葉も一般化しつつあります。

オバマ大統領の真反対の政策であったトランプ大統領もようやくホワイトハウスを去り、バイデン氏への交代により米国が当たり前の米国に戻りつつあることも実感します。即ち、到底日本では想像も出来ない、医師・看護師に加えて全国にある薬局の職員へも訓練を行って、1日百万人を超える素早いワクチン接種の実施を行いっている様子に、いざと言う時には団結し、物量にモノを言わせる蘇った米国が見られます。米国は既に必要数の数倍に相当する12億回以上のワクチンを集めたそうで、日本の状況とあまりにも違うことに驚かされます。民主主義を旗頭に、人権問題や情報セキュリティ問題から独裁政権に厳しく臨むバイデン政権に声援を送りたい所です。

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