ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

2018-02-28 23:46:22 | さ行

ワシはこちらのラブストーリーのほうが
「シェイプ・オブ・ウォーター」よりオトナで、好き。


「しあわせの絵の具」72点★★★★


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1930年ごろ、カナダの小さな町。

絵を描くことが好きなモード(サリー・ホーキンス)は
両親を亡くしてから、冷たい叔母と暮らしていた。


若年性リウマチを患い、
手足に不自由がある彼女は
ちょっと風変わりで、地域でもはみ出し者だ。

ある日、彼女は
家政婦を募集している男エベレット(イーサン・ホーク)の家へ行く。

町外れで一人暮らす彼もまた
地域のはみ出し者だった。

無骨なエベレットに怒鳴られながらも
モードは住み込みで家政婦を始める。

そしてこの出会いが
モードの絵の才能を開花させることになる――。


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この映画、予想以上によかったんです。

日本ではあまり知られていない
カナダの画家モード・ルイス(1903-1970)の物語。

伝記ふうに、その人となりを描くのかなあ、と思ったら
違う。

胸を打つのは
彼女と夫エベレットの物語であることなんです。


二人の関係は
ズキュン!ときめいた!とか、
好いた惚れた!で始まるわけじゃない。

家政婦と雇い主で始まった関係なんですね。


でも次第にお互いに情が湧き、それが愛に変わってゆく。

監督は、優しい視線で
ゆっくり時間をかけて、その軌跡を描くんです。

そこが、たまらなくいい。


モードとエベレットの
二人の歩みを遠景で映すシーンがすごく好き。

モードはいつも足を引きずって歩くんですが
最初のうち、エベレットはそんな彼女に全然かまわない。   

でも、その歩みが
いくつもの季節を経て、
次第に相手を思いやる歩みとなり、やがて重なっていく。


――く~!たまりません!


劇中の絵も自分で描いている
サリー・ホーキンスも熱演ですが

無骨な夫を演じるイーサン・ホークが
いままでで一番いい。

「網戸がほしい。ほこりが入るの」というモードに
「網戸なんていらん!ふざけるな!」と言った後に
そっと取り付けてくれたり。

怒鳴ったあとに
「すまん(心のなかで)」という感じで、モードの様子を伺ったり。

なにより、モードが絵を描くことを止めなかった、
その、心の広さ。

それが彼女の才能を開花させることになったんですから。


おなじみ『AERA』で
アシュリング・ウォルシュ監督にお話を伺うことができました。

二人の物語が、予想以上に史実に基づいていることにびっくり。
さらに驚きの事実もありました!

来週3/5発売号に掲載されますので
ぜひ、映画と会わせてご一読くださいませ~。


★3/3(土)から新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ、東劇ほか全国で公開。

「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」公式サイト

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2 コメント

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Unknown (141yy)
2018-03-01 00:51:45
小津安二郎、より、いい。とおもいます。
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ホント (ぽつお番長)
2018-03-13 00:22:35

この映画、すごくいいですよ。

取材のとき監督に
「シェイプ~より、この映画好きです!」と言ったら
苦笑されました。そらそうですな(苦笑)
返信する

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