ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

チョコレートドーナツ

2014-04-13 23:01:28 | た行

この慈愛に満ちたアラン・カミングの表情、
一生忘れられんよワシ。


「チョコレートドーナツ」78点★★★★


*************************

1979年、カリフォルニア。

弁護士のポール(ギャレット・ディラハント)は
ショーダンサーのルディ(アラン・カミング)に出会い、恋に落ちる。

ルディはある日、アパートの隣室で
母親に見捨てられた
ダウン症の少年マルコ(アイザック・レイヴァ)を見つける。

マルコの境遇を見かねたルディは
彼を保護したいと考え、ポールに相談するのだが……?!

*************************


実際にあった話をモデルにしてもいるそうで
くぅ、切なすぎるぜ……!という映画。

1979年、まだまだゲイに理解のない社会で
ゲイカップルが、
母親に見捨てられたダウン症の少年を引き取り育てようとする。

愛に満ちた彼らといるほうが
実の親といるより断然幸せなはずなのに
しかしそこに、社会の偏見と非寛容が立ちはだかる、という。

悲劇の予感が見える話ではあるんですが、
それでも、グッとくるんですよ。

なんといっても
ルディ役アラン・カミングの慈愛に満ちた表情!

このうえなく、心を揺さぶられるんですねえ。


ルディがなぜ、マルコをそこまでほっとけなかったのか、
最初はいまいちピンとこなかったけど
時間を経て噛みしめると
だんだん腑に落ちてくる。

理屈じゃねえんだよ!って。

プレス資料に
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)支援で知られる
山下敏雅弁護士が
「ルディの理屈ではない、素朴で強い感情」という言葉を寄せていますが

ホントそのとおり!と、膝痛くなるほど打ちまくる、みたいな(笑)


ただ
97分なのはいいんですが、
もうちょっと描いてもよかったのでは、と思う部分もある。

3人の幸せな時間の表現のしかたとか

マルコがせがむ、ベッドサイドストーリーを
さわりだけしか話さないとか。

ちょっともったいない気もするんですが
それでも
構築が、構成が、バランスがどうの、という理屈を
アラン・カミングのあの表情が、吹っ飛ばすんだよなあ。

ワシ10代で見た「蜘蛛女のキス」が
おそらく生涯ベスト5に入り続けると思うのですが
このアラン・カミングの表情は
あのウィリアム・ハートに迫るかもしれない、と思いました。


アラン・カミング自身も
現在のパートナーは同性で
市民権運動や性教育に関する活動を積極的に行い
LGBTの理解に努めているそう。素晴らしいですねえ。


邦題もうまいし、
こっちのチラシもナイスだよねえ。


ちなみに現在のアメリカでは
LGBTが里親になるケースは増えており

いまだったら彼らの状況も
違ったかもしれませんが
それでもミシシッピ州とかユタ州では
同性カップルには養子縁組が認められないのだそう。

さらに
LGBTと里親制度を考えるRFC代表の藤めぐみさんによると
「日本での状況は当然まだまだ」とのことで
考えるべきこと多い題材です。


★4/19(土)から銀座シネスイッチほか全国順次公開。

「チョコレートドーナツ」公式サイト

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2 コメント

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Unknown (ぷっちん)
2014-04-14 05:50:50
暫くぶりにお邪魔します。

確かに、素晴らしい表情ですね。

何故、少女に御人形が与えられるのか?
それと同じかも。
けして、自分の感情の為に利用するとかではなく、
人って、そういうものなのかと思います。

だから、下のポスターなのでしょうか。
返信する
その通りですね (ぽつお番長)
2014-04-15 21:51:13

女の子にはピンクを
男の子にはブルーを与えとけ、という
その考えそのものが
間違ってるとかって以前に

「そんなルール、誰が決めたのさ?」という。

“規格外”な生き方を排除しようとする社会は
未成熟であり、哀しいものだと、
つくづく思わされます。

必見です!
返信する

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