ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

顔たち、ところどころ

2018-09-11 12:15:27 | か行

 

思えば、このブログのはじまりは

「アニエスの浜辺」(09年)だったのだ!

 

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「顔たち、ところどころ」79点★★★★

 

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88歳のアニエス・ヴェルダ監督が

33歳の写真家JRと一緒に、フランスの田舎を旅し、

作品を作っていくというロードムービースタイルのドキュメンタリー。

 

 

あゝなぜこんなにも伸びやかに、心が解放されていくのだろう!って思います。

 

アニエス・ヴェルダ監督はヌーヴェルヴァーグの母、とも言われる

女性映画監督の先駆け。

「アニエスの浜辺」もそうなんですが

彼女の映画は、何がいい、と言うのが難しいんだけど

「なにかが、いい」(笑)。

 

いつも気負いなく、観る人を

伸び伸びとした気持ちに解放してくれるんですよね。

 

 

今回は、彼女がJRという若い写真家に出会う。

彼は一般の人のポートレートを撮り、それを巨大に引き延ばして

街の壁などに貼るアーティスト。

 

で、二人はフォト製造機となるJRのオリジナルバスで田舎町に行き、

人々の写真を撮り、その場で巨大に引き伸ばし、村の壁面に貼ることになるんです。

 

まあこの制作過程もおもしろいんですが

そこで出会う人々との会話や、その土地の状況が

監督の目を通して、映画に写る。

 

それはまさに、出会いと笑いの人生讃歌。

小柄な映画作家の目は、

同じ目線で大地に生きる人々の豊かさを切り取り、

それが同時に鳥瞰図のように、世界を、人生を、鳥の目線で広く見渡させる。

 

そういうのを見ていると

「人生はもっともっと豊かでいい!と

ポン、と背中を叩かれたようで

閉塞な毎日から、ヒョイと羽ばたきたくなるような、感じがするんですよ。

 

 

で、旅の相手となるJR。

おばあちゃん子で年上キラーらしい(笑)この青年との掛け合いが、

編集のテンポと相まってリズムよく、楽しいんですよね。

 

家に帰るといる、アニエスの猫も可愛らしいし!

 

そして、映画の終盤に用意されたドキドキ。

監督が、あの偏屈な盟友ゴダールに久々に会いに行く――という展開が待っている。

彼女の緊張が伝わってくる、このクライマックスに、こちらもハラハラなんですが

 

でも、ゴダールのなんたるかを知る彼女、

これは、あのオチのために、用意されたしかけなのかもしれない――

なんてね(笑)。

 

★9/15(土)からシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。

「顔たち、ところどころ」公式サイト


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