ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

桐島、部活やめるってよ

2012-08-07 23:26:01 | か行

これはね、巧い映画。
やられました。

「桐島、部活やめるってよ」81点★★★★


**********************

とある高校の、ある金曜日。

放課後、
映画部員の前田(神木隆之介)は
次に撮る映画の件で、職員室に呼び出されている。


同じころ、帰宅部で校内イチの美女・梨紗(山本美月)は、
彼氏である
バレー部の桐島を待っている。

梨紗の友達である
バドミントン部のかすみ(橋本愛)は、
梨紗に声をかけて、部活に向かう。

桐島の親友の宏樹(東出昌大)も
ダラダラと桐島を待っている。

さまざまな人たちが
桐島を気にしているとき、
誰かが口にする。

「桐島、部活やめるって?」

そのニュースが、
生徒たちに波紋を起こしてゆき――?!

**********************


ワシはもともと
構成の巧みな映画に弱いんですが、

これは面白かったですよ。


不在の人物を中心に物語が流れていく
「彼女が消えた浜辺」(10年)的な王道かつ最上の運びで、

ある高校のある金曜日から
物語が始まって

(金)は噂の人物・桐島の不在が明らかにされ、
彼をめぐる人々、それぞれの視点別に、
同じ時間が繰り返されていく。


次の土曜日は、またえらくあっさりで(笑)

そして日曜日には意外な展開が・・・?!


あまりに巧いんで、原作はどうなのかと気ってチラ読みしたんですが、
お。ああ、なる!と。


さらに技巧だけに偏らず、
青春モノを超えた普遍性を持っているのがイイ。


各登場人物の目線で
繰り返される高校生活は、

例えばかつて高校時代に
クラスの中心グループだった人にも
そこに入れなかったB級グループの人にも


どの階層の人にとっても、
どこか“苦い”であろう時代に
リアルにリンクしてくるんですよ。

学生時代ってホントに
背が高い、顔がいい、スポーツや勉強に秀でている・・・
持てるもの、持たざるもの
遠慮無く、シビアに明確になる
残酷な時代。

人間の“ナマの格差”やヒエラルキー、
女子の生臭さも、
あり得ないほどむき出しになる世界。


それはこの時期だけの、
束の間の“うつつ”であるんだけど、

その中にいる高校生にとっては
それが全てなんだよなア、と。

「ああ、自分もこんな世界にいたのか・・・」と
びっくりしますよハイ。

いや、いなかったな。自分。
完全に逃げてたな(笑)とか、

いやでも高校時代を
思い出します。


そんな“冷戦”続く高校生活のなかで
神木隆之介氏の存在がホントに救い。

またこれがお約束のように
ゾンビ映画を撮るのがまたイイ!(笑)


現役高校生がどう見るかはわかんないけど、

「かつて高校生だった」誰もに、
(とりわけ“イケてなかった”人に
「ウッ」とくるはずです。

「グッ」じゃないとこがミソね(笑)


★8/11(土)から全国で公開。

「桐島、部活やめるってよ」公式サイト

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« テイク・ディス・ワルツ | トップ | Virginia/ヴァージニア »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ランクB- (空気人形)
2012-08-14 22:37:24
確かに“巧みな”映画ですね~。同じシーンでの“視点のずらし”には参りました。

桐島という不在の主人公を軸に話を転がすのですから原作も良かったのでしょうね。(未読ですけど...)

神木君演じる映画オタクの前田君って、なんか実在しそうで笑えました。それに、彼は「映画秘宝」を愛読でしょう。旬報や芸術よりもサブカル系ですもんね。だからこそ、ゾンビ映画で納得できます。

評価 吉田マジックここにあり。見事なエンディング。
ついでですけど、愛ちゃんはいつになったら制服を脱ぐのでしょうか?告白アバター座敷にアナザー全部制服着てる。
映画秘宝 (ぽつお番長)
2012-08-15 01:49:50

でしたね。

なんかいいですよね、そこ。

橋本さんは
特に紺ブレが似合いますね。

コメントを投稿

か行」カテゴリの最新記事