ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

八日目の蝉

2011-04-24 15:26:17 | や行

試写室でおじさま方が
ボロ泣きしてましたねえ。


「八日目の蝉」67点★★★



角田光代の同名小説の映画化です。


会社の上司(田中哲司)と不倫していた
希和子(永作博美)は

彼の子どもを堕ろしたことで
子どもを産めない身体になってしまった。


悲嘆にくれる希和子は
彼の妻が子どもを産んだことを知る。

ショックと絶望から
希和子は彼の自宅に忍び込み

衝動的に
赤ん坊を誘拐してしまう。


そして21年後――。

誘拐された娘、恵理菜(井上真央)
大学生になり
家庭のある男(劇団ひとり)と付き合っていた。

そんな彼女の前に
21年前の事件を調べているという
フリーライター(小池栄子)が現れて――。



147分、飽きることなく見たし、
印象に残っている場面も多い。
小豆島のシーンとか。

永作博美は「子に捧げる無償の愛」を体現し、
ラストへ向かって井上真央も
グイグイと吸引力を増し

その変化も魅せたと思う。


ただ、すいません
物語の前段階で
全然入り込めなかったんですよねえ。


だってこれ
相当男に都合いいアホな話じゃない?


どうも“母性”を都合よく解釈した絵空事、という
感じがしてしまう。


不倫がダメ!とか
そんなキレイ事を言ってるんじゃなく
ストーリーに
引っ掛かるところが多すぎた。


そもそも
不倫相手の奥さんが産んだ子なんて
憎っくき存在でこそあれ
愛したりできるものか?


希和子は明らかに最初から
重要指名手配犯なのに
こんなに逃げ切れるものか?


予防接種や学校問題など
子どもを育てるための社会的な煩雑事の
処理のしかたも都合よくないか?


女が女を助ける、に終始し
そもそもの原因を作ってる男は放置。
腑に落ちんぞ!


まあ一番ムッとしたのは
小池栄子演じるライターの第一印象かも(苦笑)

女のフリーライターの
イメージってこれかよ!という。


ただし
彼女はそのルックスや挙動に理由があると
のちにわかるので、いいんですけどね。


でも試写室では
マジで野太いすすり泣きがあちこちから聞こえてたし
グッとくる人も多いのでしょう。


配偶者がいるか、いないかなど
観る人間の背景が如実に反映される作品なのかもしれない。

ぜひ劇場でご判断ください。


ちなみに番長は
日テレドラマ「Mother」の“母性”のほうが
そこにいたる動機も
主人公の心理変化も共感できました。


★4/29から全国で公開。

「八日目の蝉」公式サイト

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4 コメント

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綺麗事じゃない (母歴20年おばさん)
2011-04-24 21:57:51
母性がねじれると、自己愛の塊なんだよ
希和子は自己愛で薫を愛してた
自分の身体の一部のように
犠牲者は子供
この映画、深かったよ
返信する
そうか。。。 (ぽつお番長)
2011-04-25 00:14:30

母歴20年さま
コメントありがとうございます。


母性は自己愛…

そうか……。

この映画、
綾戸智恵さんとか
さまざまな経験を経てきたかたのほうが
「わかる」評をしてるようです。

まだまだ自分、未熟ですね。
返信する
いろいろ (三本毛)
2011-04-25 01:32:58
映画も本も、人それぞれの感じ方があるからね。
やっぱり性別や年齢や経験などで
どう思うかは変わってくるんだろうね。

そういうことをみんなで話すのも
映画を観る楽しみの一つなんだろうね。

ちなみにワタクシ、「Mother」で図らずも泣きました。
年をとって、めっきり涙腺が緩くなりました
返信する
ハイ (ぽつお番長)
2011-04-25 02:10:06

あれは泣けました。

あれも
因果は巡る、な話だったですねえ。

しかも女のあいだで
常に因果は巡るんですわ。

……業?

あの脚本家は
男性だったけど

愛と情、それぞれの生まれる過程を
よくわかってるなあと
思いました。
返信する

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