ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~

2020-09-13 18:02:52 | さ行

自分さえよければいい、ではない世界に

先に踏み出している人がいる。

リスペクト!

 

「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」72点★★★★

 

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自閉症の子どもたちをケアする

民間団体「正義の声」を運営するブリュノ(ヴァンサン・カッセル)は

今日も朝から駆けずり回っていた。

 

支援する青年の一人ジョゼフが

電車の非常ベルを押し、鉄道警察に取り押さえられたのだ。

ジョゼフは電車に乗るとどうしてもベルを押したい衝動に駆られ、それを押さえられない。

 

なんとか納めて、彼を家に送り届けると

次は医療センターへ。

重度の症状がある少年ヴァランタンの一時外出につきそうのだ。

 

一人で立ち上がることもできず、誰もに見放された少年をみても

ブリュノは、決して投げだそうとしない。

「何とかする」――それが彼の口癖だった。

 

ブリュノには、志を同じくする仲間マリク(レダ・カテブ)がいる。

マリクは社会からドロップアウトした若者たちを

社会復帰させる団体を運営している。

 

マリクは遅刻ばかりでヤル気のない青年ディランを

ヴァランタンの介助人にする。

最初は戸惑うディランだが、次第にヴァランタンと付き合うコツをつかみ

二人はなかなかの相棒になっていくのだった。

 

そんななか

ブリュノの団体に監査局の調査が入ることになる。

もし、不適切とされれば施設は閉鎖。

子どもたちはどうなる?!

 

ブリュノとマリクは、なんとか施設を守ろうと奮闘するのだが――

 

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「最強のふたり」(11年)のコンビ監督が、

自閉症の子どもたちを支援する施設を運営する

実在人物を描いた作品です。

 

監督コンビは1994年、20歳のときに

モデルとなった人物に出会い

「いつか、映画にする!」と誓ったのだそう。

 

それから26年。「最強のふたり」もだけど、監督たちはずっとこうした

社会が置き去りにしがちな人々や、それを支援する人に目を向け

どんな人も平等だ、というテーマを

手放さずにきたのだと思います。

 

自閉症を持つ人々は

適切なサポートがあれば、社会で生きていける。

ただ、一人一人の症状に目を配り、最適なサポートをするには膨大な人力が必要で

やっぱり社会は彼らを置き去りにしがち。

政府も見て見ぬふり。

 

そのなかで

ただただ、彼らのために奔走し、伴走しようとする人がいる。

その事実に敬意と、深い学びを得ました。

 

しかも、やっぱり「最強の~」コンビだけあって

もちろん、お涙!や感動!ではなく、

笑いもあって、痛快。

 

「預言者」のレダ・カテブもいいけど

ヴァンサン・カッセルが、今回実にいい役です。

 

登場する自閉症の若者たちや介護者も本物が多く

電車の非常ベルを押してしまうジョゼフもその一人。

洗濯機に超詳しい彼は、実際とてもチャーミング。

重度の障害を持つヴァランタンは

弟が重度の障害を持っていて

「この役を演じることで、弟に少しでも寄り添えるかも」とオーディションを受けたそう。

 

う。いい兄貴じゃありませんか。

 

社会は「自分だけよければいい」では済まされない。

しかし、他人のためにここまでできるだろか?――なかなかできないですよね。

だけど、実際、こうしてやっている人たちがいるんだと

その事実が、暗い世界の現実を超えて、その先へと飛翔させてくれる気がしました。

 

★9/11(金)TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。

「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」公式サイト


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