あまりにも尊く、美しかった。
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「GUNDA/グンダ」79点★★★★
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ロシアで“最も革新的なドキュメンタリー作家”とされる
ヴィクトル・コサコフスキー監督が
ある農場に暮らす動物たちを追った
モノクロームのドキュメンタリー。
恥ずかしながら監督を存じ上げなかったのですが、
既存のネイチャーものとはまるで違う
あまりに劇的で美しい作品でとにかく驚かされました。
どうやって撮ったの?!って、口開きっぱなし(笑)
まず導入から引き込まれる。
小屋の入り口で頭だけ見せて寝ているブタ。
聞こえてくるのはブヒブヒの寝息。
遠くに高速道路でもあるのか、車の音か風の音――。
寝ているブタの様子を、じーっと捉えていたカメラに
ひょこっと子ブタが映る。
ポテポテと出てくる子ブタが1匹、2匹・・・・・・
ああ、お産の最中だったのか。
よくカメラ、じっとがまんしていたなあ。
よくこの瞬間、捉えたなあ、と、もうここだけで感動(笑)。
この母ブタが主役のグンダです。
小屋のなかでは産まれてすぐに
お乳を飲みに行くたくましき子ブタたちがわらわらと。
小屋のなかのライティングが神がかって美しい。
黒に浮かび上がるブタの産毛と白い輪郭――
しかし監督によると、ライティングは最小限らしい。
まさに、自然こそが神!って感じ。
しかしわちゃわちゃといる子ブタがきょうだいに踏んづけられたり、ハラハラもするので
「もうこのまま何も起こらないうちに止めていいよ!」とも思ってしまう(笑)
続いて視点は農場にやってきたニワトリへ。
ある一匹が、一歩目を踏み出すその様子のドラマチックなこと!
すべてに人間は介在せず、ナレーションもなく、動物たちが主人公。
言葉なくとも、まるで演技をしているようでスゴイ。
ひとり遅れる子ブタのお尻を鼻で押しながら
母さんグンダ、完全に「おいっちに、おいっちに」って言ってるよね?!的な(笑)
こと動物に関してはメンタル極弱のワシとして
終始、不安の予感はあるんですが、
しかしその生命力、動物たちの役者っぷりが素晴らしく
そのハラハラを上回るんです。
直接的に辛いシーンなどはないけれど
やっぱり切ない別れもある。
その見せ方も秀逸で、ホントに胸が締め付けられました。
観てよかったとホントに思った。
ぜひこの光輝く生命のきらめきを体験してほしいです。
★12/10(金)からヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次公開。