ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像

2020-02-27 23:54:57 | ら行

コレ、おすすめ!

なだけに、ちょっとわかりにくい邦題が惜しい!(苦笑)

 

「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」76点★★★★

 

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フィンランドの首都ヘルシンキで

長年、小さな美術店を営んできた

老美術商オラヴィ(ヘイッキ・ノウシアイネン)。

 

しかし最近は絵画もネットで売買される時代。

経営もかんばしくなく、そろそろ店を畳もうかと思っていた。

 

そんなとき、オラヴィは近所のオークションハウスでの下見会で

一枚の肖像画に目を奪われる。

 

サインがなく、出どころもわからないその絵は

隅に追いやられていたが

オラヴィは長年のカンで

「埋もれた名作かもしれない」と調査をはじめる。

 

だが、そんなとき疎遠だった娘から

問題児の孫(アモス・ブロテルス)を預かることになり――?!

 

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オークションや美術商が題材の映画って

大抵おもしろいんですよ。

ミステリー度高いし、ドキドキワクワク。

パッと思いつくのは

「鑑定士と顔のない依頼人」(13年)とかね。

 

 

で、本作はまず、北欧フィンランド発、という

舞台設定も興味深い。

 

ヘルシンキの街の、それこそ"半地下”のような空間にある小さな美術店。

外を走るトラムの光と、店の暗闇、

この光と影の使い方がうまくて、

これだけで何かが起こりそうなスリルを感じる。

 

店主である老美術商オラヴィは

ネット販売に押され、そろそろ店を畳もうかと思っている。

しかしそんなある日、彼は一枚の絵画に魅了されるんですね。

 

それと同時にオラヴィは、ある理由から疎遠だった娘の息子、つまり孫を

職業体験で預からねばならなくなる。

肖像画の来歴を調べるのに精一杯なのに―ー!

 

 

しかし、この孫が

"いまどきの若者”に見えて、意外に商才があるんですわ(笑)。

で、オラヴィも「あれ?コイツ、使える?」となり、

孫の助けを借りながら、絵の来歴を調べていく。

 

そして二人は、この絵がロシアの有名画家

レーピンのものではないか?と検討をつけていく――という展開。

 

この祖父と孫のバディがおもしろく

そこに、名画を競り落とせるか?のオークションのスリルが重なっていくんです。

 

しかし、もし、これを競り落とせたとしても

「バンザイ!」で、物語は終わらない。

そこがミソ。

 

この話が包むのは

たとえ美や芸術に関わる仕事でも

お人好しでは生き残れない「資本主義社会」の厳しさ、

 

我が子を顧みなかった父親の後悔、

親子の確執――

 

それらが深みを持って描かれるのが

二重に三重に、おもしろいんですね。

 

 

主人公が美術館で孫に見せる絵画があって

老人と幼女が手を繋ぐ

フィンランドの画家ヒューゴ・シンベリの

「Old Man and Child」という作品なのですが

 

この絵が、実に象徴的。

 

去りゆくものは、次世代になにかを遺す。

それこそが、世代を超えて継がれゆく「美術品」の価値を表す

暗喩なのかも、と思いました。

 

タイトルの「ラスト・ディール」は

最後の大勝負、賭け、という意味合い。

 

うーん、もうちょっと「名画の謎」的な

ワクワクを煽る邦題でもよかったのではないかな~と思ったのですが

じゃあつけてみろ!と言われると難しいもんですね(笑)。

 

★2/28(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」公式サイト

コメント
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