「人生フルーツ」(16年)「眠る村」(18年)などで知られる東海テレビが
身内を写したドキュメンタリー。
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「さよならテレビ」70点★★★★
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東海テレビのスタッフが
身内の報道部にカメラを向けたドキュメンタリー。
おもしろかったけど、相当にモヤッともするような感じもあり
ゆえに、考えさせる作品でありました。
まず映画は
「ヤクザと憲法」などを撮った圡方(ひじかた)宏史監督とクルーたちが
2016年に、身内である報道部にカメラを設置し、
撮影をするところからはじまる。
テーマは
「いま、テレビってなんだ?を考える」というもの。
一応、企画書を出して通達しているんですが
しかし監督たちは、いきなり身内から反発をくらう。
「テーマがふわっとしすぎて何が撮りたいか、わからない」
「気になって仕事にならない」――などなど。
人を追いかける側が、追われる側にまわると
とたんにこうなるの図(苦笑)
そう、物事は自分が当事者にならないと、わからないんですよね。
さらに、監督の撮りたいものも、
実際、モヤっとしてて、よくわからない。
(これが作戦ならかなりのタマだけど)。
それでも、撮影クルーはなんとかルールを決め、撮影を始めるんですね
そのなかで、次第にフィーチャーする対象を見つけていく。
それは
テレビ局の正社員であるキャスター(37)と
ベテランの契約記者(49)、そして派遣で採用された新人記者(24)。
で、焦点が定まると、
やはり映画として、がぜんおもしろくなる。
手堅いけれど、どこか殻を破れないキャスター。
高い問題意識を持ちつつ、現状に甘んじてるベテラン記者。
オドオドと頼りない新人くん。
それぞれが何を悩み、これからどうするのか、が描かれていく。
おそらく、そもそもの「ふわっとした」テーマは
テレビが「絶対」だった時代を過ぎ、
ネット&SNS時代になったいま、テレビってどうなの?
ジャーナリズムとしての矜持はあるの? 機能してるの?という
思いから始まったと想像できるのですが
結局、見えてくるのは
「メディアは貧困や弱者に寄り添うものであれ」とかいいながら、
予算を切り詰められ、社員の働き方改革をせねばならないなかで
派遣を雇い、人を育てず切り捨てる
「労働の場」としての黒い現状なんですよね。
だって主役の3人は
キャスターをのぞいて、全員が不安定な雇用の人なんだもの。
わかってはいたけど「ここでもか」と衝撃だった。
写す側にも写される側にも
「ジャーナリストとして伝えるべきはなにか」という
熱い思いはあっても
みんな、それに伴う痛みが大きいこともわかってる。
ベテランの契約記者は、テレビ局員である監督に言うんです。
「じゃあ、あなただって
テレビ局辞めて、完全フリーになって
年収300万になったらやでしょ?」。
問われた監督は
「考えられないっすね」。
ううう、もやっとする。
正しいことはしたいけど、自分も大事。
高潔にいきたいけど、なりきれない。
それが人間のジレンマなんですよね。
ワシだってそうだし。
だから
ううう、もやっとするんですわ(苦笑)。
でも、この現実を世に出したことは、ひとつ意味がある。
やっぱり、東海テレビはなかなかだと思うのであります。
★1/2(木)からポレポレ東中野、名古屋シネマテークほか全国で順次公開。