ファティ・アキン監督が
攻めてきた。
「女は二度決断する」72点★★★★
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ドイツ、ハンブルグに暮らす
生粋ドイツ人のカティヤ(ダイアン・クルーガー)は
トルコ系移民の夫と、6歳の息子と暮らしている。
かつて麻薬売買で捕まったこともある夫だが
いまはまっとうに働いている。
その日も、カティヤは息子を夫の事務所に預け、友人と出かけた。
だが夕方帰ってくると、事務所の前の道路が封鎖されている。
そしてカティヤは、夫の事務所の目の前で
爆破テロが起こったことを知る――。
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ドイツ・ハンブルグで、トルコ移民の両親のもとで生まれ、
「ソウル・キッチン」(09年)などユーモラスな作品や
「そして、私たちは愛に帰る」(07年)「消えた声が、その名を呼ぶ」(14年)などハードめの作品などを発表する
ファティ・アキン監督。
どんなタッチにあっても
常にルーツや、民族の問題にその根っこがあることがよくわかり
すごく好きな監督なのですが
今回は、より“攻めてきた”感じがありました。
突然、愛する家族を奪われた主人公カティヤ(ダイアン・クルーガー)。
被害者である彼女に、警察がまず聞くのは
夫がイスラム信者だったか、クルド人か、政治活動をしていたか?
それゆえに、狙われたんじゃないか?といったことで
彼女は、想像できない悲しみのなかで
そうした試練を受けなければならない。
でも結局、テロを起こしたのは
ネオナチの夫婦だったことがわかる。
そしてカティヤは“弔い合戦”のごとく
自分なりの落とし前をつけようと行動する――というのが映画の大筋。
彼女の行為には賛否両論があると聞きましたが
いやいや、疑問の余地なく、まったくありでしょ(笑)
敵討ち的な思想では負の連鎖を止められない、との非難もあるのは承知だけど
ワシは、これはありだと思う。ワシも同じことをすると思う。
なにより
卑劣なテロの犠牲者が後を絶たない現在、
カティヤと同じ苦しみを抱える遺族が山ほどいるのだと、
この映画は痛烈に教えてくれました。
★4/14(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開。