ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

あの日 あの時 愛の記憶

2012-08-03 22:43:51 | あ行

アウシュビッツで
こんな“愛”もあったんですねえ。

「あの日 あの時 愛の記憶」70点★★★★


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1976年のニューヨーク。

ドイツからアメリカに渡ったハンナ(ダグマー・マンツェル)は
夫と成人した娘に囲まれ、幸せな日々を送っていた。

だがある日、
テレビから聞こえてきた“声”に
彼女は愕然とする。

それは32年前、
彼女がアウシュビッツ強制収容所で出会い、
恋に落ちたポーランド人青年トマシュの声に似ていたのだ――。

死んだと聞かされていた
トマシュは生きているのか?!

そしてその声はハンナの記憶を
32年前の
強制収容所に引き戻してゆく――。

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ナチス時代のポーランド収容所と、
1976年の“現代”をつなぐ愛の物語。

収容所で出会った男女の愛とスリリングな逃走劇が
スッと自然に切り替わり、

32年後の、ある女性の家庭につながる転換が
なかなかに職人技です。

しかも実話が基だそうで、

収容所話というと
悲惨な情景が思い浮かんじゃいますが、

そのなかで
こんなふうに愛しあってしまう
男女がいたんだなあと
ちょっと新しい視点をもらった感じしました。


いわば初っぱなから結末が明かされているのに、
過去の回想も退屈させないし、

「サラの鍵」ほどの衝撃はないけど、
ほとばしる「愛」とその残酷さに
テーマを絞ったのもシンプルでいい。


なかでも息子を思う母の愛が動機となる
本能的な残酷行為にゾッとしました。


実話だっていうのがミソなわけですが、
その分
いろいろ考えてしまうこともある。

まあ、
うーん、ダンナ、優しいよなア……。


★8/4(土)から銀座テアトルシネマほか全国順次公開。

「あの日 あの時 愛の記憶」公式サイト

コメント (2)
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