とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

「オリオン座からの招待状

2007-11-10 21:43:55 | 映画
「オリオン座からの招待状」を観ました。

一言で言えば、「何と静かな映画だろう」ということです。
まさに大人の映画と言ってもいい映画です。
出演者は
宮沢りえ 加瀬亮 宇崎竜童 田口トモロヲ 中原ひとみ 樋口可南子 原田芳雄
の豪華なキャストです。
全員が抑えた大人の演技をしていました。

ネタバレになってもいけないのですが…

京都の西陣にある古い映画館「オデオン座」から突然、招待状が舞い込みます。
「昭和25年から半世紀以上に渡って地元の皆様に愛され親しまれて参りましたオデオン座は、誠に勝手ながら今秋をもちまして閉館致すことと相成りました…」

招待状を読んだ樋口可南子は田口トモロヲに「京都に行きたい」と言います。二人は離婚したのか、別居中なのか訳ありなカップルという設定です。

場面は昭和30年代に転換します。
そこには、館主兼映写技師の豊蔵(宇崎竜童)と妻トヨ(宮沢りえ)が細々と映画館を経営しています。
そこへ、一文無しの青年留吉(加瀬亮)が流れ着きます。
頼み込んで映画館に住み込みます。

留吉はまじめに働きます。フィルムの調達に鴨川を何度も往復するシーンも静かに流れていきます。

豊蔵はヘビースモーカーで、口からたばこを離すことがありません。
結果として、トヨと留吉を残して死んでしまいます。
死ぬ前に留吉に心残りがあると話します。
それは、「無法松の一生」をノーカットで流せなかったことだと言います。
「官憲にカットされたのはどこか知っているか?それは告白のシーンだ!」と言います。

このことは、今後のトヨ留吉を暗示させるかのような台詞です。
古い時代のこと、周囲からは主人の嫁さんを奪った若主人。不義理な嫁と陰口も叩かれながら…

テレビの普及により、映画産業が冬の時代に入り、二人で貧乏のどん底生活を送りながら静かに愛をはぐくんでいく二人を描いていきます。

何のドラマもなく、淡々と描かれていく二人の生活。そこに演技者、監督、BGMと何ともプロの世界が語られていきます。

留吉が川で見つけた蛍を大事そうに手のひらに入れて、トヨの寝ている蚊帳に手だけ入れてそうっと離すシーンなどはまさに「美しい国日本」でした。
その時に初めて手を握り合う二人。
現代からは考えられない男女の愛の姿。

年老いてからの二人を中原ひとみ 原田芳雄が演じています。
負ぶって歩く二人の映像が何とも言えず…。

音楽はジャズの世界の上原ひろみが担当しています。
京都の季節のうつろいと相まって音楽の良さが引きだっているように思いました。

この映画を観たのは金曜日の午後でした。
私の行きつけの下松のシネコンで観ました。
客は何と私一人でした。
何と贅沢なひとときでしょう。

確かにこの映画ドンパチもないし、エイリアンも、裸も出てきません。
でも、こういった佳作が人々に受け入れられない現実は問題だと思います。

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