パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

年金教室・スエーデン方式の巻

2007-07-04 15:27:43 | Weblog
 昨日、ブログの更新にとりかかったところに、千駄木のMさん(前回書いた「漢字肝心帳」のM瀬さんではない)がやってきて、Mさん本人の履歴を書いたメモを渡され、パソコンでこれを印刷して欲しい、と言ってきた。先方にデータを渡すのなら、たったこれだけの分量で大袈裟だけど、MOに記録しましょうかと聞くと、その必要はない、自分の字が汚くて読みにくいからお願いしているだけだという。つまり、印字した紙をそのまま先方に持って行って、先方はそれを見て、改めて入力するのだ。

 ……トホホだが、これでもMさんは、いろいろ話する限り、M瀬さんに比べれば、パソコンがいかなるシステムであるか、少しは理解している風なのだが……やっぱり、こういう年輩者がいまだに多いのだろうなあ……。

 それはさておき、昨日、ブログに書くつもりだったのは、一昨日、TBSのニュース23で紹介されていた、スエーデンの年金システムについてで、ネットでいろいろ情報を集めていたところだったのだが、Mさん訪問で中断、今朝、改めて調べた結果、概略、以下のことがわかった。

 まず、保険料率だが、所得の18.5%である。これは、おそらくは、毎年の確定申告時に前年の所得を報告する際に計算して納めるのだろう。自営業者も同様である。そして、この所得の多寡に応じて年金支給額が決まるので、「所得比例方式」と言われる。

 ただし、「所得比例方式」の対象となる人の所得は、月収入が日本円に直して、大体26万円から500万円までの人が対象となる。つまり月収500万円以上の金持ちは年金の必要性はなしとされるのだろう。
 一方、月収26万円以下の人はどうなるかというと、税でまかなわれる「保証年金」を受け取ることになる。これは、スエーデンに3年以上居住すればすべてもらうことができるが、40年居住で「満額」、3年の場合は、40分の3だけもらえる。(「保証年金」の支給額は算定方法がかなり複雑だったので割愛)

 要するに、生っ粋のスエーデン生まれのスエーデン人は満額、移民等の途中参加者はそれなりに、ということだ。

 この「保証年金」をまかなうのが25%という高率の消費税ということになるが(だと思うのだが、説明はなかったので、私の推測)、年金掛け金の支払いがゼロでも給付されるからといって、必ずしも「ただ乗り」というわけではない。何故なら、スエーデンに居住するすべての人が消費税を払っているからだ。したがって、心理的負い目なしに、基本年金を受け取る事ができる。「消費税」がある意味で、非常に公平な税制だというのは、こういうことなのである。

 それはさておき、スエーデン方式の核と言われる、「所得比例システム」の話に戻る。

 「所得比例方式」の年金保険金料率18.5%のうち、2.5%分は、納めた人本人が運用する建て前となっており、そのための口座も国が用意している。この口座に溜められた金は、本人が自由に運用する事ができる。例えば月収百万円だったら25000円を、民間の投資信託に預けてもどうしても自由であるが、国が運用する「デフォルト」が用意されているので、事実上、納付者の95%は国に任せているらしい。

 さて、問題は残りの16%だが、これはそっくり「賦課方式」として、老人への年金の支払いに充てられるが、ここが漢字肝心帳なのだが、実質は、老人に支給されていても、「概念」としては、本人名義の積立金として勘定されるのである。

 「概念」なんて、哲学的言葉が出てきて、ちょっと難しくなるが、以下の通り、掛け金を支払った人が、将来受け取る年金額で説明するとわかりやすいと思う。

 スエーデンでは年金支給の開始年齢は、現在60歳(保証年金は65歳)だが、その60歳までに積み立てた年金掛け金の総額を、その時の平均寿命まで割る。つまり、もし国の統計が平均寿命80歳と数字を出していたら、80歳-60歳=20年間となるので、掛け金総額を20で割る。たとえば、掛け金総額が4000万円だったら、1年に、4000万円÷20=200万円を、死ぬまで受け取る事ができる。(もちろん、これに2.5%の自己運用分も加算されるのだろう。)

 つまり、所得の16%分は、実質的には「賦課金」としてリタイヤ世代への支払いに充てられるのだが、帳簿上は、支払い者の名前で積み立てられ、給付の際の計算根拠となるのである。これが「概念上」という意味だ。

 以上が、「スエーデン方式」の肝で、最近では知っている人も多くなってきたのではないかと思うが、ほとんどのサイトに説明がなかったのが、「最低加入期間」が「なし(ゼロ)」ということだ。

 ということは、たとえば、ある自営業者が、ある年に大儲けして、5000万円の純所得を得たとすると、5000万円の18%、900万円を保険料として納める事になるが、翌年には一転、収入がガタ減りして、月収26万円以下となってしまった。26万円に達しなければ、年金保険加入資格がない。そしてそのまま、60歳になったとすると、その人は、一年あたり、900万円÷20=45万円にプラスして「保証年金」を受け取る事ができる。言い換えると、「最低加入期間」がないということは、1年の加入でもOKということで、実質上、「任意加入」と同じことになるはずである。(ただし、以上は、私の推測である。)

 一方、日本の場合、最低加入期間が25年と諸外国に比べて3~5倍とやたらに長い。そのため、厚生年金にしろ国民年金にしろ、途中で力つきてしまうといったケースが、最低加入期間の短い諸外国に比べ、きっと格段に多いと思うのだが、その場合、たとえば20年間だけ払ったとしたら、その掛け金総額(360万円)は国に没収されてしまうわけだ。

 いや、待てよ……このような「未納者」の発生する事は、25年間という超長期を設定した時に当然、予想されるはずである。予想しない方がおかしい。だとしたら、最初の「制度設計」の時点から、「没収」は「計算済み」だったということになる……ふざけやがって、ふざけやって……コノヤロー!と植木等みたいに怒鳴りたくなるが、冷静に考えると、もし、そうだったら、社保庁は、何故「未納者」の「摘発」に必死になるのだろう。「未納者」は年金を貰えないのだから、それでいいじゃないの。しかも、その「未納者」の多くは、多分(私みたいに)、少しは納めているのだ。もってけドロボーで、国だが社保庁だかわからねーが、くれてやるから、犯罪者扱いは、もうよしこさんと、三平師匠まで出てきちゃうぞ。

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