パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

いくらなんでも……

2005-11-30 05:04:00 | Weblog
 中国の「故事物語」(河出書房)という本で調べたら、愚公が「移した」山は、黄河中流域にあった太行山と王屋山という山で(もちろん、移しちゃったから今はない)、削った土ははるばる勃海にまでかついで行き、勃海湾に捨てたが、「その往復に1年かかった」そうだ。こ、これはいくらなんでも……(笑)。

 本棚を整理しながら、ふと「コナン・ドイルの心霊学」(新潮選書)という本を見つけてぱらぱらと拾い読みしたら、案外、面白い。たとえば、ドイルによると人は死んだ後、ちょうど生まれ立ての赤ん坊が一日の大半を寝て過ごすように、深い睡眠に入るそうだ。で、赤ん坊が睡眠の間にとてつもない「学習」をするように、「霊界」への準備を行なう。ところが不本意な死を遂げた人は、その睡眠に入ることができない。その結果が、いわゆる「地縛霊」であると。
 なるほどねー。

 後、こんなことが書かれていた。

 「ハイズビル事件(フォックス家に起きたボルターガイスト事件)を契機として新しい啓示が次々と入手されはじめた頃、ブルーム卿(スコットランドの政治家、法律家)が奇妙な比喩を用いて、こう述べた。“一点曇りなき無神論の青空に、たった一つ、雲がただよい始めた。それが近代スピリチュアリズムである”と。」

 ドイルは、「本来なら“無神論の暗雲の切れ間にチラリと(スピリチュアリズム)の青空が見え始めた”とでも表現すべきであろう」と書きつつ、あえて、このような「奇妙な表現」をした意味について、「キリスト教への深い懐疑」と、「スピリチュアリズムの重大性」をブルーム卿が意識していたからだろうと書いている。

 うん、まあ、そうかもしれないけれど、よくわからない解説だ。
 というのも、実は、ブルーム卿とそっくりの言葉をドイルと同時代のある物理学者が言っているのだが、それをドイルは知らなかったらしい。その物理学者とは、ケルヴィン卿という人で(絶対温度の単位、「K」はケルヴィン卿の頭文字をとったもの……だったと思う)、彼は、こう言ったのだ。

 「今、物理学の将来に、二つの暗雲がたちこめている」

 ケルヴィン卿はニュートン力学を信奉する伝統的な物理学者で(19世紀以前はニュートン物理学以外なかったのだから当たり前の話だが)、この言葉は、(ケルヴィン卿が信じる)ニュートンによって完璧に仕上げられた物理学の体系が、やがて崩壊するであろうことを予言したのだと考えられている。その二つの暗雲とは、アインシュタインの相対性理論と、量子力学だ。(もちろん、ケルヴィン卿は、この二つともまったく知らなかった。だから「予言」なのだ)
 このケルヴィン卿の「予言」は、現代物理学の本には必ずといっていくらい出てくる、とても有名なものだが、正直言って、意味がさっぱりわからなかった。もちろん、今もわからないけれど、ただ、一応、類似した表現の先行発言があったのだということだけはわかった。
 それにしても、いったい、どういう意味を込めたんだろう、二人とも。

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1 コメント

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中国人のホラは、 (うさぴょん)
2005-12-02 00:14:46
そのスケールだけはやたらとデカい。

西洋のインテリはわかったようでわからない難解な言い回しが多いのですが、相手を煙にまくブラフな舌戦テクでしょうか?

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