パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

愚公、ネジをぶち切る

2005-11-28 18:59:19 | Weblog
 夢の話。
 
 私はセーターに大きめのジャケットを着込み、最近、お気に入りの空色のビニール製のショルダーバッグを背負い、街を歩いている。そのうち、ふと気づくと、バッグがない。たすきがけにかけていたのだから、ないはずはないと思い、必死に探しながらなんとなく手をやると、ちゃんとバッグがある。「ない」と思っていたのは勘違いだったのだとほっとする。眼鏡をはずしたことに気づかずに眼鏡を外そうとして「あれ?」と思ったり、逆に、眼鏡をかけていることを忘れて、眼鏡をかけたまま顔を洗ったりすることは、日常的によくあることなので、きっとそれだったのだ、と思う。
 ところが、それからしばらくすると、またバッグがなくなっている。今度はきっと前のようなわけにはいかないだろうと不安になり、焦って探すが、案の定、どうしても見つからない。歩き回って汗びっしょりになり、ジャケットを脱いで手に持ち、さらに探すが、ふと気づくとそのジャケットがない。探しものに気をとられて、どこかに置きっぱなしにしたのだろう。お気に入りのバッグ、それにジャケットもなくなってしまったと思うと、悲しい気持ちになる。そのうち、気づくとセーターもない。バッグとジャケットに気をとられて、セーターをどこかに脱ぎ忘れたのだ。
 私は、半そでのシャツ一枚になって街を歩く。さすがに寒い。もう、バッグもジャケットもセーターも探す気になれず、途方に暮れる。

 ここで眼が覚めた。 
 私の考えるところ、そもそも夢には二種類あって、一つは見ている最中にそれが夢であることがはっきりと、あるいはなんとなく、わかっている夢。もう一つは、夢とはまったく思っていない夢である。今回は後者だった。というわけで、眼が覚めて、本当にほっとした。あーよかった、バッグもジャケットも、セーターもある、と。

 次の話は、夢ではないが、終わってみると夢のような気がしている。

 スチール棚の棚の位置を一つだけ変えようと思い、ネジを外しにかかった。スパナで八個のうち、七個までは簡単に外れたが、一個だけ、ネジ山が変に食い込んでしまって、どうしても外れない。潤滑剤をたっぷり注いでもダメ。あきらめて、元に戻すという方法もあるが、いずれ解体する時には、また同じことをしなければならないと思うと、絶対に外してやろうといいう思いがふつふつと募り、作業を続行したが、びくともしない。夜十時過ぎからはじめて、やがて夜中になった。「どうするのよ、わたし!、つづ~く」てなことはしたくない。どうしても朝があけるまでに作業を完遂させたいと思い、チャレンジを続けたが、どんなあの手もこの手もきかない。
 かくなる上は、最後の手段、ネジを切るしかない。しかし、道具がない。あるのは、安物のヤスリ一本だけ。でも、やる!と、しこしこ擦り出した。しこしこしこしこしこ……。やがて朝になった。テレビから、「これからお休みになる方も、お起きになる方も、お早うございます」とさわやかな女子アナの笑顔。「これからもずっと起きている方も、お早うございます」と付け加えてくれないかなと思いつつ、しこしこしこ……。早朝の女子アナ見物を楽しみにしているおやじはきっと多いだろうな。オレもそうだ。

 きりがないので、結論。ネジは、切れました! バンザーイ。「愚公、山を移す」の精神だね。時間をかけさえすれば、必ず、切れる。当たり前の話だけれど、これがリアリズムの精神だ。身も蓋もない話で、本当はあんまり好きではないが、役には立つな、リアリズムって。

最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kogure)
2005-11-28 23:22:14
その底なしの忍耐力というか集中力というか楽天力というか、真摯な態度に毎度のことながら頭が下がります ついでに月光早くだしてちょ。

返信する
Unknown (ナンバラ)
2005-11-29 12:29:29
 痛いところをつかれた(笑)。ただ、本てのは、時間をかければできるってものではない。リアリズムの限界というか。でも基本はリアリズムだとは思うが(そんなこと考えてる暇があったら……って? まったくそうだ……なんて自問自答している暇があったら……無限につづく)



始めてトラックバックとやらがついたと思ったら、女子アナAVのHP。
返信する
マネ出来ない。 (うさぴょん)
2005-11-29 16:08:09
忍耐力というか集中力というか楽天力というかというか(←なんてナイスな表\現)。おそらくは似たような状況で、真摯な態度もへったくれもなくペンチ使ってネジひっこ抜いた事はあります。
返信する

コメントを投稿