パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

貧乏人が暮らせない街、東京

2012-11-17 01:33:42 | Weblog
 もちろん全部ではなくて,一部なのだろうが,多摩ニュータウンが高層マンションに建て替え工事中で、まだ工事中だが,一部公開したというニュースをやっていた。

 それによると、建て替え工事費用は全額、開発者の都市再開発機構だったかが負担すると、いかにも「異例」のような調子(あくまでも口頭の印象だが)言っていたが、そんなのは当たり前だろう。

 仮に私がすんでいるアパートの大家が、高層に建て替えますと言ったら、それは大家が金を出すに決まっているではないか。

 問題はその後、家賃がどうなるかだが、ニュースはまったく触れていなかった。

 これでニュースと言えるのか!

 私の知り合いのMさんは、横浜市営住宅に住んでいたが、高層マンションに建て替えられ、家賃が払えなくなってホームレスになってしまった。

 「ビッグイシュー」の前号では神戸大学の平山洋介という教授が、これまでの日本の基本住宅政策は中間層に家を買ってもらうことで、高度成長時代はそれでよかったかもしれないが、その結果、公営住宅が全住宅の4%に過ぎない。これは先進諸国ではきわめて特異な状態で(オランダは全住宅の35%,イギリスは20%、フランス18%だそうだ)、なおかつリーマンショック後、公的住宅の建設を再開したし、韓国も低所得者向け住宅の建設をはじめている。ずっと持ち家重視政策だった中国も、住宅バブルで若い人が家を買えなくなったので、公的住宅の建設をはじめた。

 日本だけ、「公的住宅の役割は終わった」、「住宅も市場重視が当たり前」の姿勢が変わっていない。

 しかも,市場重視と言いつつ、生活保護費の住宅扶助費の上限53700円にあわせて、以前は3~4万円くらいだった都内の老朽化した木賃アパートの家賃が5万円以上になり、年金暮らしの高齢者、ワーキングプアの若者たちが家を借りることができなくなってしまった。東京は貧乏人が暮らせない町になっている云々。

 私の住んでいる西川口は、駅からのんびり歩くとたっぷり30分かかる遠隔地のアパートなので3万5000円と格安で風呂付き。(今年から3万7000円になってしまったが)都内では、風呂付きだったらたしかに6万円近くかかるだろう。

 立命館大学の哲学の先生で,小泉義之という人がいるが,この小泉先生にインタビューしたら、小泉先生曰く、「老朽化した公団アパートはそのまま開放すればいい。そうすれば貧しい人々がそこに住みつき、スラムになるかもしれないが、マニラのスラム、リオのスラム、みんなちゃんと暮らしている。先進国はスラムに学ぶべきだ。私は貧しい人を信頼している」と言っていた。

 そうなのだ。「貧乏は正しい」と、前から言っているように。

 日本の官僚は、貧乏はよくない、悪の根源だから、追放しなければならないと思い込んでいる。

 だから、貧乏人向けの住宅を作ろうとしないのだ。

 そんなのを作ると,貧乏人を呼び集め、革命が起きるかもしれないと思っているのだ。

 しかし、社民党も共産党も、日本の住宅政策の不在を全然指摘しようとしない。

 共産党は貧乏人をかき集め,革命思想を吹き込みたいと思わないのか?

 原発と憲法しか頭にないのでは、それもやむを得ない。

 ドナルド・キーン先生が、復興予算の横流しをテレビで怒っていたが、キーン先生に住宅政策の不在も、ぜひ怒ってほしいと思った。

 

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