パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

インディアンとヘミングウェイと24号完成!

2006-12-22 20:35:25 | Weblog
 NHK教育テレビ、高校世界地理、「アマゾン流域」を見る。

 アマゾンは一度は行ってみたいところだ。何しろでかい。中流の川沿いに100万単位の住民の住む町があり、そこまで数万トンクラスの船が遡ることができる。信濃川なんて、支流の支流の支流の支流のそのまた支流くらいだ。

 そのアマゾンに住む原住民のインディオの生活の様子が映像で紹介されていたが、彼らは「農業」あるものを知らず、なんとかというアマゾンに自生する植物を穀物代わりに摂取しているのだが、これには毒のあるものと無毒のものと2種類あり、毒の無いものは動物が食べ、動物が触れない有毒のものを採取し、叩いて潰し、それを水でさらしたりして毒を抜いて食べる。
 その後は、潰さずにとっておいた茎を地面に適当に突き刺しておけば、あっという間にまた生えてくる。
 蛋白源については、食用になるような大型動物はアマゾンにはいないので、もっぱら魚ということになるが、網ですくったり、釣りをしたりするような「漁業」は彼らにはなく、これも周囲に自生する植物の茎を集め、それを固い石か何かで叩くと、これまた「毒」がにじみ出てくる。これをもって自ら川に入り、「毒」を流すと、死んだ魚が浮いてくるから、それを掴み出す。
 毒殺した魚を食べたら危ないのではないかというと、その毒は、魚のえらを麻痺させるだけなので、人が食べてもまったく大丈夫である。

 と、なんとも「気楽」なもので、授業の生徒役の女性曰く「天国ですね」というのも否定できない。番組途中で登場した、世界有数の「アマゾンコレクター」で、自ら「アマゾン博物館」を経営するお爺さんも、「アマゾンの魅力はなんですか」と聞かれて、「天国だからですよ」と答えていた。

 しかし、その「天国」は、いかにも、明日を知らぬ「気楽さ」から来るものであって、一転、悲劇が襲ったらとても抵抗できまいと、暗澹たる気分になったのだが、果たして、昨日の今日、またまた本棚を整理していて立ち読みしたヘミングウェイの『インディアン部落』で、牽強付会かもしれないが、その「暗澹とした気分」が腑に落ちる気がした。
 『インディアン部落』という超短編は、御存知の人も多いと思うが、ヘミングウェイの分身であるニックの成長物語における、最初の、そして決定的衝撃を描いている。

 ニック少年は、医師である父親につれられてインディアン部落に行く。そこでは、産気づいたインディアン女が待っていた。女のお産は非常な難産で、麻酔を持参しなかったニックの父は、ナイフで帝王切開を試み、なんとか赤ん坊を取り上げることに成功する。
 ところが、側で見守っていた女の夫が、妻の難産に感応したか、あるいは妻の悲鳴に耐えることができなかったのか、自ら首を切って自殺してしまう。ニックの父親は、幼い子供を連れてきたことを後悔する。

 という小説で、ニックと父親の最後の会話、「死ぬのは大変なの?」「いや、案外簡単だよ。そのときの都合次第だ」が、いかにも後年のヘミングウェイの自殺を暗示しているようで、なんとも暗澹たる小説なのだが(ヘミングウェイの父親、すなわちニックの父親も、実人生においてピストル自殺しているそうだ)、もちろん、このニックとニックの父親を襲った気分は、インディアンの自殺に原因し、そして、それはまさに前日、アマゾンのインディオの「気楽」な生活を見た時の私の気分とぴたりと重なるものであった。いやはや。

 月光24号、できました! ここ一週間ほど、ちんたらしてて、発送準備してないので、土日、あわてます。では、よろしく。

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