パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

人工透析は何故高い?

2008-06-16 18:15:30 | Weblog
 後期高齢者保険制度について、厚生省のHPでしらべたが、こういうことであるらしい。

 1、まず、患者の窓口負担として、 医療費の1割(現役並み所得者は3割)を払う。(現行の老人医療と同じ)

 2、その他に、「保険制度運営の財源」として保険料を支払うが、これが従来は、税金で、5割分、現役世代からの支援として4割分、被保険者、つまり後期高齢者が負担する保険料として1割分払う

  問題になっているのは、従来、高齢者の負担は、窓口負担の1割以外、原則的になかったものを、保険料負担を創設したところにあるらしい。

 しかし、「保険制度運営の財源」、というのは何だ? HPの説明図版を見る限り、窓口負担分として病院に支払った金も、「保険制度運営の財源」に組み込まれ――ということは、いったん社会保険庁にプールされ、そのなかから、各医療機関に支払われているようだが、窓口負担だけで保険制度は運営できないのだろうか?

 たとえば、治療代が10万円だったとすると、患者が後期高齢者だったら、1割の1万円、国民保険だったら3割の3万円を患者に直接請求し、残りの9万円、7万円は国に請求する。厚生年金の仕組みはよく知らないのだが、患者以外に、国と企業にあて請求書をだすということになるのだろう。

 もちろん、基本デザインに過ぎないが、これでなんでいけないだろう?(社会保険庁がいらなくなってしまいますから、ってか?)

 多分、日本医師会などは、窓口負担で原則統一してしまうと、金のかかる高度治療は金持ちだけが受けることができることになると言って反対するのだろうが……正直言って、それはある程度しょうがないのでは、と思う。

 たとえば、治療費のかかる医療というと、人工透析が必須の糖尿病治療なんかが代表的なものだろうけれど、その95%は生活習慣に起因するもので、昔ながらの言い方をすれば、「贅沢病」なわけで(先日、テレビに出ていた医事評論家は、ちょっとくちごもりながら、「まあ、そうですね」と、糖尿病が「贅沢病」であることを肯定していた)……ものの本によると、人工透析には月50万から140万円くらいかかるのだそうで、3割負担だったら、月15万から40万くらいかかることになるが……贅沢病だからねえ……因果応報というか……私はあまり同情しないのよ。

 しかし、糖尿病患者がこれだけ増えたなら、市場原理が働けば、人工透析の費用も安くなると思うの。そもそも、今使われている人工透析器械の大半は、減価償却は済んでいるはずだ。それでも費用が安くならないということは、医療現場には基本的に「市場原理」が働いていないのだ。日本の健康保険制度の原型は、九州地方で行われていた「頼母子講」のような相互援助システムの発展形だそうだが(ウィキにそう書いてあった)、いずれにせよ、官僚の考えることは、必ず,市場原理は排除する形になるのだろう。

 追伸 改めて調べたら、日本の健康保険制度の原型は、福岡、宗像地区に伝統的に伝えられていた「定札」制度だそうだ。

 定札とは、地域の住人が、病気にかかってもかからなくても一定のお米を持ち寄って、それを医者に渡しておき、いざ病にかかったら、心置きなく、無料、あるいは小額で治療を受けることができるという制度だそうだ。(やっぱり、無尽、もしくは頼母子講と精神は同じだ。)

 まあ,皆が顔見知りの小さな地域に生まれ、そこで死ぬような昔の社会のあり方だったら、機能すると思うけれど(相互監視制度がもとにあるわけで、嫌といえば、これほど嫌なものはない。払わなければ村八分なんだろう)、流動化が進んだ現在、1億人をこの制度で包括するのはちょっと無理があると思う。というか、医者にかかってもかからなくても,おとなしく払っている人がかなりの人数に達する現状のほうが、不思議だ。

 いずれにせよ、日本の健康保険制度が、日本独特のものであることは、今,初めて知った。勉強勉強!