パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

社保庁電算室の怪

2007-06-30 23:21:38 | Weblog
 『朝まで生テレビ』を見る。もちろん、「年金」問題がテーマだが、終始データ紛失問題ばかり。おまけに、民主党は、年金については、民主党は、「国民年金の代りに基礎年金を創設し、財源は税金で」が持論だったはずだが、今回は、未だに選挙公約ができていないんだそうで、実際、その「かつての持論」への言及は一切なし。選挙本番までは、党内分裂を引き起こしかねない問題には目をつむり、「データ紛失」の不手際のみを集中的に責めることにしたのだろうかと勘繰ってしまう。(亀井静香の「国民新党」は「基礎年金は税金で」という選挙公約を決めたらしいので、ここにするかなあとも思う……フジモリ元大統領を担ぎ出したり、なかなか面白い)

 ところで、この『朝まで生テレビ』に、民主VS自民の行司格で出演していた江田議員が、今回のトラブルは社保庁の電算システムが絶望的に古く、外とつながることが出来ないことが原因であると言っていた。なおかつ、社保庁には、その古い電算システムを管理できるエンジニアすら、一人もいない。すべて、外注先に「お任せ」してきたからである。だから、安部首相が「1年以内にデータ修正を終える」と発言したが、そのために、どれくらいの時間、費用がかかるか、「誰もわかってない」のだそうだ。

 この江田氏の言う、「昔のシステム」が具体的にどんなものか、よくわからなかったが、察するに、かつてのワープロシステムみたいなものだろうか。

 というのは、もう、十数年以上昔の話だが、『月光』の編集室にはパソコンはなく、文字データ入力用のリコーのワープロが編集部員の数に合わせ、数台置いてあった。しかし、はじめの頃は、今で言う「データ入力」なんかではなく、「手書きの代り」に過ぎず、ワープロ文書を写植屋に渡し、それをオペレーターが手打ちの写植機に向かって入力していた。つまり、手書き原稿より見易いというのが導入の主な理由だったのだが、そのうち、肉体的にも手書きよりずっと楽に入力できるようになった。

 その後、各写植屋に電算写植機が導入され、それに伴い、ワープロで入力した文字データを電算写植機でも使えるように、今のHTML言語のようにワープロデータを書き換えることが写植屋の主な仕事となった。

 そして、その次に、ワープロ機械はDTP(デスクトップパブリッシング)に特化したDTPワープロに移行する。これは、要するに「高機能ワープロの一種」で、メーカーとしては、キャノンとフジが有名だった。

 実はこの当時、既にアップルコンピュータと、アップル用のDTPソフト(クォークエクスプレス)は売り出されていたのだが、アップルコンピュータとソフトを両方買うと百万円以上した。一方、DTPワープロ(要するにDTPに特化したパソコンということだが)の場合、独自開発のDTPソフトが組み込まれていたので、アップルコンピュータ+ソフトに比べて半額に近かったのである。

 それに、当時は、まだインターネットなんてなかった……と思う。あったのは、ニフティなどのパソコン通信(実は、いまだにインターネットとパソコン通信の違いがはっきりわかっていないのだが)程度でしかなく、またDTPワープロのメーカー(キャノン)のセールスマンに、アップルを買っても、DTP以外の機能を使いこなすのは無理ですと言われ、それもそうだろうとしたがったのだった。(このキャノンのセールスエンジニアの忠告は、今、世界中のパソコンオーナーが、自分のパソコンの機能をどれくらい使っているかを考えると一理あるとは思う。しかし、それでもなおかつ、彼の言い分は淘汰されざるを得なかった。たとえば、彼の言うには、DTPソフトの開発は、クォークより自分達のほうが早いということだった。それはそうかもしれないのだが、キャノンには、それをオープンメディアとして開発するような、将来に向け開いた発想がほとんどなかったことが致命的だったのだと思う)

 しかし、この頃の南原企画のDTPワープロの使用方法はかなり変則的で、DTPワープロで作ったデータを家庭用プリンターで普通紙に出力し、それをそのまま版下として印刷屋に渡していたのである。それに、キャノンのDTPワープロで作ったデータを使うことのできる印刷屋は、ないことはないが、少なかった。このことで、DTPに関してはキャノンはアップルに敗北していたことははっきりしていたのだが、それはさておき、家庭用プリンターで作った版下は、品質的には専門機械である電算写植で作った版下より数段劣るのだが、金銭的に「背に腹は代えられない」ということで、アップルコンピュータ+ソフトシステムの価格が下がって、アップルシステムに切り替えてからも、かなり長い間、このやりかたでやってきた。しかし、今では、CTP印刷というパソコンデータを直接印刷する新しいシステムが普及したので、二年ほど前からこれを使うようになって、現在に至る。

 ……というわけなのだが、江田氏の言う、「社保庁のひどく古い電算システム」とは、察するに、我々が、「DTPに特化した単能パソコン」か、あるいはその前の、「ワープロ」を使っていた時代のどちらかみたいなことだったのだろうか。
 だとしたら、その頃、我々は、データを外(印刷屋)に持ち出す(変換する)ために1文書についきいくらいくら……といった感じで金を払っていたのだが……そもそも社保庁の場合、独自にデータを作っちゃったのだろうから、「変換ソフト」なんかあるはずがない。

 う~ん、こりゃたいへんだ。