パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

銛と焼き鏝

2007-06-27 23:00:17 | Weblog
 アメリカ議会の下院外交委員会で、従軍慰安婦に対して、日本政府の公式謝罪を求める議案が可決されたそうで、2chで大騒ぎである。
 しかし、議案が提出される以前にくらべると、意外に、提出されて可決された後のほうがなんとなく腰の座った議論がなされているような印象があった。アメリカと戦争だ!なんて極論は別として、ともかく「現実」が出ちゃったので、それをもとに考えようということなのだろうか。

 しかし、「公式謝罪せよ」ったって、ブッシュ×安部会談における安部の「謝罪」とブッシュの「受け入れ」発言との整合性はどうなってるんだろう。議会は議会、行政は行政ということなのだろうが……しかし、日米同盟がアメリカの世界戦略の大きな柱であることは、議会も当然わかっているはずで、実際、謝罪要求決議も、当初案から修正されて、「もし日本が慰安婦たちに公式に謝罪すれば、日本は、環境問題等においてこれまで世界に貢献して来た実績に鑑み、さらに尊敬されるであろう」といったニュアンスになっている。

 でも、だったらブッシュ×安部会談後の安部の謝罪発言がまさにそういう観点からなされたものであり、そして、それをブッシュが受け入れたという構図のはずなのだが……。

 同決議案は、これから本会議で議決されるかどうかが問題らしいが、日本における世論の動揺がアメリカに伝われば、議決はなされないような気もする。いくら下院の議決に拘束力がないといっても、日本人はナイーブだし、下手したらとんでもないことになるかも、という懸念がブレーキになるかもしれないからだ。

 そのためにも、我々日本人は、映画『チート』における早川雪舟のように、「白人に対してサディスティックな復讐心を抱く残忍な黄色民族」として見られる可能性が常にあるのだということを肝に命じて、そうならないように、慎重に行動する必要があるだろう。

 具体的に言うと、「鯨」だ。伝え聞くところによると、日本人の鯨食習慣は、今や、南部アフリカの処女割礼と並ぶ、世界に残された「2大蛮行」なのだそうである。
 ちなみに、つい2、3ヶ月前、ロンドンのテームズ川に鯨が入り込んで大騒ぎになったようだが、これは世界中に発信された大ニュースだったのだが、日本だけは、ほとんど報じなかった。それで、欧米の特派員は、日本でニュースに《ならなかったこと》をニュースとして発信したのだそうである。

 鯨を撃つ銛は、今や、『チート』の焼き鏝以上に、日本人の残忍さのシンボルとして世界に流通しているのだ。

 私は、早稲田大学の学生会館の並びにあった定食屋の鯨肉定食が大好きだったが、それが食べられるなくなってしまったのも、「世界の潮流」を見誤った日本の役人のせいだと思う。最初から、規制に積極的に協力していれば、今頃は、一定量を確保できたにちがいないと私は思う。

 もちろん、絶対そうにちがいないとまでは言えないが、でも、日本の水産庁の「捕鯨」に対する執着に対して、欧米人が言う、「日本の水産業にとって、捕鯨業はそんなに大切なのか?」という疑問は、全面的に認めざるを得ない。捕鯨を全面中止したって、日本経済に何の影響もない。

 慰安婦問題についても、欧米人の「何故日本人は過去の事実を認めないのか」という言い方は、「捕鯨になんでこだわるのかわかりませ~ん」と似ているように思うが、慰安婦問題については、当初、犬殺しが野良犬を捕まえるように、「強制的」に女をつかまえたというニュアンスで非難しながら、そんなことはなかったと反論されると「広い意味で」と言い換えても自身の意見に執着する、日本の一部学者、マスコミの視野の狭い……ナニ根性といっていいか、すぐには思いつかないが、その根性が気に食わないのだ。