パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

タフマン

2007-03-06 22:42:07 | Weblog
 なんだか、「源氏物語ブログ」になりつつあるが、また、『源氏物語』。

 「夕顔」で、夕顔に生霊となってとりついて殺してしまう六条の御息所が、それまで全然出て来ないと書いたけれど、調べたら、これは私の見落としで、エピソード風に書かれていた。

 御息所の家に忍び込んで一晩明かした翌朝、源氏は御息所のおつきの女性(女房)に促され、眠そうにしながら家を出る時、一人の女房が、まだ奥で寝ている御息所に、「見送って遊ばせ」と言って、帳を持ち上げた。御息所は、ただ頭を持ち上げて、源氏の方を見ただけだった。(御髪もたげて見い出し給へり)

 というのだが、要するに、御息所は、源氏にすっかり体力を搾り取られ、頭を持ち上げるのが精一杯だったというわけ。(と、これは、国語学者、大野晋の解説)

 しかも源氏は、見送りにお供したこの「女房」を、庭に咲く朝顔の花にたとえて、「折らで過ぎうき今朝の朝顔」と、手を取って誘う。タフだ。

 この朝顔の君は、機転のきく女性で、源氏の言う「朝顔」を自分の主人である御息所のことにすりかえて、源氏の誘惑から逃れるのだけれど、それはさておき、御息所が夕顔にとりついて殺してしまうには、こういう伏線がちゃんと敷かれていたわけだ。

 それにしてもタフである、光源氏は。