パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

姉歯裁判について

2006-12-27 22:37:20 | Weblog
 「耐震偽装疑惑」の真相は、結局、姉歯がバブル後の収入減を補うために、違法設計を編み出し、それを工事会社、マンション販売業者が違法を承知で受け入れた、故に姉歯の単独犯行である、ということらしいが、ホントかね~。姉歯が、そんなに弁が立つとも思えないのだが……と思って新聞記事を探したら、朝日新聞の社会面で、法定での裁判官とのやりとりが一部、書かれていて、施工者側からの、「建築費用をを下げたい」というプレッシャーがあったという姉歯の言い分に裁判官は、「業者がコストを下げたいと思うのは当然である」と言ったそうだ。
 なんじゃ、こりゃー!である。「小泉改革」以降の2chの質の低下ははなはだしいものがあるが、この裁判官の発言は昨今の2chに巣食う「改革厨」発言と同レベルではないか。(この判事は、姉歯が、「生活が苦しくて……」と言ったことに対し、「ベンツを乗り回しているではないか」と指摘したらしい。これに姉歯は、「いや、ローンです」と答えたとか。いやはや、これが「法廷」の言葉とは情けなくて涙が出る。この裁判官は本当に2chに書き込みしてる可能性は高いぞ、とか思いたくなる)

 後、いわゆる「姉歯物件」の実際の耐震強度なのだが、姉歯は、法廷で「震度5まで耐えた」と発言したそうだ。どうやら、このような「抗弁」が裁判官の逆鱗に触れたらしい。

 いや、もちろん、震度5まで耐えたからといって、法律に違反していた事は事実なのだから、罪が減じられるという筋の話ではないが、しかし、「姉歯物件」が実際にどのような状況にあるかを、いわば一種の証拠調べとして、裁判官は、被告人、検事、弁護士ともども、実地検分くらいしてもよかったのではないか。
 というのは、今、現実に問題になっているのは、「姉歯物件」の資産価値がゼロになってしまったことだろう。ゼロになったから、建て替えなければならないとなったわけだが、もし、少々の地震ならば、倒壊するということはないということが法廷で明らかになれば、「ゼロ」なんてことにはならないだろう。

 それを、姉歯にしろ、小嶋社長にしろ、みんなよってたかってのバッシングに血道をあげて……いや、バッシングするのはいいけれど(というのは、違法を承知で商売していたのだから)、一方で、今、自分達が住んでいるマンションの資産価値がゼロにならないようにするにはどうしたらよいか、ということも、冷静になって考えなければならないだろう。しかし、実際には、そのような配慮はまったくなく、ひたすら感情的に叩くだけ叩いて、挙げ句のはてに、価値ゼロにもっていってしまった。

 私は問いたい。「姉歯物件」の価値がゼロになって、誰が得をしたのか? 
 マンションの住民たちは、姉歯や小嶋社長やを叩けば(あるいは、「国の管理責任」をつつくとか)、どこからか(まさか、姉歯と小嶋社長が金を出してくれるとは思っていないだろうが)建て替え費用が出るとでも思っていたのか? 

 モーニングショーに、コメンテーターとして出ていた弁護士は、「幸いにも、大きな地震がなかったからいいが、もし、あったら大量の死者が出かねなかった」とか言っていたが、「姉歯物件」が地震に直面したか否か、ちゃんと調べたのか? 姉歯は、「震度5(これは相当大きい)でも大丈夫だった」と言っている。前にも書いたが、工業規格(建築基準法もその一種)というものは、実際に必要な強度より数倍大きく値をとっているから、「震度5でも大丈夫」だった可能性はある。姉歯の発言が嘘だったとは思えない

 この事件については、「実害は出ていないが、日本中、大騒ぎ」とどこかの外信で皮肉られていたが、この弁護士は、「実害が出てからでは遅いのだ」とか言うのだろう。だったら、実際にちゃんと調べろ。いや、確かに調べてはいる。しかし、それは、建築基準法に違反しているかどうか、具体的には鉄筋の数が何本かとか、そういう形式的な調査ではなく、実際にどの程度脆いのかを調べたのかということだ。少なくとも、私はそれをやったということは知らない。(模型を作って、それを揺さぶって壊していたが……)

 ちょっとまともなことを言っていたのは、みのもんただった。みのは、銀行が住民のローンをちゃらにすることくらいできないのかと言っていた。これは正論だろう。みのは、決して好きではないが、マンション住民の恨み節(正直言って、「安物買いの銭失い」の典型だと思うけどねえ……)を煽るだけ煽って、何の提案も示さない他の連中に比べて、はるかにマシだ。

 えー、月光は、早い人は明日あたりに届くと思います。よろしく。