パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

靴の価値

2006-12-10 19:18:13 | Weblog
 久し振りに、のんびりとフリーマーケットに行った。一応、目的は、引越しの最中になくなってしまったコート(あんなにかさばるものが、なんでなくなっちゃうのか?)と、靴。靴は、フリーマーケット以外で買ったことは、ここ10年近く、ない。何故なら、靴ばかりは国産はダメで、絶対にヨーロッパに限るのと思い込んでいるのだが、舶来(死語)の靴をちゃんとしたお店で買ったらやっぱり高いだろうと思い、もっぱら、フリマでこつこつと探しているのだ。

 そのうち、若い男性二人のスペースで見つけた靴を履いてみたら、サイズ等、ぴたりだったので、値段を聞くと、500円というので、早速買おうと思い、どこの製品か聞いたら「さぁ……」という。ちょっと怪しいと思ったが、安いし、ダメならダメでしょうがないと思い、買った。買って帰ろうと思ったその時、オリーブ色のミリタリー風のコートが目に入ったので、やや長めだが、自転車に乗っても裾が巻き込まれる程長いわけではなく、ちょうどいいと思って、値段を聞くと1000円だというので、これも購入した。

 その後、会場を歩いているうちに、買った靴の具合が気になったので、実際に履いて歩いてみた。ん? なんかおかしい。しっくりこない。試しに履いた時にはぴったりだったのに……やっぱり、国産だったかも。

 日本人の足の特色を理解しているのは日本のメーカーだから、日本人が履く靴は日本製がいいというようなことをよく聞くのだが、そんなことはない。たしかに、理屈を言うと、それが正しいような気になるのだが、実際には、「日本人の足の形」など一切調べずに作っているヨーロッパ(ロシアも含む)靴のほうが、少なくとも私の経験としては、圧倒的に良い。どうしたって、ヨーロッパは靴を履いて生まれてきたような文化だから、気合いの入れ方が違うのだと思う。

 というわけで、「失敗した!」と思ったが、500円だからしょうがないとも自らを慰めつつ、このままでは恐らくすぐに捨ててしまうことになるだろうから、捨てるくらいだったら、別の何かと買い替えればいいだろうと思い、若者のお店にもどって理由を話し、何か適当なものはないかと探したが、なかなか見つからず、そうこうしているうちに、若者が、500円返しますと言ってきた。いやーすまんのう、渡りに船だ。ちゃんとコート1000円買ってるからいいよね、と自分に言い聞かせて、500円を受け取った。一方、若者は件の靴について、もって帰るの面倒だからあげますよ、と言う。もらっても、多分捨てるだけだと思うと言うと、自分達も同じだという。靴、大暴落(笑)。

 「ものづくり大国」を自称するなら、靴だってちゃんと作れよと言いたいが、日本では家から出る時に靴を履き、戻ったら靴を脱ぐ生活であるのに対し、欧米では、ベッドから下りたらすぐに靴を履き、またベッドに戻るまで靴を脱がない文化だから、「気合いの入り方」がちがうのはやむを得ないのかも。
 

入稿二日目、順調に飛行中……か?

2006-12-10 02:23:38 | Weblog
 月光発行まで、後、踏まねばならない手順は、火曜日に校正が出るので、それを無事返せるかどうかだ。返してしまえば、もう、後は印刷のみなのだが、入れた日の晩、表紙と、本文のデザインチェックをやってもらったMさんから電話があり、頁の順番の入れ替えは間に合うだろうかと言う。じょ、ジョーダンじゃない。そりゃあ、やろうと思えばできる。また徹夜して、新しく台割を検討し、可能とわかったら作り直し、それをCDに焼いて、いったんこれで御願いしますと言った印刷屋の営業をまた呼びつけ、「こ、こ、これとさしかえてください」と言えばいいだけだ。だけっ!!!! ねっ!!! 
 しかし、頭ごなしに「ダメ」と言うとなんなんで、「無理ですよ~」と答えたが……。このMさんの「壁」が、あるのだ。
 ところで、なんで、ページを入れ替えたいかというと、色紙を入れたいので、台割を調整できないかというのだ。
 そ、そんな、今さら……というと、「南原さんは最初からその気がないから」とか言うので、大体、そのことは、事前にいろいろ検討したのだが、最初からそのようなことは予想して作っていないので(たとえば、旧月光の「不気味サウンド研究会」みたいな企画頁を作ること)、色紙を挟んでも意味がないから、また次にということになったではないかというと、「形」をつくることが大事で、それで人を集めるのだとかなんとか。
 そりゃあ、私も、雑誌内雑誌は好きだし、やりたいのだが、ああいうのは、意図的に作ってもだめで、やりたい人が勝手に、「ページちょうだい」ということでできあがるのがいいのだ。
 といっても、「なんでもいい」わけではない。そこらへんが難しい。
 そう言えば、2年程前、ある劇団のスタッフからページをほしいような話があり、渡りに船と思ったものの、話しているうちに、「世界」が私とまったく違うことがわかって、お流れになったことがあった。これでは、いくら色紙か何かで「別の世界」を作ってもカバーしきれないと。

 ぶっちゃけた話、Mさんとは、表紙を任せたくらいだから、「世界」がまったくちがうとは思わないのだが、ただ、よくあることなのだが、自分が「わかった!」と思ったところで化石と化してしまった人なので、もし、仮にページをそっくり渡しても、やることが全部わかっちゃう(笑)。もっとも、それはそれで、「なんでもいいから、かっこがついていればそれでいい」というようなこともあるのだが……まあいいや、Mさんのことはこれで。

 映画の話題1、評論家の花田清輝の全集を読んでいて、『ローマの休日』のへップバーンのことを、(けなしてそう書いているわけではないが)おとぼけが持ち味ののカマトト女優と評しているところに眼が止まった。なるほどそうかもしれない、と思いながら、仲間由紀恵が頭に浮んだ。彼女も、カマトトで、なおかつ、おとぼけが得意なのじゃないか。もっとも、CMでしか見たことがないが。(口絵の花田の写真を見ると、結構いい男だ。)
 映画の話題2、森田芳光監督が、「椿三十郎」のリメイクを作っているとか。なんで、「用心棒」じゃないのだろう。もちろん、「用心棒」は何度も何度も外国でリメイクされているが、常に面白い、すぐれたシナリオだ。「椿三十郎」も、それなりに面白いが、その面白さの元は「用心棒」にある。乙にすました武家屋敷に迷い込んだ無骨な「本物」の侍、桑畑三十郎(椿三十郎)が、今やサラリーマン以外でないような腑抜けた、しかし、それなりに真面目で一生懸命なリクルート若侍たちを歯がゆく思いながら行動を共にする、その「対照」が面白い作品だ。最後の決闘シーンが話題になるが、全体的に見れば、無骨な反時代的な男の戸惑いがテーマのコメディなのだ。つまり、「用心棒」をひっくり返したのが、「椿三十郎」なのだから、それをリメイクするなんて、ありえないことをやっているというか、最初からものすごいマイナスを背負っていると思うのだが。