パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

借金時計……まだやってるのか

2006-12-14 18:59:34 | Weblog


 上の写真は、24号の表紙です。カラーです。「映画の研究」の書き手が「潮田文」とありますが、私の本名です。ウシオダブンと読みます。最近、バドミントンで有名な潮田玲子さんは、私の従姉妹です、というのはうそです。潮田玲子さんは、「シオタレイコ」とよむそうで、御先祖も別でしょう。

 ところで、昨日、はじめて日本テレビの深夜ニュース、「ゼロなんとか」を見たら、「日本の借金時計」とやらを前に、キャスターが危機感を煽っていた。その額、800兆円。猪瀬の『日本国の研究』には、日本の借金は400兆円で、これ以上増えたら確実に日本は破綻すると書いてあった。当時、活字メディアも、テレビメディアも、そして役人も、こぞって、そう言い募っていたが、今やその倍! で、破綻したか? していない。別にどこかでインチキをやっているわけでもないのなら、「400兆円が限界」というのは、まちがっていたわけだ。

 以前から、何度も、「国の借金」と「個人の借金」はまるで性質が異なると言ってきたのだが……。あまり、というか、全然詳しくはないのだけれど、「国の借金」は、個人の住宅ローンのように、どこか(たとえば、銀行)から借りているわけではない。、むしろ、逆。というのは、たとえば、一億円分の国債を発行するということは、その一億円分に相当する価値を国が「創造」し、それを国が保証する。つまり、一種の「信用の創造」を国が行っているのだ……ということは、今、ひらめいたことなんで、あまり信用できない話だが、でも、国債の本質の説明として、当たらずとも遠からじだと思う。

 ともかく、「国債の発行」とは、一種の「信用の創造」であることは間違いないので、したがって、「実感」で語ることはできない。「借金時計」のような「実感」させることが目的の比喩など、とんでもないことなのだが、どうも日本人は「実感」から離れられない。

 それで、そのことに対する警鐘の意味で、これまでケインズとか、相対性理論とか量子力学なんかをやってきたのだ。ケインズも相対性理論も量子力学も「実感」ではまったく歯の立たない理論だが、しかし、素人にはわからないという話ではない。特にアインシュタインの特殊相対性理論なんかは、小学生5、6年生なら簡単に理解できるものなので、ついこの間も、小学生の理科離れを防ぐためにとかいって、「新しく面白く工夫された梃子の実験」なんかをテレビでやっていたが、あんなのよりも特殊相対性理論を教えた方がいい。きっと喜ぶと思う。(ブルーバックスなんかには、「中学生なら簡単に理解できる」と書いてあるが、実際のところ、小学生でも高学年なら理解できる。ただし、一般相対性理論は無理だけど……私にもわからん……当たり前)

 一年程前だが、自民党に復党した堀内なんとか(光雄だったかな)という「経済通」で知られる政治家が、「経済政策とは、ベッドのサイズに合わせて足を切るようなことではいけない」とか言っていたが、ケインズに言わせると、経済政策とはまさに、ベッドのサイズに合わせて足を切ったり伸ばしたりすることなんだが……。実際、ケインズはそういう比喩(ギリシャ神話に出てくる盗賊の話だと思うが)を出して説明しているのだが、堀内某は、「実感」にとらわれて、それを読み誤ったのだろう。

 この堀内某を復党させたこと自体はどってことないのだが、それを決めた安部首相が、人気低下を受けて、大衆にわかりやすいように、さらに「実感」に縛られた政策を展開しそうなのが、気になるのだ。