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Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

ドローイング999.小説:小樽の翠903.ベーヤンの和恵さんが妊娠した

2025年06月02日 | drawing

 夕方も早い時間に、札幌のベーヤンから少しだけ飲もうよとメールがあった。きっとCFの撮影も早く終わったのだろう。そういえば小樽も随分と陽が長くなった。
・・・
 オーセントホテルのラウンジにゆくと、べーヤンが一人ポツネンとジンを飲んでいる。今日はいつもの元気な雰囲気ではなく、しんみりとしているではないか。
ベーヤン「俺も広告業界の人間だから、これまで女やその妖艶なセクシーを利用して映像もつくってきたさ。それ自体モデル業界でセクシーの度合いのアイデア比べや競争だったさ。俺たちは、それに一喜一憂して制作に励んできたさ。そしてLove of Lifeの表現もした。そんな考え方が、今じゃ社会や文化の1つとなりジェンダーなんて大きな概念までたどりついた」。
「札幌の歩く下半身にしては今日は、ばかにしんみりした話だね」。
ベーヤン「うん、和恵に子供ができたんだ。もう3ヶ月だって」。
「和恵さんって、2回目の奥さんだったな」。
べーヤン「そう、あいつはまだ20代なんだ。おれはもう50歳だよ」。
「歳の差は関係ないだろ。おめでとうじゃないですか!」。
そういってグラスをかかげ祝杯のサインだ。ペーヤンもグラスをかかげて、しずかにカチンと音がした。
「おめでたいのに、ばかにしんみりしているじゃん。前妻の間に何人いたの?」。
ベーヤン「二人」。
「つまり3人目か・・・、いや違う。ベーヤンのお手ツケの未婚の母もいるから4人目じゃん。日本の人口増加に大いに貢献したわけだ。立派ジャン」。
ベーヤン「未婚の母は、子連れで札幌でブログラマーをしているらしい。風の頼りだけどね。俺、ふと気がついたんだ。これまでLove of sexで、人生はsexを楽しめ、セクシーな女の美ボディをなで回せ、そしてそれがファッションとなり、化粧品からはじまってライフスタイルにまでひろがり、そんななかで広告を作ってきたさ」。
「まあ、社会はそうなっている。それが悲しいの?」。
ベーヤン「そんなSEX概念や文化や生活の広がりも、1つの帰結に向かうということに最近気がついたんだ。それが妊娠さ」。
「妊娠という言葉には、CONCEPTという意味もあるよ。世界の始まりなんだろう。そんなこととは関係なく女達はセクシーをくさるほど振りまき、SNSをもりあげ、それは何ためかというと男を引き寄せ、良き遺伝子を残そうとする女達の生殖行動に最後は結びつく。つまりSNSや社会はそんな構造だったわけだ」。
ベーヤン「そう、そのために俺たちは膨大な遠回りをして、大きな労力をそそいで、はしゃいできたわけだ。目的は妊娠というただ一つの行為に向けて・・・。だからなんか力や緊張感が抜けたさ・・・」。
「神は、女に魅力的な容姿を与えた。それは遠回りに走り回り、最後に妊娠にたどりつくための便法だったというわけだ」。
ベーヤン「だから俺も、これからは子育てに専念しようとおもう。前の妻との間には子供もいたけど俺は仕事ばかりしていたから、まったく子供達から父親だなんて認知されていなかった。これからはすこし仕事をセーブしてさ・・・」。
「和恵さん、喜ぶんじゃない?」。
ベーヤン「多分ね。あいつには言わないけど、出産の頃は仕事も休むつもりだ。誕生の時ぐらいマイビデオで撮影して、家族の記録づくりを始めるかな。いままでそんなことすら気がつかなかった」。
「普通のファミリーというわけだ」。
ベーヤン「まあね。これまでしてこなかった家庭の仕事をしようというわけさ」。
そういってベーヤンは懐胎の準備だといって、早々に小樽に戻っていた。
少し後姿が変わったな。
・・・
もう春から一気に初夏の空気が漂う小樽の街だ。
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