



プロダクトを選ぼうとするとき、その人の考え方が表出する。財布の中をみて、今あるお金で買うか、それとももう少し待ってお金をためて巷の評判が高い高品位なプロダクトにするか。それが車であれ、撮影機材であれ、同じ事がいえそうだ。
かって私は、ようやくニコンFを手にするまで何年も待たなければならなかった。それまでもらいもののカメラを我慢して使っていた。しかしニコンFを手にした結果、よい写真が撮れたことは一度もなかった。満たされたのは所有欲だけだった。
それを思うと、私は今あるお金で買った方がプロダクトの賢い選択方法と考えている。そう考えたのはPENTAX MEを手にした時だった。当時のPENTAXは、財布中のお金で買える機材だった。しかも随分あとに私が手にした機材は、会社のロッカー整理でゴミ箱に捨てられていた。確かに全然動かない。その動かないボロボロの機材を拾い出し、自腹でサービスステーションで修理をして蘇った機材だ。修理費は15,000円であり、もっと機材を使ってくださいと注意書きに書かれていた。
そしてこの機材は使う人間と大変相性がよく、私がイメージする画像を沢山撮影してくれた。そのまま使用していれば私は写真の名手になったかもしれない。
フィルムからデジタルに変わる頃、この機材を中古カメラ屋に引き取ってもらった。多分安い価格だったと記憶しているが陳列ケースに置かれていた。きっと誰かが買っていった。人生を幸せにしてくれるカメラだよ。
だからプロダクトを選ぶときは、憧れや巷の評価は無視し、肩の力を抜いて財布の中のお金で買うのがよい方法である事を悟った。そのPENTAXはいまリコーの傘下にあり撤退の噂が聞こえる。今はカメラが売れない時代になった。良心的に優れたPENTAXプロダクトだが惜しいけど、今は私も静止画はとらないから時代の趨勢で惜しまれながら消えてゆくプロダクトデザインであろう。
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