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フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

エッセイ735. 研究ノート1:市川崑に学ぶ撮影編集方法-研究方法について

2024年06月26日 | field work

 私が映像制作をはじめようとした頃、撮影編集の勉強素材がある。その一つが映画からの勉強だ。映像と映画とは違うので勉強効果は薄いが好奇心が先立った。
 そこで著作権の期間をすぎたと思われ、相当に古いのだが東大出の映画監督市川崑が制作したドキュメンタリー映画「京」だ。高校生の頃、東京朝日ホールで上映され見た記憶がある。当時オリベッティ社(現テレコム・イタリアの傘下)の世界文化デザイン事業の一つとして制作された。
 古い素材だが、京都のドキュメンタリー映画である以上、映像美と編集のエキスが凝縮されているはずだとする理由で勉強のテキスト(約37分)とした。被写体は、冬の京都・竜安寺の石庭、西芳寺の苔庭、桂離宮、そして祇園祭の4箇所。
 トップ画像は、この映画DVD版から冒頭部分(7分42秒)の編集を解読したものだ。横線に尺、尺上に各クリップ毎の秒数を計測した。映像のクリップ化はトランジッションの中間でおこなった。これを記述したものを作品スコアと呼んでおく。
 竜安寺・座禅のコマをみると、揺れる抽象的な光なんだろうと思わせる画像が4秒、続いて座禅であることがわかり、僧侶が合掌を願いでて5.5秒、叩かれる背中のアップが2秒でトランジションが入るのは余韻か、そして座禅の中景に戻り18秒、僧侶の座禅のアップが3秒、道内の座禅の遠景が16秒、道内の座禅の横アングルから20秒と時間をかけて座禅の静かな空気を伝えている。そして画像が線香に変わり4秒、線香が燃え尽くす頃5秒で座禅の終わりを暗示させている。こうして短いカットと、座禅が延々と続く長いカットを組み合わせて緊張感を表しつつ、音楽とナレーションがはいる。そんな風に映像を読み解くと少し興味深い。
 特にこの映画のスタッフをみると脚本:谷川俊太郎、監修:丹下健三、亀倉雄策、石川忠、プロデューサー:栄田清一郎、音楽:武満徹、撮影:黒谷尚之、ナレーション:芥川比呂志・・・、と60年代日本のそうそうたるスタップだ。1964年東京オリンピック記録映画制作時の人脈があったのだろう。
 京都に憧れることもなく、溺れることもなく、淡々と日本文化の歴史の流れという縦軸と、歴史が現代とぶつかり合う横軸とによるマトリックス上に日本文化を表現している。それはこのドキュメンタリー映画の立ち位置だと思われる。
 そうした市川の感性の端を少し感じながら、そしてすべて忘れることにして私は映像の撮影をしている。

「KYOTO日本の心-A documentary flim by Kon Ichikawa,Olivetti arte(www.martygrossfilms.com版)1968.
冒頭の1コマ。冬の竜安寺石庭
座禅風景の一コマ、警策を受ける瞬間
 DVDが3,000円と安かったのでAmazonで入手。だが私がこの映画をみた記憶色ではブルーの冷たい綺麗なトーンがあった。DVDではそれがすべて排除されていて失望した。DVDはMacに取り込める場合と不可の場合がある。このDVDは後者だ。ならばモニターに写しだしてカムコーダで撮影し、iMoveでコマ毎にクリップに切り分けて秒数を計測した。こうでもしないと秒数のカウントなんか面倒ですよ!。


図版出典:「KYOTO日本の心-A documentary flim by Kon Ichikawa,Olivetti arte(www.martygrossfilms.com版)1968.
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