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糖尿病性腎症 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏弁証論治3.(腎病漢方治療301報)

2014-03-21 00:15:00 | 漢方市民講座

本日も糖尿病性腎症の参耆地黄湯加減治療をご紹介します。

( )内に随時私のコメントや印象を入れます。

それでは医案に進みましょう。

患者楊某 66歳 男性

初診年月日:2003年4月7日

病歴:

糖尿病病歴6年余、経口糖尿病薬服用、空腹時血糖8.0mmol/L(144m/dL)。ここ2ヶ月、尿蛋白+~2+、Cre140μmol/L1.58m/dL)、BUN8.0mmol/L48m/dL)、ハルピン市第四病院で「糖尿病性腎症、慢性腎不全」と診断され、病院側はインスリン治療を提案したが患者は拒絶、??奈那普片Irbesartan Dispersible TabletsARB製剤 降圧剤)10mg 毎日一回 服用。治療を求め氏を受診。

初診時所見:

全身乏力口干、心悸気短、舌紅紫、苔白、脈虚数。

中医弁証:

病位の主要は脾腎にあり、気陰両虚を本とし、瘀血濁毒内停を標とする;本虚標実、病情複雑。気陰両虚で全身乏力口干、心悸気短、瘀血濁毒内停で舌紅紫、苔白。

西医診断:糖尿病性腎症、慢性腎不全

治則治法:益気補腎、活血泄濁、標本兼治

方薬:参耆地黄湯加減

熟地黄25g 山茱萸15g 山薬15g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15g 黄耆30g 党参20g 枸杞子20g 莵絲子20g 女貞子20g 玉竹20g 桃仁20g 丹参20g 赤芍15g 紅花15g 葛根15g 大黄5g

水煎服用、毎日2回に分服

(参耆六味地黄湯として、熟地黄25g 山茱萸15g 山薬15g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15g 黄耆30g 党参20gの益気補腎陰、枸杞子20g 女貞子20g 玉竹20gで補陰、莵絲子20gは補陽、


糖尿病性腎症 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏弁証論治2.(腎病漢方治療300報)

2014-03-20 00:15:00 | 漢方市民講座

本日は糖尿病性腎症の参耆地黄湯加減治療の2案目です。

( )内に随時私のコメントや印象を入れます。

それでは医案に進みましょう。

患者万某 75歳 男性

初診年月日:200574

病歴:

糖尿病歴10年。1年前双下肢に浮腫出現、北京武警病院にて検査、尿蛋白3+、糖尿病性腎症と診断され、対症治療を受けた。20054月、全身浮腫と乏力にて氏の病院で治療を受け病情は好転した。ここ1週間、双下肢浮腫、乏力にて再度氏の病院を受診した。

初診時所見:

双下肢浮腫と冷え、乏力、面色萎黄、舌質紅、苔薄白、脈沈。BUN13.45mmol/L80.7mg/dL)、Cre171.2μmol/L1.93mg/dL)、ヘモグロビン9.8/dL

中医弁証:腎虚水湿内停之水腫

西医診断:糖尿病性腎症、慢性腎不全

この患者は多年病を患い、腎虚に至り、腎失開合、気化失司、水湿内停、故に浮腫を見る;腎虚元気不足の故に乏力を見る;“久病入絡”となり、水湿内停と血瘀がある;舌質紅、苔白、脈沈は全て腎虚、水湿と血瘀のなすところである。

治法:益気補腎滋陰 活血化瘀

方薬:参耆地黄湯加味

熟地黄25g 山茱萸20g 山薬25g 茯苓20g 牡丹皮15g 澤瀉20g 黄耆50g 太子参20g 丹参20g 赤芍15g 川芎20g 当帰(活血養血)20g 牛膝(活血兼補肝腎強筋骨、引血下降の作用は降圧に作用)15g 石斛(甘、微寒 帰経胃、腎、功能 養胃生津)20g 鶏血藤(苦/温 活血養血 舒筋活絡)30g 桂枝(通陽)15

水煎服用、毎日2回に分服

(前案と同じ参耆六味地黄湯加味方ですが、桂枝で通陽し、温薬の川芎、当帰、鶏血藤で活血化瘀するところが前案とやや趣きを異にしています。冷えが感じられたためです。丹参、赤芍は前案と同じですね。石斛は胃陰不足に効果があります。全体として、益気養陰、活血化瘀、通陽の配伍です。)

二診:

7剤服用後、まだ乏力、双下肢浮腫、冷えが残存、舌質淡、苔白潤、脈沈。病情緩解不明瞭、浮腫はまだ重い。陽虚水気不行を考慮して、水湿の邪を袪除するを主として、温陽活血利水を法として治療する。

方薬

鶏血藤30g 当帰20g 桂枝15g 附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 赤芍15g 石斛20g 王不留行(活血化瘀)20g 薏苡仁(利水滲湿)30g 防己(祛風湿、止痛、利水)10g 土茯苓30g 五加皮辛、苦/温 祛風湿、強筋骨 利水)15g 


糖尿病性腎症 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏弁証論治1.(腎病漢方治療299報)

2014-03-19 00:15:00 | 漢方市民講座

参耆地黄湯加減治療については、慢性腎炎では285報~289報、慢性腎不全では212報~217報で紹介しました。今回から4回にかけて糖尿病性腎症の参耆地黄湯加減治療について紹介します。

( )内に随時私のコメントや印象を入れます。

それでは医案に進みましょう。

患者孫某 62歳 男性

初診年月日:2005822

主訴:多飲多尿12年、乏力腰酸、反復性浮腫発作3年。

病歴:

12年前に2型糖尿病と診断され、3年前、明らかな誘因無く乏力、腰酸、浮腫が出現、ハルピン医科大学付属第二病院で検査を受けた。尿蛋白+、糖尿病性腎症と診断され、黄葵カプセル等の治療を受けたが、病情は好転無し。200589日、検査:尿蛋白3+、Cre116.4μmol/L1.32mg/dL)、糖尿病性腎症、慢性腎不全と診断され、さらに治療を求め氏を受診。

(付記、黄葵カプセルは中成薬で慢性腎炎治療薬であり、蛋白尿に効果があるとされ、1日15カプセルを5カプセルずつ日に3回服用し、8週間で1クールとしています。効果は清熱解毒利湿消腫です。)

初診時所見:

乏力、腰酸痛。Cre115.8μmol/L1.30mg/dL)、BUN6.53mmol/L39.18mg/dL)、総コレステロール6.43mmol/L248.84mg/dL)、トリグリセリド2.45mmol/L208.25mg/dL)、空腹時血糖8.0mmol/L144mg/dL)、食後血糖17.1mmol/L307.8mg/dL)、内因性クレアチニンクリアランス77.4ml/min、尿蛋白3+、尿潜血+、尿RBC810/HP。超音波検査:双腎実質やや改変あり。胸部レントゲン検査:高血圧性心臓病。頭部CT検査:ラクナ梗塞性変化及び脳軟化(多発性脳梗塞)。眼科検査:糖尿病性網膜症Ⅳ期。舌質淡紅、苔白、脈沈細。

(血圧の記載が無いのが奇妙ですが、高血圧症、動脈硬化症が進んだ状態です。糖尿病性腎症の程度は中程度以下です。糸球体濾過値が正常域ですので腎不全までには至っていません。)

中医弁証:虚労(腎陰虚、湿濁瘀血内蘊)

治法:益気滋補腎陰、利湿活血

方薬:参耆地黄湯加活血利水之剤

熟地黄25g 山茱萸20g 山薬25g 茯苓20g 牡丹皮15g 澤瀉20g 黄耆50g 太子参30g 車前子30g 牛膝20g 益母草30g 丹参20g 水蛭10g 白茅根30g 桃仁15g 赤芍15g 川芎20

水煎服用、毎日2回に分服

(参耆六味地黄湯加味方です。最初の6薬は六味地黄丸で補腎陰、黄耆 太子参で益気生津、車前子は清熱利水、益母草は活血利水消腫、牛膝は活血兼補肝腎強筋骨、引血下降の作用は降圧に作用、丹参、水蛭、桃仁、赤芍、川芎は活血化瘀群で白茅根は凉血止血、清熱利尿と利尿と清熱、涼血止血作用を併せ持つ生薬です。活血通腑泄濁の大黄が配伍されるほどの高窒素血症はありません。)

二診:上薬服用後、腰酸症状減軽;尿蛋白2+、尿潜血+、尿RBC3~5個/HP

上方の黄耆、太子参を減量し(医案には減量の理由を其の熱が傷陰するのを恐れ、とありますが、太子参は性平~涼で生津にも作用するので傷陰は大袈裟というより間違いでしょう。黄耆の補気昇陽作用が温燥であるイメージも私は持っていませんが、当初の50gの大量は減量してもいいと思います。)、滋補腎陰の品の枸杞子20g 菟絲子20g 女貞子20g 何首烏15g 玄参20g 天門冬20gを加えた。(菟絲子は補陽です。)

随訪:上方服用半月余で、尿蛋白+~2+、血糖のコントロールは正常範囲、腎機能は穏定。

ドクター康仁の印象

随分と短編な医案でした。今後の小動脈硬化症の進展の予防、特に脳梗塞の予防や冠状動脈硬化症の管理、食事療法、運動負荷の軽減など、課題は山積みなのが実際なのです。血圧や心臓のサイズ、心電図所見などが記載されていませんが、降圧が過ぎると新たな脳梗塞が生じやすいのも事実ですし、一旦、脳出血などが起これば、水蛭(すいてつ)などの抗凝固剤を継続使用していると、出血が止まりにくいという側面もあるのです。病情穏定は将来も穏定であるという保証にはなりません。

2014年 3月1日(


糖尿病性腎症 補腎活血法 張琪氏弁証論治5.(腎病漢方治療298報)

2014-03-18 00:15:00 | 漢方市民講座

本日の講座で、糖尿病性腎症の補腎活血法弁証論治の最終とします。本日も、飽きずに、ご覧になって下さる読者に敬意を表します。( )内に随時、コメントを入れます。医案に進みましょう。

患者:高某 71歳 男性

初診年月日:2006515

主訴:腰酸、乏力、反復浮腫三余年

病歴:

18年前に糖尿病に罹患、嘗て経口糖尿病薬とインスリン治療を1年間受けたことがある。20013月に尿蛋白出現3+、腎機能正常、氏の病院で糖尿病性腎症と診断、中薬治療を受けてきた。20033月、双下肢に浮腫出現、入院となった。Cre214.3μmol/L2.42m/dL)、中西薬結合治療で病情好転、退院後はずっと中薬治療を受けてきた。200311月、双下肢の浮腫が再発、Cre169.3μmol/L、治療後にCre118.0μmol/L、浮腫は消失し退院した。退院後に治療を堅持しなかった。近日Cre200μmol/L2.26m/dL)、2日前、突然、痙攣が出現し入院となった。

初診時所見:

乏力、腰酸、双下肢浮腫、少腹痛、頻尿、尿少。舌質紅、苔薄白、脈沈弱。血圧140/100mmHg、空腹時血糖8.53mmol/L153.54m/dL)、BUN12.82mmol/L76.92m/dL)、Cre218μmol/L2.46m/dL)。

中医弁証:虚労、脾腎両虚、湿熱濁毒内蘊

西医診断:糖尿病性腎症、慢性腎不全(失代償期)、尿路感染

治法:清熱利湿、 益気補腎活血

方薬:滋腎通関丸 合 参耆地黄湯 加減

知母15g 黄柏15g 肉桂10g 車前草(清熱解毒)30g 瞿麦20g 萹蓄20g 石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)15g 大黄10g 熟地黄20g 山茱萸20g 茯苓30g 牡丹皮20g 澤瀉20g 車前子(清熱利水)20g 巴戟天15g 肉蓯蓉15g 枸杞子20g 桃仁15g 赤芍15g 紅花15g 丹参15g 紅参15g 黄耆30g 益母草30g

水煎服用、毎日2回に分服

その他の治療として、降圧剤の非洛地平(Ca拮抗剤felodipine


糖尿病性腎症 補腎活血法 張琪氏弁証論治4.(腎病漢方治療297報)

2014-03-17 00:15:00 | 漢方市民講座

本日の漢方市民講座でも、張琪氏の糖尿病性腎症の弁証論治をご紹介します。飽きないで、漢方治療の実際をご覧になって下さい。( )内に随時、コメントを入れます。医案に進みましょう。

患者王某、61歳 男性

初診年月日:2005529

主訴糖尿病歴20余年、腰酸乏力一年。

病歴

糖尿病歴20余年、2年前尿蛋白が出現2+、腰酸乏力一年、系統的な治療を受けていない。近日中薬湯一ヶ月、腰酸乏力加重を自覚、Cre402μmol/L4.54mg/dL)、さらなる治療を求め氏を受診。

初診時所見:

近日体が痩せてきた。眼瞼浮腫あり、身熱を自覚する、舌辺紫、脈象沈。

中医弁証:虚労、脾腎両虚、濁毒内蘊

西医診断:糖尿病性腎症、慢性腎不全(失代償期)

治法:補腎健脾、活血化濁

方薬

熟地黄20g 枸杞子20g 何首烏20g 巴戟天補腎助陽、袪風除湿)20g 胡芦巴温腎助陽、逐寒湿)25g 太子参(生津益気)25g 茯苓20g 白朮20g 大黄10g 草果仁15g 紫蘇20g 砂仁(化湿行気和中)70g 黄芩15g 黄連15g澤瀉20g 土茯苓50g 薏苡仁25g 益母草30g 葛根20g

水煎服用、毎日2回に分服

草果仁は氏が愛用する脾胃の寒湿を除く辛温壮烈な性質を持つ生薬です。湿濁を化熱させる可能性も有りますが、苦寒大黄にて泄熱し、化熱を防止する組み合わせとも考えられます。それにしても砂仁70gにはビックリしました。何かの間違いでしょう。)

二診2005629

患者嗜眠4h/d(日中眠る)、入睡困難、腹部多汗、手足麻(手足がしびれる)、下肢攣急(下肢のこむら返りがある)、胃痛、時に軽度の悪心あり、食欲尚可、大便3/日、量少、質軟。舌紫、脈滑。尿蛋白3+、尿潜血+、尿RBC2~4個/HP。総コレステロール8.10mmol/L313.47m/dL)、トリグリセリド1.73mmol/L147.05m/dL)、BUN20.86mmol/L125.16m/dL)、Cre372.8μmol/L4.21m/dL)。治療は清熱降逆止嘔、活血降濁、補腎を補佐として、半夏瀉心湯加味を行う。