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急性腎不全 肝腎総合症 張琪氏漢方医案6 中満分消丸(ちゅうまんぶんしょうがん)加減弁治2(腎病漢方

2014-04-17 00:15:00 | 急性腎不全の漢方治療

患者:孔某 26歳 男性

初診年月日1991114

病歴

“急性糸球体腎炎”及び“乙型(B型)肝炎”の病歴多年。半月前、全身の高度浮腫、尿少が突然出現。ハルピン市某病院に入院、“肝腎総合症、急性腎不全”と診断される。病情は重篤で、三回の血液透析治療を受けたが、病情の好転無し。

「いわゆる肝腎症候群ですが、浮腫や乏尿が突然出現したところに本案の特徴があります。」

 

初診時所見

張琪氏の出張会診時、患者は極度に衰弱し、全身の高度な浮腫、腹部張満が著明、尿量100200ml/24hr、大便閉、悪心不食、気短乏力、口臭あり、舌苔黄膩、脈沈数。尿蛋白3+、顆粒円柱01/HP、RBC1~2個/HP、BUN18mmol/L108m/dL)、Cre456μmol/L5.15m/dL)、GPT140/L。超音波検査:肝脾みな腫大、大量の腹水あり。

コメント:肝硬変に進行していることは否定されました。」

 

中医弁証:三焦に湿熱が阻滞(中焦湿熱を主とする。気機不暢、水液不行)

西医診断:肝腎総合症、急性腎不全

治法清利湿熱法

方薬中満分消丸加味を主治とする:

黄芩15g 黄連10g 川厚朴15g 枳実15g 半夏15g 陳皮15g 澤瀉15g 茯苓15g 知母15g 姜黄(破血行気 通経止痛)5g 白朮20g 党参20g 白芍20g 檳榔片30g 猪苓15g 黒丑30g 白丑30牽牛子黒白共に逐水瀉下 袪積殺虫に働く、峻下利水薬)

水煎、毎日1剤、2回に分服。

「コメント:中満分消飲 合 峻下逐水薬の二丑の合方加味になっています。印象で後記します。」

二診

上方服用5剤時、尿量は明らかに増多、24時間尿量は700ml程度に達した。大便通暢、腹張減軽。上方を継続10剤で尿量1000ml/24hr、全身の浮腫は減軽、腹張の好転が顕著で、食欲も増強した。

 

前後計4回の会診を行った、張琪氏は薬剤が既に症状に対応していると考え、前方加減25剤処方し、1223日に至り、腹水全消、双下肢に軽微な浮腫を偶見するまでとなり、患者の体力は回復し、既にベッドから降りて体動が可能になった。但し、まだ乏力が顕著で、面色(原文は白偏に光)白、質が希の大便があり、毎日4回程度であった。検査では腎機能正常、GPT60U/L。超音波検査では肝脾は縮小して正常に近づいた。尿蛋白2+以外の尿検査は陰性。

 

経過

以後、益気健脾除湿、舒肝理気治療2ヶ月、尿蛋白+以外は全て正常。既に健常人のように起居し日常生活が可能となり、半年後に仕事に復帰した。

 

ドクター康仁の印象

記憶力の良い読者は張琪氏医案 ネフローゼ症候群 255報での中満分消飲を思い出されたでしょう。前案の中満分消丸加減治療327報も参考にしてください。

255報は「寒証」でしたが、本案は「湿熱証」です。湿は共通としても、寒熱弁証からすれば両極に位置します。古典に精通し重視しながらも、「拘束されない柔軟さ」を張琪氏に感じます。

再度、もう少し解説すれば、

李東垣の中満分消飲(蘭宝秘蔵)の原方組成は、人参 茯苓 白朮 甘草 猪苓 澤瀉 半夏 陳皮 黄芩 黄連 乾姜 姜黄 厚朴 枳実 砂仁 知母であり、四君、四苓、二陳、瀉心(辛開苦降)の組み合わせです。功能は清熱 利湿 和中です。

上海時代には以下のように暗記したものです。

上下分消中満分消君子苓、半陳二黄芩連二姜厚朴枳実砂仁知母

二姜とは乾姜、姜黄の意味です。

方中、四君子湯:人参 白朮 茯苓 甘草は健脾除湿に作用し、乾姜 砂仁は温脾陽に作用し燥湿に働く、四苓散(白朮 澤瀉 猪苓 茯苓)は淡滲利湿に、二陳湯(半夏 陳皮 茯苓 甘草)は化湿痰に作用し、湿濁を除き、昇清を回復させる。黄連 黄芩の苦寒を用いて胃熱を清し、痞満を除き、知母の滋陰は黄連と共同して清熱に作用し、熱が清され、濁陰が降りる。清昇濁降となれば張満は自ずと除かれる。脾胃不和はすなわち木乗土であり、枳実 厚朴 姜黄は平肝解鬱、行気散満に働く。これらは、「素問 陰陽応象大論」の「中満者、内に之を瀉す」に根拠とする分消法であり、辛熱を以って散じ、苦を以って瀉し、淡滲をもって利し、上下分消となる。」というものです。

 

初診時処方の配伍は、李東垣中満分消飲から甘草 乾姜を去り、草果仁 二丑を加味した組成です。

 

白黒二丑(牽牛子)を使用した、峻下逐水法については過去の記事をご参照ください。以下。

ネフローゼ症候群 中満分消飲加減治療 張琪氏漢方治療 (腎病漢方治療23報)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140116

 

ネフローゼ症候群 疏鑿飲子(そさくいんし)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療248報)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140127

 

糖尿病性腎症 決水湯(けっすいとう)治療 張琪氏弁証論治4.(腎病漢方治療303報) 2014323日記)

 

中医学は奥が深く、張琪氏の医案に見るように弁証が的中すると奏功することが多く、考察するに、現時点では西洋医学理論では説明困難な場合が多いことも事実です。貴重な臨床経験を残しつつある人間国宝的医師張琪氏、決して過言ではないと思います。

この医案でも「異病同治」が再現されています。一つの処方の臨機応変により、かなり広い応用が出来そうですね。

 

2014417日(木)


急性腎不全 張琪氏漢方医案5 中満分消丸(ちゅうまんぶんしょうがん)加減弁治1(腎病漢方治療327報)

2014-04-16 00:15:00 | 急性腎不全の漢方治療

患者:呉某 39歳 男性

初診年月日2003126

病歴

当該患者は10日前、上気道感染症にて現地の病院で抗生物質の点滴静注をうけた(薬剤名、用量不詳)。3日前から、排尿困難、腹張が出現し、現地県病院で“前立腺炎、黄疸性肝炎”の診断を受け、肝細胞庇護療法を受けたが症状は好転無く、24時間尿量250ml程度、別の病院で検査を受け、尿蛋白3+、尿中RBC満視野、WBC68/HP;腎機能:BUN11.6mmol/L69.6m/dL)、二酸化炭素結合力(正常域2030mmol/L或いは5070 Vol%20mmol/L、先?霉素(セファロスポリン)と??曲松?(セフトリアゾン Na)の点滴静注(菌必治)を受けたが、好転無し。

コメント:黄疸性肝炎の黄疸の程度を示すビリルビン値や肝炎の原因についての記載は有りませんが、張琪氏の初診時所見には眼球結膜の黄染などの記載がありませんので、腎不全の症状が主体だったのではないかと思います。以下を参照ください。」

初診時所見

乏力、尿少、悪心、舌質紅、苔薄、脈弦滑。尿蛋白2+、尿RBC満視野/HP、BUN21.49mmol/L128.94m/dL)、Cre643.2μmol/L7.27m/dL)。超音波検査:双腎のサイズは正常。

中医弁証癃閉;気血瘀滞、腎絡損傷、気化失司、水液不行、湿濁中阻

西医診断:急性腎不全

治法:清熱利湿和中の法

方薬中満分消丸加減

黄連(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)15g 黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)15g 太子参(益気生津)15g 砂仁(化湿行気和中)15g 白豆蔲(行気温中化湿消痞)15g 大黄(活血通腑泄濁)15g 枳実破気消積、化痰除痞15g 厚朴降気、燥湿、消積、平喘)15g 草果仁辛香壮烈 温中燥湿散寒)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)20g 赤芍清熱涼血、祛瘀止痛)20g 竹筎清化熱痰、除煩止嘔、泄濁)20g 檳榔(行気利水消積殺虫)20g

水煎、毎日1剤、2回に分服。

「解説:李東垣の中満分消飲(蘭宝秘蔵)の原方組成は、人参 茯苓 白朮 甘草 猪苓 澤瀉 半夏 陳皮 黄芩 黄連 乾姜 姜黄 厚朴 枳実 砂仁 知母であり、四君、四苓、二陳、瀉心(辛開苦降)の組み合わせです。功能は清熱 利湿 和中です。」

「解説続き:中満分消飲の原方と初診時処方の共通点を解説します。黄連 黄芩は苦寒清熱除痞;砂仁 白朮 草果仁は脾胃を温め、運化除湿を助け、白朮 人参(本案では太子参)は益気健脾、厚朴 枳実は開鬱理気散満に作用するというもので、相違点は淡滲利水薬の茯苓 猪苓の配合が無いことです。氏は茯苓 猪苓の利水薬を配伍させるよりも、薬剤性の急性腎不全時に、大黄を中心として、活血通腑泄濁法と砂仁 白豆蔲 枳実 草果仁などの行気薬を併用すると、早期に利尿がもたらされることを経験的に知っていたのでしょう。事実初診から3日後には利尿がつきました。以下。」

二診129

24時間尿量は約1000ml、悪心好転。

三診27

患者の24時間尿量は約2500ml、口干、腰酸痛、腹張、乏力、大便干、BUN7.6mmol/L45.6m/dL)、Cre142.2μmol/L1.61m/dL)、尿検査正常。

方薬甘露飲加減

生地黄15g 黄芩15g 枳殻15g 枇杷葉(化痰止咳、和胃降逆)15g 麦門冬15g 砂仁15g 草果仁15g 白豆蔲15g 石菖蒲15g 厚朴15g 檳榔2015g 石斛(甘、微寒 帰経胃、腎、功能 養胃生津)15g 甘草15g 茵陳蒿(清熱利湿退黄)25g 大黄(活血通腑泄濁)10g 枳実10g 黄連10

水煎、毎日1剤、2回に分服。

「解説:太平恵民和剤局方の甘露飲の組成は枇杷葉 熟地黄 天門冬 枳殻 茵陳蒿 生地黄 麦門冬 石斛 甘草 黄芩の十味の組成ですが、陰虚挟有湿熱の疾患に用いられます。甘露飲は、胃陰虚、湿熱に対する代表処方です。実際の甘露飲の臨床応用は、口内炎や口腔潰瘍、歯肉の腫れ、歯周病などであり、胃の炎症を鎮め、口中を潤すことにより、口腔内のさまざまなトラブルに対応するオーラルケアに用います。慢性歯周炎、歯槽膿漏、口内炎、咽頭炎、慢性胃炎などで胃陰虚、湿熱を呈するものに使用されます。氏は清利湿熱、養胃陰の目的で使用したのです。砂仁(化湿行気和中)15g 草果仁(温中燥湿)15g 白豆蔲(行気温中化湿消痞)15g 石菖蒲芳香除湿、利水降濁15g 厚朴降気、燥湿、消積、平喘)15g 檳榔(行気利水消積殺虫)15gの組み合わせは、行気すれば利水を助けるという中医理論に基づき、嘔気に対応する降気止嘔にも働き、湿(濁)を嫌う脾の性質にも適う化湿作用のある生薬群となっています。

四診213

患者は自覚症状無し、24時間尿量1600ml、腎機能再検:Cre92.3μmol/L、内因性クレアチニンクリアランス60.1ml/min、退院し上方継続十余剤で治療効果を固めた。

追跡調査3ヶ月、腎機能正常。

ドクター康仁の印象

方意から判断して、病因は異なるが、病機は相同であるとして、中満分消飲、さらには甘露飲加減を応用しながら、一貫して大黄を使用する氏の博識と「拘りのない柔軟性」を感じさせる医案でした。薬剤性急性腎不全に現代でも充分に応用が可能です。

中医学は非常に奥行きが深く、まさに中国の文化遺産とも言うべきものです。近頃の「~の発祥はわが国である」とする隣国の態度には飽きれていますが、皆さんはどのように感じでいますか?

2014416日(水)


薬剤性急性腎不全 張琪氏漢方医案4 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)加減弁治(腎病漢方治療326報)

2014-04-15 00:15:00 | 急性腎不全の漢方治療

患者:劉某 65歳 女性

初診年月日200338

病歴

患者は8日前、汗が出た後で皮膚に丘疹が出現、現地の医院で阿司咪?(H-1受容体拮抗剤、英文名HubermizoleLembilMildurgenRomadineVagranを抗アレルギー目的で内服(現在ではFDA勧告により製造中止)、????(セフォタキシムNaCTX:第二世代セフェム系抗生物質 日本ではクラフォラン、セフォタックスの商品名で知られる)の点滴静注後に腹張、無尿となった。末梢血液WBC21000、ヘモグロビン16.2/dL、尿検査:尿蛋白+、RBC810/HP;腎機能:BUN22.3mmol/L133.8m/dL)、Cre469.0μmol/L5.30m/dL)、超音波検査で双腎大小正常。

(西洋薬服用、抗生物質点滴の後で無尿が生じたのですから、素直に考えれば薬剤性腎傷害による急性腎不全です。発汗後の丘疹の診断、原因は不明です。)

初診時所見

無尿、4日間大便無し、悪心、腹部隠痛、張満、舌質淡紫、苔薄白、脈沈。

中医弁証

癃閉;気血瘀滞、腎絡損傷、気化失司、水液不行、湿濁瘀毒が体外排出不能

西医診断:急性腎不全

治法:辛開苦降、温陽利水、活血解毒の法

方薬半夏瀉心湯加減

半夏(辛散温 化痰燥湿散結止嘔)15g 黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)15g 大黄(活血通腑泄濁)15g 黄連(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)15g 乾姜(辛熱 温中散寒)15g 砂仁(化湿行気和中)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 桂枝(通陽)15g 車前子(清熱利水)15g 赤芍清熱涼血、祛瘀止痛)15g 白豆蔲(行気温中化湿消痞)15g 枳実破気消積、化痰除痞15g 白花蛇舌草(清熱解毒利湿)30g

水煎、毎日1剤、2回に分服。

(傷寒論:半夏瀉心湯の半夏 乾姜 黄芩 黄連の辛開苦降の生薬の配伍があります。桂枝は通陽利水目的で車前子に配伍されたものと思います。大黄と活血化瘀剤の配伍、化湿行気剤の配合、清熱解毒利湿の白花蛇舌草の配伍は氏の常用するものです。癃閉の治療概念としての半夏瀉心湯加減です。)

二診

服薬4剤で患者の大便は通暢、尿量は漸増し、24時間尿量は2100mlに達し、腹部隠痛減軽、張満はあるが、悪心無く、少量の流動食が可能になった。舌質淡紫、苔薄白、脈沈。BUN17.15mmol/L102.9m/dL)、Cre461.6μmol/L5.22m/dL)。

(初診から4日後で急性腎不全の利尿期に入りました。)

方薬

黄連15g 黄芩15g 枳実15g 厚朴15g 草果仁15g 茵陳蒿15g 紫蘇15g 葛根15g 紅花15g 赤芍15g 陳皮15g 半夏15g 甘草15g 神曲(消食導滞)15g 山楂(消食導滞15g 大黄10g 丹参20g 連翹20g 麦芽30g

水煎、毎日1剤、2回に分服。                                  

(乾姜は除かれ、二陳の半夏と陳皮、大黄は一貫して使用されています。神曲、山楂、麦芽などの消化補助の消食薬が配伍されました。)

三診317

服薬5剤後、患者腹僅かに張る、痛み無し、納食好転、大便毎日1回、24時間尿量1700ml。上方治療継続

経過321

患者状態良好、自覚症状無し、納食、二便正常。BUN4.26mmol/L25.56m/dL)、Cre88.1μmol/L0.99m/dL)、治癒退院となった。追跡調査3ヶ月、腎機能正常。

ドクター康仁の印象

薬剤性の場合に、(腎炎などの基礎疾患を持たないか、あっても軽度な場合には)癃閉(急性腎不全)の初期には辛開苦降の治療原則で半夏瀉心湯中の半夏 乾姜 黄連 黄芩を処方に入れ、人参は太子参、或いは党参に変え、大棗は氏の経験では入れる必要が無く、大黄を中心として、活血通腑泄濁法と砂仁 白豆蔲 枳実 草果仁などの行気薬を併用すると、早期に利尿がもたらされ、良好な治療効果が得られることが示されましたね。治療のタイミングといい、使用生薬の種類といい、見事に的中でした。

2014415日(火)


急性腎不全 急性間質性腎炎 張琪氏漢方医案3(腎病漢方治療325報)

2014-04-14 00:15:00 | 急性腎不全の漢方治療

本症例は両側の腎結石から誘発された急性腎不全です。腎不全、しかも急性腎不全が両側の腎結石で生じえるかという問題も含めて、医案を解析していきましょう。

治療結果は明瞭に見事と言えますが、診療経過の数値や特殊用語の解析が極めて難しい医案です。

患者:唐某 37歳 男性

初診年月日2006919

病歴

20057月、明らかな誘因なく腰痛、腹痛が出現、現地の医院を受診、超音波検査にて双腎に結石ありと診断される。排石湯及び抗感染治療後症状緩解、停薬する。200694日再度腰痛出現、腹張症状もあり、現地の病院受診、腎石康、ペニシリンの点滴静注3200万単位/日治療を受ける。

97日少尿(乏尿)が出現、小便は点滴のように出る状態、色赤、佳木斯(黒龍江省ジャムス市)大学付属第一病院受診、超音波検査で、双腎エコー反響不均一小結石あり、双腎ともに軽度の水腎症あり。

98日腎機能検査:Cre1098.2μmol/L12.41m/dL)。抗感染剤投与、血液透析治療(毎週3回計4回受ける)。913日、Cre1355.8μmol/L15.32m/dL)。尿量20ml/24hr、尿量は増多しなかった。

患者はハルピン医科大学付属第二病院泌尿外科の会診を受け、腎シンチグラム診断:双腎機能高度受損、血流取り込みのピークが認められず、また腎からの排泄も遅延しており、両腎に明らかな差は無い。診断は双腎積液(両側水腎症)、腎後性無尿、腎不全。腎機能が回復後に、再度(尿管の)梗阻(閉塞)を解除する計画であった。さらに治療をすすめるために、2006915日張氏の病院を受診、外来で“癃閉”“急性腎不全”の診断で入院となった。

(たとえ両側の軽度の水腎症でも、急性腎不全が出現するとは考えにくいのです。

初診時所見2006919

入院時患者腰痛乏力、尿少点滴状態、尿量20ml/24hr、舌質淡紫、辺に歯痕有り、苔薄白、脈滑数。血圧160/100mmHg、双腎区殴打痛陽性。

入院超音波検査

左腎11.1cmx6.5cm6.5cm、右腎11.9cmx6.5cmx6.5cm、

左腎集合系統分離 4.2cmx2.4cm、左腎内多数のストロングエコーの結石、比較的大きな結石は左腎下極に存在、直径0.4cm、左側尿管拡張、尿管上段の内径は0.78cm、中下段ははっきりとした画像得られず。

右腎集合系統分離6.3cmx2.1cm、右腎内にはストロングエコーの結石堆積、大きな1個は右腎下極に存在、直径0.5cm、右尿管拡張、上段内径0.9cm、その中に多数のストロングエコーの結石を見る、排列直径1.0cm、後方にエコー陰影を伴う。膀胱無尿。

CDFI:双腎血供尚可:残念ですがこの部分の和訳が出来ません。加えて腎集合系統分離という中国画像診断用語に一致する日本での医学用語が見出せません。)

超音波検査提示

双腎炎性改変、双腎盂積液、双腎多発結石、

右尿管上段結石、

左尿管拡張(中下段結石の可能性)。

Cre949.6μmol/L10.73m/dL)、BUN16.31mmol/L97.86m/dL)、CRP4.82m/dLLDH288/L、α-?酸脱?hydroxybutyrate dehydrogenase276U/L、γ-谷氨????(r-GTP)129U/L、末梢血液:WBC11500、好中球比率78.6%。

(双腎区の殴打痛陽性、好中球優位の白血球増多、CRP上昇などから、上部尿路感染症は充分に疑われます。ペニシリン投与は止むを得ない選択だったのでしょう。)

急性腎不全の病因は2つ考慮できる。一つには、抗生物質等の大量の薬物による薬剤性腎障害、もう一つは、尿管結石が尿路を閉塞することによる後腎性腎不全である。

中医診断癃閉(脾腎両虚、濁毒互結証)

西医診断:急性間質性腎炎、双腎結石、双腎盂積液(両側水腎症)、急性腎不全

(急性間質性腎炎という西洋医の診断も言わば後付的診断であり、確定診断ではないと思います。)

治法:急則治標、故に辛開苦降、活血解毒法を以って治療する

方薬半夏瀉心湯 合 解毒活血湯 加減:

半夏(辛散温 化痰燥湿散結止嘔)20g 黄連(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)15g 黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)15g 乾姜(辛熱 温中散寒)15g 党参(益気養陰)20g 大黄(活血通腑泄濁)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)


薬剤障害性急性腎不全 黄疸合併例 張琪氏漢方医案2(腎病漢方治療324報)

2014-04-13 00:15:00 | 急性腎不全の漢方治療

患者:張某 59歳 男性

初診年月日:1995年5月28日

病歴

患者は元来健康であった、黄疸発熱にて某病院伝染病科に入院、??(トランスアミナーゼ)、胆?素(ビリルビン)が正常値の数倍と高かった。診断は黄疸性肝炎、1ヶ月の治療を受け、トランスアミナーゼは正常域に接近したが、ビリルビン値が高いまま下降せず、かつ、BUN20.16mmol/L120.96m/dL)、Cre316μmol/L3.57m/dL、当該病院で急性腎不全の診断となり、中医の会診を招聘した。

初診時所見

1995528日、張琪氏会診、眼球結膜の黄染著しく、体幹部の黄染もあり、体温37.8℃、自汗、嫌食、脂膩を見ただけで嘔吐する、全身極度に衰弱乏力、大便正常、小便の色は黄で濃茶のようである。尿中ビリルビン+。病院では、大量の抗生物質投与が腎不全と関連があると認識した。脈象左右沈無力やや数、舌苔白、舌質淡、患者は目を開けようともせず、翻身転側皆困難である。

中医弁証:正虚邪恋、肝気失調、瘀血阻絡、毒熱内蘊之証

西医診断:急性黄疸性肝炎、急性腎不全

治法:益気疏肝、清熱活血解毒

方薬

紅参(益気)15g 黄耆(益気)30g 柴胡(疏肝理気 解熱)20g 枳殻(理気下降)15g 白芍養営斂陰)25g 甘草15g 青蒿(清熱涼血 退虚熱 截瘧20g 茵陳蒿(清熱利湿退黄)25g 蒲公英(清熱解毒利湿)30g 金銀花(清熱解毒利湿)30g 連翹(清熱解毒利湿)30g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 紅花(活血化瘀)15g 赤芍清熱涼血、祛瘀止痛)15g 大黄(活血通腑泄濁)10g 丹参(活血化瘀)20g 当帰(活血養血)20g

水煎、毎日1剤、2回に分服。

(補気薬でも温性が強い紅参の使用は陽虚に対応する配伍ですが附子の配伍はありません。大補元気という人参の作用です。自汗が有りますので、益気固表目的で黄耆が配伍されたのでしょう。疏肝目的での柴胡、柴胡の升陽と気機調整の理気下降の枳殻の配伍、白芍、甘草は四逆散を連想させますが、四肢不温などの症状はありません。結果的に四逆散に近い処方になったというところでしょうか。青蒿は温病後期の残熱によく用いられる生薬です。黄疸をマラリア類似と考えたわけではないと思います。截瘧とは抗マラリア作用を意味します。黄疸といえば傷寒論の茵陳蒿湯の茵陳蒿 大黄 山梔子が思い出されますが、本案の大黄は腎不全に対応するものが大半と思われます。結果論ですが大黄と茵陳蒿の組み合わせがビリルビン低下に寄与したとも言えるでしょう。)

二診67

上方服用14剤で黄疸は顕著に減退、身熱既に退き、体温36.7℃、全身僅かに有力、食欲も僅かに好転、汗は止まり、小便の色はまだ黄、大便日に12回、黏?(粘々して臭い)。肝機能:ビリルビン値は下降、但しまだ正常域より高い、腎機能:BUN13.7mmol/L82.2m/dL)、Cre221μmol/L2.49m/dL)、舌苔は白で薄く見え、脈沈、前よりも有力。患者精神体力皆好転有り、病情好転につき、上方加減を継続する。

方薬                                                

紅参15g 黄耆30g 柴胡20g 枳殻15g 白芍25g 甘草15g 牡丹皮(清熱活血涼血)15g (青蒿20gを去る)茵陳蒿25g 蒲公英30g 金銀花30g 連翹3020g 桃仁15g 紅花15g 赤芍15g 大黄10g 丹参20g 当帰20g 沢蘭葉(活血化瘀)20g

水煎、毎日1剤、2回に分服。   

(青蒿を去り、牡丹皮 沢蘭葉を加味し、連翹は減量されました。)

三診616

上方服用14剤で、ビリルビン値及びCreBUNが全て回復し正常となった。食欲好転、二便正常、全身も以前に比べ有力、既に退院して帰宅し休養していた。

経過:引き続き上方を継続服用7剤にて治癒した。

ドクター康仁の印象

黄疸性肝炎の病原ビールスの検査は陰性だったのでしょう。中国では流行性肝炎(A型)も多いのです。大量の抗生物質投与の根拠は胆道系炎症のためだったかと推定します。張琪氏は出張会診を行ったわけですので詳しい臨床データを手元に持たなかったのです。

私自身の経験では高齢の男性、アミノグリコシド系抗生物質投与4日間後の急性腎不全の症例が有りました。専門的用語になりますが、血液濾過法透析で救命できた症例です。もう1例は、黄疸顕著な高齢の男性、いわゆる肝腎症候群を併発し、血漿交換と腹膜透析を併用したものの救命できなかった症例です。一般的には黄疸と腎不全が合併すると予後が非常に悪くなります。

この患者さんは運がよかったといえるでしょう。4週間足らずで治癒したわけですから、張琪氏の手腕には脱帽です。薬剤性の一過性腎傷害としての急性腎不全が考えられますが、黄疸合併、全身状態悪化の症例に対する氏の対応の見事さを損なうものは一切ありません。医療人として、一度は経験したい症例でしょうね。

2014413日(日)