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尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 1(腎病漢方治療 372報)

2014-05-31 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

消堅排石湯は張琪氏の自創方であり、組成は金銭草(甘淡/平 利水通淋、除湿退黄、解毒消腫)5070g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 丹参(活血化瘀)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 紅花(温経活血)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g 車前子(清熱利水)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15gから成ります。それでは、医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 

患者:趙某 初診年月日2001424<o:p></o:p>

 

病歴:三ヶ月前、明らかな誘因もなく、突然腰痛が出現、痛みに耐えかねず、某医院受診、超音波検査にて左側腎盂内に直径6.2mm6.6mm2個の結石、右側腎盂内に直径4.8mmの結石が発見された。平滑筋弛緩薬、止痛薬、抗生物質、ウラリット等治療を受け、絞痛発作はおさまったが、結石そのものに変化無く、遂に張氏の病院を受診。<o:p></o:p>

 

初診時所見:患者腰酸痛、尿黄便干、舌苔黄、脈滑<o:p></o:p>

 

中医診断:湿熱蘊結下焦 西医診断:双腎結石<o:p></o:p>

 

治法:清利湿熱 行気活血 軟堅化石<o:p></o:p>

 

方薬消堅排石湯金銭草50g 三棱15g 莪朮15g 鶏内金15g 丹参20g 赤芍15g 紅花15g 牡丹皮15g 瞿麦20g 萹蓄20g 滑石20g 車前子15g 桃仁15g 以上水煎服用 12回に分服<o:p></o:p>

 

二診200158日。上方12剤服用にて、二塊の結石が排出された。尿RBC5~7個/HP、超音波検査にて左側腎盂にはまだ直径5mmの結石が残存しており、腰酸痛、舌苔黄、脈滑数。前方を継続する。<o:p></o:p>

 

三診2001523日。服薬14剤で腰酸痛減軽、超音波検査で腎盂結石は消失しており、尿RBC13/HP、停薬した。日常水分を多く飲むように言い、10月再度超音波検査施行、結石の再発は無し。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

消堅排石湯の主薬は金銭草ですが、文献上はじめて記載されたのが「本草綱目拾遺」であり、性は微寒とされますので金銭草と色分けしなくてはなりませんが、近年の清書では平とされていますのでグリーンに表記してきました。「本草綱目拾遺」では「祛風治湿熱」「治白濁熱淋玉茎腫痛」と効能が記載されており、「清熱解毒利尿排石、活血散瘀」の尿路結石治療効果が確認されたのは近代になってからです。<o:p></o:p>

 

私個人では58歳男性の「白濁熱淋玉茎腫痛」に著効した経験があります。<o:p></o:p>

 

三棱 莪朮 鶏内金は軟堅行気に、赤芍 牡丹皮 丹参 紅花は化瘀散痛消腫に、萹蓄 瞿麦 滑石 車前子は清熱利湿に作用し、協調し溶石、排石の効果をもたらします。<o:p></o:p>

 

結石が大きく排出困難な場合には、穿山甲 皂角刺を加味し、病程が長く、腎陰虚の証を合併すれば、熟地黄 枸杞子 山茱萸等を、腎陽不足には肉桂 附子 茴香を、気虚には黄耆 党参を加味すると排石が可能になる場合があります。<o:p></o:p>

 

病程が長く、反復感染を起こすものは、多くは腎陽不足、気化効能不足、湿熱毒邪薀蓄不除によるものであり、消堅排石湯を基礎にして、附子 桂枝 肉桂を加味し温陽を以って気化を助け、薏苡仁 敗醤草 金銀花 連翹等の利湿清熱解毒の剤を加味すると良い結果が得られると張琪氏は述べています。<o:p></o:p>

 

「清熱利湿」「活血行気」「軟堅化石」は結石の基本治療と言えるでしょう。本案は基本に忠実な典型例です。<o:p></o:p>

 

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2014531日(土)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 薏苡附子敗醤散(よくいぶしはいしょうさん)による治療 (腎病漢方治療 371報)

2014-05-30 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

今回から尿路結石症の症例を計10例紹介します。実は私自身も2回、尿路結石を患い、肉眼的血尿を伴う腰痛発作に悩まされたことがありますが、手持ちの生薬と西洋薬で何とか急場をしのぎ、ここ数年は無症状になり、尿検査も正常です。2回とも排石に成功しました。医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 


患者
:丁某 39歳 男性 初診年月日199274<o:p></o:p>

 

病歴:腰痛を主症状として6ヶ月前に発症、超音波検査にて右側腎杯部に2個の結石(直径2.6mm3.2mm)と腎盂拡大(水腎症初期)が発見される。(超音波検査で確認不能な腎盂から尿管にかけての下部尿路結石が存在したのでしょう。)嘗て、ウラリットを用い、1個の結石を排出したが、腎盂拡大は治らず、尿検査ではWBCが満視野/HP、某病院に入院し、抗生物質治療を受けたが、尿中WBCは消失せず、腎盂の積液も好転が無いために治療を求めて張氏の病院を受診した。(原文では消石素とありますが、日本での商品名はウラリットです。主成分はクエン酸カリウム クエン酸ナトリウムで、体内でクエン酸回路によって代謝されて重炭酸イオンを生成し、体内で塩基として働き、尿や体液をアルカリ側にすることから酸性尿改善薬とされます。通常は尿酸系結石に効果があるとされますが、尿酸値の記載は医案にはありませんでした。似たような商品名でウロカルンがありますが、成分は別物で、ブナ科のウラジロカシのエキス剤です。結石排出促進剤と記載されている清書がありますが、動物実験で結石形成抑制作用、溶解作用が認められ、長期投与によって尿中のカルシウム、リンは増加傾向を示すという報告があります。)
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初診時所見:腰酸痛、両腿酸軟無力、小便黄、舌苔白膩、脈象数。<o:p></o:p>

 

中医弁証:腎陽不足 正気虚衰 湿熱蘊蓄 血絡瘀阻<o:p></o:p>

 

西医診断:右腎結石 右腎盂積液<o:p></o:p>

 

治法:温腎助陽気化 清熱解毒利湿 通絡排石、正邪兼顧
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方薬薏苡附子敗醤散加味:附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 敗醤草(清熱解毒利湿、排膿破血30g 薏苡仁(健脾利水滲湿)30g 金銭草(甘淡/平 利水通淋、除湿退黄、解毒消腫)30g蒲公英(清熱解毒利湿)30g 金銀花(清熱解毒利湿)30g 連翹20g(清熱解毒利湿) 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 丹参(活血化瘀)20g 澤瀉(利水滲湿 泄腎濁)20g 桂枝(通陽)15g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 甘草(調和諸薬)15g 水煎服用、毎日2回に分服。<o:p></o:p>

 


二診
1992717日。服薬後、血塊が一つ小便に排泄され、尿中WBCは転陰し、尿RBC3~5個/HP、尿色転淡、食欲及び精神ともに良好、ただしまだ腰酸痛あり、脈象滑、舌苔白、上方を加減し継続した。<o:p></o:p>

 

方薬:上方の丹参20g15g、萹蓄を去り、石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)20gを加味<o:p></o:p>

 


三診
199283日。服薬14剤後、尿中のWBC転陰、RBC57/HP、心身ともに好転、超音波検査にて腎盂の積液減少、尿管拡張は顕著に縮小、脈象滑、舌苔白、前方加減を継続した。<o:p></o:p>

 

方薬:上方より蒲公英を去り、茯苓(健脾利水)20g 三棱(活血化瘀)15g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 青皮疏肝破気、散結消滞)15gを加味。<o:p></o:p>

 


四診
1992819日。服薬15剤。服薬中に一時的に血尿悪化、尿RBC満視野/HP、結石が一塊排出され、尿RBCは消失した。腰やや酸、温陽通絡、清熱利湿を継続する。<o:p></o:p>

 

方薬:薏苡仁を25gに減量、白茅根凉血止血、清熱利尿30g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15gを加味。<o:p></o:p>

 


五診
199295日。服薬15剤、超音波検査にて腎積液消失、症状消除、快癒した。
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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

薏苡附子敗醤散の原典は「金匱要略」の「腸」の方剤で、寒湿瘀血互結による腸癰(ちょうよう)蓄膿を治すものです。薏苡仁 附子 敗醤草の三薬からなります。脈数であるが、発熱なしは内有癰膿(ようのう)の証であるとされます。本案も脈象は数でしたね。
薏苡仁は敗醤草と協力し、排膿破血を果たし、辛熱の附子は薏苡仁を手伝って散寒湿、行鬱滞気をするとされます。本案では附子 桂枝が通して使用されました。発熱を伴わない慢性の尿路感染症を併発しており、抗生物質も尿中のWBCの軽減に効果が薄かったのですから、ためらうことなく薏苡附子敗醤散加味方を張氏は採用したわけです。まさに異病同治に近い手法でしたね。<o:p></o:p>

 

「腎結石 腎盂積液 感染合併」を「腸癰」の証とする弁証論治が見事に奏功したわけです。日本ではなかなか経験できない症例です。

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2014530日(金)<o:p></o:p>

 


尿路感染症 漢方治療 桑螵蛸散加減弁治 尿道総合証 6(腎病漢方治療370報)

2014-05-29 00:15:00 | 尿路感染症 漢方

 

桑螵蛸(そうひょうしょう)は、カマキリ科のオオカマキリ、コカマキリ、ウスバカマキリ、ハラビロカマキリなどの卵鞘の総称です。卵鞘(らんしょう)とは内部に多数の受精卵を包むスポンジ状の塊で、それを卵と言えばそれまでですが、卵を閉じ込めているメス蟷螂(カマキリ)の体内からの分泌液に薬性成分があるのか、卵自体に薬性成分があるのか、私は知りません。私は味見をしたことはありませんが、性味は甘咸/平、帰経は肝腎とされ、効能は補腎助陽、固精縮尿で、中薬学分類では収渋薬に分類されます。腎陽虚による遺精、滑精、遺尿、頻尿には補腎固渋の目的で、或いは脾陽虚にまで及び、冷えを伴う白色帯下などの病証にも使用されます。
メスカマキリは交尾の後でオスカマキリを食い殺すらしいのですが、オスカマキリには命がけの交尾というより自殺行為とも言えるものです。すぐに殺されるか、ゆっくり時間をかけて殺されるか、ともかくメスは怖ろしいものの、殺されても交尾の本能には勝てないものかと思います。そのメスが産んだ桑螵蛸をヒトの女性が服用する例として、中国では、妊娠期間の頻尿、尿失禁を治療する目的で、粉末にしてお粥で服用させるというような民間治療法もあるようです。
桑螵蛸散(本草衍義)は桑螵蛸を主薬として、遠志石菖蒲竜骨などを配伍して、腎虚による遺尿、混濁尿、頻尿、遺精、滑精などを治療する方剤です。腎陽虚型インポテンツにも用いられます。腎陽虚型インポテンツには、鹿茸肉蓯蓉莵絲子などを配伍します。<o:p></o:p>

 

それでは医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 

患者:姜某 45歳 女性 初診年月日:2000年4月12日<o:p></o:p>

 

病歴:頻尿 尿意切迫一年余、かつて中薬治療を受けたが(薬物不詳)、症状無好転<o:p></o:p>

 

初診時所見:神疲乏力、自汗、双下肢酸痛無力、排尿痛無し、冷えを感受すると症状が加重、尿検査:WBC0~1/HP.舌尖紅、苔白、脈弦細。<o:p></o:p><o:p></o:p>

  

西医診断:尿道総合症<o:p></o:p>

 

方薬桑螵蛸補腎助陽、固精縮尿)20g 竜骨収斂固渋止血)20g 太子参(益気養陰生津)20g 茯苓(健脾利水)15g 亀板滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)20g 石菖蒲開竅寧心、化湿和胃 芳香除湿、利水降濁15g 当帰(養血活血)20g 覆盆子益腎、固精、縮尿)20g 枸杞子(養陰)20g 淫羊藿(別名仙霊脾補腎壮陽、祛風除湿、温燥の性質を持つ)15g 熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)20g 金桜子(酸渋/平 固精縮尿、渋陽止瀉)20g 甘草15g 七剤、毎日1剤、2回に分服。<o:p></o:p>

 

二診:七剤服用にて、日中の頻尿、尿意切迫は著明に改善、但し夜間尿は多く、毎晩7~8回、睡眠不良、前方を加減した。<o:p></o:p>

 

方薬桑螵蛸20g 竜骨20g 太子参20g 茯苓15g 亀板20g 石菖蒲15g 遠志15g 夜交藤(安神)30g 当帰20g 炒酸棗仁(安神)20g 五味子斂肺滋腎、生津斂汗、渋精止瀉、寧心安神)20g 柏子仁養心安神、益陰止汗)20g 金桜子20g 甘草15g 知母清熱滋陰潤燥)15g 黄柏(清熱解毒燥湿 退虚熱 堅陰)15g 肉桂(温裏散寒、補火助陽、引火帰源)10g 肉蓯蓉補腎陽、益精血、潤腸通便)15g 巴戟天(温潤 補腎助陽、袪風除湿)15g 水煎服用、毎日2回に分服<o:p></o:p>

 

経過:治療20日で排尿正常、乏力、腰痛消除、睡眠正常。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象
頻尿があり尿意切迫があっても尿検査で異常なし。つまり、尿道総合症ですね。ところで心腎不交という漢方用語をご存知でしょうか?心と腎が交わらない状態を示す用語ですが、心火と腎水は交通することで、心火は冷まされ、腎水は温められ上焦と下焦の寒熱のバランスが取れているのが正常な状態であると中医学では説きます。心は神の宿るところで心神不寧が高じると、恍惚健忘や、更には心火上炎となり失眠が生じ、一方では、腎虚は頻尿を起こすという病理論です。上熱下寒の状態です。したがって、下焦熱盛、あるいは下焦湿熱には適応しないということになります。<o:p></o:p>

 

症候群的な発想をすれば、睡眠不良、頻尿があれば心腎両虚、心腎不交となりますが、「頻尿が酷いので眠っていられない」と卵が先か鶏が先かの類の因果律でもあります。しかしながら、中医学では、桑螵蛸散の証は心腎両虚、水火不交によるものとします。調補心腎渋精止遺が治療となります。<o:p></o:p>

 

症候分析をすれば、心虚であれば神が養われないので恍惚健忘の証が見られ、腎虚不固、摂納失司であれば小便頻数、あるいは尿液混濁、あるいは遺尿、滑精などの諸証が現れます。

本中の桑螵蛸は補腎益精、固脬(脬=膀胱)止遺で君薬、原方の人参は太子参(益気生津)に変更されています、当帰は養心血に働き、原方では茯神は安神で共に佐薬であるとされています。本医案では茯苓が通して使用されているのが、やや違和感があります。浮腫があるわけではないので、茯苓よりも茯神の方が適していると思うからです。遠志石菖蒲は安心定志作用で交通心腎を促す温薬で佐使薬です。石菖蒲の揮発性成分には鎮静効果があるとする最近の研究もあります。諸薬は協力して補腎益精、渋精止遺を果たしながら補心養神もできるということになります。
さて、二診では、夜間頻尿、睡眠不良が悪化しました。そこで、知母 黄柏 肉桂の滋腎通関丸が配伍されたのが氏の妙技でしょう。元来、下焦湿熱、小便が出にくく、一回尿量が少ないか、点滴状になる場合に使用されています。(298報、364報をご覧下さい。)陰陽相済という治療概念を持ち込んだのは氏の柔軟性を示しています。五味子を加味したり、淫羊藿巴戟天に変更したり、ともかくも、漢方は経験医学ですね。本案の特徴は附子を使わず、滋腎通関丸を加え、更に酸棗仁 柏子仁 五味子等の安神薬を加えたところにあります。二診以降は心因性夜間頻尿という印象が強いです。<o:p></o:p>

 

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2014529日(木)<o:p></o:p>

 


尿路感染症 漢方治療 温陽法弁治 尿道総合証 5(腎病漢方治療369報)

2014-05-28 00:15:00 | 尿路感染症 漢方

 

本日は経期延長と冷えを伴う無菌性膀胱炎の症例です。
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患者:徐某 30歳 女性 初診年月日:1993年9月23日<o:p></o:p>

 

病歴:当該患者は一年前より、寒さに当たり、(その後)疲労後に腰痛、頻尿、下腹部下垂感、四肢が(浮腫のために)腫れ、畏寒(いかん:寒さを畏れる)、月経の期間が延長し十日程度になった。検尿は何度も検査するが異常なく、中間尿培養検査も陰性であった。多種の抗生物質は全て無効。舌淡紅、苔白、脈沈。<o:p></o:p>

 中医弁証:冷淋、胞宮寒凝血瘀合併<o:p></o:p> 

西医診断:尿道総合症<o:p></o:p>

 

治法:温経散寒、理気活血の法<o:p></o:p>

 

方薬茴香理気和胃 散寒止痛)20g 炮姜(乾姜を炮じて炭化したもの、温裏効果は乾姜に劣るが、温経止血作用がある)15g 延胡索(活血行気止痛)15g 五霊脂活血止痛、化瘀止血 ムササビの糞です)15g 川芎活血行気、祛風止痛)15g 当帰(養血活血)20g 肉桂(温裏散寒、補火助陽、引火帰源)10g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 烏薬(温腎散寒 行気止痛)15g 牛膝(活血補肝腎強筋骨 引血下降 利水通淋)15g 鶏血藤(苦/温 活血養血 舒筋活絡)30g 甘草15g 益母草(活血利水消腫)30g<o:p></o:p>

 

上方加減28剤、水煎服用、毎日二回に分服、上述症状消失、快癒退院となった。
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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

附子補骨脂の配伍がありませんので、前案(368報)よりも陽虚の程度は軽い印象です。しかし、益母草赤芍を除いて、全て温薬です。やはり温薬は効き易い印象です。活血し、利水して浮腫を除く、益母草は私も愛用しています。当帰と鶏血藤を比較すれば、当帰は養血が主体、鶏血藤は活血が主体となるのでしょうか。五霊脂は臭いので、温薬で活血を期待する場合には鶏血藤は使い易い生薬です。月経期間が延長しているのに活血薬を使用するのはいかがなものか?と警鐘する日本の物書き漢方医がいますが、血瘀(瘀血)の捉え方が根本的に中医と異なるようですね。活血止血法は中医独自の理論でしょう。特に婦人病にはとても有効な治療方法のひとつです。<o:p></o:p>

 

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2014528日(水)<o:p></o:p>

 


尿路感染症 漢方治療 温陽法弁治 尿道総合証 4(腎病漢方治療368報)

2014-05-27 00:15:00 | 尿路感染症 漢方

 

今回の医案は、生理痛と経血に血塊を伴う腰痛 頻尿 冷えを伴う症例です。無菌性膀胱炎の範疇に入ります。<o:p></o:p>

 

患者:張某 36歳 女性 初診年月日:1996年9月4日<o:p></o:p>

 

病歴:当該患者腰痛、時に尿漏れ、頻尿、下腹部下垂感を伴う冷え、月経時に下腹部疼痛、経血に黒い血塊が混じる。手足が冷え、舌淡紅、舌体大、脈沈。多数の尿検査陰性。<o:p></o:p>

 

中医弁証冷淋合併胞宮寒湿証<o:p></o:p>

 

西医診断:尿道総合症<o:p></o:p>

 

方薬橘核(行気散寒止痛)20g 益智仁(温脾開胃摂唾、温腎固精縮尿)20g 附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 桂枝(通陽)15g 茯苓(健脾利水)15g 烏薬(温腎散寒 行気止痛)15g 茴香理気和胃 散寒止痛)(桂枝 茴香は協調して温補腎陽、行気利水に作用)15g 当帰(養血活血)20g 補骨脂(辛苦大温 補腎壮陽 温脾止瀉 固精縮尿)15g 山薬益気健脾養陰)20g 延胡索(活血行気止痛)15g 川芎活血行気、祛風止痛)15g 艾葉温通経脈、寒湿を除き、冷痛を止める作用があり、よく当帰、香附子などを配伍して使用する)10g 麦門冬(養陰)10g 天花粉(養陰清熱利咽)10g 甘草15g: 七剤、水煎服用<o:p></o:p>

 

(附子 桂枝で通陽温腎助陽、補骨脂で補腎助陽の他、橘核 茴香 延胡索 川芎 艾葉の温薬が目立ちます。温めて祛湿、止痛するという手法です。麦門冬、天花粉は温薬による傷陰の防止的な目的で配伍されたのでしょう)<o:p></o:p>

 

二診:1996年9月11日。<o:p></o:p>

 

上方服用後、腹部の下垂感、頻尿は顕著に減軽、まだ、下腹部の冷感あり、腰周りが冷える。前方加減した。<o:p></o:p>

 

方薬: 橘核20g 益智仁20g 附子10g 桂枝→肉桂10g 茯苓15g 烏薬15g 茴香15g 当帰20g 補骨脂15g 山薬20g 延胡索15g 川芎15g 艾葉10g 甘草15g 香附子(疏肝理気、調経止痛 婦人科の要薬)15g:七剤、水煎服用、毎日二回に分けて服用<o:p></o:p>

 

(桂枝を肉桂に変えて、より温裏効果を増強させました。香附子は婦人科の要薬です)<o:p></o:p>

 

三診:1997年9月18日。<o:p></o:p>

 

上方服用後、上述症状は顕著に好転、(しかし)月経に血塊あり、下腹部に索状物を触れ、触ると痛みがある。前方を基礎に加味した。<o:p></o:p>

 

方薬橘核20g 益智仁20g 附子10g 肉桂10g 茯苓15g 烏薬15g 茴香15g 当帰10g 補骨脂15g 山薬20g 延胡索15g 川芎15g 艾葉10g 甘草15g 香附子15g 三棱15g 莪朮15g 紅花15g 桃仁15g 木香g 川楝子20g 吴茱萸(頭痛や下腹部の冷痛に効果があります。散寒燥湿といい寒湿を除く作用があります。)10g:七剤、水煎服用、1日2回に分服。 遂に快癒した。<o:p></o:p>

 

三棱15g 莪朮15g 紅花15g 桃仁15gは全て活血化瘀薬です。行気薬の木香g川楝子20gの配伍は延胡索を中心にして考えると分かりやすいのです。延胡索の性味は辛散、温通で、活血行気することもできます。良い鎮痛効果があるので、全身の疼痛に用います。気滞血瘀による消化管系の痛みには木香や川楝子を配合し(金鈴子散)、また冷えを伴う痛みには茴香を、生理痛には当帰、川芎、白芍、香附子などを配伍氏、側胸痛には栝萋、薤白、鬱金、烏薬などを、全身の血滞による疼痛には、当帰、桂枝、赤芍などを、配伍して使用します。)<o:p></o:p>

 

ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

徹底的に温薬を配伍していますね。寒薬は川楝子のみです。三棱 莪朮 紅花 桃仁を婦人科系に使用すると過多月経がくると警鐘する物書き屋の日本の漢方医がいますが、私はそのような経験はありません。<o:p></o:p>

 

温腎助陽、温経活血、温裏行気等と、あらゆる温薬のオンパレードですね。やはり、温薬は効き易い印象です。<o:p></o:p>

 

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2014527日(火)<o:p></o:p>