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多発性嚢胞腎の進行を漢方でおさえる治療法運用 腎病漢方治療186報

2013-07-31 00:15:00 | ブログ

始めに

先回までは中国の医案(症例報告)を主体にお話してきました。日本漢方では際立って有効な治療は無いようです。かといって、中医学で多発性嚢胞腎が完全にコントロールされているかと言えばそうではありません。本来が遺伝的な疾患ですから、現代医学のレベルをもってしても、現時点では発症は避けられないものです。そこで、中医学での治療法運用を俯瞰してみることから、多発性嚢胞腎の発展と進行、腎不全への進展防止について可能性を探ってみたいと思います。

論治原則

成人型多発性嚢胞腎には扶生祛邪、攻補兼施する。気滞結阻を主なる病機として、行気活血と調理脾腎法を行う;寒湿凝聚者には温陽化湿と消癥散積法を行う;瘀血内結者には、活血化瘀法と軟堅散結法を行う;正虚邪実者には扶生祛邪と活血化瘀を法とする。

治法運用

気滞血瘀証行気活血 調理脾腎法

症状

腰酸或いは張る感じ、或いは腰痛、労働によって悪化、喜按喜揉(手でなでたり揉んだりすると症状が軽くなる)、臥即減軽(横になると症状が軽くなる)、腹塊不大(嚢胞腎はまだ小さい)、或いは少し触れる程度であり、面色欠華或いは常人の如し。舌はやや暗、苔薄白、脈弦細。

症候分析

疾病早期である。腎気不足、肝失疏泄、脾失健運、気機阻滞、腎絡痺阻、血行不暢、故に腰酸或張或痛、腹塊不大、病は軽浅に属する、故に面色欠華或いは常人の如し。舌暗淡、苔薄白は気滞血行不暢による。

宣明三棱湯加減三棱 莪朮 檳榔 木香 白朮 当帰)。

方中三棱、莪朮は活血消積、檳榔、木香は理気消張、白朮は健脾益気に、当帰は養血活血に働く。脾胃気滞、胸悶脘張者には四磨飲子党参 檳榔 沈香 烏薬)を用いることも可能であり、納差不運者には砂仁山楂鶏内金青皮陳皮の加味、腰膝酸軟者には続断狗脊桑寄生を加える。

                                                                            

寒湿凝聚証温陽化湿 消癥散積法

症状

胸悶腹張、腰酸楚或いは板滞不舒(痛みがやや深く、動きにくく不快であり)、納谷不香(食べても美味しくなく)、或いは食後脘張、面色萎黄或いは皓白無華、大便軟或いは泄、腹塊張痛、或いは小便不利、下肢浮腫、舌質淡胖、苔白膩、舌辺に歯痕あり、脈濡緩或いは沈細。

症候分析

病が慢性化し重症化すると、脾腎欠損、運化失司、湿濁内蘊、故に胸悶腹張、納谷不香、小便不利、下肢浮腫を見る;湿困気滞、気血運行不暢、腎絡阻滞、水液障碍、内に蓄積し、故に腹塊張痛、次第に腫塊は大きくなる。舌淡胖、苔白膩、脈濡緩は脾腎不足、水湿内蘊の証である。

春澤湯大七気湯加減茯苓 猪苓 澤瀉 白朮 桂枝 人参 青皮 陳皮 桔梗 木香 三棱 莪朮 香附子

方中春澤湯は温陽利水、健中益気に、青皮 陳皮 桔梗 木香は行気散結に、桂枝 三棱 莪朮 香附子は温通血絡に働く。脾虚納減便溏者には、山薬 白朮、白扁豆、蓮子肉を加味し、腰酸冷痛者には附子 肉桂 乾姜を加味するが、血尿のある場合には温熱薬は慎用する;下焦湿熱、膀胱気化失司が出現したら、八正散、知柏地黄湯の類に変更も可能であり、熱傷血絡し鮮血尿があり、陰茎の中に渋痛がある者には、小薊飲子或いは琥珀末などを頓服する;尿中に砂石を排出する者には三金湯加減を用いる。

コメント

半夏厚朴湯(金匱要略)(半夏 生姜 厚朴 茯苓 蘇葉)の別名として大七気湯があります。七気とは七情(喜怒憂思悲恐驚)を指し、痰飲が結合して咽喉に出現する梅核のような症状を治すという意味らしいです。七合の水で4合の薬湯を作成するので四七湯の別名もあるとか。

脾虚納減便溏者には、山薬 白朮、白扁豆、蓮子肉を加味すると中国清書には記載がありますが、人参が配伍されているので参苓白朮散とほぼ同じ組成となります。

参苓白朮散については大変詳しい以前の記事に有りますのでご参照ください。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080610

八正散(太平恵民和剤局方)の組成は車前子 瞿麦 扁蓄 滑石 山梔子 (木通:現代では通草で代用)大黄です。利水通淋剤です。

利水通淋剤については過去の記事をご参照ください。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121102

小薊飲子については過去の記事をご参照ください。


多発性嚢胞腎の漢方治療 医案9 腎病漢方治療185報

2013-07-30 00:15:00 | ブログ

肖相如氏医案 湿瘀互結 痰飲停聚証案

(北京中医雑誌 2003年 第1期より)

患者:満某某 60歳 男性

受診年月日199959

病歴

腰部張痛、下肢の浮腫で超音波検査を受け、8cm8cmの嚢腫が発見され、嘗て、穿刺により800mlの液体を抜いたことがある。液体を抜くとまたもとのサイズに戻る。受診前の前日、超音波の検査でまだ8cmx4cmに大きくなっていた。

診察時所見

腰部張痛、頭重感、下肢の重い感じ、軽度浮腫、飲食可、大便偏干、小便正常、舌質暗紅、瘀点あり、苔薄白膩、脈沈弦。尿検査正常、Cre 198μmol/L2.24m/dL)、血圧170/100mmHg

弁証:湿瘀互結、痰飲停聚

治法:活血利水化痰

方用:当帰芍薬散加味

当帰12g 川芎10g 赤芍10g 白朮10g 茯苓15g 澤瀉15g 淮(懐)牛膝15g 車前子15g(包煎)白芥子15g 水蛭6g 沢蘭15g 毎日1剤水煎服用、減塩低蛋白飲食。

経過

1ヵ月後、元の西洋医を受診して超音波検査を再検したところ、嚢腫は4cmx3cmに縮小しており、血圧は150/90mmHgまで下降し、Cre120μmol/L1.36m/dL)まで下降していた。自覚症状消失、上方を隔日1剤服用、随訪半年、病情安定。

評析

腎嚢腫に対応する中医の記載はなく、治法も未完成であり、積聚を根拠に討論を進める中医もあり、“巣嚢痞塊、痰証に属す”と言う中医もあり、病機を痰と相関するとも考えられる。この他に、嚢腫には水湿停聚の病機もある。したがって、本案の治療に血瘀水停痰聚の病機から、活血利水の当帰芍薬散加白芥子等で効果を収めた。「本草求真」には、白芥子“脇下及び皮裏膜外の痰を治す”と記載があり、温経通絡散結の作用があり、腎嚢腫の重要な薬物であると認識できので、さらなる研究の価値がある。

ドクター康仁の印象

超音波検査では多発性嚢胞腎の所見の記載が無く、8cm8cmの嚢腫と記載があるだけですので、本案が果たして多発性嚢胞腎の医案として適切かどうか疑問が残ります。

直系8cmの球体に含まれる液体の最大瞬間体積は4/3πr3乗=約268mlですから医案の800mlを抜いたとする記載は、留置カテーテルで時間をかけて抜いた場合に抜く先から液体が溜まってきたのか、それとも嚢胞同士の連結があるために量が多くなったのか、出血を合併したので増量したのか、複数回の穿刺合計として800mlになったのかが不明なのです。記載が無ければ想像をたくましくするしかありません。どうでもいいようなことに拘り(こだわり)を感じることからサイエンスは始まると私は思いますが、皆さんはどう思いますか?

Polycystickidneydisease

写真 多発性嚢胞腎:腎臓はもっと巨大になる場合もあります。尿管の拡張はありません。

http://geneticpeople.com/?p=554 より

2013730日(火) 記


多発性嚢胞腎の漢方治療 医案8 腎病漢方治療184報

2013-07-29 00:15:00 | ブログ

文全氏医案 蓄血証

(江蘇中医雑誌 1986年 第8期より)

患者?某 51歳 女性 教師

入院年月日:19841011

病歴と所見

14年前、血尿、高血圧及び腹部の包塊にて、上海某医院で多発性嚢胞腎併発血尿と診断された。19841011日、高血圧、血尿、腹張にて入院。多発性嚢胞腎併発血尿、高血圧と診断。

検査所見:血圧170/90mmHg、尿蛋白(3+)尿中RBC(3+)尿中WBC(+)、尿培養(-)、大便潜血(+):末梢血液:ヘモグロビン9.1g/dl、RBC300万、WBC4050(好中球70)、超音波検査:右腎176mmX104mm、左腎199mmX91mm、両腎ともに大小不同の低回声暗区あり。診断、双腎多発性嚢胞腎。西洋医学治療で血圧安定し140/75mmHg

1984115日、診察時に患者は煩躁、入睡困難、発狂しそうで、腹全体が張り、拒按、小便通暢、軽い排尿痛がある時もあり、大便4日間不通(嘗て黒色便のことあり)。

脈弱偏滑、苔淡黄にして干。

弁証:蓄血証。治用:桃核承気湯加減:

桃仁6g 生大黄(後下)5g 芒硝(後下)10g炙甘草3g 桂枝5g 炒蒲黄(包煎)10g?菜花30g 茶葉10g 3剤。服薬後大便に多量の黒色軟便と楝?大の小血塊が2個出たが、臍両側の腫大した腎臓はまだ触れ拒按であった。原方を加減継続治療した。桃仁6g 当帰10g 赤芍白芍15g 炒蒲黄(包煎)10g ?菜花30g 懐牛膝10g 藿香9g 10g

服用2剤後、また小便中に米粒大の暗黒色の血塊5~6個が排出された;原方再度服用5剤、大小便検査正常、左腎下極は臍まで、右腎下極は臍下2cmまで触れる。腫大した腎臓の臍の両側は肝脾分野に属する。故に疏肝理気和絡の法に改め、健脾を補助とした。柴胡5g 桃仁6g 赤芍白芍12g 失笑散(包煎)、当帰懐牛膝10g 厚朴5g 藿香9g 党参15g。同時に帰脾丸六味地黄丸を持って健脾腎とした。

128日再検査:二便正常、RBC360万、WBC5800、ヘモグロビン9.4/dl、超音波検査:左腎153mmX94mm、右腎172mmX105mm、腫大した腎臓は柔らかくなって、触診で微痛があり、明らかな結節形成に到っていない。左腎下極臍上2cm、右腎下極臍の位置、血圧140/70mmHg19851125日退院、原方を常服し、病状は安定している。

評析

多発性嚢胞腎が慢性化すると、瘀血が下焦に着して、下焦蓄血証にしたがって治療すると、黒色の糞便および黒色の血塊が尿から出て、腎臓は軟となり小さくなった。邵氏は部位弁証を基礎に、疏肝理気和絡法で治療し効果を収めた。このことから、多発性嚢胞腎の病機は亦、気滞血瘀、肝脾失調に属すると言える。このように弁証すれば中薬治療で効果が得られるだろう。

ドクター康仁の印象

蓄血証は懐かしいです。中医学を勉強し始めたころの「傷寒論」の「蓄血証」を思い出します。太陽蓄血証と陽明蓄血証が有りますが、非常に概念的なもので、西洋医学の病名や病態に対応させることが困難です。

本案での桃核承気湯の太陽(膀胱)蓄血証は、兼表症あるいは無表症、発狂あるいは如狂、小便自利、少腹急結あるいは鞕便で、表邪が化熱し下焦に内陥し、瘀血と熱が互結することが病機とされますが、覚えきれないという印象を持ったものです。桃仁 桂枝 大黄 芒硝 炙甘草が組成です。もっと重症化すれば抵当湯(丸)「ヒル(水蛭)アブ(虻虫)桃仁大黄」で破血逐瘀します。表症が残存いていても破血を先に行うので先裏後表と言います。そもそも、表症が残っている場合に桂枝を配伍するのだろうと当時も今も、その程度の認識です。なにしろ日本では卑弥呼の時代の方剤ですから。

さて、炒蒲黄(包煎)10g?菜花30g 茶葉10gのうち茶葉は無視していいでしょう。始めの3剤のみの配伍ですから。蒲黄は活血化瘀止血利尿に働きますので、桃仁 大黄 蒲黄で活血の組み合わせと考えていいでしょう。?花は上海周辺でしか使用されない生薬で、甘涼の性味を持ち清熱解毒剤に属し、凉血止血、清利湿に作用します。日本では流通していません。上海学派はよく使用する生薬です。

失笑散は日本人には向きません、蒲黄と五霊脂(ごれいし:ムササビの糞)が組成で生臭いのが欠点です。活血祛瘀剤として有名ですが、私自身も処方する気も、飲む気にもなれません。クサヤの匂いも個人の好みでしょうが、ともかく、臭いのは苦手です。

藿香9gの配合理由が思いつきません。湿阻中焦に用いられる薬剤です。その意味では厚朴の配合理由も思いつきません。荷葉は?これには止血の意味がありますね。患者の脈弱偏滑、苔淡黄にして干(乾燥)ですから湿は無さそうです。であるなら何故、藿香とか厚朴の配伍になるのか?我には解らないのです。処方した当の本人も何故自分がこの処方をしたのか思い出せないかも知れません。

小便に血塊が出たのは血腫の一部が出てきたのだろうと納得しますが、大便に血塊が出るとは多発性嚢胞腎は解剖学的には消化管とは繋がりがありませんので、私の通常感覚(常識)を超えています。しかし腎臓以外の嚢胞が報告されていることも事実ですから、消化管の嚢胞から出血を起こすほどの活血をすると治療効果が良くなるということでしょうか?それは無いと思うのですが。私の常識もあてにならないかもしれません。脳動脈瘤の併発も問題の一つですから、降圧と活血のバランスが必要になってくることは確かでしょう。

Polycystickidneys

写真 多発性嚢胞腎

Physiopedia UK)より引用

http://www.physio-pedia.com/Polycystic_Kidney_Disease

2013729日(月) 記


多発性嚢胞腎の漢方治療 医案7 腎病漢方治療183報

2013-07-27 00:15:00 | ブログ

蘇安氏医案 肝腎陰虚 瘀濁内滞

(実用中医内科雑誌 2002年 第6期より)

患者:張某 49歳 男性 教師

初診年月日199535

病歴

患者の話によれば、1年前から眩暈耳鳴り、両脇腰部の不快感、尿血諸症が出現し、某省病院で“多発性嚢胞腎”、“多嚢胞性肝臓”と診断を受け、中西薬物治療を受けたが、血尿だけが好転し、余症は変わらなかった;近月来、疲労が重なると、情志が鬱悶し症状が加重し、眩暈耳鳴り、両脇腰部隠痛、咽干口苦、心煩、納少、便乾燥、家族歴では兄が“多発性嚢胞腎、腎不全”で2ヶ月前に死亡している。

初診時所見

血圧22/14kPa(165/105mmHg)、形痩面萎(痩せていて顔色がくすんだ黄色)、神清不爽、両脇下蝕痛(+)、但し腫塊無し、双腎区殴打痛(++)。舌質黒ずんだ紅、苔薄黄、脈細弦。尿検査:蛋白(2+)、RBC(4+)WBC(±);腎機能:Cre 485μmol/L5.48m/dL)、二酸化炭素結合力15.01mmol/L;超音波検査:双腎多数の大小不同の液性暗区、肝内には瀰漫性の大小不同の無回声区。

診断

多発性嚢胞腎 多嚢胞性肝臓

弁証

肝腎陰虚、瘀濁内滞

治法

滋補肝腎、行瘀泄濁化滞

処方:枸杞子20g 菊花20g 茯苓10g 澤瀉10g 牡丹皮10g 麦門冬12g 沙参12g 白芍15g 旱蓮草20g 莪朮10g 土元(庶虫6g 夏枯草12g 瞿麦30g 白茅根30g、同時にnifedipine10mg毎日3回、桂枝茯苓カプセル3粒、毎日3回服用。

経過

上方連続6剤服用後、眩暈耳鳴りは顕著に減軽した。咽干、口苦、心煩は酷くなく、大便は不調であった。BP19/13kPa(143/98mmHg)。患者はやや腰膝の乏力を感じ、小便が不爽であったがその他の不快な症状は無かった。舌淡暗、苔薄白、脈沈細。陰虚は漸復、腎陰陽は尚欠乏、湿濁瘀が交阻、治療は腎陰陽双補を主として、行瘀泄濁化滞を補佐とした。

処方:生地熟地12g 山薬12g 山茱萸12g 茯苓10g 澤瀉10g 牡丹皮10g 桂枝6g 制附子3g 夏枯草12g 瞿麦30g 浙貝母6g 三棱10g 莪朮10g 庶虫6g 沢蘭12g 懐牛膝15g

この方剤以後、随症やや加減し、連用60余剤後、血圧が安定し、尿検査正常、BUN 7.5mmol/L45m/dL)、Cre 158μmol/L1.78m/dL)、二酸化炭素結合力29mmol/L

超音波検査:双腎著明に縮小、nifedipine、桂枝茯苓丸を停止し、上方を蜜丸にして、19gを毎日3回(計27g)を服用。1年後、随訪、正常に仕事をしており、明らかな自覚症状無し。

評析

本案は先天稟賦不足、腎元欠損、肝鬱気滞、水液代謝失暢、瘀濁が腎、肝に互結して発症した。肝腎陰虚は滋陰が宜しく、腎陰陽双欠には補う。その治療は、益腎培元扶生を基礎として、同時に始終、行瘀泄濁化滞の祛邪諸法を補助とする。補中有瀉、補瀉併用、病は難病であるが、効果のある処方の一つであろう。

ドクター康仁の印象

医案中の、両脇下蝕痛(+)、但し腫塊無し、双腎区殴打痛(++)については失笑してしまいます。痛みの程度を定量化する試みなのでしょうか?素人じゃあるまいし。痛み有り→+、意味不明な2+です。3+となると?

どうでもいいことですか。

最初の方剤は杞菊地黄丸加減で、麦門冬12g 沙参12g 白芍15g 旱蓮草20gなど養陰斂陰が目立ちます。後の方剤は八味地黄丸加味になっていますね。夏枯草12g 浙貝母6gは化痰散結の組み合わせ、三棱10g 莪朮10g 庶虫6g 沢蘭12gは活血祛瘀の組み合わせ、懐牛膝15g補肝腎、瞿麦30gは清利湿熱、利水通淋と考えれば理解しやすいですね

庶虫(しゃちゅう)はシナゴキブリ、サツマゴキブリの雌の成虫です。

スケッチは以前の記事をご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121014

2013727日(土) 記

こうも暑いと思考減退が避けられませんね。

猛暑が続いています。熱中症にご注意ください。

暑中お見舞い申し上げます。

「冷やし中華」の文化圏で育ったので、いまだに「冷メン」が「冷メシ」に見えちゃうんですよ。


多発性嚢胞腎の漢方治療 医案6 腎病漢方治療182報

2013-07-26 00:15:00 | ブログ

?氏医案 血瘀湿阻 気機不暢 日久成積案

?西中医 1999年第10期より)

患者:馬某 52歳 男性 工場労働者

入院年月日198716日“多発性嚢胞腎”で入院

病歴

患者19817月 疲労が重なり、両腎区に下垂感を伴う痛みを自覚、肉眼的血尿を合併し、腎盂造影で“右腎結石”、西洋医学治療で寛解。5年後、19867月再度疲労が重なり発病、腰痛、腎区痛、悪心、嘔吐、納差、腹張、尿少。超音波検査:“多発性嚢胞腎”、“腎性高血圧”。血圧21.3/13.3kPa(160/100mmHg)、末梢血検査正常。腎機能検査では軽度尿毒症。舌苔白膩、脈弦細。

中医弁証:血瘀湿阻 気機不暢 日久成積

治法;化瘀利湿

方薬;焦山楂 黄耆 双花 生薏苡仁 海金沙 丹参 茯苓30g 黄柏 当帰 桃仁 紅花 大腹皮10g 益母草60g

服薬15剤後、自覚、精神は以前よりも好転、諸症は均減、脈舌は変わらず。

服薬70剤後、血圧は下降し17/12kPa(128/90mmHg)、特別な自覚症状なし、丹参60gまで増量し継続原方。

後に、視物模糊が出現、まだ血瘀阻絡、水不涵木であり、故に川牛膝30gを加え、連続服用10剤、視力は正常に回復した。

その後、再度右腎の下垂感を伴う疼痛が出現し、原方から黄柏 双花を去り、杜仲30gを加え補腎とし、猪苓10gを利湿、牡蠣30gを散結目的に加えた。継続服用20剤後に鼈甲30g軟堅散結、黄耆60g益気、補骨脂30g補腎を加味した。

611日超音波検査;双腎は以前より縮小、すでに自覚症状無く、714日退院となった。中薬を服用すること200余剤、再検査で腎機能指標は正常、半年後再発無し。

評析

中医学の多発性嚢胞腎に対する認識は、その成因は常に天稟賦不足、腎気衰微として、病機は多くは血瘀湿阻とする。治療に当たっては、化瘀利湿を主体にして、補腎益気を補佐とする。本案では、謝氏は丹参、当帰で養血活血、桃仁、紅花、焦山楂、益母草で活血化瘀、茯苓、薏苡仁で淡滲利湿、黄柏、双花で清熱解毒燥湿、海金沙で利水痛淋、清熱消腫、石决明で平肝潜陽、大腹皮で行気化滞、利水消腫、黄耆で益気消腫、補骨脂を加えて益腎、牡蠣、鼈甲で軟堅散結、猪苓は利湿に働く。全方は湿を去り瘀を散じ、気機を通暢し、腎気を充足させ、諸症が除かれるのである。

ドクター康仁の印象

最初の腎結石と診断された時点で、患者は46歳であり、既に多発性嚢胞腎は発症していたものと推定されます。「下垂感」がキイワードで、その時点で腎の腫大があったのでしょう。

評析の「天稟賦不足」とは、現代医学的に言えば「遺伝的欠陥」となるでしょう。

評析には、医案に記載の無い「石决明」について言及していますが、原稿を書く際に、見落としていたのでしょうね。

経時的に医案を書き連ねたのは理解でしますが、医案中「視物模糊が出現、まだ血瘀阻絡、水不涵木であり、故に川牛膝30gを加え」に関しては違和感があります。腎陰を補うことが肝陰を保つことになるというのが「水涵木」の伝統的な五行学説ですから、補腎陰の作用が明らかでなく、活血作用の目立つ川牛膝を加えた説明としては「血瘀阻絡があると水涵木も阻害されるので、(補肝腎)活血作用のある川牛膝を加えた」とすれば、ややすっきりした説明になるでしょうね。

やはり駄目ですか?

無理に「水涵木」を引っ張ってくるから、自縄自縛の罠に嵌ります。

益母草60g 丹参60gと大量ですね、活血利水がメインですね、後に黄耆は30gから60gに増加され、杜仲や補骨脂が加味されているという全体の流れに着目して、評析を述べて欲しかったですね。

本来は、評析は謝氏自身がお書きになられた方がいいのですが、多忙を極めると、弟子にまかせっきりになってしまいます。出版社から医案を要請された際には、一定のレベルに達した弟子に作成させるべきですね。評析にしてはお粗末でした。

益母草と牛膝に関しては以前の「要薬考」をご参照ください。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121105

猛暑が続いています。熱中症にご注意ください。

暑中お見舞い申し上げます。

昨夜遅く、冷凍のイカを焼いて、酒のアテにして寝入ったのが1時過ぎ、やけに暑いなと感じたものの、「夏はこんなものだろう」と左脳が優位でした。生ゴミを捨てに早朝に起きたものの、まだ暑い、涼しい外気に当たって部屋に戻ると暖房状態。ガスレンジのサーモスタットが故障していたのです。

幸いにも熱中症にならなかったので、ブログ更新となりました。左脳が右脳を支配していたわけですね。

2013726日(金) 記