今日の先生の漢方講義はちょっと趣向をかえて、みなさまに戦国時代に思いをはせていただきます。織田信長、豊臣秀吉は両者とも、戦国時代に天下統一を夢見た武将ですが、癌治療をこの両雄の戦いぶりにたとえてみると、さてどうなるでしょう。
信長と秀吉 がん治療について考えること 比叡山焼き討ち型抗癌療法と兵糧攻め型抗癌療法 細胞の死に方には、ネクローシス(壊死)とアポトーシス(自死)があります。 がん細胞はご存知のように、無制限に増殖していくという性質があります。 がん細胞を戦国時代の「敵」と見立てると、邪魔者は一気に焼き滅ぼしてしまえと、信長が比叡山を焼き討ちにしたように、放射線や抗がん剤で「攻め滅ぼす」方法が、がん細胞のネクローシス(壊死)を狙った方法です。本来は憎っくき坊主だけを滅ぼせばいいはずですが、善良な婦子女も殺すことになってしまいます。延焼も免れず、比叡山を人体にたとえれば、憎っくき坊主どもががん細胞でありますが、比叡山全体の環境破壊が起きてしまう。つまり人体の正常な機能まで、焼き討ちの副作用が出てきてしまうのです。 一方、アポトーシス(自死)は、不要になった細胞が自ら死を選ぶ、プログラムによって制御されています。たとえば、秋の落葉は葉の細胞がもう必要ないと自ら死んでいった結果であります。おたまじゃくしが蛙になる際に、しっぽが自然に無くなるのは、しっぽの細胞のアポトーシス(自死)によるのです。 ここで、がん細胞にアポトーシスを誘導できれば、理想的ながん治療ができるといえましょう。秀吉は「戦わずして勝つ」を戦術としました。兵糧攻め、水攻めなどはその典型でしょう。敵に「やる気を失わせる」、つまりがん細胞の無制限に増殖する性質を、「やる気のない自殺願望」の性質に変えることが、アポトーシス誘導型がん治療です。 漢方がん治療で果たしてアポトーシス誘導型がん治療が可能であるのか、次回お話しましょう。
いかがでしたか。「秀吉型」の癌治療ができれば、患者さんの肉体的負担を軽減できるという意味ですばらしいことですね。次回のお話ご期待くださいませ!