ループス腎炎 症例1
23歳 女性 半年前にいわゆる蝶形紅斑が出現。全身の関節痛と微熱あり。
脛骨前部に浮腫存在。某医受診、抗核抗体640倍陽性、SLEと診断される。
検尿で尿蛋白定性2+、潜血反応定性3+、補体値C3低下、
大学病院を紹介され受診、腎生検の結果、メサンギウム増殖性腎炎の組織診断、プレドニゾロン60mgの経口内服開始、開始後1ヶ月で微熱消失、関節痛消失、抗核抗体は320倍に低下(有意と見るかは別問題)、しかし、尿蛋白は持続、1日尿蛋白定量で1.8g、尿中赤血球は400倍毎視野に15~20陽性、プレドニゾロン25mgに減量した段階で一時退院となる。免疫抑制剤、抗凝固療法は併用せず。
当院初診時、口渇あるも水分を欲せず、舌は暗紅色、苔は黄?苔、脈象は細数。漢方診断 陰虚湿熱挟瘀 SLE lupus nephritis
治療方針 滋陰瀉火 利湿活血
処方:生地黄 知母 山薬 山茱萸 牡丹皮 女貞子 旱蓮草 茯苓 澤瀉 玄参 黄柏 白茅根 益母草 丹参 各1日乾燥重量は略す。水煎服用2週後、顔面紅斑消失、脛骨前部の浮腫消失
水煎服用2ヵ月後、核成分由来の自己抗体は殆ど陰転化、補体C3正常化、CH50値も正常化
平時、朝に香砂養胃丸、夕に六味地黄丸服用、1.5年経過、再発なし。
尿蛋白定量 0.4g1日、顕微鏡学的血尿 400倍毎視野 赤血球4以下。
ループス腎炎 症例2
52歳 女性 5年前よりループス腎炎にて某病院でステロイド治療を繰り返し、浮腫は無くなったものの、尿蛋白は陰転化せず、腎生検はしていない。
尿潜血反応は定性3+であり、
当院受診時、暑がりで汗かき、ESR(血沈)80mm・時 舌質暗、舌苔灰、
脈弦細数 漢方診断 風邪留恋 気血郁滞 SLE lupus nephritis
治療方針 疏肝解郁 活血袪風
処方:柴胡 白芍 当帰 牡丹皮 生地黄 紫草
山梔子 黄芩 地龍 川芎 生干人参
1ヵ月後再診
尿検査 異常なし(定性で)、ESR20mm・時 ただし疲れやすいと訴えた。舌体は胖、脈 沈細 漢方診断 気血不足 湿邪留滞
治療方針 補気養血 清利湿邪
処方:黄蓍 当帰 芡実 金櫻子 地楡 石葦 茯神 茯苓 黄柏
3週後再診
アフター性口内炎が生じたと。下尖に紅点有り。
脈 沈細 漢方診断 陰虚火旺 滋陰清熱の目的で以下:玄参 生地黄 麦冬 何首烏 牛膝 生甘草
さらに3ヵ月後再診
わき腹の張る感じ、上腰部が張って凝り痛む、便が堅くコロコロして、
尿検査で再び定性尿蛋白1+ 血清膠質反応がやや高く、
GOT GPT軽度上昇
舌質は紅、舌苔は薄?色黄 脈 弦数。
漢方診断 気陰両虚 熱毒内滞 気血郁滞
治療方針 解郁調肝 気陰双補
処方:柴胡 郁金 丹参 山梔子 黄芩 猪苓 枳穀 当帰 紫草 蝉脱
生干人参
初診から7ヵ月後再診
尿検査定性で正常 肝機能正常
さらに5ヵ月後再診 病状安定。
袪邪するにあたり正気を損傷させないことが重要であることを示した
症例と言える。
各生薬1日乾燥重量は略した。
SLEメール相談の実例
36歳 女性 名古屋市在住
17歳の時からSLEと診断され、途中で、腎炎治療で当院受診。半年後に尿所見が正常化し、一日プレドニン10mgで数年安定していた。その後、31歳で
結婚し、不妊症に悩み、今年の3月から名古屋大学の産婦人科に通院、卵管造影の検査では、片方(右側)の卵管が閉塞しているとのこと。
[現病歴] 婦人科に通いだしたのは、3月からで5月からタイミング療法開始。今月は前回の生理で、卵胞が残っていたため、プラノバールにより調整。もう一度タイミングで見てから、人工受精にステップアップする予定とのこと。
[服用薬] プレドニン、プラノバール
SLEの漢方治療とは別の、不妊症の漢方治療の相談ということになってしまった。
康仁堂漢方の通管方と促排卵方で3ヶ月後、妊娠、プレドニンは7.5mgに減量し、妊娠中期~分娩までは5mgで維持していただいた。無事女児出産。
SLE(全身性エリテマトーデス)の西洋医学的な治療は、ほぼ標準化されていて、大学の教授であろうと、新米の若手であろうと、大差はない。
SLEの特に腎炎の西洋医学的治療も同様に標準化されている。
一方、漢方治療となると、標準化されているものは「殆ど無い」。老師クラスと新米では明らかに、治療効果に雲泥の差が生じる。
この違いは、無視できない。
ドクター康仁 記
自宅仕事場の環境と寝酒、勝手に絵筆
自宅の仕事場に薔薇を置く理由です。
帽子はなるべく天井に近いところに置きます。
寝酒です。
寝る前のお遊びの「お絵かき」です。