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老化現象としての便秘の漢方治療

2008-05-30 15:45:18 | アンチエイジング

便秘の治療は便を出せば済むものではありません。腸管の機能を回復させるのが真の目的なのです。

老人に多い便秘は、老化現象の表れであると漢方医学は考えます。昔から老化は腎虚といいます。腎虚には大別して、腎陰虚、腎陽虚の2種類がありますが、老化は若いころに比較して、腎陰も腎陽も少なくなってくる陰陽両虚の状態です。腎陽は身体のすべての陽気の元であり、同じく腎陰は身体のすべての陰の元と漢方では考えます。腎陽がより少ない腎陽虚の場合には、体が冷えてきます。特に腰周り、下肢の冷えが強くなってきます。

漢方では「腎は水を主り、また二便(大小便)を司る」と考えます。

老化と共に、腎の陽気が衰えて来ると「腎陽虚衰」といい、便秘 冷え性 浮腫などの症状が出現します。このような便秘を漢方では「冷秘(れいひ)」と言います。

冷秘は老化だけに起こるわけではありません。日常生活で冷たいものを過食したり、気温の低い冬場などでも肌を過剰に露出し、薄着をする生活をし続けると陽気を損傷し冷秘を起こしやすくなります。

老人の冷秘は腎陽そのものが虚衰した真陽不足の状態です。大腸そのものが冷えて、陰寒が内結し、大便を降ろすことが出来なくなり便秘となります。

日本ではエキス剤として市販されていませんが、腎虚便秘にとても効果のある中国の処方がありますのでご紹介します。

済川煎(さいせんせん)

温腎益精 潤腸通便の作用をもつ名方です。お年を召された方の便秘に是非とも服用していただきたい煎じ薬です。組成は以下のようになります。温薬は赤、涼薬はブルー 平薬はグリーンで表記しました。

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肉従蓉(にくじゅよう)温腎、通便に作用します。帰経は腎、大腸です。

腎陽を補い、腎陽虚によるED、早漏、不妊などを改善する作用に優れます。腸を潤す潤腸の働きがあり、老人や虚弱者などの腎虚、腸燥便秘に効果があります。

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<shape id="_x0000_i1030" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 239.25pt; HEIGHT: 180pt"><imagedata o:title="2007 1月18日 当帰 茯神 竜眼肉 遠志 酸棗仁 006" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image003.jpg"></imagedata></shape>

当帰(とうき)養血 通便に作用し、肉従蓉と当帰の2薬は腸を暖め、潤すことによって通便させるという意味で温潤通便の作用があるといいます。済川煎の生薬の配合の中でもっとも量が多いものが肉従蓉と当帰です。

当帰は甘 辛 温で肝 心 脾の3経に入ります。補血 養血の要薬と呼ばれます。有名な養血剤である四物湯は熟地黄 川芎 白芍 当帰の4薬からなります。当帰には活血作用があり、淤血による痛みを除く作用があります。臨床的には打撲による痛み、淤血による生理痛などに多用されます。そもそも、婦人科領域でもっとも多く使用される薬剤のひとつで、補血活血調経といい、血虚、淤血による生理不順の要薬です。漢方薬の中の補薬は熟地黄、亀板などのように、長期服用すると胃腸がもたれるなどの症状が出ることが多く、これを中国語で滋?といいますが、「動かないで停滞している」性質が滋?を起こすとされ「補中不動」といい、補薬の一般的な性質としていますが、当帰は不滋?であるために、「補中有動」であるといい、「気薬」が有動であることから、「行中有動」と一般化されている言い方に習い、当帰は「補薬の気薬」とも称されます。

当帰の副作用ともいえるものは便通が良くなることです。腸を潤す潤腸作用があるからです。この通便作用はありがたい副作用とも言えます。

中国漢方病院では腎陽虚の便秘には補腎剤で潤腸作用のある肉従蓉を、血虚に便秘を合併した場合には当帰を配合することが当たり前のように行われています。一般に、当帰の根塊の尾のほうを当帰尾と呼び、活血作用に優れているといわれています。中央部分は当帰身といい、養血作用に優れます。養血活血目的で当帰を使用する場合は全当帰と処方箋に書きます。

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(きこく)胃腸の気分を良くし、腸の気を下ろすという意味で寛腸下気の作用があるといわれます。中国語の寛とは、調子を整えるとか、気分を良くさせるという意味で、日本語の整腸剤の整に相当するものと考えてもいいようです。ダイダイ、イチャンレモンの成熟果実を乾燥させて使用します。枳実(成熟果実でなく幼果)に比べ作用が穏やかです。

中国の家庭では、すっぽんなどの料理を楽しんだ後に、ダイダイを食べる習慣があります。すっぽんは究極の滋陰薬で大寒の性質を持ちます。ダイダイを食べることは、温薬で大寒による冷えすぎを緩和させる目的と、胃腸のもたれを改善させる2つの目的があります。中国の家庭では、このような伝統医学の考え方が、極く自然に生活の中に取り入られています。

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<shape id="_x0000_i1027" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 239.25pt; HEIGHT: 180pt"><imagedata o:title="2007 2月2日 牛膝 川牛膝 004" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image007.jpg"></imagedata></shape>

牛膝(ごしつ)補肝腎に働き、血を下へ下降させる引血下降の働きがあり、下に下ろされた血は腸を濡養する働きがあります。

帰経は 肝 腎で、 いくつかの効能がありますが補陰剤の一面もあるととらえておけばいいようです。中国の伝統的な補陰剤である左帰丸の中には、枸杞子、亀板、牛膝の3薬が補陰薬として配合されています。

河南省産の准牛膝 四川省産の川牛膝が有名です。写真は准牛膝です。

川牛膝は活血作用に優れ、准牛膝は風湿、補肝腎に優れているという産地の特徴があります。手触りは准牛膝の方がやわらかく、弾力性を感じます。色も准牛膝は川牛膝に比べ明るい印象があり、いかにも「補肝腎」の「補薬」という感じを与えます。

効能:①涼血祛瘀 ②補肝腎 強筋骨 ③利水通淋 ④引血(火)下行

涼血淤作用とは、淤血を除き炎症を鎮める作用です。子宮の収縮作用も報告されています。中国民間では乳香、没薬と共に打撲捻挫の症状改善に用いられています。

補肝腎 強筋骨作用

血と精を補い、体質を丈夫にすることです。中国の病院では

腎虚による腰痛に牛膝と杜仲の組み合わせが良く処方されています。

利水通淋

わかりやすく言えば、膀胱炎、尿道炎を改善する作用です。三妙丸や四妙丸が古来から有名な方剤です。

三妙丸は黄柏 蒼朮 牛膝の3薬からなる方剤です。(四妙丸は三妙丸に苡仁を加味したものです)

引火下行、あるいは引血下行という牛膝の作用は、体の上部に異常な反応として上昇した熱や血を体の下部に導き降ろす作用のことです。重症高血圧によく用いられる中国の鎮肝息風湯では牛膝が君薬の重要な働きをします。

また、諸薬を下へ導くという引経薬としての牛膝の働きも見逃せないところです。

009

<shape id="_x0000_i1026" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 244.5pt; HEIGHT: 183pt"><imagedata o:title="肉従蓉 枳壳 澤瀉 升麻 009" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image009.jpg"></imagedata></shape>

澤瀉(たくしゃ)腎虚にともなう体内の老廃物質を体外に排泄する泄腎濁の作用があります。帰経は腎 膀胱です。最近の中国の研究では事務室総合症という日本での生活習慣病に相当する高血圧症、高脂血症、糖尿病にも効果があるとされます。

010

<shape id="_x0000_i1025" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 244.5pt; HEIGHT: 182.25pt"><imagedata o:title="肉従蓉 枳壳 澤瀉 升麻 010" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image011.jpg"></imagedata></shape>

升麻(しょうま)升清陽、あるいは昇挙陽気といい、気を上に挙げる作用があります。枳壳(きこく)の下気作用と升麻(しょうま)の升陽作用は、中国漢方でいう、対薬の関係になります。

昇挙陽気の作用は柴胡(さいこ)と類似していますが、特に肝陽気が低下している場合は柴胡を使用し、肝陽気が関係してない場合は升麻を使うと中国漢方の教えがあります。内臓下垂、脱肛などの昇陽挙陥(中気下陥に対して)の要薬(かなめの薬)とされます。

なぜ、便秘に対して升麻を使用するのかというと、たとえて言えば、瓶につめた米を瓶をさかさまにして出そうとする場合、ただ押し詰めて出すより、上下に振って出す方が米が出やすいという考え方で、気機の下降と上昇の対薬を用いるのです。

面白いアイデアですね。

確かに臨床的には升麻を配合したほうが通便効果に優れているようです。

アンチエイジング漢方治療のお問い合わせは下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 

漢方専門医院 岡本康仁堂クリニック


アンチエイジングの漢方治療

2008-05-28 21:14:36 | アンチエイジング

続 腰痛 下肢痛と白髪の漢方治療

延年長寿を得るための漢方

今回は漢方薬の七宝とよばれる薬剤を使用した有名方剤についてご紹介したいと思います。「漢方は夢と希望に満ち溢れた世界」であることを実感していただきたいと思います。

七宝美髯丹(しちほうびぜんたん)

髯(ぜん)は訓読みすれば「ひげ」で、髪と置き換えてもよろしいと思います。

成分は以下のとおりです。

何首烏 牛膝 茯苓 枸杞子 当帰 菟絲子 補骨脂

何首烏が君薬です。

効能:滋養肝腎

主治:肝腎精血不足

中国明代に考案された処方で、肝腎精血不足からくる早期老化現象、具体的には、白髪、歯の動揺、足腰の軟弱化やだるさに対する方剤です。

この処方には中国の方剤学(生薬と生薬を組み合わせる学問)の興味ある考え方が含まれています。「陽中求陰」といい、禅問答のようですが、言ってみれば、料理の世界の「隠し味」のようなもので、少々の塩を加えると甘みが倍増するという具合に、補陰薬に補陽薬(この方剤では補骨脂)をちょっと加えると、より一層補陰の力が増すという考え方です。この生薬の組み立て方、配合の仕方は、中国漢方古典に「善補陰者 必干陽中求陰 即陰得陽昇 而源泉不竭」と記載されています。

何首烏が君薬で量がもっとも多く、肝、腎を強化します。特に養髪作用に優れます。さらに、枸杞子、菟絲子(としし)は何首烏を補助し、填精の働きをします。牛膝(ごしつ)は肝、腎を強化するとともに、筋骨を丈夫にします。補骨脂(ほこつし)は温腎補陽として働く他に、牛膝 枸杞子などの滋陰の効果を強めます。茯苓は胃腸の働きを健全にすると共に、牛膝、当帰などによる胃腸のもたれ(滋?)を防止します。

古来より、中国伝統医学では、腎は精を藏し其の華は髪に在り、肝は血を藏し髪は血之余りなり」といい、髪と肝腎との関係は切っても切れない関係にあるとされてきました。生まれつき、「肝腎虚損(がんじんきょそん)」の体質ですと、若白髪になりやすいと言えます。同時に肝血不足による目の乾燥感や眼精疲労も出現しやすくなります。中国漢方の教えでは「肝は目に開く(開竅する)」「肝経は目を巡りよく視る」とされています。また、女性の生理は漢方医学では肝と腎に支配されると考えます。従って肝腎虚損があると生理不順や生理痛の原因にもなります。また、耳鳴りや夜間頻尿の原因にもなるのです。

腎は作強の官」「腎は骨を主り髄を生ずる」といい、骨や筋肉の痛みも腎精不足が原因となります。腎には固摂作用という重要な機能があり腎気が衰えると、本来は血管内に保たれるはずのアルブミンなどの蛋白分子が尿中に漏れ出るようになります。典型的な病状は糖尿病性腎症に出現するマイクロアルブミン尿と呼ばれるものです。

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何首烏(かしゅう)

何首烏は生薬分類では補血、養血薬に入ります。帰経は肝、腎です。生の何首烏は腸を潤し便通を整える潤腸通便の作用がありますが、酒で炮制した何首烏は補肝腎の効果が強くなります(補益精血)。精神安定作用のある夜交藤(やこうとう)は何首烏の蔓(つる)の部分です。青蒿(せいこう)が発見されるまでは、マラリア(中国語で?)の治療薬でもありました。何首烏は薬性が穏やかで、補薬にありがちな胃腸のもたれや食欲低下などの副作用が無いために、不滋?の代表的な補薬です。これは、同じ養血薬に分類される当帰が胃腸障害を起こさない不滋?であるのと同じです。それゆえに何首烏や当帰は滋補の良薬とされています。

最近の研究では、何首烏は高脂血症にも効果があると報告があります。老化を防止すると言われ、薬膳料理では人気のある生薬のひとつです。

夢を与える何首烏伝説

中国には何首烏にまつわる伝説は多々ありますが、まず何首烏(かしゅう)は人名であったという伝説です。百歳を過ぎるまでの長寿で、髪も黒々としていたという言い伝えから、愛飲していた生薬を何首烏と名づけ、延寿の特効薬としたという話があります。また、何田児(かでんじ)伝説というものもあります。おそらく話の起源は同じだろうと思います。何田児(かでんじ)という名の、58歳になるまで、病弱で元気がなく、やせ衰え、皮膚も老化し、妻も娶れなく、仕事もせず、いわば「病弱フリーター的おじさん」が、いつものように、野山に出かけ、何気なく寝転がって虚空を見上げたところ、ふっと目に付いた蔓(つる)の根元を掘り返して拳ほどある根っこを掘り出して帰宅しました。久しぶりの労働でした。土間に放り投げ、疲れて眠り込んだ夜の夢に白髪長髯の仙人が現れ、「何田児(かでんじ)よ、掘り返した根っこを服せよ。神奇(ミラクル)が起こるであろう」と宣託しました。半信半疑で、石臼でつぶし、乾燥させ、空腹時に少量の酒と一緒に服用し始めました。2、3日たつと、まず、体中に力がみなぎるような気がしてきたといいます。1年後には、髪は青年の如く漆黒に変わり、ふさふさと量も増え、いままで乾燥気味であった皮膚は潤い、色艶もよくなり、病弱だった体は青年のように回復しました。そして、妻を娶ることが出来、60歳を過ぎて、人の子(息子)の父親になることが出来ました。親子共に160歳までの長寿だったそうです。評判は評判を呼び、門前には長蛇の列が出来、何田児は秘薬を売ることで財もなしました。何田児の子孫は皆、100歳以上の長寿で髪は黒々とし、皮膚の色艶がよく、腰痛や下肢のだるさなどは無かったといいます。なんとも羨ましい話で、何田児伝説といわれるものです。

何首烏の何は何田児の姓の何であり、首は頭を指し、烏はからすのような黒を指すと言われています。

夢と希望を与えてくれるアンチエイジング伝説ですね。

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牛膝<


続 老化現象の漢方治療

2008-05-27 22:12:27 | アンチエイジング

腰痛 下肢痛と白髪の漢方治療

足がだるくなる、髪もめっきり白くなってくるー老いを感じ始めてからの漢方

老化は足からという言葉があります。早ければ40台後半から症状が出現します。若いころには酔えば酔うほど足が軽くなって、ハシゴ酒もこなしたはずなのに、少しアルコールが入ると、ものの1520分歩くと腰や足の付け根などが痛くなる為に長時間歩けなくなります。何か変だなと思い始めたら、それが「老化」の始まりです。特に、車に乗る生活が常習化しているので、外国などに旅行に出かけた際に、下肢がだるくなってワンブロックを歩くのもままならない自分を発見します。鏡をのぞくと、めっきり白髪も増え、毛染めを余儀なくされます。下肢のだるさはある程度運動で回復してきますが、白髪はどうにもならない。そんな自分に気がついたら「漢方の出番」です。

繰り返すようですが、まず最初の症状は足腰のだるさです。歩行により生じる股の付け根の痛みなどが諸症状です。もちろん、老化がどんどん進みますと、変形性腰椎症や変形性膝関節炎などを併発してきます。そうなるとやれ、ヒアルロン酸など、健康食品が飛ぶように売れるわけです。断言しますが、ヒアルロン酸をいくら飲んでも、足腰のだるさは取れません。

中国漢方医学では老化は腎虚と考えます。「腰は腎の外腑」といわれ、腎虚になうと足腰が弱くなるのです。「腎は骨を主り、髄を生ずる」働きがあります。したがって、老化すれば造血機能も衰えるわけです。「腎は作強の官」とも言われ、足腰の強さは腎に依存しています。「腎は精を蔵し、精は化して気となる」とといています。腎は五臓の機能活動の根本力であるのです。

虎潜丸(こせんがん)

虎が潜む丸薬という、なんとも力強い名前ですが、現在では絶滅危惧種になり、中国でも捕獲禁止となっている虎の骨が配合されている丸薬です。

亀板 黄柏 知母 熟地黄 陳皮 白芍 鎖陽 虎骨 干姜

効能:滋陰降火 強壮筋骨

主治:肝腎陰虚 陰虚火旺 筋骨痿軟

この処方内容を見ただけで、経験のある漢方医には、処方すべき患者像が目に浮かんできます。まず腰や下肢がだるく、体格はやせ、のどが渇き、時に寝汗や、午後に微熱が生じ、脈はやや速く、細く、舌を見れば舌質が赤く、苔が少ない。瞬間的に想像できます。

黄柏と知母は有名な知柏地黄丸に配合されている知母と黄柏の組み合わせです。黄柏は清熱瀉火解毒燥湿に働き、知母は清熱瀉火 滋陰潤燥に働き、共に内熱(虚熱)を清する働きがありますが、知母には滋陰作用があるために傷陰しません。補腎填精の亀板 熟地黄と肝陰を補う白芍は総合して補肝腎に働きます。虎骨は筋骨を強壮します。体を温め精をつける鎖陽は温陽益精に働き、干姜、陳皮は胃腸を暖め、知母 黄柏の苦寒の作用を和らげます。補薬である熟地黄や亀板による胃腸のもたれ(これを中国語で滋?といいます)を、特に陳皮の理気和胃作用が改善します。腎の固摂機能が衰えて「腎気不固」となると夜間頻尿も出現します。腎気不固の改善にも虎潜丸は有効です。

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虎 「虎は死んで皮を残す」といわれますが、漢方医の立場では「虎は死んで貴重な骨を残す」と言い変えたいのです。

<shape id="_x0000_i1026" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 99pt; HEIGHT: 99pt"><imagedata o:title="阪神タイガース" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image003.png"></imagedata></shape>

今年の虎は死んでませんねぇ!。ダントツ常勝なのです。それにしても、金本の努力には頭が下がりますね。「金本兄ィに飲んでもらいたい虎潜丸今年は優勝やで~!

虎骨(ここつ、中国語でフーグー)

漢方古典によれば、帰経は肝、腎 薬性は味辛咸、気平、主治は関節疾患(中国語で風湿性関節炎)、老化による四肢痿軟、腰痛、さらには痔疾、脱肛までと効能は広範囲に及びます。

「本草蒙筌」には附子を加えると?筋健骨,散寒止痛の作用が増強し、牛膝を加えるとさらに補肝腎の効果が増強され、没薬を加えれば行気散に優れ、竜骨を配合すれば一層の精神安定作用が得られると記載してあります。虎は骨に限らず、薬用となる部分は虎肉、眼睛(目)、虎牙、虎筋(腱)、虎爪、虎腎、虎胆、胃、脂肪から作った油などです。

香港には「虎骨追」と称する薬酒が販売されています。虎骨の入手ルートは秘密らしいのですが、寒さや湿気による関節の痛み、老化による四肢痿軟、腰痛、下肢痛、手足のしびれなどに絶大な効能があるといいます。その組成は以下のようなものです。
虎骨 川 桂枝 解 木瓜 紅花 当帰 何首烏 茜草 独活 甘草

杜仲 ?断 肉桂 ?骨脂 秦 草?()


老化現象の漢方治療 COPD

2008-05-24 17:38:20 | COPD

老人性咳嗽(COPD)の漢方治療 

老化現象を漢方用語で語る上で、どうしても避けて通れないのが「腎」についての中国医学のものの考え方です。以下、簡単に中国伝統医学での「腎」の機能についてお話しします。

腎は精を蔵する

狭義の精とは生殖の精のことであるが腎は広義の精を蔵する。広義の精とは、先天的な精と脾胃が吸収する水穀精微物質の精)を指す。

精の作用は生殖、成長、発育であり、腎の精が衰えると、老化現象つまり白髪、脱毛、歯、骨格、生殖 の衰えが出現する。

    腎は水を司る:

腎はその気化作用により尿を生む。浮腫みについての中国医学の考え方は、

全身性の水腫(浮腫)は脾の昇清作用が損なわれた時と肺の宣発粛降作用が損なわれた時に認められる。下半身の水腫は腎の気化作用が損なわれた時に認められる。慢性腎炎の治療原則は健脾利湿=脾の運化昇清を強め湿をとることに加え、腎の気化作用を強め水をとる補腎利水である。

    腎は納気(ナーチー)する: 

肺に吸入された清気を受納する腎の働きを納気という。肺は気の主で、腎は気の本で、肺は出気を司り、腎は納気を司る。陰陽相交わり、呼吸すなわち和す。呼吸は肺の機能だけではなく腎の機能も関係するという考え方です。腎の納気作用が減退すると、気短、喘息などの「腎不納気」の症状が出現する。

腎は気の根元である。根元がしっかりしていないと気が浮いて老人性の呼吸困難などの原因となる。小児は腎気が完成していないので、喘息などが多い、老人は消耗の結果、腎気が不足して、老年性慢性気管支炎などが多くなる。古くから、肺と腎に作用する冬虫夏草を軽く炙り、香りが出てきたら火を止めて、冬虫夏草:山薬=30:50gを混ぜ粉末にして、1日1g程度服用すると老人性の咳嗽に効果があるとされています。

腎は命門である

在志は恐、驚であり、在液は唾であり、在体は骨、髄を生じ、華は髪、歯は骨の余りである。腎は耳と二陰(大小便の二陰)に開竅する。

ざっとこんな具合です。

私は純粋な日本人です。几帳面な日本人、しかも純粋な西洋医学オンリーの医師としての成長過程や私自身の性格からすれば、受け入れ難い箇所も多々ありました。江戸時代末期に「古人の諸説みな空言にて、信じがたきことのみなり」と言い放った杉田玄白の気分にもなったものです。明治に入り「脱亜入欧」を説いた福沢諭吉は「陰陽五行の惑溺を払わざれば窮理の道に入る可らず」と中国思想の排除を強調しました。同じ気分にも、最初のころにはなったものです。

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杉田玄白

江戸末期の蘭学者。本邦初の解剖学書「解体新書」を記す。「古人の諸説みな空言にて、信じがたきことのみなり」と伝統医学をほぼ完全否定した。

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福沢諭吉

日本の近代化に果たした貢献は大であるが、「陰陽五行の惑溺を払わざれば窮理の道に入る可らず」と徹底的に「脱亜入欧」を説いた。主に政治機構や教育機構の西洋化の必要性を強調した。(中国伝統医学などは眼中に無かったことは容易に想像できる)。

          しかしである、、

いい年齢になってのこのこと中国に出かけた日本人である私は、留学中に思い直しました。「西洋医学を最初に学んで実践してきたことはまことにラッキーだった。今度は思想医学として中国医学を勉強しよう。患者にとっては治る治療が最善であるのだから、役に立つ理論(思想)、膨大な薬学、治療法はそのまま受け入れて、治療に応用することにしよう。ともかく理詰めで白黒つけるという態度と、これが最善で唯一の方法だと思い込むことは止めよう」と。以来、その態度は崩していません。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?

症状と診断、西洋医学的治療

体を動かすと息切れがひどくなる、慢性的に咳や痰がでる。重症化すると、呼吸困難が生じる。息を吐きにくくなる。血液に十分な酸素が取り入れられず低酸素血症になります。また、血液中の炭酸ガスが呼気によって排泄させずに高炭酸ガス血症に陥る。最終的に、意識障害をおこし、死亡する場合もある。感染症を合併しやすく、肺炎を起こし、重症になりやすい。嫌ですねえ。

昔、肺活量を測った記憶があるでしょうか?あの機械をちょっと医学的にしたのがスパイロメトリー検査です。ハアーっと息を吐き出させ、1秒率が70%未満であった場合は、気管支拡張薬(β刺激薬)を吸入させ気管支を拡張させて、もう一度ハアーっと息を吐き出して検査をします。その結果が再び1秒率70%未満であった場合、COPDが強く疑われるわけです。要は、息を吐き出す能力が衰えているわけです。気管支喘息では気管支拡張剤で1秒量が大きく改善しますので、COPDではないとされます。肺気腫や慢性気管支炎がCOPDに含まれます。

COPDは西洋医学的な手法では治癒しません。禁煙、気管支拡張剤、去痰剤、咳止めなどを症状緩和のために使用しますが、最終的には在宅酸素療法を行わなくてはならなくなります。いつも、酸素マスクや経鼻カテーテルを顔面につけているのはうっとうしいものですが仕方がないのが実情です。

COPDの最大の原因は喫煙です。患者の90%は喫煙者です。そして加齢とともに発症頻度が上昇してきます。喫煙の他に、大気汚染、有害化学物質や粉塵の吸入、一種遺伝によるもの、若いころに重症肺炎、気管支炎の後遺症などがあります。

正確な医学統計が無いのですが、中国には潜在的なCOPDが多いのではないのかという印象を持っています。喫煙率ではおそらく世界一でしょう。室内の空気も石炭、薪などできれいとはいえません。大気汚染に関しては、ご存知の通り、北京五輪でのマラソンを棄権する選手もいるくらいですし、粉塵や黄砂の被害も多いのです。ところが、私の印象では、確かにCOPDの中等症(スパイロメトリーで一秒率70%未満かつ1秒量が正常値の50%以上80%未満)までは見かけるけれど、慢性呼吸不全や右心不全を合併するような重症例は少ないようです。今後の医学統計の完成を待たなければならないところですが、何か秘密があるかもしれません。私は、漢方薬や食養生にその秘密があるのではないかと思っています。

肺気腫に一番近い中国漢方内科学の範疇は「肺脹」

そもそも「肺気腫」は、イタリアの解剖学者ジョバンニが記載したように、解剖時に患者の肺が開胸してもしぼまないように肺の膨張と硬化を特徴とします。つまり「病理学的」疾患概念です。

中医内科学での「肺脹」とは多種の肺疾患が慢性化し、反復発作を繰り返すことが原因で肺気脹満、肺の収斂粛降失司を来たす、つまり呼吸困難をきたすようになった病証を指します。特に高齢者によく見られる慢性病、多発病の一種であると記載されています。肺気腫、心疾患の合併を中国語では慢性肺源性心臓病(肺性心)といいますが、これらの治療は「肺脹」を参照すると説いています。

慢性の痰と咳が主体の「痰濁壅肺(たんだくようはい)」、感染症を合併した「痰熱鬱肺(たんねつうつはい)」、老人の熱の無いCOPDにほぼ相当する「肺腎気虚(はいじんききょ)」、重症COPDで心不全をきたした「陽虚水氾(ようきょすいはん)」などに分類されます。

このうち漢方治療の真髄ともいえる「肺腎気虚(はいじんききょ)」についてお話します。

肺腎気虚

 【症状】呼吸促拍、呼吸は浅く、はっはっと呼吸数は多くなります。肺気虚のために声が小さく低く、重症になると張口抬肩といい、口を大きく開けて肩を上げて呼吸するようになり、慢性の咳や切れにくい痰が多くなり、動悸が生じます。舌質は淡、紫暗であり、脈は沈細、無力、或いは不整脈の場合があります。これらは、腎の納気作用と肺の主気作用が損なわれたために生じます。

 【治療法】は補肺納腎(ほはいのうじん)、降気平喘(こうきへいぜん)です。

代表的な方薬として、補肺湯や平喘固本湯や補肺湯があります。

補肺湯

温薬を赤 寒涼薬をブルーで表記すると

人参  黄耆  熟地黄 五味子 桑白皮 が基本組成です。

肺気を補う人参と黄耆、腎の納気作用を強める熟地黄と五味子、咳を鎮め、呼吸を楽にする桑白皮と紫菀の組み合わせになっています。

中医内科学での分類的に従えば、肺腎気虚タイプの肺脹、喘症に用いられます。


老化現象を漢方から考える

2008-05-12 18:52:02 | エイジング

老いは皮膚によく現れる

若いころには潤いがあった肌が加齢と共に変化していく。皮膚は乾燥し、皺が出来て、何よりも痒いという症状が現れる。乾燥する冬場に特に痒みがひどくなる。目がさめてみると、体中に引っかき傷が出来ている。顕微鏡で皮膚を調べてみると、皮脂腺や汗腺の萎縮がみられ、分泌機能の衰えが起こっている。つまり、適度な皮脂が失われ、乾燥し、鱗屑(りんせつ)、亀裂が生じ痒みが生じるわけである。皮膚はカサカサと乾燥する上に、毛髪の艶も失われ、爪ももろくなる。

西洋医学の皮膚科を受診すれば「老人性皮膚掻痒症」だと、診断され、高ヒスタミン剤が入った保湿軟膏を処方されるだけである。

皮膚の外側からのケアだけでは十分ではない。内側からの漢方ケアが皮膚の老化を遅らせる。

私は、「四物湯(しもつとう)」を基本にしている。

四物湯は養血の基本処方とされる。組成は 当帰 熟地黄 白芍 川芎の4生薬である。中国医学には養陰潤膚という考え方がある。陰を養い、肌を潤すという意味である。血は重要な「陰」なのである。さらに、皮膚病変のうち、皮膚潰瘍、褥瘡などの肉芽の増殖が悪く、治りにくい病変でも、治癒が促進される。

さまざまな四物湯加減

    桃紅四物湯(とうこうしもつとう)

(桃仁 紅花+当帰尾、熟地黄、赤芍、川血一般に対して用いられる

    黄連四物湯(おうごんおうれんしもつとう)

四物湯に黄芩と黄連を加えたもので 血熱が原因の血に用いられる

    桂枝干姜四物湯(けいしがんきょうしもつとう)

 寒凝が原因の血症に用いられる

    艾四物湯(きょうがいしもつとう)

(阿膠 艾叶 甘草+四物湯):補血止血 調経安胎に作用し、婦人科領域で使用される。

その他に補気薬である黄耆と当帰の比率を5:1にした

⑤当帰補血湯(とうきほけつとう)がある。「気能生血」の中国医学理論から補気薬である黄耆を加え、補血、養血作用を強めたものである。

また、脳卒中後遺症に用いられる

⑥補陽還五湯(ほようかんごとう)も四物湯加減といえる、組成は桃紅四物湯(去地黄加地竜)に生黄耆を加えたものである。

老人性皮膚掻痒症の決定打ともいえる当帰飲子(とうきいんし)

例によって、温薬を赤、涼薬をブルー、平薬をグリーンで表現すると、

⑦当帰飲子の組成は:当帰 白芍  生地黄 藜 防風 ?芥穂 何首烏  黄耆 炙甘草である。

効能は滋陰養血 風止痒といい、いわゆる痒み止めに相当する白藜、防風、?芥といった風剤が配合されている。

中国医学には「血虚生風」という概念があり、平たく言えば、陰=血が虚すれば痒みのような「風」に属する症状がでるという考え方である。当帰飲子は、当帰 生地黄(熟地黄より肌を潤す効力が強い) 白芍 川芎 の四物湯に「気能生血」の中国医学理論から補気薬である黄耆を加え、さらに養血作用の強い何首烏と剤を配合した、いわば、原因に対する治療と痒みに対する対症療法を合わせた方剤であるといえる。

実際に臨床で使用してみると、よく効く印象がある。例外的に肌が赤い場合や、舌が赤い場合は合わない場合もある。そのような場合は清熱解毒薬である黄芩 や黄連、黄柏、知母などや養陰清熱剤である玄参を加味する場合もある。大半はその必要は無い。中国では白きくらげが老人性皮膚掻痒症に有効だとする民間の習慣もある。

そもそも、

⑧温清飲(うんせいいん)という方剤がある。これも四物湯加減である。四物湯と黄連解毒湯の組み合わせで、三焦血熱に血虚を伴う場合の皮膚病変や血熱による月経不順に用いる。組成は

当帰 熟地黄 白芍  黄? 黄 黄柏 山梔子 を等分に配合したものである。皮膚が赤い場合の方剤であり、清熱解毒 養血風を目的にする。ほとんどの老人性皮膚掻痒症の場合は適応がない。

皮膚の老化による痒みは、夏季には発汗や皮脂の分泌が多いので症状が軽いが、
秋以降は空気の乾燥や気温低下によって、発汗・皮脂の分泌が衰えて症状が強くなる。冬季だけの初期症状が次第に通年となれば皮膚の老化が進んできた証拠だ。入浴すると、一時的には皮膚が潤うので痒みが軽くなるが、次第に入浴による皮脂の減少のためにかゆみが強くなってくるのも進行している証拠だ。
生薬のうち、当帰 熟地黄 生地黄 何首烏 胡麻仁 山茱萸などは、皮膚の老化を防ぎ萎縮を予防し、皮脂の分泌を高め、皮膚の乾燥を改善する。
黄耆は独自で皮膚の機能を高め調整する作用と共に、当帰の養血作用を強める。 

痒みがひどくて眠れない場合には

安神作用のある真珠粉、釣藤鈎 夜交藤 合歓皮、酸棗仁などを配合するとよい場合がある。

           要約

要約すれば、血虚の主方(しゅほう)であるのが四物湯であり、西洋医学的な貧血の枠を超えて、自律神経系、内分泌系の失調による諸症、特に婦人の月経異常、生理痛、無月経、過多月経、妊娠中の出血、機能的性器出血、切迫流産、皮膚病などに広く用いることが出来るのである。

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2006523_043

熟地黄
熟地黄は手で触れると特有の粘りがあり、指が黒くなる。それは、地黄の根を乾燥し、酒につけて蒸してつくるという加工方法にある。熟地黄に加工すると、生地黄にある、養陰清熱(消炎解熱)作用が消失し、補血作用が強くなる。

新鮮地黄は清熱涼血作用が強い。生地黄の清熱瀉火 滋陰潤燥の作用は知母の作用と類似している。しかし、知母より清熱作用は弱い。熱邪に対しては必ず生地黄を入れたほうがいいとする中国漢方の伝統がある。

熟地黄を配合して煎じると、ともかく煎じ液が黒くなり、粘りが生じるのが難点である。いわゆる「もたれ」である胃障害をひき起こすことがある。特に長期服用すると食欲低下やもたれ感が生じる。こういった胃腸障害を「滋?(じに)」と中国語で呼ぶが、これを予防するには砂仁や木香を加えるのが一般的な中国漢方である。熟地黄の「不動」の性質が滋?の原因であるとされる。日本では黄柏や呉茱萸を併用する向きもある。熟地黄が配合されているもっとも有名な方剤は六味地黄丸である。熟地黄は補血補腎虚の要薬と呼ばれる。

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漢方専門医院 岡本康仁堂クリニック