盆も過ぎ、18日(月)から診療を再開しました。小生は未だ、体力気力ともに充溢せず、新しい原稿を書く気分になれません。そこで、続-intermissionと称して昔のマリリンの画像から、漢方理論を思いつくままお話します。
先ずは下の画像をご覧ください。
Marilyn Monroe woodcut before printing & printed
by Dr. Kojin
版木の地肌の色が出ていますが、基本的にblack and
whiteの世界です。黒は闇夜の陰、白は陽光の陽とすれば陰陽の世界に繋がりますね。陰陽消長とか陰陽転化という中医学的な概念も感覚的に把握できそうです。一方、伝統的には、紙は木から作成されるのですから、分子構成は炭を載せた版木も刷り上がった版画もほぼ同じです。その意味では、陰陽互根とも言えるわけです。 次の画像をご覧ください。 Original woodcut of Marilyn Monroe before
printing by Dr. Kojin
版木を湿らせて、極薄い炭を載せたところです。しっかりと炭を載せて、刷り上がったものが下の画像です。 Marilyn Monroe woodcut print by Dr. Kojin
白い水平線が見えますが、メモリーチップの画像保存時のエラーです。老婆風から若いマリリンに変身ですね。陰陽互根とはいえ、上下いずれかからも、互いを想像できませんね。
実は表裏一体ですが、裏は想像できず、表しか見えない、つまり、コピー、複製を重ねることが可能な表に囚われるのはなぜでしょうか。私にはよくわかりません。
ところで、七情内傷という中医学用語がありますね。
次の画像をご覧ください。 Marilyn Monroe woodcut by Dr. Kojin Marilyn Monroe in depression blue (original
woodcut) by Dr. Kojin
自律神経のバランスを崩す原因(七情内傷)
現代医学では自律神経の異常は、ホルモン異常、生活習慣の問題などの他に、最大の原因としてストレスをあげています。精神的に緊張した状態が続くと、交感神経優位の状態が続き働き、バランスが崩れて、やがて自律神経失調症になってしまうと考えてもいいかもしれません。
中国漢方医学では「七情内傷」といい、怒、喜、思、悲、憂、恐、驚の7種の情志が人体の生理活動範囲を超えた時、疾病の発生原因となると考えます。
七情発病の特徴は1.発病当初に続いて七情内傷(直接に相応する内臓に影響を与えること)がおこる。2.臓腑の気機逆乱、気血失調を起こす。3.心から始まることが多い。4.心、肝、脾の三臓の気機逆乱と気血失調が多く見られる。5.怒即気上、喜即気緩、思即気結、悲即気消、憂即気郁、恐即気下、驚即気乱の性質を持つ。6.持病を重くさせ、悪化の速度を早くさせる。7.精神疾患と関係する。
の以上です。たとえば精神的疲労によって最も損傷されやすい臓は心と脾です。怒りによって損傷されやすい臓は肝です。
また中医学では労逸(ろういつ)(過労と過逸)は、精神状態も含めた人体の正気に悪影響を与えるといいます。過労とは過大な精神的、肉体的、性的、出産による疲労を指します。過逸(かいつ)は不労(ふろう)ともいい、安逸をむさぼることです。過逸により気血のめぐりが悪くなる。痰湿が出やすくなり、「久臥傷気」といい気を損傷するとも言われます。
「情緒の変化により、情緒の病を治す」という古典の考え
2200年ほど前の「素問」陰陽応証大論に以下のような記載があります。
過度の喜びによる病気は恐れさせると治る
過度の悲しみによる病気は喜ばせると治る
過度の思慮による病気は怒らせると治る
過度の怒りによる病気は悲しませると治る
過度の恐れによる病気は思慮させると治る
これらの治療法での具体的な成功例は、その後の古典に多く記載されていますが、誇張的な事案もあることは確かです。そんなに簡単なものでないことは事実ですが、サイコセラピーの走りです。一方、現代では、抗精神薬依存も目立ってきました。 Marilyn Monroe in excessive smoking (original
woodcut print) by Dr. Kojin
それにしても、マリリンのタバコを吸う姿は多く残されていますね。禁煙は勿論お勧めします。 「お勧め」で思い出しましたが、○国の○優が「私モ飲んでいまス。皆さんにモお勧めしまス」という宣伝を1日中見せつけられています。一種の「寒気」を私は感じます。
自分のみならず他人の生命にまで危険を及ぼすドラッグが蔓延する現代になりました。注意しようにも注意しきれませんから。せめて、絶対に自分から手を出さないことです。トラップ(罠)の多い現代ですから、怪しい(と感じた)人物には近づかないことです。それにしても、他人の内面まで見透かすことはできないのが一般人ですから、やたら善人ぶってすり寄ってくる人物にも要注意ですね。 ドクター康仁
2012年8月20日(水)