gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

がん患者の生活の質の向上には瘀血(おけつ)を除く

2006-09-30 11:05:25 | うんちく・小ネタ

がん患者はどんな原因で死ぬのか? 癌で死なないために (9)

悪液質の改善 

祛瘀(きょお)薬はなぜ必要か莪?(がじゅつ)三棱(さんりょう)など

      2006523_059    2006918_001

<shapetype id="_x0000_t75" stroked="f" filled="f" path="m@4@5l@4@11@9@11@9@5xe" o:preferrelative="t" o:spt="75" coordsize="21600,21600"><stroke joinstyle="miter"></stroke><formulas><f eqn="if lineDrawn pixelLineWidth 0"></f><f eqn="sum @0 1 0"></f><f eqn="sum 0 0 @1"></f><f eqn="prod @2 1 2"></f><f eqn="prod @3 21600 pixelWidth"></f><f eqn="prod @3 21600 pixelHeight"></f><f eqn="sum @0 0 1"></f><f eqn="prod @6 1 2"></f><f eqn="prod @7 21600 pixelWidth"></f><f eqn="sum @8 21600 0"></f><f eqn="prod @7 21600 pixelHeight"></f><f eqn="sum @10 21600 0"></f></formulas><path o:connecttype="rect" gradientshapeok="t" o:extrusionok="f"></path><lock aspectratio="t" v:ext="edit"></lock></shapetype><shape id="_x0000_i1025" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 189.75pt; HEIGHT: 142.5pt"><imagedata o:title="2006 5月23日 生薬写真 059" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image001.jpg"></imagedata></shape><shape id="_x0000_i1026" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 188.25pt; HEIGHT: 141.75pt"><imagedata o:title="2006,9.18 三棱 001" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image003.jpg"></imagedata></shape>

    莪?がじゅつ)      三棱さんりょう

がんの悪液質には、気の流れが悪くなり、血液の淀みがおこり、血(おけつ)が生じるプロセスが必ず関与します。これを気滞血淤(きたいけつお)といいます。瘀血(おけつ)の生じる原因は気滞だけではありませんが、がんには必ず気虚証が伴いますから、気滞を瘀血の第一原因として考えてもいいでしょう。

瘀血(おけつ)とは中医学的な概念です。近代科学的に瘀血を定義する試みも始まっていますが、詳細については後述します。

漢方医学的な莪?(がじゅつ)三棱(さんりょう)の効能

莪?、三の薬理作用は、漢方薬学では破血祛瘀(はけつきょお)といい、血の淀みを破るほど強い血を除く作用があると説いています。一方、行気止痛(ぎょうきしつう)といい、気の淀みも改善し、痛みを止めると説きます。

つまり、理気(行気)作用と血を除く作用の両者の性質を持つと考えていいかもしれません。私個人の感覚では、莪?(がじゅつ)は理気薬である木香(もっこう)に強い瘀血を取り除く作用を付与したものに近く、三棱(さんりょう)は同じく理気薬である郁金(うこん)の瘀血を除く力をより増強させたものに近いものという印象があります。以上の理由から、

莪?(がじゅつ)三棱(さんりょう)はがん悪液質を改善し、患者の生活の質(QOL)を向上させる働きがあります

同じように、瘀血を除く作用のあるものには、丹参(たんじん)田七人参(でんしちにんじん)紅花(べにばな)などがあります。

{丹参、田七、紅花については過去の稿をご覧ください。}

最近の研究

        テルペン類が、がん組織の増殖を抑える働きがある

        クルクミンが免疫力を増強し、がん予防効果がある

        エレメンが、がん細胞の自然死(アポトーシス)を誘導する

“人類への自然からの贈り物”である漢方生薬の現代的な研究はがん治療に大きな進歩を与えてくれるものですね。

自然を後から分析研究して、初めて、大いなる自然の力に驚かせられるのが、人類とも言えそうです。

今日もまた、がん悪液質との闘いが始まります。


流れをよくする理気薬とは?

2006-09-29 10:53:51 | うんちく・小ネタ

がん患者はどんな原因で死ぬのか? 癌で死なないために (8)

悪液質の改善 理気薬はなぜ必要か? 木香(もっこう)郁金(うこん)など

漢方医となってから、最も悟ったことのひとつに、理気薬の効能がある。闇雲に補うばかりでは、生体は正常な機能を発揮しない。「流れ」が必要だ。ジャブジャブと金融緩和目的で紙幣を増発しても、金の流れがスムーズでなければ、経済は活性化しない。同じことだ。

2006929_             Photo_43 <imagedata src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image003.jpg" o:title="2006 5月23日 生薬写真 056"></imagedata>

</shape>

木香(もっこう)     郁金(うこん)

理気薬は行気薬とも言います。がん患者の場合は、必ず気虚を合併します。

したがって、気を補う人参、霊芝、冬虫夏草、黄耆などの補気剤が必要です。

しかし、がん患者では、「気の不足」もさることながら、「気の流れ」が滞っているのです。これを「気滞(きたい)」といいます。気滞がおきると「血」の流れも悪くなり、「血(おけつ)」を生じます。これを「気滞血淤(きたいけつお)」といいます。気血の流れを河川にたとえれば、上流に気を補うと共に、中流、下流の流れを良くすること、つまり、行気(気を巡らす)させることが、より効果的な補気剤の使用法です。

木香(もっこう)の抗癌効果 がん組織の新生血管の増殖を抑える

癌組織中の転写因子NF-κBの活性化を抑え、その結果、癌組織が増大するのに不可欠な新生血管の増殖を起こすといわれるシクロオキシゲナーゼ - プロスタグランジンE2系をブロックします。ブロックする木香の物質は芳香性テルペン化合物であるコスツラノイドといわれています

郁金(うこん)防癌効果 悪液質改善効果 

郁金はショウガ科に属し、乾燥粉末は「ターメリック」という香辛料であり、カレー粉の黄色い色素です。これを利用して、たくわんの着色剤、郁金染めの染料としても使われています。

漢方薬学では郁金の薬理作用を次のように説いています。

行気解郁(ぎょうきかいうつ)といい、ゆううつ、いらいら、抑うつなどの情緒変動(肝気郁結)などの症状を安定させる効果があります。利胆退黄(りたんたいおう)といい、胆汁の分泌促進と黄疸を軽減する作用は肝疾患に用いられます。また、活血止痛(かっけつしつう)といい、瘀血(おけつ)を取り除き痛みを止める作用があり、止血や鎮痛を目的にする他、芳香性健胃薬としても使用されます。つまり、郁金(うこん)は気滞と瘀血を共に改善しますので、がん患者の悪液質の改善には有効です。中国では、広東の広郁金は行気解郁に優れ、四川の川郁金瘀血を除く効果に優れているとされます。

注意すべきは、木香温薬であり、郁金涼薬であることです。漢方医は、患者さんの体調にあわせて、暖める木香が適切か、あるいは冷やす郁金が適切かを判断します。日本では姜黄(きょうおう)が郁金として流通している場合があります。姜黄(きょうおう)は温薬です。

    最近の郁金の研究

郁金の黄色色素クルクミンおよびその辺縁物質には、抗炎症作用、抗酸化作用などの薬理作用が報告されており、悪液質改善と共にガン予防効果も期待されています。

今日もがん悪液質との闘いが始まる。


絵画的悪液質

2006-09-28 09:36:30 | うんちく・小ネタ

「叫び」を見ると がん悪液質をどうしても連想してしまう

がん患者はどんな原因で死ぬのか? 癌で死なないために (7-1)

悪液質の改善 

<shapetype id="_x0000_t75" coordsize="21600,21600" o:spt="75" o:preferrelative="t" path="m@4@5l@4@11@9@11@9@5xe" filled="f" stroked="f"></shapetype><stroke joinstyle="miter"></stroke><formulas></formulas><f eqn="if lineDrawn pixelLineWidth 0"></f><f eqn="sum @0 1 0"></f><f eqn="sum 0 0 @1"></f><f eqn="prod @2 1 2"></f><f eqn="prod @3 21600 pixelWidth"></f><f eqn="prod @3 21600 pixelHeight"></f><f eqn="sum @0 0 1"></f><f eqn="prod @6 1 2"></f><f eqn="prod @7 21600 pixelWidth"></f><f eqn="sum @8 21600 0"></f><f eqn="prod @7 21600 pixelHeight"></f><f eqn="sum @10 21600 0"></f><path o:extrusionok="f" gradientshapeok="t" o:connecttype="rect"></path><lock v:ext="edit" aspectratio="t"></lock><shape id="_x0000_i1025" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 163.5pt; HEIGHT: 204.75pt"></shape><imagedata src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image001.jpg" o:title="叫び ムンク"></imagedata> Photo_42 「叫び」ムンク 1893

燃えるような空と、不気味にうねる海岸線を背にするムンクの代表作「叫び」

である。私はこの絵を見るたびに、今までの医者として携わってきた診療のなかでの数え切れないほどの癌患者さん達を思い出す。

    ガリガリに痩せている

    皮膚の色艶が全く無い

    目が落ち窪み、眼窩がはっきりとしている

    口渇が激しい

    食欲は極端に低下している

    唇は乾燥気味で、舌は萎縮している

絵の中では、甲高い「叫び」が聞こえてきそうであるが、私には「声にならない叫び」つまり「声を出そうにも、無力で発声できない」あるいは「かすれたうめき声のような力の無い叫び」である。

<shape id="_x0000_i1026" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 190.5pt; HEIGHT: 141.75pt"></shape><imagedata src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image003.jpg" o:title="2006,9"></imagedata> 2006925_001 M氏 がん悪液質 康仁写2004

M氏は私が西洋医としての治療のみを行っていた時期の最後のがん患者さんである。完全な悪液質に陥っておられた。抗がん剤治療を行いつつ、中心静脈栄養で自宅療養中であった時を思い出し、記憶に頼り描いたものである。

今日も診療が始まる、、。悪液質の改善を目指す道のりは遠い。


がんの悪液質ってなんだろう?

2006-09-27 11:17:32 | うんちく・小ネタ

がん患者はどんな原因で死ぬのか? 癌で死なないために (7)

悪液質の改善 

がん患者の悪液質(カヘキシー)ってどんなことでしょうか?

がんの進行に伴う食欲不振、脱力感、無力感、倦怠感などの全身性の衰弱や、皮下脂肪の無いガリガリの痩せ。まぶたや下腿(たい)部の浮腫(むくみ)。皮膚が乾燥し、毛髪や皮膚のつやがなくなり、目は落ち込み、貧血の進行による青白い皮膚。これらを総合して癌の悪液質といいます。

がん悪液質が原因で死亡する患者さんが、がん患者全体の1/4であると報告されています。

がん患者がガリガリに痩せる原因

① 食事が摂れなくなり飢餓状態に陥いる。

消化管(口腔、食道、胃、大腸にがんが生長し、飲食物の通過障害

がんと告知された時の精神的ショックによるうつ状態や癌性疼痛

抗がん剤や放射線治療の副作用

        がん悪液質による痩せ

がん悪液質の原因

食事を摂取しないための単純な飢餓状態とは本質的に異なる。

がん細胞から人体の消耗を早めるTNF-αなどのサイトカインなどさまざまな人体に有害物質が放出される。がん細胞はトキソホルモンという毒素も放出し食欲不振に陥れる。

人体の蛋白質や脂肪を分解し崩壊に導く因子をがん細胞が放出する。がん細胞はそれらの人体成分を分解し、正常細胞の約10倍のエネルギーを吸収する。

癌組織由来の活性酸素の大量発生。

放射線療法および化学療法により、さらに多量の活性酸素が発生する。

漢方医学ではがん悪液質を気陰両虚、陰血虚損、気滞血瘀として治療する

気陰双補 滋陰養血 行気化瘀 益気健脾などが治療原則である

        薬用人参に含まれるサポニンの一種ジンセノサイドがトキソホルモンの作用を強く阻害する。(人参は補気薬の代表です。)

        フラボノイドを多く含む生薬はTNF-αの産生を抑制する効果が強い。

        活性酸素を消去する目的には生薬が有効である。

最近では、いくつかの西洋医療機関で、がんの悪液質改善目的で、十全大補湯や補中益気湯などが使用されています。十全大補湯は気と血を同時に補う気血双補の作用に優れ、温里作用もありますが、いわゆる気陰両虚という観点から見れば、補陰、滋陰薬の配合がありません。また理気薬の配合が無いのも難点です。補中益気湯は補注益気(益気健脾)に優れますが、理気薬の配合があるものの、同じく補陰、滋陰薬の配合がありません。また、一般のエキス剤では人参はほとんどが養殖人参であるために効能が限られているようです。

共通するのは、どちらにも黄耆(おうぎ)と人参が配合されていることです。

過去のブログの がんで死なないために。免疫力のアップ 黄耆(おうぎ)人参の稿を参照していただけたら幸いです。

がんにならないように予防するのがもちろん大切なことですが、現実的に「がん」はますます増加をたどる一方です。それなら、「がんになっても死ななきゃいいんだ」と開き直ることも大切な態度じゃないでしょうか。


茯苓(ぶくりょう)も猪苓(ちょれい)もサルノコシカケ科

2006-09-26 10:36:50 | うんちく・小ネタ

がん患者はどんな原因で死ぬのか? 癌で死なないために (6)

免疫力のアップ 利水滲湿薬 茯苓(ブクリョウ) 猪苓(チョレイ)の効用

キノコは体にいいと言われて久しい。しいたけ、マイタケ、シメジ、えのきだけなどである。免疫力のアップといえば、サルノコシカケ科の霊芝が有名であるが、、、

茯苓(ブクリョウ)も猪苓(チョレイ)も漢方薬学では利水滲湿薬に分類されている。

現代医学風に言えば、「利尿薬」といってもいいだろう。

茯苓の作用として、中医学では①健脾利水②寧心安神と説いている。健脾利水とは、中医学の理論に従えば、胃腸を丈夫にして体の余分な水分“湿”を除くという意味である。寧心安神とは精神安定作用と考えていいだろう。茯苓は心、脾、腎に働き、猪苓は腎、膀胱に働く。 現代的な感覚では猪苓の方がより利尿薬に近い感じである。

 Photo_41 茯苓(ブクリョウ)サルノコシカケ科

いったい、利尿薬と「免疫力のアップ」に関係があるのだろうか?

免疫力のアップと関係する理由は、どちらもキノコの一種であることが原因である。

茯苓はサルノコシカケ科のマツホドであり、猪苓はさらに同科のチョレイマイタケの菌核である。キノコ由来の多糖類が関与していると考えられている。

茯苓から抽出される多糖類は抗腫瘍効果がある。

実験的にマウス肉腫、骨髄性白血病細胞に対して増殖抑制効果が報告されている。

ある種の実験的膀胱癌の発症を抑える。

茯苓から抽出される直鎖状多糖類の一種は細胞性免疫力をアップさせる。

茯苓から抽出されるエタノールエキスや水製エキスは炎症を抑える働きがある。

以上が現在まで確認されつつある効能です。

茯苓、猪苓は、利尿薬としての作用の他に、制癌、抑癌の効能が今後注目されていくであろうと思われる生薬です。

キノコ類を食する場合のコツは、なるべく多くの種類を同時に、或いは日替わりで食べることである。キノコの秋、キノコ鍋が健康維持にお勧めである。