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尿路感染症 漢方治療 桑螵蛸散加減弁治 尿道総合証 6(腎病漢方治療370報)

2014-05-29 00:15:00 | 尿路感染症 漢方

 

桑螵蛸(そうひょうしょう)は、カマキリ科のオオカマキリ、コカマキリ、ウスバカマキリ、ハラビロカマキリなどの卵鞘の総称です。卵鞘(らんしょう)とは内部に多数の受精卵を包むスポンジ状の塊で、それを卵と言えばそれまでですが、卵を閉じ込めているメス蟷螂(カマキリ)の体内からの分泌液に薬性成分があるのか、卵自体に薬性成分があるのか、私は知りません。私は味見をしたことはありませんが、性味は甘咸/平、帰経は肝腎とされ、効能は補腎助陽、固精縮尿で、中薬学分類では収渋薬に分類されます。腎陽虚による遺精、滑精、遺尿、頻尿には補腎固渋の目的で、或いは脾陽虚にまで及び、冷えを伴う白色帯下などの病証にも使用されます。
メスカマキリは交尾の後でオスカマキリを食い殺すらしいのですが、オスカマキリには命がけの交尾というより自殺行為とも言えるものです。すぐに殺されるか、ゆっくり時間をかけて殺されるか、ともかくメスは怖ろしいものの、殺されても交尾の本能には勝てないものかと思います。そのメスが産んだ桑螵蛸をヒトの女性が服用する例として、中国では、妊娠期間の頻尿、尿失禁を治療する目的で、粉末にしてお粥で服用させるというような民間治療法もあるようです。
桑螵蛸散(本草衍義)は桑螵蛸を主薬として、遠志石菖蒲竜骨などを配伍して、腎虚による遺尿、混濁尿、頻尿、遺精、滑精などを治療する方剤です。腎陽虚型インポテンツにも用いられます。腎陽虚型インポテンツには、鹿茸肉蓯蓉莵絲子などを配伍します。<o:p></o:p>

 

それでは医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 

患者:姜某 45歳 女性 初診年月日:2000年4月12日<o:p></o:p>

 

病歴:頻尿 尿意切迫一年余、かつて中薬治療を受けたが(薬物不詳)、症状無好転<o:p></o:p>

 

初診時所見:神疲乏力、自汗、双下肢酸痛無力、排尿痛無し、冷えを感受すると症状が加重、尿検査:WBC0~1/HP.舌尖紅、苔白、脈弦細。<o:p></o:p><o:p></o:p>

  

西医診断:尿道総合症<o:p></o:p>

 

方薬桑螵蛸補腎助陽、固精縮尿)20g 竜骨収斂固渋止血)20g 太子参(益気養陰生津)20g 茯苓(健脾利水)15g 亀板滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)20g 石菖蒲開竅寧心、化湿和胃 芳香除湿、利水降濁15g 当帰(養血活血)20g 覆盆子益腎、固精、縮尿)20g 枸杞子(養陰)20g 淫羊藿(別名仙霊脾補腎壮陽、祛風除湿、温燥の性質を持つ)15g 熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)20g 金桜子(酸渋/平 固精縮尿、渋陽止瀉)20g 甘草15g 七剤、毎日1剤、2回に分服。<o:p></o:p>

 

二診:七剤服用にて、日中の頻尿、尿意切迫は著明に改善、但し夜間尿は多く、毎晩7~8回、睡眠不良、前方を加減した。<o:p></o:p>

 

方薬桑螵蛸20g 竜骨20g 太子参20g 茯苓15g 亀板20g 石菖蒲15g 遠志15g 夜交藤(安神)30g 当帰20g 炒酸棗仁(安神)20g 五味子斂肺滋腎、生津斂汗、渋精止瀉、寧心安神)20g 柏子仁養心安神、益陰止汗)20g 金桜子20g 甘草15g 知母清熱滋陰潤燥)15g 黄柏(清熱解毒燥湿 退虚熱 堅陰)15g 肉桂(温裏散寒、補火助陽、引火帰源)10g 肉蓯蓉補腎陽、益精血、潤腸通便)15g 巴戟天(温潤 補腎助陽、袪風除湿)15g 水煎服用、毎日2回に分服<o:p></o:p>

 

経過:治療20日で排尿正常、乏力、腰痛消除、睡眠正常。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象
頻尿があり尿意切迫があっても尿検査で異常なし。つまり、尿道総合症ですね。ところで心腎不交という漢方用語をご存知でしょうか?心と腎が交わらない状態を示す用語ですが、心火と腎水は交通することで、心火は冷まされ、腎水は温められ上焦と下焦の寒熱のバランスが取れているのが正常な状態であると中医学では説きます。心は神の宿るところで心神不寧が高じると、恍惚健忘や、更には心火上炎となり失眠が生じ、一方では、腎虚は頻尿を起こすという病理論です。上熱下寒の状態です。したがって、下焦熱盛、あるいは下焦湿熱には適応しないということになります。<o:p></o:p>

 

症候群的な発想をすれば、睡眠不良、頻尿があれば心腎両虚、心腎不交となりますが、「頻尿が酷いので眠っていられない」と卵が先か鶏が先かの類の因果律でもあります。しかしながら、中医学では、桑螵蛸散の証は心腎両虚、水火不交によるものとします。調補心腎渋精止遺が治療となります。<o:p></o:p>

 

症候分析をすれば、心虚であれば神が養われないので恍惚健忘の証が見られ、腎虚不固、摂納失司であれば小便頻数、あるいは尿液混濁、あるいは遺尿、滑精などの諸証が現れます。

本中の桑螵蛸は補腎益精、固脬(脬=膀胱)止遺で君薬、原方の人参は太子参(益気生津)に変更されています、当帰は養心血に働き、原方では茯神は安神で共に佐薬であるとされています。本医案では茯苓が通して使用されているのが、やや違和感があります。浮腫があるわけではないので、茯苓よりも茯神の方が適していると思うからです。遠志石菖蒲は安心定志作用で交通心腎を促す温薬で佐使薬です。石菖蒲の揮発性成分には鎮静効果があるとする最近の研究もあります。諸薬は協力して補腎益精、渋精止遺を果たしながら補心養神もできるということになります。
さて、二診では、夜間頻尿、睡眠不良が悪化しました。そこで、知母 黄柏 肉桂の滋腎通関丸が配伍されたのが氏の妙技でしょう。元来、下焦湿熱、小便が出にくく、一回尿量が少ないか、点滴状になる場合に使用されています。(298報、364報をご覧下さい。)陰陽相済という治療概念を持ち込んだのは氏の柔軟性を示しています。五味子を加味したり、淫羊藿巴戟天に変更したり、ともかくも、漢方は経験医学ですね。本案の特徴は附子を使わず、滋腎通関丸を加え、更に酸棗仁 柏子仁 五味子等の安神薬を加えたところにあります。二診以降は心因性夜間頻尿という印象が強いです。<o:p></o:p>

 

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2014529日(木)<o:p></o:p>

 


尿路感染症 漢方治療 温陽法弁治 尿道総合証 5(腎病漢方治療369報)

2014-05-28 00:15:00 | 尿路感染症 漢方

 

本日は経期延長と冷えを伴う無菌性膀胱炎の症例です。
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患者:徐某 30歳 女性 初診年月日:1993年9月23日<o:p></o:p>

 

病歴:当該患者は一年前より、寒さに当たり、(その後)疲労後に腰痛、頻尿、下腹部下垂感、四肢が(浮腫のために)腫れ、畏寒(いかん:寒さを畏れる)、月経の期間が延長し十日程度になった。検尿は何度も検査するが異常なく、中間尿培養検査も陰性であった。多種の抗生物質は全て無効。舌淡紅、苔白、脈沈。<o:p></o:p>

 中医弁証:冷淋、胞宮寒凝血瘀合併<o:p></o:p> 

西医診断:尿道総合症<o:p></o:p>

 

治法:温経散寒、理気活血の法<o:p></o:p>

 

方薬茴香理気和胃 散寒止痛)20g 炮姜(乾姜を炮じて炭化したもの、温裏効果は乾姜に劣るが、温経止血作用がある)15g 延胡索(活血行気止痛)15g 五霊脂活血止痛、化瘀止血 ムササビの糞です)15g 川芎活血行気、祛風止痛)15g 当帰(養血活血)20g 肉桂(温裏散寒、補火助陽、引火帰源)10g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 烏薬(温腎散寒 行気止痛)15g 牛膝(活血補肝腎強筋骨 引血下降 利水通淋)15g 鶏血藤(苦/温 活血養血 舒筋活絡)30g 甘草15g 益母草(活血利水消腫)30g<o:p></o:p>

 

上方加減28剤、水煎服用、毎日二回に分服、上述症状消失、快癒退院となった。
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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

附子補骨脂の配伍がありませんので、前案(368報)よりも陽虚の程度は軽い印象です。しかし、益母草赤芍を除いて、全て温薬です。やはり温薬は効き易い印象です。活血し、利水して浮腫を除く、益母草は私も愛用しています。当帰と鶏血藤を比較すれば、当帰は養血が主体、鶏血藤は活血が主体となるのでしょうか。五霊脂は臭いので、温薬で活血を期待する場合には鶏血藤は使い易い生薬です。月経期間が延長しているのに活血薬を使用するのはいかがなものか?と警鐘する日本の物書き漢方医がいますが、血瘀(瘀血)の捉え方が根本的に中医と異なるようですね。活血止血法は中医独自の理論でしょう。特に婦人病にはとても有効な治療方法のひとつです。<o:p></o:p>

 

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2014528日(水)<o:p></o:p>

 


尿路感染症 漢方治療 温陽法弁治 尿道総合証 4(腎病漢方治療368報)

2014-05-27 00:15:00 | 尿路感染症 漢方

 

今回の医案は、生理痛と経血に血塊を伴う腰痛 頻尿 冷えを伴う症例です。無菌性膀胱炎の範疇に入ります。<o:p></o:p>

 

患者:張某 36歳 女性 初診年月日:1996年9月4日<o:p></o:p>

 

病歴:当該患者腰痛、時に尿漏れ、頻尿、下腹部下垂感を伴う冷え、月経時に下腹部疼痛、経血に黒い血塊が混じる。手足が冷え、舌淡紅、舌体大、脈沈。多数の尿検査陰性。<o:p></o:p>

 

中医弁証冷淋合併胞宮寒湿証<o:p></o:p>

 

西医診断:尿道総合症<o:p></o:p>

 

方薬橘核(行気散寒止痛)20g 益智仁(温脾開胃摂唾、温腎固精縮尿)20g 附子(補火助陽 散寒止痛 回陽救逆)10g 桂枝(通陽)15g 茯苓(健脾利水)15g 烏薬(温腎散寒 行気止痛)15g 茴香理気和胃 散寒止痛)(桂枝 茴香は協調して温補腎陽、行気利水に作用)15g 当帰(養血活血)20g 補骨脂(辛苦大温 補腎壮陽 温脾止瀉 固精縮尿)15g 山薬益気健脾養陰)20g 延胡索(活血行気止痛)15g 川芎活血行気、祛風止痛)15g 艾葉温通経脈、寒湿を除き、冷痛を止める作用があり、よく当帰、香附子などを配伍して使用する)10g 麦門冬(養陰)10g 天花粉(養陰清熱利咽)10g 甘草15g: 七剤、水煎服用<o:p></o:p>

 

(附子 桂枝で通陽温腎助陽、補骨脂で補腎助陽の他、橘核 茴香 延胡索 川芎 艾葉の温薬が目立ちます。温めて祛湿、止痛するという手法です。麦門冬、天花粉は温薬による傷陰の防止的な目的で配伍されたのでしょう)<o:p></o:p>

 

二診:1996年9月11日。<o:p></o:p>

 

上方服用後、腹部の下垂感、頻尿は顕著に減軽、まだ、下腹部の冷感あり、腰周りが冷える。前方加減した。<o:p></o:p>

 

方薬: 橘核20g 益智仁20g 附子10g 桂枝→肉桂10g 茯苓15g 烏薬15g 茴香15g 当帰20g 補骨脂15g 山薬20g 延胡索15g 川芎15g 艾葉10g 甘草15g 香附子(疏肝理気、調経止痛 婦人科の要薬)15g:七剤、水煎服用、毎日二回に分けて服用<o:p></o:p>

 

(桂枝を肉桂に変えて、より温裏効果を増強させました。香附子は婦人科の要薬です)<o:p></o:p>

 

三診:1997年9月18日。<o:p></o:p>

 

上方服用後、上述症状は顕著に好転、(しかし)月経に血塊あり、下腹部に索状物を触れ、触ると痛みがある。前方を基礎に加味した。<o:p></o:p>

 

方薬橘核20g 益智仁20g 附子10g 肉桂10g 茯苓15g 烏薬15g 茴香15g 当帰10g 補骨脂15g 山薬20g 延胡索15g 川芎15g 艾葉10g 甘草15g 香附子15g 三棱15g 莪朮15g 紅花15g 桃仁15g 木香g 川楝子20g 吴茱萸(頭痛や下腹部の冷痛に効果があります。散寒燥湿といい寒湿を除く作用があります。)10g:七剤、水煎服用、1日2回に分服。 遂に快癒した。<o:p></o:p>

 

三棱15g 莪朮15g 紅花15g 桃仁15gは全て活血化瘀薬です。行気薬の木香g川楝子20gの配伍は延胡索を中心にして考えると分かりやすいのです。延胡索の性味は辛散、温通で、活血行気することもできます。良い鎮痛効果があるので、全身の疼痛に用います。気滞血瘀による消化管系の痛みには木香や川楝子を配合し(金鈴子散)、また冷えを伴う痛みには茴香を、生理痛には当帰、川芎、白芍、香附子などを配伍氏、側胸痛には栝萋、薤白、鬱金、烏薬などを、全身の血滞による疼痛には、当帰、桂枝、赤芍などを、配伍して使用します。)<o:p></o:p>

 

ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

徹底的に温薬を配伍していますね。寒薬は川楝子のみです。三棱 莪朮 紅花 桃仁を婦人科系に使用すると過多月経がくると警鐘する物書き屋の日本の漢方医がいますが、私はそのような経験はありません。<o:p></o:p>

 

温腎助陽、温経活血、温裏行気等と、あらゆる温薬のオンパレードですね。やはり、温薬は効き易い印象です。<o:p></o:p>

 

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2014527日(火)<o:p></o:p>

 


尿路感染症 漢方治療 温陽法弁治 尿道総合証 3(腎病漢方治療367報)

2014-05-26 00:15:00 | 尿路感染症 漢方

本日も無菌性膀胱炎の医案を紹介します。

患者:劉某52歳 女性 初診年月日:2005年6月23日

主訴:頻尿 尿灼熱十余日

病歴:反復性尿路感染十余年、十余日前から誘因無く頻尿 尿灼熱出現。尿検査正常。抗生物質点滴静注十日、症状好転無く、入院治療となった。

初診時所見:頻尿 尿灼熱 腰酸痛、倦怠乏力、下腹部冷感、舌淡、苔薄白、脈沈細

中医診断:労淋(久病腎虚 湿熱内蘊)

西医診断:尿道総合症

方薬

黄耆30g 党参20g 熟地黄20g 山茱萸20g 山薬20g 牡丹皮15g 茯苓20g 澤瀉20g 懐牛膝20g車前子15g 土茯苓50g 薏苡仁25g 益母草30g 白茅根30g 石葦20 萹蓄20g 甘草15g 十剤、水煎服用、11剤、2回に分服。

経過:服薬10剤で腰痛、倦怠乏力軽減、但し頻尿、尿灼熱、下腹部冷感あり、舌淡、苔薄白、脈沈細、以前よりは有力である。張教授が診察、中医の寒淋に属すると判断、腎陽不足、温化固渋に欠くと弁証。益気升陽、温腎固渋で治療する。

方薬

桑螵蛸15g 益智仁15g 竜骨20g 亀板15 黄耆30g 太子参15g 白芍20g 桂枝25g 牡蠣20g 天花粉15g 知母15g 附子10g 甘草15g 七剤、水煎服用、11剤、2回に分服。

経過:服薬7剤で、腰酸痛、倦怠乏力、頻尿改善、僅かに尿熱がある、下腹部は転暖し、苔薄白、脈緩。尿検査異常なし。更に7剤継続服用、患者症状消失退院となる。

ドクター康仁の印象

陽虚の「程度の差」で、強い印象ならば、桂枝、附子を使用し(参耆で益気補中し)、陽虚の「程度が軽い」印象ならば、巴戟天 淫羊藿 仙茅を用い、陰中求陽、陰陽調和を図るのが張琪氏のやり方ですね。清熱利湿痛淋の剤は陽気を傷つけるので、一切使用していませんね。尿道の収縮感を伴えば芍薬甘草湯の配伍になるわけです。亀板は陰中求陽の陰に相当します。桑螵蛸、益智仁はそれぞれ、咸、補腎助陽、固精粛尿、辛温、温腎助陽、固精縮尿に作用し、まず、桑螵蛸 益智仁 竜骨を配伍してから、陽虚の度合いをみるのが、氏の定法でしょうか。

それにしても、知母の意味(役割)はなんでしょうかね。尿の灼熱感の改善がいまいちでしたので、知母を加え、清下焦熱の意味を持たせたののでしょうね。天花粉の配伍にせよ張琪氏の心中ではある程度の道筋が出来ているのでしょうね。

2014526日(月)


尿路感染症 漢方治療 温陽法弁治 尿道総合証 2(腎病漢方治療366報)

2014-05-25 00:15:00 | 尿路感染症 漢方

 

前報で無菌性膀胱炎の症例を紹介しました。さて、今回はどのような医案になるのでしょうか?医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 

患者:魏某 59歳 女性 初診年月日:2005年6月25日<o:p></o:p>

 

主訴:頻尿 腰痛、下腹部不快2日間<o:p></o:p>

 

病歴<o:p></o:p>

 

患者は、2005年4月 発熱 寒戦 腰痛 肉眼的血尿にて黒龍江省の病院で検査を受け、尿中WBC増加(具体数不詳)、中間尿培養陽性にて、多種の抗生物質治療を受け、症状は消失した。2日前から、特別な誘因無く、頻尿、腰痛、下腹部不快感が出現した。外来尿検査;RBC3~5個/HP、WBC2~3個/HP、入院治療となった。<o:p></o:p>

 

初診時所見:頻尿、腰痛、下腹部不快、時に悪心、舌淡紅、苔薄白、脈細滑。中間尿培養細菌数<1x10の7乗/L、双腎膀胱は超音波検査で異常なく、生化学検査異常なし。<o:p></o:p>

 

中医診断:労淋(気陰両虚、湿熱内蘊)<o:p></o:p>

 

西医診断:尿道総合症<o:p></o:p>

 

治法:益気養陰、清熱利湿<o:p></o:p>

 

方薬<o:p></o:p>

 

黄耆30g 太子参20g 黄芩15g 地骨皮20g 柴胡20g 麦門冬20g 車前子15g 瞿麦20g 萹蓄20g 白花蛇舌草30g 蒲公英30g 白芍20g 烏薬(温腎散寒 行気止痛)15g 益智仁(温脾開胃摂唾、温腎固精縮尿)15g 牡丹皮15g 山梔子15g 甘草15g 七剤、水煎服用、11剤、2回に分服。<o:p></o:p>

 

経過 服薬7剤で患者の症状は明らかには好転が見えず、尿検査:RBC0~1個/HPWBC0~1個/HP<o:p></o:p>

 

(印象:黄耆から車前子までは清心蓮子飲から石蓮子を除いた形になっています。烏薬、益智仁の配伍があるにせよ、涼寒薬がメインの印象です。尿所見からみると最初はこんな方薬になるのではないかと思います。)<o:p></o:p>

 

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二診:2005年7月4日。<o:p></o:p>

 

張琪氏診察、患者 腰酸痛、頻尿、下腹部張満、畏寒喜暖、舌淡紅、苔薄白、脈沈細、「寒淋」に属すると氏は弁証。<o:p></o:p>

 

腎陽不足、温化固摂失司、寒湿蘊久、兼気滞、治法は温補腎陽、行気固摂と判断した。<o:p></o:p>

 

方薬<o:p></o:p>

 

山薬益気健脾養陰)20g 桑螵蛸補腎助陽、固精縮尿)15g 竜骨収斂固渋止血)20g 亀板滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)15g 熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)20g 烏薬15g 沈香(伽羅と同意:行気止痛、降逆調中、温腎納気に作用)10g 山茱萸(補腎陰 収斂固渋)15g 巴戟天(温潤 補腎助陽、袪風除湿)15g 枸杞子(養陰)15g 女貞子(養陰)15g 甘草15g 七剤、水煎服用、11剤、2回に分服。<o:p></o:p>

 

経過:服薬7剤で、尿の回数減少、時に腰酸痛、下腹部張満畏寒消失、舌淡紅、苔薄白、脈象は以前よりも有力、尿再検査異常なし。快癒退院となった。<o:p></o:p>

 

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ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

初診時の中医診断は張琪氏の弟子の診断で、清心蓮子飲加減でしたが、投薬1週間で、自覚症状の改善が無く(尿所見は随分改善しましたが)、御大のお出ましになり、見事に弁証が的中し自覚症状の改善が得られ快癒退院となった訳です。こう言っては何ですが、烏薬や益智仁の配伍もあったのですから、恐らくは、初診の弟子も、1週間以降は、苦寒の黄芩、山梔子を除いて巴戟天、或いは附子、沈香(高価ですしね)とは行かないまでも、橘核(行気散寒止痛)を加味するとかの工夫もしたと思います。1週間で結果を出せといわれるのも辛いところですね。張琪氏にしても、桂枝、附子等の配伍をしなかったわけですから、寒淋にしてもそれほど強い寒証ではなかったのでしょう。陰陽相済、陰中求陽など理屈はいくらでも後付けできますね。最初の方薬は無駄ではなかったとの印象を持ちました。<o:p></o:p>

 

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2014525日(日)<o:p></o:p>