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自律神経失調症の漢方治療 ⑪ ED

2007-01-31 10:03:13 | ED

前稿では「やる気はあるが勃起しない。あるいは勃起が不十分だ。」という自律神経失調気味の際のコンディショニング(下準備)についてお話した。本稿では「やる気が起きず、勃起しない。」の際のコンディショニング(下準備)についてお話したい。

 そもそも「やる気が起きる」ためには、基本的な気血精の充足が必要だ。若くして「腎虚(じんきょ)」に陥り「腎精不足」になれば「青白くひ弱な性欲」はあるものの、「やる気」すら起こらない。気血の充足には「気は血の帥(すい)、血は気の母」といわれるように補気養血薬が必要である。人参 黄耆 冬虫夏草などは補気薬の代表であり、いまさら説明も要らないだろう。当帰 熟地黄 何首烏などは養血薬の代表であり、説明は省く。

 何故、この種のEDを自律神経の異常として取り上げるかというと、最終的にペニスの充血を起こす陰頚動脈の拡張はつまるところ神経支配であるからだ。

中国秘方中の特殊な補腎精の薬剤

 本稿では基本的な「腎精の充足」の一部にスポットをあててみたい。

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覆盆子(ふくぼんし) 帰経: 肝 腎

益腎固精 固精縮尿 益肝明

ED 早漏に特に効果がある。夜間頻尿や尿失禁にも効果がある。老年性視力減退にも効果がある。

中国産はゴショウイチゴの完熟直前の実を乾燥させて用いる。味は甘酸っぱく「酸甘化陰」の理論に一致し、陰液を増やすことにもなり精液の量も多くする。

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?(おうぞくかく:中国名インスーカ) 帰経: 肺 大腸 腎

(本草綱目彩色薬図 貴州科学出版社より)

芥子(けし)の実の外側の殻の部分である。芥子の実からはアヘンが採取される。中国では古来より咳止め、下痢止め、鎮痛の目的で広く使用されてきた。中国では?穀そのものは医師の処方箋扱いになっているが、麻薬免許を所持している漢方医だけでなく広く処方されている。腎気を固め精液が漏れるのを防ぐために、早漏を伴うEDに使用される。日本では使いこなせる漢方医は殆どいない。

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陽起石(ようきせき)帰経: 腎

温腎壮陽

アクチノライトと呼ばれる珪酸カルシウム、マグネシウム、鉄塩が主成分の鉱石である。腎陽不足の陰部が寒々としたEDに効果がある。通常は粉末製剤を他剤と共に頓服する。子宮の冷えにも効果があり、古くから宮廷女子が服用した。

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菟? 子(としし) 帰経: 肝 腎 脾

ネナシカズラの成熟種子で、辛 甘 微温(清書によっては平性)である。

腎虚のED 早漏に効果がある。また尿に精液が混じる精液尿や、夜間頻尿、尿失禁にも奏効が認められる。

補肝腎作用は安胎(あんたい)作用につながり、古来より胎動不安がある流産の防止薬としても有名。補肝腎薬の中で補骨脂(ほこつし)仙茅(せんぼう)と共に止瀉(ししゃ: 下痢を止める)作用があることでも特徴であり、腎虚、胃腸虚弱による下痢などに奏効する。古来より「燥にも? にも偏らず、補陽すると同時に益精に働く良薬」とされる。また養肝明目に働きエイジング(老化)による目のかすみに効果がある。

   続く、、


自律神経失調症の漢方治療 ⑩ ED

2007-01-30 12:51:14 | ED

バイアグラやシアリスより効く漢方薬ってあるのか?

ED(勃起障害)で悩む男性諸氏から尋ねられることがある。私は50代半ばだから、当然仲間もその年代だ。いろいろ悩みを聞いていると思いのほかEDが多いことに驚かされる。海外通販で密かにED治療薬を購入してなんとか「しのいでいる」のが現状だ。

一説によれば、現代日本では1,000万人がEDで悩んでいるという。「悩んでいる」「EDではあるがあきらめている」「飲まないとセックスが出来ないんじゃないかといつも不安になる」いろいろな訴えだ。

EDとは専門的には「性交時に十分な勃起が得られないため、あるいは十分な勃起が維持できないため、満足な性交が行えない状態」と定義されている。

1000万の男性が何らかのEDがあるとすれば、もはや国民病に近い。国民の約一割が西洋ED治療剤を服用しなくてはならないとしたら「異常事態宣言」を発令しなくてはいけないだろう。副作用の殆ど無い漢方薬の出番である。ED改善漢方薬は「確実に存在する」。

30歳代~40歳代のED

若い年代のEDも目立つ。30歳代~40歳代のEDが多いのに驚かされる。性情報が氾濫している一方で、EDに悩むとは何か「ちぐはぐ」である。若い年代のEDの原因には圧倒的に身体、精神的ストレスである。性欲が一番高まる時期であるにもかかわらず、性欲の低下も出現してくる。注意しなくてはならないのが性欲の有無である。人一倍性欲があるにもかかわらず、いざという時に性行為に支障をきたす場合は医師の診察が必要だ。しかし何事も心配しすぎるのは却ってストレスを増加させ、EDを悪化させる。この年代のED漢方治療薬は単に精力増強剤的な漢方薬では効果が不十分であり、各個人の「ストレス度や消耗度に合わせた漢方生薬の配合が必要」である。

50歳代~60歳代のED

50歳代~60歳代のEDは、大方「歳だから仕方がない……」と半ばあきらめがある。しかしそうではない。腎精を補い、気血を共に補い、気血のめぐりを良くし、脳を活発化させ、精神状態を安定させることによって、半ばあきらめかけていた性能力が見事に復活する

60歳代以上のED

元来、バイアグラやシアリスが登場するはるか大昔から、中国漢方医は延々と時の皇帝などの精力を維持するためにいわゆる秘薬を考案してきた。いわゆる「房事専門のお抱え医」が存在した。それらの「秘方」は代々受け継いでこられている。80歳を過ぎても性行為を楽しんだ時の権力者は数多いのである。

現代の中華人民共和国になってもその伝統は変わらない。毛沢東然り、鄧小平然り、80を越えても大河で泳ぎ、愛人を囲っていた。逆に周恩来は生涯、妻一人を通したために「清廉なる偉人」とされているくらいだ。

この年代のEDの治療で大切なことはひたすら精力剤を補充するだけでは「片手落ち」の治療となる。基礎的な体力を増強させる治療と、気血の活発な運行を促進させる治療つまり老化を防止する治療と、糖尿病、高血圧、気管支喘息、アレルギーなどの基礎的な疾患にも有効な治療を併用しなくてはならない。西洋医学的な基礎疾患の治療薬には性機能の低下をきたす副作用があるものが多い。

市販の精力剤にも注意が必要である。漢方薬局には「○蛇」とか「○レオ○」とか「○ナ」あるいは「マ○」などの薬剤が販売されているが、どれも中国秘法からすれば「子供だまし」に近い。気休め程度である。長生きにつながるような薬剤の配合になっていない「片手落ち」の配合が目立つ。

専門用語も混じり、やや難解であるかもしれないが初稿を始めたい。よく知られている薬剤は説明を省く。

中国秘方に記載される特殊な漢方処方薬

自律神経の回復を目指す

従来EDは腎虚の観点から治療されてきたと思われる方が一般的であろう。しかし、歴代の名医は、EDは肝を治療すると説く。現代のストレス社会ではなおさらストレス性の中医学的な肝障害が目立つ。ペニスの充血勃起には、腰部神経叢の正常反射、陰茎動脈からの血液の流入、陰茎静脈の収縮による流入した血液の保持の3点の共同機能による。腰部神経叢は脊髄周囲自律神経から大脳へと連絡する。肝は疎泄を主り、情志、自律神経を介しての気血の正常な運行を主る。肝経は陰部をまとう。勃起、射精を主る臓は肝なのである。肝経の湿熱、痰濁、淤血はすべてEDの原因となる。EDには肝気の鬱滞、肝火、肝化の胃腸への横逆、肝血不足がすべて原因となる。

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九香虫 本草綱目彩色薬図2003年版より

帰経: 脾 肝 腎に作用

行気止痛に優れることから理気薬に分類されている清書がある。

平肝温脾に優れておりストレス性の胸脇痛、胃痛に効果がある。

温腎助陽作用に優れED、腰痛、頻尿に効果がある。このため助陽あるいは補陽薬として分類されている清書がある。九香虫の特徴は補剤であると共に理気剤であるという二面性にある。

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羚羊角(れいようかく)帰経: 肝 心

最強の平肝息風薬である。古人は「肝の病にありては必ず羚羊角を用い、心の病にありては必ず犀角を用うべし」と言った。ストレスによるイライラが多く、目の充血などがあり、血圧が高めで、肝火が強い場合には1~2gを粉末にして服用し、性行為に及ぶことを薦めている。

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丁香(ちょうこう)帰経: 肺脾胃腎

温中降逆 下気止痛 温腎助陽

古来より肝経に寒邪が鬱滞している場合に有効とされている。つまり、陰部が寒々とした感じがありED気味である場合などに有効なのである。ウイスキーのお湯割りに丁子(ちょうじ)を浮かべて飲むのもリラックスも兼ねていいとされる。胃腸の寒邪による「しゃっくり」には古来より丁香柿蒂湯が有名である。郁金(うこん)は丁香の作用を減弱させるとも言い伝えられている。

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蜈蚣(ごしょう)帰経: 肝

息風止痙 行経痛絡 攻毒散結

古くから破傷風や顔面神経痙攣の痙攣止めなどの特効薬であった。攻毒散結作用は「がん治療」にも使用されている。頭痛、癲癇(てんかん)にも奇効を示す。EDの治療薬としては、「陽気鬱滞(ようきうったい)」といい、ぎらぎらと性欲があるにもかかわらず、その刺激が伝わらないタイプのEDに効果がある。

難しい漢方用語であるが、

肝気鬱結、肝郁化火、肝経寒盛、陽気鬱滞は正常な性欲があるにもかかわらずEDの原因となる。それらの治療は精力剤の投与以前の「自律神経を正常化させる」という意味での「下準備」なのである。

   続く、、


自律神経失調症の漢方治療 ⑨

2007-01-29 13:17:07 | うんちく・小ネタ

頭痛漢方専科 群発頭痛の漢方治療

   群発頭痛とは?

大の男が涙を流して「目の奥が痛くてたまらない。目の奥をえぐられるような痛みがある。かなづちで頭を殴られるようだ。」とじっとしていることが出来なくて、頭をかかえて部屋の中をうろうろする。痛む方の目は充血して涙がでる。酷い場合は鼻水を流して見た目が哀れだ。

年(ねん)に決まってでる時期と時間帯がある。その時期にはアルコールを飲むと決まって頭痛がおこる。明け方に痛みで目が覚める。その痛みが恐ろしくて眠れないような明け方発作型もある。海外出張で飛行機に乗ったら発作が出たというサラリーマンもいる。群発頭痛の原因はいまだに知られていない。交感神経と副交感神経のバランスが崩れていることは確かなようである。体内時計の変調が原因であると推測している学者も存在する。

 私が「自律神経失調症」の一種の病状としてあげている理由は、自律神経の変調にしても、体内時計の変調にしても、どちらも生体の「自律機能の失調」だからである。

私の老師のさらにその老師の驚くべき漢方処方 「寒症型群発頭痛」

 私の老師の上海中医薬科大学の朱教授から教えられた話である。朱教授が彼の直属の老師の外来書き番(教授のそばに座り、カルテを口述筆記する役目の医師)の時である。ここ1ヶ月ほど夜中3時ごろから5時ごろまでの酷い頭痛でろくに眠っていないという中年の男性が受診した。睡眠不足が続いた結果いわゆる無神という元気の無い表情である。年に3回ほど2ヶ月ぐらい頭痛発作が起きる時期があり、一年の約半分は睡眠不足と訴えていた。

 老教授は診察をするや、すらすらと処方名を述べた。朱教授は耳を疑った。

なんと毒性のある附子(ぶし:トリカブト)を60g(1日量)含む処方箋だったからである。病院の薬剤部も大騒ぎ、老教授と朱医師の2つの印鑑を処方箋に押してやっと漢方生薬が薬局から患者に手渡された。

 翌日、件(くだん)の患者が満面の笑みで再受診した。

「おかげさまで、嘘のように楽に眠ることが出来ました。」

喜びの涙を流しながら、患者は老教授の手を握り締めて何度も謝意を伝えた。

順次、附子の量を減らしていったのは言うまでも無い。

以来、老教授は「附子の達人」の名を欲しいままにしたという。

朱教授は

「日本人は中国人に比べ漢方薬に過敏な体質があるから、鈴木先生が試される場合には10~15g程度にしておいたほうがいいですよ。」

と忠告してくれた。

漢方の診断の中には基本中の基本である「寒熱弁証」がある。中医学では当たり前の基本的診断ではあるが、西洋医学の診断には「無い」。頭痛の診断の中にも無い。

現在では附子(ぶし)は生附子の毒性を炮制して毒性を減弱させた炮附子を使用している。もちろん「寒症」に用いられる。

私の同僚の趙博士は寒症の頭痛に対しては、頭痛薬である川芎 (せんきゅう)は脳血管拡張作用があるので使用せず、茱萸(ごしゅゆ)の方が良いと言う。

 西洋医学での頭痛の診断に中国医学の最も基本的な「寒熱」の診断が無いのは残念である。

「熱症型群発頭痛」

天麻鈎藤飲(てんまこうとういん)釣藤散(ちょうとうさん)などが有効だといわれているが、単独で十分な効果が得られるかについて私は疑問がある。

天麻鈎藤飲(てんまこうとういん) 雑病証治新義

作用:平肝息風 清熱安神 補益肝腎

天麻 鈎藤 石決明 山梔子 黄 牛膝 益母草 杜仲 桑寄生 夜交藤茯神が組成の方剤であり、日本にはエキス剤は無い。

天麻 鈎藤 石決明が主薬の組合わせで肝陽と肝風を抑える(平肝息風)。

山梔子 黄芩は肝熱を清する。牛膝は上逆した血を下降させる(引血下行)。

益母草は清熱活血に働く。杜仲 桑寄生は補肝腎に、夜交藤と茯神は精神安定(寧神安神)に作用する。血圧が高めで、のぼせがあり、年配の方で気血両虚気味で、かつ眩暈(めまい)がある場合の方剤であり、群発頭痛のような激しい頭痛にたいする主方ではない。頭痛より眩暈が目立つ症例に使用される。

 ところで天麻鈎藤飲の出典とされる「雑病証治新義」は1958年 胡光慈著であるが「新義」とは「新しい解釈」の意味であり、原典を私は知らない。どなたか目に止まった方で原典を知っている御仁がいれば教えていただきたい。

釣藤散(ちょうとうさん) 宋代 許叔微 「普済本事方」

作用:平肝息風 健脾化痰

釣藤鈎 菊花 防風 陳皮 半夏 人参 茯苓(茯神) 炙甘草 石膏

涼薬(ブルー)温薬(赤)平薬(グリーン)の組成と石膏が比較的多量に配合されていることから熱症にたいする方剤と思われる。

平肝息風に作用する釣藤鈎 菊花 防風の組合わせは天麻が無いがほぼ天麻鈎藤飲と同意である。陳皮 半夏 人参 茯苓(茯神) 炙甘草の組合わせは益気健脾化痰の作用であり、全体の組合わせは、「肝風」と「痰」が結し、「風痰」となり頭目に上擾(じょうじょう)した場合の方薬である。

朝方の頭痛に効果があるとも言われている。のぼせや目の充血、血圧は高め、眩暈(めまい)、不眠傾向がある場合に有効である。しかし、釣藤散単独では群発頭痛を抑えきれないと私は考える。日本には釣藤散のエキス剤がある。

中国では薬効を強くするために羚羊角(れいようかく: サイガカモシカの角)を配合した羚角釣藤湯が古来よりあるが日本では市販されていない。釣藤散には頭痛に特化した頭痛生薬との配合が必要である。

   続く、、


自律神経失調症の漢方治療 ⑧

2007-01-26 19:32:17 | うんちく・小ネタ

頭痛漢方専科 緊張型頭痛の漢方治療

慢性頭痛の中で、「緊張型頭痛」に悩まされている人は意外に多く、成人のアンケートで類推すると10~20%の成人が罹患しているといわれます。男女比を比べると「片頭痛」が圧倒的に女性に多い(男性の約4倍)のとは対照的に性差がありません。「片頭痛」が若い女性に比較的多いのに対して、「緊張型頭痛」は好発年齢層が無いのが特徴です。私の経験では自律神経失調症と診断されたとおっしゃる患者さんの中には「片頭痛」より「緊張型頭痛」が多い気がします。

   緊張型頭痛の痛みの特徴

 頭全体が鉢巻(はちまき)で締め付けられるような痛みです。きつい帽子をかぶっているような痛みだと訴える患者さんもいます。

 痛みの程度は一般に我慢できる程度で、鎮痛薬や筋弛緩薬で収まるので日常生活に支障をきたすことはあまりありません。殆ど毎日のように頭痛が起こるのも特徴です。随伴症状として最も多いのが肩こり、首筋のこりであり、次いで疲れやすい、背部痛、腰痛、眼精疲労、フワフワとした眩暈(めまい)などです。

   緊張型頭痛に対する西洋医学の考え方と治療

不思議なことですが、緊張型頭痛の原因を西洋医学の医師は(といっても、私も西洋医学の医師ですが)片頭痛の原因ともなる精神的なストレスと、肩こりや眼精疲労を誘発する身体的なストレスの2つであると言います。

西洋医学的には片頭痛は脳の血管の異常拡張が原因であり、西洋医学的には脳血管の拡張を防止させる片頭痛の治療と、血行を改善して血流量を増加させる緊張型頭痛の治療は「逆」であると言います。一方、「症例の中には片頭痛と緊張型頭痛の混合型も存在する」とも言います。

明らかな論理矛盾です。実態の解明が無きに等しいと言わざるを得ません。

西洋医学的デジタル思考の積み重ねでは移行型、混合型をとらえきれません。漢方の病態観は「病態には必ず移行型が存在する、混合型もあっても不思議ではない」とするものです。

 緊張型頭痛を起こす2種類のストレスについて西洋医学では次のように一般人に説明しています。

精神的なストレスが原因の場合

 対人関係などの精神的ストレスが溜まると、神経や筋肉の緊張が高まり、この緊張が脳に波及し、痛みを調整する機能がうまく働かなくなり、頭痛が続くようになる。

疑問: 精神的なストレスは片頭痛の原因でもあったはずなのに、緊張型頭痛の場合には、中間に筋肉の緊張という現象が入ってくるのは何故なのか?片頭痛は精神的なストレスなどが消失した時に発生しやすい例もあるのは何故なのか?そもそも精神的なストレスで筋肉が緊張する人としない人にはどういう差があるのか?

はてしなく疑問が続きます。回答は西洋医学からは得られていません。

続いて


身体的なストレスが原因の場合

 1日中コンピュータに向かう人などのように、不自然な姿勢などが原因で生じる筋肉への負担が、筋肉の緊張やこりにつながり、これによって頭痛が起こる。

疑問: 眼精疲労(目の疲労)は不自然な姿勢ではないはずなのに、現実的には眼精疲労を訴える人に緊張型頭痛が多いのは何故か?

 わからないことばかりです。

緊張型頭痛に対する漢方のアプローチ

キイワードは肩こり、眼精疲労、頭痛です。これらを中国漢方医学論で連絡すると以下のようになります。

肩こりというのは経絡や経筋における気血の淤滞(おたい)によります。漢方用語で「気鬱(きうつ)」あるいは「気滞(きたい)」と言います。全身の気をのびのびと運行させ、血液の流れや流量の調節を行い、筋膜を柔軟にさせ、精神を安定させ朗らかにするのは「肝」の働きによります。肝は目に開竅(かいきょう)するといい、目にも深いつながりがあります。

肝気が欝滞すれば疎泄機能が低下し、胸腹部が脹悶して痛む、生理不順、生理痛などの症状が現れます。

脾胃の気滞になると胃腸の昇降機能が失調し、腹部の脹痛、げっぷ、胃酸を嘔吐する、便秘などの症状が現れます。

経絡が気滞になると気滞が起きた部位の筋肉にこりや痛みが出現します。特に女性の場合では「女子は肝を以って先天と為す」と言われているように、肝と月経には密接に関係します。

肝気はのびのびと広がる春の生長の気で抑鬱を嫌います。ところが、肝気の条達が失われると、精神は不安定、不明朗となり、筋肉は固くなり、目は疲れ、胃腸の働きも不調になり、最終的に血液の流れ、流量が変調をきたします。女性では生理不順が起きやすくなります。肝気の停滞は長引くと「化火」して頭痛を悪化させます。

肝は筋(すじ)をつかさどり、目に開く。まさにストレス、肩こり、眼精疲労と関係します。脾胃が虚弱ですと、気血不足になり、ひいては肝血虚にもなります。古来より肝血虚には肩こり 眼精疲労 目のかすみが特徴的な症状とされます。

以上の観点から専門用語になりますが、

治療原則は疏肝理気 活血化淤 温経散寒 舒筋活絡です。個人差に合わせて益気養血を組み合わせます。

柴胡疎肝散(さいこそがんさん) 疎経活血湯(そけいかっけつとう)

身痛逐淤湯(しんつうちくおとう) 葛根湯(かっこんとう)

などの合方をベースにして、頭痛引経薬(いんけいやく)を加味していく方法がとても効果的です。日本国内で入手可能な方剤は疎経活血湯と葛根湯です。頭痛引経薬については稿を改めます。

柴胡疏肝散(さいこそがんさん)明代 景岳全書

柴胡 香附子 芎  陳皮 白芍 炙甘草 が組成です。ブルーは涼薬、グリーンは平薬 赤は温薬です。効能は疏肝解郁(そがんかいうつ)といい、鬱滞した肝気の流れを良くする方剤です。ストレス性の肝気鬱結に使用されます。自律神経失調症の第一選択方剤ともいえます。

疎経活血湯(そけいかっけつとう)明代「万病回春」

当帰 白芍 熟地黄 ? 牛膝 陳皮 桃仁 威霊仙  防己 羌活

防風  龍胆草 茯苓 甘草 生姜が組成です。

効能は風湿 養血活血 主治は風湿症 血虚であり、元来は慢性関節リュウマチの治療方剤ですが、「冷え性」の治療薬としての側面があります。冷えは寒凝血淤(かんぎょうけつお)を引き起こし、血行を悪くさせ淤血を生じ肩こりの原因ともなります。頭痛に効果のある羌活 白芷 などの生薬も配合されています。

身痛逐淤湯(しんつうちくおとう)清代「医林改錯」

秦艽  桃仁 紅花 甘草 羌活 没薬 当帰 五霊脂 香附子 牛膝

地竜が組成です。血行が悪くなった慢性化した関節の痛み、腰痛に対する方剤です。

葛根湯(かっこんとう)漢代「傷寒論」

葛根 麻黄 桂枝 生姜 炙甘草 白芍 大棗からなる方剤です。古来よりカゼの初期でうなじや背中が強張る時に愛飲されてきた方剤です。しかし現代中国ではもう葛根湯は市販されていません。日本ではエキス剤が存在します。

 

肩こりの中医学的な治療原則は、理気、活血、散寒湿、緩急です。気の流れを良くする、血液の循環を良くして淤血を除く、冷えや余分な水分を取り除く、筋肉の緊張を和らげるということになります。さらにストレスによる肝郁(がんうつ)気滞(きたい)を疏肝理気(そがんりき)の方法で改善します。殆どの緊張型頭痛は改善します。

最後にとっておきの治療方法をご紹介します。

努力、真面目、勤勉を忘れ去って能天気に暖かい地方でぶらんぶらんと遊ぶこと」これが最も効果的です。

一生懸命遊ぼうとするのもいけません。それがまたストレスになるからです。       ストレスは万病の本です。

  続く、、


自律神経失調症の漢方治療 ⑦

2007-01-25 17:42:05 | うんちく・小ネタ

頭痛漢方専科 女性に多い片頭痛

慢性頭痛の中で、「片頭痛」に悩まされている人は、15歳以上の人口の約8%を占めるといわれています。男女比を比べると圧倒的に女性に多く、男性の約4倍です。片頭痛の原因はよくわかっていませんが、祖母 母親 娘三代に渡るような家族的な発症が見えけられる場合もあります。若い女性に多いのも特徴です。

片頭痛の痛みの特徴

最も多いタイプとしては、月に1~3回ぐらいの割合で発生する、発作的な強い頭痛です。2~3時間から、長い場合は半日から3日間ほど続く場合があります。片頭痛の名前から頭の片側だけに生じると誤解されている方もいらっしゃいますが、片側に限らず両側が、あたかも脈打つように、ズキンズキン、ドクンドクンあるいはガンガンと表現されるような痛みであり、吐き気を伴います。特徴の一つとして、体動によって症状が悪化することです。慢性頭痛の別のタイプである緊張型頭痛では体動によって頭痛が軽減することが多いので鑑別点の一つです。また、片頭痛では光や音に対して過敏になり、それらの外界からの刺激により頭痛が悪化します。発作時には日常生活に支障をきたすほど酷いものですが、発作が収まるとケロッとしていることも特徴です。

片頭痛の原因とされる西洋医学的なファクター

ストレスが誘引であることは漢方の見解と一致しています。西洋医学者は中には、ストレスがかかっている最中ではなく、ストレスの原因が取り除かされたあとに片頭痛が起こることを強調される医師が存在します。特定の飲食物、たとえば乳製品、ワイン、チョコレートなどが誘引となる場合もあります。また、妊娠中の発作が少なく、産後に発作が再発することや、経口避妊薬などで発作が起きやすくなるなどの観察から女性ホルモンが誘発要因にもなるようです。

 片頭痛は脳内の血管が何らかの原因で拡張するために、血管周囲の神経を刺激して痛みを発生させることが原因です。生体は必要に応じて、血管を収縮させたり、拡張させたりしながら、生体を順応維持していきます。脳血管の過大な拡張が原因とすれば、生体の順応能力の変調とも考えられます。つまり自律機能の失調状態です。広い意味での自律神経失調症にも含まれる病態です。現代医学でも何故、脳血管が過大に拡張するのかの正確な原因究明は始まったばかりです。

 片頭痛の予兆や前兆とは?

片頭痛のあるすべての人に見られるわけではありませんが、頭痛発作の前駆症状(ぜんくしょうじょう)があります。予兆は頭痛発作の1~2日前の前駆症状であり前兆は発作直前の前駆症状のことです。予兆は欠伸(あくび)が良く出る、イライラ、精神不安定、空腹感、手足のむくみっぽさなどが多く、前兆で多いのが、視覚異常の閃輝暗点(せんきあんてん)です。雑誌を読んでいる時などに、最初に視野の中心部の文字がかすれて見えにくくなり、そのうち視野の周辺部にチカチカした、まぶしい線が現れるというものです。この前兆の後に激しい片頭痛の発作が出現します。予兆前兆の極端な例として、一過性の話そうと思っても言葉を発することの出来ない失語(しつご)などの脳の言語中枢の症状が出現することもあります。予兆の後で前兆なしに頭痛発作が始まる場合もあれば、予兆がなく、前兆から頭痛が始まる場合もあります。

 ストレスを貯めるなと医者は言うけれど、、

西洋医学の片頭痛の治療原則は

    頭痛の誘因を避ける

②薬剤で脳の血管が拡張するのを防ぐ、あるいは収縮させる

ときわめて単純です。

ストレスをためないようにする、経口避妊薬を避ける、ホルモン補充療法などを避ける、誘引となる食物を避ける。発作時に睡眠をとるなどです。

しかしです、

そもそもストレスを溜めないようにしてくださいと医者に言われても、簡単にはいきません。

生きるということはストレスの連続です。「私に代わって生きてくださいよ」といいたくなる気持ちになりますね。経口避妊薬をやめてくださいといわれてもパートナーの協力が必要です。パートナーに話して納得してもらわなければなりません。それもストレスの種です。婦人科系がん治療後の女性ホルモン枯渇状態や強度の更年期障害でホルモン補充療法を受けている場合もあります。睡眠がいいといわれても、そもそも酷い頭痛があるわけですからタイミングを合わせて発作時に眠るなどは難しいのです。睡眠剤を服用しなければ眠れないほどの痛みなのですから。現代社会では、誘引となる食物成分は外観ではわからないように外食製品に含まれています。毎日お弁当を持って出勤するのもストレスの種です。職場の集まりではまったくお酒を飲まないわけにもいきません。あれこれ言い訳を言わなくてはならないのもストレスの一種です。本当に医者が言うように「ストレスを溜めない」なんてことが簡単に出来るはずがないのです。

 以上の経過から、「結局は薬を飲んだほうが早いわ」ということになり、エルゴタミン系、トリプタンなどの血管拡張予防薬を服用することになります。一部の患者さんは薬剤に依存するようにもなります。自然の経過です。

中国漢方医学は片頭痛をどうとらえるか?

基礎的な考え方を簡単に申し上げれば、

片頭痛=肝火肝陽+痰濁+淤血 の3つの病因が各個人によってそれぞれ違った比率で組み合わって発生すると考えます。

精神的ストレスは肝気の鬱滞を起こし、やがては肝鬱化火となり肝火を発生させます。睡眠不足や腎陰の不足が原因となって、肝陰も損ねられ、肝陽を肝陰が制御できなくなって陽気が上亢して発生するのが肝火肝陽頭痛です。このタイプが優勢だと、眩暈(めまい)などが前兆となる場合があります。平素不眠傾向もあります。口が苦いなどの口味異常もあります。純粋な肝陽頭痛には釣藤散(ちょうとうさん)、天麻鈎藤飲(てんまこうとういん)、川茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)などが有効です。

脂っこいものや甘いものが特に好きで、お酒を飲む、やや肥満傾向があるタイプで、頭痛の原因は胃腸機能が低下し、水湿の運化が低下し、病理産物の痰湿などが体にたまりやすいタイプに生じる頭痛が痰濁頭痛です。平素、頭がすっぽりと被いかぶさったような頭重感や胸の痞え(つかえ)があり、平素から悪心や嘔吐などがあります。純粋な痰濁頭痛には温胆湯(うんたんとう)、黄連温胆湯(おうれんうんたんとう)、竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)、眩暈(めまい)をともなう場合は半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などが有効です。

針で刺されるような頭痛があり、頭痛部位が一定で、舌が暗い紫色である場合は淤血頭痛が考えられます。血液の流れが一時的に悪くなった場合の頭痛です。純粋な淤血頭痛には五積散(ごしゃくさん)や通竅活血湯(つうきょうかっけつとう)などが有効です。

片頭痛に有効な生薬

平肝息風通絡剤である菊花 天麻 川 白(びゃくし) 生石膏 藁本 蔓?子(まんけいし) 鉤藤 全蝎(サソリ)地竜などを主体にします。 肝火の程度に合わせ竜胆草 山梔子 黄 丹皮などを、痰濁の程度に合わせ半夏 陳皮 胆南星などを、淤血の程度に合わせ桃仁 紅花 赤芍などを合わせて用います

群発頭痛などにも有効で、西洋薬依存症や西洋薬を飲んでいたが最近飲まないと痛みが酷くなったとか、前より効き目が薄くなってきたと感じるようになった方は是非試してはいかがでしょうか?

2007_125_003

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白芷 (びゃくし)(風解表 止痛 消腫排膿)

白芷 の祛風止痛作用は特に陽明経の前額部の頭痛に有効とされる。

独自の香りがあり中国では香白芷 とも呼ばれる。

香白芷 (こうびゃくし)の名前の由来伝説

古代中国の話である。とある秀才の男が頭痛に耐え切れず、顔面や脇の下から冷や汗を流すほどで、数人の医師の往診をうけたもののいっこうによくならず、寝込んでしまった。現在の湖北省の巫山に頭痛の名医がいると聞き及んで、馬車に揺られて数日の旅をしてようやく評判の医師に家に着くやあまりの頭痛に倒れこんで入院することになった。

「薬を飲んでよくなったらそのまま帰るように。治療の内容は尋ねないこと」

を条件に入院となった。現在ならインフォームドコンセント ゼロでの入院である。

「わかりました。老師! 絶対にお約束しますので、早くこの地獄のような頭痛をどうにかしてください」と秀才は頼みこむや気を失いそうになった。

医師は蜂蜜で練り上げた丸薬を2~3粒、秀才に服用させた。 蜂蜜の甘味と薬草の独自な香りがした。 結果は如何?

翌朝、嘘のように痛みは消え去り、秀才はキョトンとした面持ちで

「すごい薬だ。もうしばらく入院を決め込んで、秘密を探ってやろう」

と、生来の好奇心が頭をもたげた。早朝に医師とその弟子たちは大かごを担いで

近山へ薬草を取りに出かけた。留守を確認し、秀才は昨晩の薬箱を調べ、同じ香りのする丸薬を見つけ出した。

「これだ!しかし、いったい何の薬草を混ぜたものだろうか?」

そのうち、医師と弟子たちは帰ってきた。鍋で蜂蜜を炊いて、石臼で薬草の乾燥根を挽き、蜂蜜と一緒にし、みるみるうちに弟子たちは件(くだん)の丸薬を作り始めた。

「この匂いだ。あの薬草に違いない」

と秀才は頭痛が無いにもかかわらず、2~3日の入院延長を頼み込んだ。

それ以降、連日の秀才の午前中の不審な行動はやがては医師に知られることになった。

「この薬草について、あなたはもう知ってしまいましたね。もはや隠し立てはできません」

医師は微笑むと話し始めた。

「この薬草は、先祖代々受け継いできた秘薬ですが、名前が伝わっていないのです。あなたは都の秀才です。なにかふさわしい名前を付けていただきたい」

と老医師は秀才に頼んだ。

「とんでもないことです。約束を破ってこのような無礼なことをしてしまって」

秀才は心から謝罪した。

「いいや、医師であるのに薬草の名前も知らぬとは、我ながら恥ずかしい。どうか老人の頼みをきいてくださらないか」

秀才は感激のあまり、声もなかったが、しばし熟考した後

「それでは、先生 “香白芷 ”ではいかがでしょうか?この生薬には独自の香気があります。それにこの生薬の根は白く、芷 という文字は最初にでてくる根という意味があります」

老医師はいたく喜んだ。 それ以降、湖北省 巫山の香白芷 丸は鎮痛特効薬として全中国に広まっていったという。

   続く、、