gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

自律神経失調症 めまい 漢方治療

2009-02-27 16:07:26 | めまい

3年間 日常生活が困難なほどの重症めまいも漢方治療で消失する。

めまいは漢字で眩暈と書きますが、元来は中国語です。

軽症の場合は、目を閉じれば、眩暈は緩和されます。ふわふわと雲の上を歩いているような軽症の眩暈から、重症になると、乗り物の上に乗ったような回転感の為に、立つ事ができず、天井がぐるぐるとまわり、悪心、嘔吐、汗出などが生じます。甚だしい場合は、救急車で病院に搬送されるということになります。病院では脳のCTや血液、心電図などの検査を受けますが、命にかかわる重度の脳血管障害や脳腫瘍などはほとんど発見されません。ほとんどの場合は何かしらの点滴を受け、メニエール氏病の疑いがあれば、メリスロンなどの内耳性眩暈の薬剤、脳循環不全が疑われれば、抗血小板剤やセファドール系の薬剤が処方されます。

厄介なのは、自律神経失調症と診断されている患者さんの諸症状のひとつである「眩暈」は、発作が反復し、西洋薬の効果が薄く、日常生活に支障をきたしてしまうということです。

漢方医学には「眩暈」の治療経験が膨大にあります。

中国漢方医学は、眩暈を主な症状とする内耳性眩暈、脳動脈硬化症(脳底動脈循環不全症を含む)、高血圧症、貧血、低血糖、神経性眩暈などのあらゆる眩暈に対応できる独自な弁証(診断)治療体系があります。

私が経験した症例

56歳女性。33歳で結婚。結婚当時体重56kg36歳の時に突発性難聴に罹患。43歳の時に早期肺癌手術。体重は73kgに増加。51歳で閉経。閉経前後に2度目の突発性難聴に罹患。52歳時に独居の実母が悪性リンパ腫にかかったために、在住の四国愛媛から看病のために何度も愛媛~名古屋間をプロペラ機で往復。名古屋に通わなくなって約1年後より耳鳴りがひどくなり、回転性の眩暈が出現。眩暈、嘔気、嘔吐のために頻繁に医療機関に搬送されるようになる。愛媛大学耳鼻咽喉科、愛媛県立中央病院東洋医学研究所を受診し、イソバイド、澤瀉湯の処方を受けて治療を継続したが一向に発作がおさまらず、ご主人の運転する車で、やっとの思いで、私のところを受診したのが2008711日でした。

初診時所見:

体重75kg、血圧正常。貧血なし。左聴力ほとんどゼロ。左に耳鳴強い。脈:細弱、舌:歯痕強く、白膩苔 便秘なし。下肢、鼻先、手指の冷えが強いと言う。顔面の火照りあり。動くと異常に発汗がある。少々口が苦いと訴える。締めつけられるような頭痛発作もあり。

治療薬:

「素問?至真要大論編」:「諸風掉眩、皆属於肝」との記載がある。

また、「痰」の関与しない眩暈はなく、「痰」の観点から眩暈を治療せよ。という中国医学の教えがある。さらに清陽不昇は眩暈を起こすという経験則がある。

平たく言えば、「肝 脾 痰湿の観点から眩暈をとらえよ」という教えである。

以下の処方を開始した。

半夏6蒼朮白朮天麻陳皮天南星白芥子桃仁4.5紅花当帰4.5

川芎白芍砂仁3(後下)呉茱萸4.5香附子6黄蓍五味子6遠志4.5

竹茹4.5蓮子4.5桂枝4.5 菖蒲6丹参6石决明茯苓枳実4.5黄連2

以上1日量 水煎服用 12

経過中に牛膝 澤瀉 地竜 白僵蚕などを加減。

(赤は温薬、緑は平薬、青は寒涼薬で示した。)

驚くほどの症状の改善

服用開始後3週間で眩暈消失。買い物や家事ができるようになった。頭重感残存。(牛膝を加味)

服用開始3ヵ月後には異常発汗、眩暈、頭痛は消失。

20081224日に最後の処方。今日に至るまで症状再発なし。227日に体調すこぶる良好とのお礼の電話をいただいた。

漢方医学の現状

上記の処方内容をわかりやすく解説するのはほとんど不可能です。残念なことですが、、。

漢方処方というものは、おのおのの漢方医の経験と発想によって随分と異なります。現在日本の漢方治療の現状は、ただ病名と照らし合わせて出来合いのエキス剤を処方しているある意味偽者に近い漢方医師がほとんどです。問題が多々ある現状ですが、一般の患者さんにはうかがい知れないことなのです。

参考までに

眩暈の弁証論治における代表的な方剤を列記しておきますので、漢方医学に興味のある方はお調べになってください。

天麻鈎藤飲(雑病証治新義)効能:平肝息風 清熱安神 補益肝腎

天麻 鈎藤 (後下)石决明(先煎)山梔子黄 牛膝 益母草 杜仲 

桑寄生 夜交藤 茯神

当帰龍薈丸(宣明論方):当帰 龍胆草 山梔子 黄連 黄 黄柏 大黄 

青黛 芦? 木香 麝香

帰脾湯(済生方):茯神 酸棗仁 白朮 黄耆 人参 木香 当帰 遠志 

炙甘草 竜眼肉

補中益気湯(脾胃論):黄耆 人参 白朮 炙甘草 柴胡 升麻 当帰 陳皮

杞菊地黄丸(医級):枸杞子 菊花 熟地黄 山薬 山茱萸 茯苓 澤瀉 

牡丹皮

半夏白朮天麻湯(医学心悟):半夏 陳皮 茯苓 炙甘草 白朮 天麻 生姜

大棗

(黄連)温胆湯

黄連1.53+温胆湯(備急千金用方):半夏 陳皮 茯苓 炙甘草 竹茹 

枳実 生姜 大棗

まだ呉茱萸(ごしゅゆ)五味子(ごみし)白芥子(はくがいし)蓮子(れんし)

が残ってますが、これも各自興味のある方はお調べください。

意地になって澤瀉(たくしゃ)を最初から使わなかったわけではありません。

悶不食の者に、白仁、砂仁を加える。耳鳴り、重聴の者には、葱白、菖蒲を加えると標準的中医内科学の清書には記載されています。

「自律神経失調症、うつ病のお問い合わせ」は下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 岡本康仁堂クリニック


自律神経失調症の諸症状 漢方的アプローチ

2009-02-26 08:17:07 | うつ病

西洋医は何もわかっていない?

「交感神経と副交感神経の二つの自律神経から成り立つ自律神経系のバランスが崩れた場合に起こる病態です。」と診療内科の医師は言います。

ある患者さんと医師との会話を聞いて見ましょう。

医師:「交感神経はアドレンリン、ノルアドレナリンの働きで、エネルギーの急速な補給が必要な戦闘状態にする働きを持つんです。瞳孔を散大させ、気管支を拡張させ、心拍数、心収縮力を増加させ、末梢血管を収縮させ血圧を上昇させるんです。筋肉への血液供給を増加させ、発汗を起こさせ、胃腸や膀胱の平滑筋を弛緩させ、緊張戦闘状態で便意や尿意を感じさせないようになっているんですよ。

副交感神経はアセチルコリン、ムスカリンの働きで、緊張を弛緩させ、戦闘状態から平常へ戻す働きを持ちます。散大した瞳孔を収縮させ、心拍数を下げ、末梢血管を拡張させ血圧を低下させるんです。戦闘状態で広がった気管支を収縮させ、無緊張だった胃腸や膀胱の平滑筋を収縮させ、尿意や便意を復活させます。」

患者「それでは私の場合はどうなんでしょうか?異常に汗っかきで動けばだらだら汗をかくし、寝汗もひどいです。倦怠感も強いし、、」

医師「交感神経優位なんですね。慢性的な交感神経緊張状態でしょう。」

患者「交感神経が緊張していれば体のかったるさは感じないんじゃないですか?」

医師「そういう理屈になりますが、人それぞれですし、、」

患者「それに、私は緊張すると交感神経の興奮でドキドキと心拍数は上昇するんですが、便意や尿意を催してトイレに行きたくなるんです。これは副交感神経の働きじゃないんですか?」

医師「そういう理屈になりますが、どうなんでしょうか、、、」

医師「慢性的なストレス状態では、生体は休息し、体力を回復させ、エネルギーを蓄える必要があります。これは副交感神経の働きです。心拍数や血圧を下げて、皮膚や胃腸への血流を増加させ、唾液腺の分泌を促進させ、胃腸の蠕動運動を促進させることになっています。あなたの場合は本来、交感神経興奮が起きても不思議じゃない時に、逆に副交感神経が興奮するんじゃないでしょうか?」

患者「その原因って何なのでしょうか?」

医師「さあ、ひとそれぞれですから、、」

患者「先の阪神淡路大震災の起こった時に、異常に喉がからからに乾燥した経験があるのですが、それは交感神経が正常にはたらいたということになるんでしょうか?」

医師「そのときは正常だったんでしょうねぇ」

医師「自律神経の中枢は脳の視床下部にあって、この場所は情緒、不安や怒りなどの情緒の中枢とされる大脳辺縁系と相互連絡しているんです。だから、情志(情緒)の問題も関わって来るんですよ。

情志(情緒)の問題も関わる場合には、自律神経失調症の病態は実際にはうつ病、パニック症候群や身体表現性障害などが正式な病名として認められる場合もあるんですよ。悪性腫瘍でも似たような症状が表れます。」

患者「最近は下痢気味なんですが、むしょうに腹が立つことがあると、急にお腹が痛くなって、水みたいな便が出るんですけど、これって、交感神経の働きとしたら何か変ですね?まさか悪性腫瘍なんてことはないですよね?」

医師「さあ、人それぞれですから。とりあえず、抗不安薬を増やして、安定剤と睡眠薬の量も増やしておきますから様子を見ましょう。」

患者「安定剤を増やすんですか?安定剤って先生のおっしゃる自律神経の交感神経、副交感神経のどちらを安定させるのですか?」

医師「、、、沈黙、、、、」

極論ですが、西洋医の大半は何もわかっていないのです。忙しい診療の合間に以上のような会話が成立すること自体不可能に近いのですが、

医師とすれば「やれやれ、あとカルテが何枚残っているのだろうか?」

などと思いつつ

「とりあえずは安定剤を出しておけば、治るものは自己回復力で治るだろうし、治らなければ再診でくるのだから、このへんで終わりにしよう。」

と内心考えています。

診察室を出る時には、おきまりに「お大事に~」と看護婦さんがおっしゃいます。

患者「やれやれ、何にもわからない。何を、どのようにお大事にするんだろうか?」と、またもや納得しない気分で、重い体を引きずって、病院の会計に向かうわけです。

実は西洋医だったころ、医学部卒業して約30年間は私も上のような「いい加減な医者」でした。ところが、漢方医学を勉強するようになってから、ある日、突然に目の前の霧が晴れたように感じたのです。

自律神経失調症の症状と漢方の考え方の概説

自律神経失調症とは「検査をしても異常がみられないのに、さまざまな症状が現れる病気」と現時点では考えてください。検査をして何らかの異常がある場合や、慢性肝炎、糖尿病などの基礎疾患がある場合は除外します。また、躯幹部の悪性腫瘍、脳腫瘍などの気質的な疾患がある場合も同様に除外します。

この際、交感神経、副交感神経などの知識は一切忘れてください。

    症状をあげてみましょう。それに漢方医学の考え方を簡記します。

全身症状:易疲労感、だるさ、眩暈(めまい)、立ちくらみ、不眠、食欲不振、フラフラする、手足の火照りなど 

    主として気虚(ききょ)と血虚(けっきょ)、陰陽のバランスの欠如として考えます。

情緒症状:怒りっぽい、イライラする、落ち込む(気がめいる)などは肝気の流れが阻害された肝気郁結として考えます。やる気の無さ、集中力の欠如などは髄海不足として腎虚、気虚の両者から考えます。不安感も肝気と関係します。強迫性障害(ささいなことが気になって仕方が無い)は、患者さんのおのおのの体質に合わせ、陰陽のバランスを整え、必要であれば安神剤(安定剤)を処方します。うつ病、パニック症候群もそれぞれ漢方的な弁証治療が可能です。

頭部症状:頭痛、頭重は「内傷頭痛」として、肝 脾 腎の臓の機能から弁証(診断)します。

   :眼精疲労、乾燥感、結膜の充血、涙目に対しては、肝血不足、肝腎陰虚、肝腎不足などから弁証を進めます。

   :耳鳴が最も多く、腎気不足、脾胃虚弱、肝火、痰火、瘀血などが関与します。

口腔  :口味異常、舌痛、口干(口が渇く)などは、脾気虚、痰湿、陰虚などから弁証します。

咽喉部 :異物感が最も多く、主として痰湿の弁証を中心とします。

呼吸器 :息切れは気虚、胸苦しさは痰湿、痰火などから弁証を進めます。肝気と肺気の相互の関係や、腎の関与も考慮に入れます。

心臓  :心悸(動悸)、心痛、血圧の不安定などが多く、心血、心陽、陰虚を中心に、水飲、淤血へと弁証を進めます。

消化器 :嘔気、下痢、便秘、おならが出やすい、ガスが溜まりやすいなどは、脾を中心に肝気、陰陽のバランスを平行して弁証を進めます。

皮膚  :痒み、乾燥肌、脂性肌、異常発汗(多汗証)などは、風(ふう)、血熱、陰血虚、湿熱、衛営不和などが原因となります。

筋肉 筋(すじ):肩こり、背部痛、無力感などです。主として脾胃の弁証を中心にして、肝、腎の弁証を進めます。痿症(いしょう)の漢方的なアプローチを行う場合があります。

四肢  :痛み、痺れ、冷え、火照りなどに対しては、痹症(ひしょう)の漢方的なアプローチの他に、「冷え」の漢方独自な解析と、陰陽のバランスを重視します。

泌尿生殖器:婦人病としての月経に関係する諸症状や陰部掻痒、帯下病は殆どの場合漢方にて対応が可能です。その他神経性頻尿、無菌性膀胱炎、男性の心因性インポテンツ、陰部掻痒なども漢方で弁証治療が可能です。女性の更年期障害の諸症も漢方の得意とする分野です。

患者さんにとってもっとも切実なのは「症状の改善」なのです。漢方医学は十分にその切実な要望に応えることができると思うのです。

自律神経のバランスが崩れる原因(七情内傷)

現代医学ではホルモン異常、生活習慣の問題などの他に、最大の原因としてストレスをあげています。精神的に緊張した状態が続くと、交感神経優位の状態が続き働き、バランスが崩れて、やがて自律神経失調症になってしまうと考えるのがほぼ常識化しています。

中国漢方医学では「七情内傷」といい、怒、喜、思、悲、憂、恐、驚の7種の情志が人体の生理活動範囲を超えた時、疾病の発生原因となると考えます。

七情発病の特徴は

① 発病当初に続いて七情内傷(直接に相応する内臓に影響を与えること)がおこる。

② 臓腑の気機逆乱、気血失調を起こす。

③ 心(しん)から始まることが多い。

④ 心、肝、脾の三臓の気機逆乱と気血失調が多く見られる。

⑤ 怒即気上、喜即気緩、思即気結、悲即気消、憂即気郁、恐即気下、驚即気乱の性質を持つ。

⑥ 持病を重くさせ、悪化の速度を早くさせる。

⑦ 精神疾患と関係する。

の以上です。たとえば精神的疲労によって最も損傷されやすい臓は心と脾です。怒りによって損傷されやすい臓は肝です。

 また中国医学では労逸(ろういつ)(過労と過逸)は、精神状態も含めた人体の正気(免疫力と言い換えてもいいでしょう)に悪影響を与えるといいます。過労とは過大な精神的、肉体的、性的、出産による疲労を指します。過逸(かいつ)は不労(ふろう)ともいい、安逸をむさぼることです。過逸により気血のめぐりが悪くなる。痰湿が出やすくなり、「久臥傷気」といい気を損傷するとも言われます。怠けすぎてもよろしくなく、ヒトは適度な労働が必要であると中国医学(漢方医学)は教えています。

「情緒の変化により、情緒の病を治す」という中国古典の考え

いまから2200年ほど前の「素問」陰陽応証大論に以下のような記載があります。

過度の喜びによる病気は恐れさせると治る

過度の悲しみによる病気は喜ばせると治る

過度の思慮による病気は怒らせると治る

過度の怒りによる病気は悲しませると治る

過度の恐れによる病気は思慮させると治る

これらの治療法での具体的な成功例は、その後の古典に多く記載されています。

サイコセラピー(精神療法)は古代からあったのです。

しかし初学者は絶対にしてはなりませんよ。患者さんの心理状態に入り込んで、情緒を変化させる手法は経験のつんだ熟練漢方医でも難しいことなのですから。

私はまだその域に達していません。長寿を授かり、80歳を越したころにようやくその門扉を開くことができると期待しています。

「自律神経失調症、うつ病のお問い合わせ」は下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 岡本康仁堂クリニック


自律神経失調症、うつ病の倦怠感 疲労感の漢方治療

2009-02-24 12:59:09 | うつ病

自律神経失調症の全身症状として最も多くの人が訴えるのが、倦怠感 疲労感です。

倦怠感、疲労感に加え、全身に力が入らないなどの不調がみられます。はたして独立疾患であるかどうか疑われている「慢性疲労症候群」や「うつ病」の初期症状としても注目されます。病院を受診しても「疲れが溜まっているんでしょうから、栄養剤の点滴をしておきましょう。」と言われ、500ccから1000ccの点滴を受けることが多いのですが、実際は点滴が必要な細胞外液の不足があるほどの脱水症はほとんど無いのです。ではなぜ点滴をするかといえば、他に即効性がある有効な治療法がないからです。ある意味、その場で「お茶を濁す」的な対症療法です。加えて、疲労感が無くなったとか、体が軽くなったとかという患者さんの喜びの声もほとんどありません。点滴依存の現状は「病院に行けば点滴をしてもらえる」という患者さんの思い込みと、「他に方法がないから点滴ですます」という「なんとなくのコンセンサス」ででき出来上がった結果でありますが、効果は不十分ですし、治療目的もあいまいなものです。

私はあまり点滴もしないし、ビタミン剤や抗うつ剤も処方しません。まず、最初に漢方薬を処方します。私の漢方の考え方を述べたいと思います。

まず、疲労 倦怠感の著しい「慢性疲労症候群」をモデルに論を進めます。

慢性疲労症候群

慢性疲労症候群とは、これまで健康に生活していた人が原因不明の強い全身倦怠感(体に鉛をつめられたような倦怠感とたとえられています)、微熱脱力感や、頭痛思考力の低下抑うつ等の精神神経症状などが起こり、長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなるという状態をいいます。現在、日本には20万人の患者がいると推定されています。原因は不明で、ウイルス感染やストレスの蓄積が引き金となって、免疫、神経、ホルモン調節の異常が起きると推定されています。以上の症状を自律神経失調症やうつ病の諸症状と照らし合わせると、一致しないところを見出すのが困難であるほど共通しています

私の治療方針

中国医学では慢性疲労は気血が不足するためおきると考えます。「脾は後天の元であり、気血を生化し、四肢を主る(つかさどる)」といいます。慢性疲労は脾気虚と関係がもっとも深く、脾気虚は「清陽不升 濁陰不降」という病態を起こします。病気が進行すると(これを久病といいます)、腎に影響が及んで治りにくくなります(久病及腎といいます)。さらに「久病挟瘀」「痰成怪病」といい、瘀血や痰飲などの病理産物が体にたまると病状が悪化します。治療としては脾気を補い清気を上昇させます。病態に応じて腎精を補い、瘀血や痰飲を除きます。一般的に、

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)加減を行います。

脾気を補う人参、黄耆、白朮、炙甘草などと清気を上昇させる柴胡、升麻などを基本にします。

補中益気湯(脾胃論):黄耆が君薬です。

組成:黄耆1530人参白朮炙甘草6 柴胡3升麻3 当帰陳皮

水煎服用するか或いは一日23915gの丸剤を服用します。

効能:補中益気 昇陽挙陥 甘温除大熱

疲れすぎて発熱するような場合にもまずは試していい方剤です。

ただ漫然と出来合いのエキス剤を処方するのではなく、患者の状態に合わせて細かく微調整します。

瘀血があるときは丹参、当帰、桃仁、紅花などを、痰飲があるときは半夏、茯苓、陳皮などを、腎精不足が見られるときは地黄、山薬、枸杞子、巴戟天、仙霊脾、海馬、鹿茸、紫荷車などを併用します。微熱が続くときは、生地、地骨皮、銀柴胡、亀板、鼈甲などを、冷えが強いときは炮附子、肉桂などを、関節痛がひどいときは杜仲、桑寄生、骨碎補などを併用します。うつ病あるいは自律神経失調症の患者さんには原因不明の筋肉、関節痛を訴える方がいらっしゃいます。これに対しては寒湿が原因なのか瘀血が原因なのか腎虚が原因なのかを弁証して処方を加減します。

一般内科では十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)を処方されることもあります。

十全大補湯(太平恵民和剤局方)党参 茯苓 白朮 炙甘草 当帰 熟地 白芍 黄耆肉桂

十全大補湯は気血双補の方剤ですが、私は人参養栄湯(にんじんようえいとう)をよく用います。

人参養湯(太平恵民和剤局方)十全大補湯(八珍湯+黄耆肉桂)から川芎を除き遠志五味子陳皮を加

党参茯苓白朮炙甘草当帰熟地白芍黄耆肉桂 遠志五味子陳皮

 精神安定作用のある遠志が配合されています。

精力低下し、腎精不足が考えられる場合には海馬補腎丸(かいばほじんがん)などを併用します。

眠りが浅く、胸苦しさが慢性的に伴う場合には温胆湯(うんたんとう)加減を併用すると効果的です。

温胆湯(備急千金用方)半夏 陳皮 茯苓 炙甘草 竹茹 枳実 生姜 

注意すべきことは、自己判断で「慢性疲労症候群」と即断して、薬店などで薬を買い求めないことです。証に合わなければ、かえって症状を悪化させることになります。あくまでも、漢方専門医に相談のうえ、ご自分の証に合った処方をしてもらうようにしてください。

私論ではありますが、頭から漢方治療を否定されるような診療内科、精神科、或いは一般内科の医師を受診されることはお止めになった方がいいのです。

患者さんに出された処方箋を見ると「これを全部服用しているんですか?」と驚くような大量の睡眠剤、抗不安薬、抗うつ薬の処方が目立ちます。

倦怠感 疲労感などが改善した例はごくごく少数です。

漢方治療の有効性と安全性について再認識される時代になってきていると思います。

「自律神経失調症、うつ病のお問い合わせ」は下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 岡本康仁堂クリニック


自律神経失調症に見られる嘔吐の漢方治療

2009-02-22 19:16:16 | ブログ

自律神経失調症の消化器系症状として多いのが、嘔吐、胃痛、下痢です。

これらについての漢方の考え方を述べたいと思います。

伝統的中国医学では、いわゆる「肝気犯胃」という概念があります。

難しい漢方用語が並びますが、気にしないで読み進めてください。

情志失調から肝失条達をきたし、横逆犯胃から胃失和降が生じ、胃気上逆を起こし嘔吐、胃痛を起こすとされているのです。

簡単に言えば、ストレスにより肝の気の流れが悪くなり、その影響が胃に及ぶというものです。肝気犯胃はやや急性、亜急性の発症経過をたどります。

 【症状】嘔吐、呑酸(胃酸が多い)、頻繁にげっぷ(?気)をし、胸肋悶痛があり、舌辺が赤く、苔が薄膩、脈が弦です。

 【証候の分析】肝気郁鬱、横逆犯胃、胃失和降のため、嘔吐、呑酸、頻繁にげっぷをし、胸肋悶痛をみる。舌辺が赤く、苔が薄膩、脈が弦は気滞肝旺の証候であると中国医学は考えます。

 【治療法】疏肝和胃、降逆止嘔

【方薬】半夏厚朴湯左金丸加減。前方の厚朴、紫蘇は理気寛中、半夏、生姜、茯苓は降逆和胃、止嘔の効能があります。後方の黄連、呉茱萸は辛開苦降、止嘔の効能があります。四逆散を併用してもよいです。

口苦、雑、便秘の者には、少量の大黄、枳実を加え、通腑降濁を期します。

熱が比較的ひどい者には、竹茹、山梔子を加え、清肝降火をはかります。

半夏厚朴湯(金匱要略):半夏 厚朴 茯苓 生姜 蘇葉に大棗を加味したもの。

効能:行気解鬱 降逆化痰

左金丸(丹渓心法)主治:肝火犯胃による胃気上逆証 黄連 呉茱萸

四逆散(傷寒論):柴胡 枳殻 白芍 炙甘草

主治:少陰病四逆 肝脾不和

似た概念として、「肝脾不和」があります。肝気犯胃が嘔気 嘔吐 呑酸 ?気(げっぷ)を主症状とするのに対し、「肝脾不和」では胃腸全体の機能低下症状が多いのです。肝脾不和はやや亜慢性、慢性の経過をたどります。

 肝脾不和:食欲がなく、腹が脹る、腸鳴、軟便(下痢)等が見られます。舌苔が薄、脈が弦緩、治療は調理肝脾をもって治し、逍遥散等を用います。

逍遥散(太平恵民和剤局方):柴胡 薄荷 茯苓 白朮 当帰 白芍

主治:肝郁血虚脾弱証 効能:疏肝    補気健脾利水 斂陰養血

婦人科領域では「郁症の乳房張痛には逍遥散」と言われています。

肝と表裏関係にあるのが胆です。

肝胆不寧(かんたんふねい)の概念を紹介します。

 肝胆不寧:(安らかでない)イライラして眠れない、或いは悪夢を見たり、すぐにピクピクしたり、ちょっとしたことですぐ驚いたりする。視覚がはっきりしなく、口が苦い。舌苔は薄白、脈は弦細です。治療は養肝清胆寧神をもって治し、酸棗仁湯等を用います。

 酸棗仁湯(金匱要略):酸棗仁 知母 川芎 茯苓 甘草

効能:養肝血(陰)安神

主治:(虚煩失眠証)虚労虚煩不得眠

肝気犯胃の胃痛の特徴は以下のようなものです。

【症状】胃部の脹悶があり、痛みが移動し、脇までひびく。げっぷ、あるいは便秘があります。情緒不安定による発症が多い。苔が薄白、脈が弦である。

【証候分析】肝は疏泄を司り、条達を好みます。情緒不安定で肝気が鬱されると、疏泄ができず、それが胃に波及して胃の気滞が生じ(横逆犯胃)、痛みが発生します。肝気郁結で肝に属する脇部に痛みが現れます。気機不利のため頻繁にげっぷをします。同様、腸にも気機停滞、伝導不能で便秘が見られる。げっぷや放屁により気の昇降出入が一時的に改善されると胃痛が軽減する。

【治療法】疏肝理気 和胃止痛

【方薬】柴胡疏肝散を代表処方とされます。柴胡が疏肝解郁、香附子が疏肝行気止痛、川が行気疏肝活血、芍薬が養血柔肝、緩急止痛、陳皮、枳殻、甘草が理気和中寛胸の効能を持ちます。また、鬱金、青皮、木香などで理気解鬱の効能を強化することも可能です。川楝子、延胡索で理気をはかり止痛の効果を強化します(金鈴子散)。?気(げっぷ)がひどく、悪心、嘔吐が起きやすい場合には、沈香、旋覆花などを加え順気降逆の効能を強化します。

柴胡疏肝散(景岳全書):柴胡 枳殻 白芍 甘草 香附子 川芎

加減。柴胡、枳殻、香附子は疏肝行気解鬱に、川芎、芍薬、甘草は活血化瘀止痛に作用する。鬱金、青皮を加え、解鬱を強化する。

金鈴子散(素問病機気宜保命集:金鈴子=川楝子 延胡索)

次に日本人には比較的少ないタイプですが

肝胃鬱熱(がんいうつねつ)が胃痛の原因になります。

肝気鬱結が慢性化すると、肝火が生じ、その肝火が胃を犯し(肝火犯胃)、胃灼痛や痛みの緊迫が見られるようになります。肝火上逆により、煩燥、怒りやすい、酸っぱい水を吐くなどの症状が現れます。肝と胆は表裏関係であるために、肝火が胆火を挟んで上逆すると、口乾、口苦が見られます。裏熱のため、舌質が赤、苔が黄、肝胃鬱熱のため、脈は弦数です。

 【症状】胃部の灼痛、痛みが緊迫し、煩燥、怒りやすい、酸っぱい水を吐き、口が乾き、口が苦い。舌質が赤い。冷たいものを飲むと調子がよくなります。苔は黄、脈は弦或いは数です。

【治療法】疏肝、泄熱、和胃

 【方薬】化肝煎を代表処方とします。陳皮、青皮が理気、芍薬が斂肝、牡丹皮、山梔子が清肝泄熱の効能を果たします。または、左金丸を加え、辛開苦降の効能を求めることも可能です。本証に香燥類の投薬は慎重にすべきです。理気効能をもち、傷陰しない香櫞、仏手、緑萼梅などが適切です。

化肝煎(景岳全書):青皮 陳皮 白芍 牡丹皮 山梔子 澤瀉 貝母

以上に述べたように、自律神経失調症の消化器症状はほとんど漢方医学で診断治療が可能なのです。胃カメラなどの内視鏡検査でも、ほとんどの場合は軽い胃炎の所見があるぐらいです。西洋薬剤治療は一時的な対症療法です。漢方治療をお勧めする理由は、何百年も前から漢方の世界では十分な治療成績を上げているからです。

――――― ある女性にたまたま尋ねました ――――――

自律神経失調症って、どのくらいの頻度だと思いますか?

返答「現代は、軽症も入れればほとんどの人がそうじゃない?」

私も同感でした。周りを見渡すと、なんと多いのかと感じていたからです。

西洋医学的手法で良くなったという人がほとんどいないと感じているのは

私だけではないはずです。

「自律神経失調症のお問い合わせ」は下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 岡本康仁堂クリニック