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ループス腎炎 漢方 (腎病漢方治療187報)

2013-10-02 20:27:50 | ネフローゼ症候群

ループス腎炎 漢方 (腎病漢方治療187報)

6070年代の中医医案を紹介します。

趙炳南氏 医案 腎陰欠損、脾腎両虚案(趙炳南臨床経験集より)

患者:宋某、32歳女性。

病歴

19652月第一子(男児)出産。産後10日、手指の関節痛を自覚、その後全身の関節痛が出現。5月頃、下痢があり肝区の痛みを伴った。当時の肝機能検査で??(トランスアミナーゼ)200国際単位、麝香草酚???(TTT)20国際単位、肝庇護治療が無効、

1966年微熱が出現し、

1967年、顔面の蝶形紅斑が出現、ステロイド治療後に寛解。

1968年に発熱解熱せず、体温は38℃程度であった。手指末梢関節痛があり、血中LE細胞が陽性、大量のステロイド治療後に寛解。

19712月、再度の妊娠により病情加重、人工流産にて症状寛解。

19721月、腰痛、全身浮腫、腹水を併発し、全身性エリテマトーデス(SLE)、尿毒症と診断され、某病院に入院治療となった。血沈70mm/h、尿蛋白(3+)、尿沈渣赤血球2025/毎視野、二酸化炭素結合力145mmol/L、血中NPN21mmol/L、総コレステロール12.7mmol/L491.5mg/dL)。全身水腫、腹囲98cm、血圧200/150mmHg、LE細胞陽性。

診断は“全身性エリテマトーデス”“ループス腎炎”であった。大量ステロイド、消炎痛(インドメタシン)、??(シクロフォスファミド)等の薬物治療を受けた。

血中非蛋白窒素NPN値とは、血清蛋白以外の窒素成分である尿素、尿酸、クレアチニン、アミノ酸、インジカン、クレアチン、アンモニアなどの合計値であり、NPNの約50%は尿素窒素BUNです。特異性が小さいので現在では測定されていません。本案ではBUNは推定、約10.5mmol/L63mg/dL)と高値になり、腎不全が強く疑われます。二氧化碳?合力(CO2CP)の参考値(正常域2030mmol/L或いは5070 Vol%)ですので、医案の145mmol/L14.5mmol/Lの誤植だろうと思います。理由は、極端な代謝性アルカローシスより、むしろ、代謝性アシドーシスが考えられるからです。

中医弁証:脈象沈弦細やや数。舌質やや紅、苔薄白。腎陰欠損、脾腎両虚と弁証。

立法:滋陰益腎、健脾利水、解毒を補佐とする。

薬用白人参6g 茯苓12g 枸杞子12g 生薏苡仁30g 生黄耆30g 車前子(包煎)15g 白朮12g 抽葫芦10(利水滲湿) 烏梢蛇6g 秦艽10g 漏芦12(清熱解毒) 仙人?10g(利尿消腫) 防己12

920日:上方10剤後、病情に好転有り、前方を加減した。

薬用秦艽15g 烏梢蛇6g 漏芦10g 川連6g 鶏血藤30g(養血活血化瘀) 首烏藤30g(別名夜交藤養心安神) 紅人参


ネフローゼ症候群の漢方治療 医案6 腎炎、腎不全の漢方治療134報

2013-06-01 20:05:00 | ネフローゼ症候群

張琪氏医案 湿熱中阻案

(中国当代名医医案医話選より)

Key words: 成人ネフローゼ症候群 中満分消飲

患者?某 35歳 男性 党幹部

初診年月日1989430日 主訴:全身浮腫一ヶ月余

病歴

2ヶ月前下肢から浮腫が始まり、全身に及び、尿量が減少した。某市級病院を受診し、ネフローゼ症候群の診断を受け、ステロイドと利尿剤の治療を受け、病情は好転、浮腫は消えたに見え、尿量は増加した。近日、明らかなきっかけが無く、浮腫が次第に加重し、尿量も甚だしく減少し、尿蛋白(3+~4+)、腹張満、悪心嘔吐、頭暈頭重、口舌乾燥、ついに張琪氏を受診した。

初診時所見

全身性の浮腫、指で押せば陥没して元に戻らない、面色潮紅、脘腹張満、小便短少で赤、舌苔黄膩、脈沈、血圧20/13.3 kPa(150/100mmHg)

尿検査:蛋白(4+)顆粒円柱1~3

血液生化学検査:BUN 13.8mmol/L82.8m/dL)、Cre 176.8μmol/L2.0m/dL)、

総コレステロール11.4mmol/L441m/dL)血清総蛋白3.0/dL

診断:水腫(ネフローゼ症候群) 湿熱中阻証

治療:清熱利湿、健脾和

処方

黄連15g 黄芩15g 半夏15g 砂仁15g 川厚朴15g 陳皮15g 知母15g 澤瀉15g 姜黄15g 猪苓15g 白朮10g 党参15g 生甘草10g 水煎服用 毎日1剤。

56日二診

服薬6剤後、尿量が増加、色は浅黄、浮腫は減軽、腹満悪心、嘔吐などの症状は著明に好転、苔白微膩、脈弦滑。

処方:川黄連10g 黄芩15g 白花蛇舌草50g 土茯苓30g 萆薢20g 生山薬20g 芡実15g 黄柏15g 車前子15g(包煎) 夏枯草30g 丹参15g 生甘草15g 水煎服用。

520日三診                                                                            

上方服薬12剤で、精神状況は好転、飲食増加、以前よりも全身倦怠が軽くなり、有力となった。やや腰のだるさや痛みがあり、舌尖紅で裂紋があり、脈滑やや数であった。尿蛋白(+)遂に、益気補腎、清熱活血法にした。

処方:黄耆30g 党参20g 白花蛇舌草50g 桃仁15g 山薬20g 芡実15g 丹参15g 瞿麦15g 枸杞子20g 菟絲子20g 生甘草10g 水煎服用。

618日四診

上方をやや加減しながら18剤を服用、尿蛋白は極僅かになり、BUNは減少し6.3mmol/L37.8m/dL)、Creも減少し102μmol/L1.15m/dL)、血圧も16/12kPa(120/90mmHg)に下降した。気力も増加、明らかな自覚症状はなく、舌質紫、脈弦滑。


ネフローゼ症候群の漢方治療 医案5 腎炎、腎不全の漢方治療133報

2013-06-01 00:15:00 | ネフローゼ症候群

張琪氏医案 気陰両虚 湿熱瘀阻案

(中医雑誌1991年 第二期より)

Key words: 成人ネフローゼ症候群 再発 ステロイド離脱漢方療法

患者:吴某27歳 工人

初診年月日1989531

病歴

ネフローゼ症候群4年余、治療により病情は安定していた。198810月「感冒」により病情再発。当時尿蛋白(4+)、高度浮腫、某病院に入院した。プレドニゾン等薬物で病情は次第に好転、尿蛋白は陰性、浮腫は減少したが、プレドニゾンを隔日15mgに減量したところ再発し、尿蛋白(4+)となり、張氏を受診した。

初診時所見

面紅にして浮腫、全身乏力、腰酸、尿黄、舌暗紅、苔白膩、脈弦滑。

尿検査:蛋白(3+)WBC(5~7)

治則

益気陰、利湿熱、解毒活血法

処方

黄耆30g 山薬20g 芡実15g 生地20g 知母15g 黄柏15g 牡丹皮15g 赤芍15g 瞿麦20g 萆薢20g 土茯苓25g 生甘草15g 水煎服用。

経過

615日二診、上方12剤服用後。諸症は皆減軽し、尿蛋白(2+)WBC(0~3);隔日プレドニゾン10mg投与にした。効果が現れているので法を守り治療した。

薬用:黄耆50g 党参30g 蓮子15g 地骨皮15g 柴胡15g 麦門冬30g 車前子15g 益母草50g 桃仁15g 紅花15g 白花蛇舌草30g 生甘草15g水煎服用。

72日 三診、上方12剤服用、すでに明らかな自覚症状無く、尿蛋白(2+)、舌暗紅、苔薄白、脈滑。隔日プレドニゾン5mg投与にした。この期間中「感冒」に一度罹患したが病情は穏定していた。以上やや加減し、連続服用30剤で、プレドニゾンを停止し、尿蛋白は陰性、病情は安定している。

評析

ネフローゼ症候群の西洋医学的治療は主にステロイドであるが、一部分の患者はステロイドに敏感で、使用すれば症状は消失し、尿検査も正常になるが、ステロイド依存性が生じやすく、ステロイドを減量すると「リバウンド」が出現し、病情が反復され、また新たにステロイドの量を増加するか、あるいは低用量のステロイドの長期維持療法となる。この難題に対して、張氏は中薬の有効性を利用して、「リバウンド」「再発現象」を防止し、ステロイドの副作用の出現をコントロールし、遂にはステロイドの中止に至った。本案治療は益気養陰、清利湿熱、解毒活血を主として標本兼治し、邪をさらしめ、正気を回復させ、ステロイドを漸減し治癒にいたらしめた。この種の中薬治療を西洋薬治療と併用するのは有効なことである。

ドクター康仁の印象

過去に紹介した張琪氏の医案を振り返って、61報の慢性腎炎型ネフローゼ症候群、60報 小児慢性腎炎の医案中に柴胡が配伍されています。なぜ柴胡が配合されているのかは前からの疑問でした。今回の医案でも最終的に柴胡が配伍されています。

柴胡の帰経は肝胆心包三焦であることから直接入腎しない。つまり腎病ではあまり使用されないという印象を私は持ってきました。

それでも、腎臓が無垢な被害者であるとする立場も有りますので、加害者側の治療に柴胡を使用するという考えもあるでしょう。しかし、私は慢性腎炎やネフローゼの治療薬として、柴胡剤(黄芩を含む)は使用していません。もし黄芩が配伍されているなら、小柴胡湯(柴胡 黄芩 半夏 生姜 人参 大棗 炙甘草)のそれですが、古典に戻って、傷寒論六経弁証中、少陽病の小柴胡湯証は、少陽5主証(往来寒熱、胸脇苦満 黙々不欲飲食 心煩、喜嘔)プラス3掲綱(口苦、咽干、目眩)+或然証(胸中煩不嘔、渇、腹中痛、脇下痞鞕、心下悸、小便不利など)です。なにしろ水腫が有りません。李東垣の「脾胃論」での補中益気湯黄蓍君薬 党参 白朮 炙甘草 柴胡 升麻 当帰 陳皮)の古典から見ても、水腫は証ではないからです。

党参 麦冬 五味子は、皆さんご存知の生脈飲(李東垣:内外傷弁惑論)であり、気陰双補剤です。党参は補気薬として分類されますが、補陰、生津の作用もあります。

温薬の五味子には斂陰という効能がありますが、薬性が温なので、熱証と判断した場合には私は使用しません。

写真 張琪腎病医案精選 張佩青 主編 科学出版社 北京

2週間前、上海の朱老師から送られてきたものです。張琪氏における柴胡の運用について時間をかけて検索していくつもりです。

補講:本案の第一処方には萆薢が配伍されていました。二剤目からは除かれています。そこで萆薢分清飲(ひかいぶんせいいん)について補講します。

丹渓心法出典の萆薢分清飲(ひかいぶんせいいん)

萆薢益智仁烏薬石菖蒲10g

萆薢-利湿化濁 以外は全て温薬です。功能は温腎利湿、分清化濁です。

医学心悟出典の程氏萆薢分清飲の組成は、

萆薢 黄柏 茯苓 車前子 蓮子心(或いは蓮子芯) 丹参 菖蒲 白朮です。

処方中の萆薢、菖蒲は清利湿濁に、黄柏、車前子は清熱利湿に、白朮、茯苓は健脾除湿に、蓮子芯、丹参は清心活血通絡に働く。これによって清濁を分け、湿熱を除去し、絡脈を通らせ、脂液の下泄を止める。少腹が脹り、尿が出渋る者には、烏薬、青皮を加える。血尿を伴う者には、小薊草、藕節、茅根を加えます。膏淋の治療方剤です。寒薬が増えていますね。

萆薢 黄柏 知母の組み合わせを、知柏地黄丸の知母 黄柏と、程氏萆薢分清飲萆薢 黄柏の連合じゃないのかと考えるのは早とちりでしょうかしらん。

2013年6月01日(土) 記

Photo 


ネフローゼ症候群の漢方治療 医案4 腎炎、腎不全の漢方治療132報

2013-05-31 00:15:00 | ネフローゼ症候群

腎炎、腎不全の漢方治療132報 特にネフローゼ症候群の漢方治療 医案4

杜雨茂氏医案 ネフローゼ症候群 腎陰欠虚 水湿留滞案

中国名老中医薬専家学術経験集 より

患者:袁某 20歳 男性 宝鶏紅星化工場工員

初診年月日1997628

病歴

水腫10ヶ月。患者は19764月中旬「感冒」に引き続き水腫が出現し、宝鶏市の某病院に入院。入院時検査:蛋白(4+)顆粒円柱1~3/低倍視野、硝子円柱0~1/低倍視野、WBC1~3/高倍視野、尿比重1.016、総コレステロール331m/dL、総蛋白3.5/dLBUN40.8m/dLCO2CP68vol% 診断 ネフローゼ諸侯群、シクロフォスファミド、プレドニゾン及び中薬治療は無効であった。入院224日で、病情好転、帯薬退院となった。

退院時検査所見:尿蛋白微量、顆粒円柱偶見、尿比重1.023その他正常。

19776月病情再発加重、現地の病院では再度、シクロフォスファミド、プレドニゾン及び中薬治療を行ったが無効で、杜氏を受診した。

初診時所見

顔面及び下肢の浮腫。軽度に陥没性である。頭昏(頭がくらくらし)乏力を自覚する。腰酸痛、小便黄少、顔面に少数の痤瘡あり、顔面の潮紅、舌紅苔黄厚、脈細弦。

検査:尿蛋白(3+)顆粒円柱(5~8)白血球(+)赤血球少数、上皮細胞少数。

中医弁証

水腫日久、病入少陰;腎陰欠虚 水湿留滞、挟有瘀

治則

滋腎利水 清熱化瘀

処方

生地12g 枸杞子12g 牡丹皮g 澤瀉12g 茯苓12g 車前子12g(包煎) 猪苓12g 懐牛膝g 魚腥草30g 連翹18g 丹参18g 当帰12g 生益母草30g 桑寄生12g 白茅根30g 水煎服用 1日1剤。1週以内に西洋薬を中止するように言い、中薬治療のみとした。毎週復診一回。

経過:

上方を基本として、やや加減し、32剤服用。

84日になり、32剤の服用にて浮腫は全消し、腰不痛となったが、口干と疲労後の腰酸のみが残ったが、上皮細胞と白血球少数、その他(-)。自覚症状は完全消失、脈沈緩、舌淡紅やや暗、苔薄白。

家に帰り、継続服用して治療効果を高めるように言った。

処方:

    湯剤:生熟地各12g 山茱萸9g 山薬12g 牡丹皮45g 茯苓20g水煎服用。

    丸剤:生地90g 熟地90g 山茱萸60g 山薬45g 牡丹皮45g 茯苓45g澤瀉45g 党参45g 黄耆60g 旱蓮草45g 巴戟天45g 車前子45g 茺蔚子45g 以上を細末にして蜜丸を作成 一回9g 一日2回服用。


ネフローゼ症候群の漢方治療 医案3 腎炎、腎不全の漢方治療131報

2013-05-30 00:15:00 | ネフローゼ症候群

杜雨茂氏医案 小児ネフローゼ 陰虚挟熱案

奇難病臨床指南より

Key words: 小児ネフローゼ頻回再発群 ステロイド離脱

患者:朱某 5歳 女児 西安外語学院在住

初診年月日:1979年4月6日

病歴

今年(1979年)2月初旬、顔面の浮腫が出現し病院に行き診察を受けた。

検査:尿蛋白(4+)総コレステロール400mg/dl、血清総蛋白3.77g/dl、アルブミン1.77g/dl、グロブリン2g/dl。診断:ネフローゼ症候群

入院治療となり、副腎皮質ステロイド治療を受け、効果は良好であったが、減量するとすぐに蛋白尿が再発し、ステロイドを増量すると好転するという再発発作が2度あり、医者は中医配合を計画し、4月6日咸陽に治療を求めて来た。

初診時所見

患児の顔面は浮腫、下肢は軽度に腫脹

弁証論治:水気邪熱留滞につき滋陰益腎を主として利水清熱を補佐とする。

処方

生地g女貞子g 旱蓮草6g 金桜子g 当帰5g 茯苓9g 澤瀉g 猪苓g 巴戟天g 生益母草15g 白茅根15g 魚腥草13g 連翹g 水煎服用 毎日1剤。

経過

同時にプレドニゾン20mg/日服用、2週に一度再診、中薬は上方を随症しやや加減、西洋薬は不変。

4月14日、尿蛋白は4+から1+まで下降、5月16日浮腫消退、6月14日顔面は満月様になりステロイドの副作用が出現した。

検査:尿蛋白(-)その他(-)、プレドニゾンを地塞米松デキサメタゾン1mg1/日に改め、中薬は同前とした。

7月17日再診:尿検査正常既に1月余、自覚症状無し、脈細、舌紅、苔白

滋陰益腎、活血及び清粛余邪の法に転じた。

処方:

地各5g 山茱萸6g 茯苓10g 澤瀉8g 牡丹皮6g 金桜子9g 菟絲子9g 枸杞子6g 潼蒺藜g 丹参10g 紅花4g 黄耆15g 生益母草15g 水煎服用。

デキサメタゾンは0.5mg/日まで減量し、この後は中薬は随症しやや加減を行い、毎週5剤を服用し、デキサメタゾンは漸減し、11月末に停服し、中薬のみ服用させた。

1980年1月上旬中薬停服、観察1ヶ月、数回検査し、尿蛋白(-)その他(-)、総コレステロール他正常範囲。1981年~1983年7月まで多数随訪、一切正常で、身体健康であった。

評析

ネフローゼ症候群の水腫の治療は、病状が頑固で、再発しやすく治癒しない場合が多く、西洋薬治療では主にステロイド、免疫抑制剤が使用されるが、副作用のために、病人の一部には副作用に耐えられなくなり、中途で停薬することもあり、また停薬により容易に病情が再発することがある。中西医結合方式によるステロイド漸減停止の本案では十分満足いく効果が得られた。杜氏の本案治療はその典型ともいえる。

ドクター康仁の印象

あくまでも私の想像ですが、ネフローゼ症候群を呈する形態学的には微小変化群に属する頻回再発群に杜氏方剤が有効であろうと思います。それにしても、1979年4月6日の初診日からステロイドからの完全離脱の11月末まで、実に7ヶ月余を要し、その後中薬を停止して4年弱再発が無かったのですから、西洋医と中医の綿密な連携には感動しました。西洋医学の治療しか受けられない日本のネフローゼ小児には少し羨ましいかも知れませんね

混同しやすい沙苑子と白蒺藜

潼蒺藜(どうしつりFlastem Milkvetch Seed ピンイン tóng jí liは別名沙苑子です。沙苑蒺藜ともいいます。黄蓍の成熟種子です。甘温薬性で、帰経は肝腎、効能は補腎固精、養肝明目、黄耆はマメ科のキバナオウギ、ナイモウオウギなどの根であり、補気薬の代表ですが、種子の潼蒺藜(沙苑子あるいは沙苑蒺藜)は補肝腎作用が特徴です。主治は肝腎不足、腰膝酸痛、目昏,精早泄,小便尿尿,尿血,帯下病などになります。現在日本では流通は有りません。

似たような名前があります。

白蒺藜(びゃくしつり)あるいは刺蒺藜(ししつり)あるいは蒺藜刺(しつりし)あるいは単に蒺藜(しつり)

ハマビシ科 Zygophyllaceae のハマビシ Tribulus terrestris L.の未成熟果実で、辛苦、温或いは清書によって微温とあります。帰経は肝肺、効能は平降肝陽、疏肝解鬱、疏散風熱、明目止痒です。肝陽上亢による頭痛、眩暈、肝気鬱結、蕁麻疹や皮膚の掻痒、風熱による目の充血、流涙などに効果があります。日本で流通しています。

潼蒺藜(沙苑子)も白蒺藜(刺蒺藜)もともに明目作用がありますね。混乱しやすいので潼蒺藜は沙苑子で統一した方がよさそうです。

腎虚不固による遺精、滑精にも用いられる金鎖固精丸(医方集解)の組成は、

沙苑蒺藜 芡実 蓮須 龍骨 牡蛎 蓮子肉です。沙苑蒺藜とは潼蒺藜=沙苑子のことです。炒めた沙苑蒺藜を用いることが多いために炒沙苑蒺藜と記載されていることもあり、混乱しますね。

単語登録する際に沙苑子(しゃえんし)、沙苑蒺藜(しゃえんしつり)と登録しておけば間違えないのですが、たとえ登録しても、沙苑蒺藜は「沙苑子釣り」と変換されてしまい、「子釣り」を消去すべきところを「釣り」を消去し、蒺藜(しつり)を入れ治すところから、沙苑蒺藜が沙苑子と蒺藜の2薬になってしまった可能性があります。

お詫びしておきます。

2013530日(木) 記