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糖尿病性腎症 升陽益胃湯(しょうようえきいとう)加減方 張琪氏弁証論治 (腎病漢方治療306報)

2014-03-26 00:15:00 | 漢方市民講座

今回を持ちまして、漢方市民講座、糖尿病性腎症の漢方治療症例の最終講とします。それでは医案(症例報告)に進みましょう。

患者呂某 61歳 女性

初診年月日2006522

主訴:双下肢浮腫、腰酸一年

病歴

糖尿病病歴18年。2002年尿蛋白発現(4+)、現地の病院で糖尿病性腎症と診断され、ずっと中薬を服用、病情は穏定していた。20054月、家庭の事情で停薬、浮腫加重。Cre202μmol/L2.28mg/dL)、慢性腎不全と診断される。さらに治療を求め氏の病院を受診。

初診時所見

気短乏力、全身酸重、口干苦、大便溏、腰酸、肢軟乏力。舌淡紅苔白、脈滑。Cre197μmol/L2.22mg/dL)、BUN16mmol/L96mg/dL)、ヘモグロビン7.8/dL

中医弁証虚労(脾腎両虚、濁毒内蘊)

西医診断糖尿病性腎症、慢性腎不全(失代償期)

治法益気健脾昇陽、活血化湿、解毒

方薬昇陽益胃湯加減:

黄耆50g 党参20g 防風20g 羌活20g 独活20g 葛根30g 柴胡15g 当帰20g 白朮20g 丹参20g 川芎20g 甘草15g 土茯苓30g 白花蛇舌草30g 山薬20

水煎服用、毎日2回に分服

(付記:黄耆50g 党参20g 白朮20g 山薬20gで益気健脾、防風20g 羌活20g 独活20gで袪風湿、葛根30g 柴胡15gで昇発陽気して脾胃の清陽の気を鼓舞し、当帰20g 丹参20g 川芎20gは活血行瘀、土茯苓30g 白花蛇舌草


糖尿病性腎症 補脾腎活血利湿法 張琪氏弁証論治2.(腎病漢方治療305報)

2014-03-25 00:15:00 | 漢方市民講座

本日の漢方市民講座は「糖尿病性腎症の補脾腎活血利湿法」の最終医案です。

( )内に、随時私のコメントや印象を入れます。

それでは、医案に進みましょう。

患者梁某 56歳 女性

初診年月日2005年 613

病歴

20余年前、誘因なく頻尿、尿道の痒みが出現。抗炎症薬を自分で飲んで症状は緩解し、重要視しなかった。4年前、明らかな誘因なく眼瞼浮腫が出現、現地の医院を受診、尿蛋白2+、尿潜血3+、空腹時血糖13mmol/L234mg/dL)、“糖尿病性腎症”と診断され、降糖治療を受けた。4ヶ月前、悪心、乏力でハルピン医科大学付属第一病院受診、腎機能検査にてCre369.5μmol/L4.18mg/dL)、“糖尿病性腎症、慢性腎不全”の診断の下に、降圧、?酸(アシドーシスの補正)治療を受けたが、病情不緩解、治療を求め、氏の病院を受診した。

初診時所見

面色少華、食欲不振、時にゲップ、悪心嘔吐、胸悶、気短、大便干2/日、舌淡紅、苔厚膩、脈沈滑。Cre440μmol/L4.97mg/dL)と上昇、ヘモグロビン10.7/dL

中医弁証:虚労(脾腎虚、濁毒瘀血内蘊)

西医診断:糖尿病性腎症、慢性腎不全

治法補脾腎、化湿濁、活血化瘀

方薬:温胆湯(うんたんとう)加減

草果仁15g 大黄10g 半夏15g 陳皮15g 茯苓15g 甘草15g 竹筎15g 枳実15g 砂仁20g 赤芍20g 丹参20 川芎15g 山茱萸20g 枸杞子20g 熟地黄20g 麻子仁20g 郁李仁15g 黄耆30g 太子参20

水煎服用、毎日2回に分服

印象:温胆湯加減もありますが、参蓍地黄湯加減でもあります。以下

黄耆30g 太子参20gで益気生津の参耆、山茱萸20g 枸杞子20g 熟地黄20gで養腎陰、草果仁15g 砂仁20g 大黄10


糖尿病性腎症 補脾腎活血利湿法 張琪氏弁証論治1.(腎病漢方治療304報)

2014-03-24 00:15:00 | 漢方市民講座

本日と明日の2案は、糖尿病性腎症の補脾腎活血利湿法についてご紹介します。

( )内に随時私のコメントや付記を入れます。

医案に進みましょう。

患者:劉某 59歳 女性

初診年月日:2005322

主訴:全身浮腫、尿少悪心半月間

病歴

糖尿病歴15年、半月前感冒に罹り、顔面と双下肢浮腫が出現、尿少、悪心あり、ハルピン医科大学付属第二病院受診、糖尿病性腎症、腎不全と診断され、降糖薬、腎機能改善等の入院治療の後、症状はやや好転し退院となった。治療効果をさらに固めるために氏の病院の外来を受診した。

初診時所見

全身浮腫、尿少、悪心、納呆、腰酸痛、乏力あり。面色萎黄無華、精神萎縮、神清語利(意識障害は無く発語は正常の意味)、表情痛苦、咽部充血、扁桃腺腫大無し、心肺部聴診異常なし、腹部やや膨隆、腹水証あり(側腹部を指で叩くと波動が反体側に伝わる)、顔面四肢に陥没性浮腫あり。舌質暗淡、苔膩、脈沈滑。空腹時血糖10.7mmol/L192.6mg/dL)、Cre256.7μmol/L2.9mg/dL)、BUN13.5mmol/L81mg/dL)、血清総蛋白4.5/dL、アルブミン2.6/dL、グロブリン1.93/dL。尿蛋白3+、尿糖+、末梢血液RBC282万、ヘモグロビン9.8/dL

中医弁証

水腫、脾腎両虚、水湿挟熱内停

西医診断糖尿病性腎症、慢性腎不全

治法:標本兼顧、清熱活血、益気健脾補腎

方薬:

黄耆40g(益気) 党参(益気養陰)30g 熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)30g 赤芍清熱涼血、祛瘀止痛)20g 当帰養血、活血、止痛、潤腸通便)20g 川芎活血行気、祛風止痛)15g 茯苓14g 澤瀉(泄濁清熱利水)15g 萹畜(利水通淋)20g 山梔子(清熱解毒利湿)15g 淡竹葉清心泄熱除煩止渇 利水通淋 利水滲湿薬)15g 白朮(健脾燥湿)15g 生姜15g 半夏化痰燥湿止嘔)15g 竹筎清化熱痰、除煩止嘔、泄濁)15g 白花蛇舌草(清熱解毒利湿)30g 大黄(活血通腑泄濁)7g 甘草(諸薬調和)15

水煎服用、毎日2回に分服

情志を調整し、起居を慎み、過労を避けるように言う。

二診200546

患者全身浮腫、腰以下が更に甚だしい。指で押すと陥没して戻らない、

尿少、悪心納呆、腰酸痛、乏力、舌紅苔白膩、脈沈滑緩。空腹時血糖9.9mmol/L165.6mg/dL)、尿糖+、尿蛋白2+、WBC0~1個/HP。前方加味とする。

方薬

黄耆40g 党参30g 熟地黄


糖尿病性腎症 決水湯(けっすいとう)治療 張琪氏弁証論治4.(腎病漢方治療303報)

2014-03-23 00:15:00 | 漢方市民講座

本日は若年時に発症した糖尿病のために、20年後に全身性の浮腫、腹水、胸水を発症した腎不全症例の漢方治療をご紹介します。( )内に随時私のコメントや印象を入れます。

医案に進みましょう。

患者:張某 42歳 男性 営林場職人

初診年月日:2004521

病歴及び初診時所見

糖尿病歴20余年、ここ半年で水腫を反復、ここ4ヶ月で病情加重、全身高度水腫、陥没性浮腫、身体困重、胸悶気短、平臥困難、腹部膨隆、食少納呆、口渇尿少、便秘、舌質淡、舌体胖大、舌辺歯痕あり、苔白厚、脈沈細。体重85kg(発病前55kg)、血圧155/100mmHg、胸水、腹水あり、右側の肢体が左側に比べ浮腫が甚だしい。尿蛋白2+、空腹時血糖7.39mmol/L133.02m/dL)、血清アルブミン1.87/dL、血清総蛋白4.2/dLCre298.1μmol/L3.37m/dL)、BUN14.85mmol/L89.1m/dL)。超音波検査:左腎10.64.74.5cm、右腎10.55.14.3cm。心エコー:左心室肥大、心包液貯留、二尖弁(僧帽弁)、三尖弁(右心房右心室間の弁)、大動脈弁に血液逆流(いわゆる閉鎖不全)あり。眼底検査:両側網膜に糖尿病性病変有り。

西医診断:糖尿病性腎症、慢性腎不全

降糖薬、降圧剤、拡容、抗凝固剤、利尿剤等、微小循環改善治療半月余、尿量は750ml/24hrから1200ml/24hrまで増加、(しかし)水腫症状の改善は不良、薬物を減量すると水腫は再度加重した。

方薬:張琪氏立案方

海藻(消痰軟堅 利水退腫)40g 牡蠣30g 二丑牽牛子黒白共に逐水瀉下 袪積殺虫に働く、峻下利水薬)30g 檳榔(行気利水消積殺虫)20g 郁李仁(潤腸通便)30g 澤瀉25g 猪苓20g 茯苓50g 車前子50g 王不留行(苦/平 おうふるぎょう 活血化瘀 通経 下乳)30g 肉桂(温裏散寒、補火助陽、引火帰源)10g 枳実破気消積、化痰除痞15g 川厚朴降気、燥湿、消積、平喘)15g 木香行気止痛、健脾消食、止瀉)10

水煎服用、毎日2回に分服。

経過

服薬後、尿量は20003000/24hrに増加、服薬40剤で水腫は基本的に消退、体重は85kgから56kgに減じた。ただ、腹部気張と双下肢軽度浮腫が残った。さらに原方加減連続10余剤服用にて、水腫は全て消退した。外来で追跡、病情は穏定。

(水飲は見事に改善されました。その後の心エコーの変化はどうなったのでしょうか?右側の肢体が左側に比べ浮腫が甚だしいという記載がありましたが、水腫の改善過程では右側の改善はやはり遅れたのでしょうか?その辺にも興味があります。)

ドクター康仁の印象

現代日本では、本案のような症例に漢方の出る幕はありません。集中治療室管理となります。腎不全の高窒素血症のレベルから考えて、尿毒症性の心外膜炎は考えられませんし、二尖弁(僧帽弁)、三尖弁、大動脈弁の閉鎖不全も突然に腎不全や糖尿病に合併してくるものではありません。従って、コントロールの難しい大量の水湿貯留を一気に改善させる峻下逐水の方法の一つとして決水湯を位置づけするのがふさわしいと思います。言わば、漢方の救急処置の一種と捉えればいいでしょう。

海藻(消痰軟堅 利水退腫)40g、牡蠣30g、二丑牽牛子黒白共に逐水瀉下 袪積殺虫に働く、峻下利水薬)30gは軟堅散結、攻逐水飲に働き、腹水の軽減に効果があります。

体内の余分な水分を体外に排泄させるには、便と小便が経路となります。

檳榔(行気利水消積殺虫)20g 郁李仁(潤腸通便)30gは大便からの排泄です。

澤瀉25g 猪苓20g 茯苓50g 車前子50gの群は小便への排泄です。

枳実破気消積、化痰除痞15g 川厚朴降気、燥湿、消積、平喘)15g 木香行気止痛、健脾消食、止瀉)10gの群は理気薬の群で気滞を除き、行気すれば利水が強まるという行気利水という中医学の考え方による配伍です。

王不留行(苦/平 おうふるぎょう 活血化瘀 通経 下乳)30gは通利血脈と利尿作用があり、活血利尿消腫の功能があります。益母草にも活血利水消腫の功能があります。

肉桂(温裏散寒、補火助陽、引火帰源)10gの配伍はいわゆる“寒温併用”の温に相当し、腎陽を暖め、腎の開閉機能を回復させ、小便自利に導くものです。“消補兼施”の補に相当します。

気血水はお互いに独立していません。重篤な水腫を改善するには、行気(気滞を除く)、活血(瘀血を除く)が欠かせません。

実際の臨床では強烈な水様便が毎日多量に出るために入院の上加療が必要です。

本日の講座の最後として決水湯の出典は「弁証録」、組成は、茯苓 車前子 王不留行 肉桂 赤小豆であることを付記します。

二丑の峻下逐水療法は、使う勇気が必要でしょうね。腎機能低下、心機能不全、電解質異常、感染の有無等を考えると、現在の臨床では使いにくいでしょうね。

2014年 3月23日(


糖尿病性腎症 参耆地黄湯(じんぎじおうとう)加減治療 張琪氏弁証論治4.(腎病漢方治療302報)

2014-03-22 00:15:00 | 漢方市民講座

本日で糖尿病性腎症の参耆地黄湯加減治療の最終講座とします。

( )内に随時私のコメントや印象を入れます。

それでは医案に進みましょう。

患者劉某 71歳 女性

初診年月日:2005422

主訴:多飲、多尿15

病歴:

糖尿病歴15年、陳旧性脳梗塞(脳梗塞後遺症)、現在インスリン治療中。空腹時血糖7.30mmol/L131m/dL)。血圧高、視物不清、言語不利。331日尿検査:尿蛋白2+、尿WBC1520/HP、扁平上皮細胞12/HP

初診時所見:

精神状態は健常人のようである。面色少華、表情自然、形体及びその他皆正常。言語不利、血圧高、視物不清。舌紅少苔、脈証細数。空腹時血糖7.30mmol/L

413日検尿:尿蛋白3+、尿WBC1015/HP、扁平上皮細胞35/HP

弁証論治

糖尿病が慢性化長期化すると肺脾腎の機能失調が生じ、久病は瘀血、痰濁、湿濁等病理産物を形成し、本病の病理転変となる。気虚により血液運行、推動が無力になれば血瘀となり、津液が耗消し布化が不能になると痰となり、痰と瘀が交阻するのが本病の変証である。この時、心、脳、腎、血管、網膜病変などを合併して、血圧升高、面色少華、視物不清、言語不利を見る。治療は益気補腎、活血祛瘀、清化痰濁が宜しい。

(以上のような理屈が簡単な中医学理論です。一般人は無視しても宜しいです。)

中医弁証:消渇(陰虚内熱)

西医診断:糖尿病性腎症

治法:益気補腎、活血化瘀

方薬:参耆地黄湯加減:

熟地黄25g 山茱萸20g 山薬20g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15g 黄耆30g(益気) 太子参(益気生津)20g 水蛭(すいてつ ヒル 破血逐瘀)10g 桃仁15g 丹参15g 枸杞子20g 五味子斂肺滋腎、生津斂汗、渋精止瀉、寧心安神斂陰消蛋白)15g 玉竹滋陰潤肺、生津養胃)15g 赤芍清熱涼血、祛瘀止痛)15g 酸棗仁(養心安神 斂陰止汗)20g 遠志(おんじ 寧心安神、祛痰開竅)15g