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尋常性乾癬 中西医結合治療成功例

2014-09-29 00:15:00 | 健康・病気

 

尋常性乾癬(かんせん)の病因論や標準的漢方治療を述べることは本稿の目的ではありません。

 

個人的な経験ですが、以前に長崎の某病院で(当時は保険適応が無い)レミケード治療を受け、乾癬皮膚病変が跡形も無く消失したものの、転勤で神戸市に転居してから、再度、以前よりもやや強く、広範囲に乾癬が再発したという中年男性の症例に接したのが3年前でした。そこで神戸市を含む兵庫県内でのレミケード治療が受けられる施設を紹介した経緯(いきさつ)があります。

 

私自身の経験では、中医学の医案(症例報告)に基づいて、いろいろな漢方治療を行ってきましたが、奏功した症例が少ないのが印象です。一方、アトピー性皮膚炎に乾癬が合併した症例では、比較的早期に治療効果が得られたケースも存在しましたが、アトピー性皮膚炎治療がメインであり、乾癬に対しては外用療法のみで対処しました。そのような訳で、いまだに決定的な漢方治療は見いだせないでいます。

 

本稿で紹介する症例は比較的短期に寛解に近い状態に持ち込めた48歳女性の症例です。

 

初診(平成262月某日)の皮膚所見をご覧ください。

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ほぼ全身に乾癬性紅皮症変化と鱗屑の形成が認められます。尋常性乾癬と診断しました。30年ほど前から発症したということです。某漢方医で煎じ薬を処方され、服用中であるということでしたが、処方内容は初診時にご持参されませんでした。脈象、舌象は特に異常は無く、痒みが強く、赤味も強くなってきたとの主訴でした。夜間のカラ咳が止まらないこともあるという自覚症状がありましたが、呼吸音は異常ありませんでした。問診票には、「簡単で安い漢方薬を希望」とありました。既往歴として、42歳時に子宮筋腫の手術をした。その後生理が無かったことから筋腫核出術ではなく、子宮摘出術であったと推測しましたが、患者さんからどの術式なのか確認できませんでした。

 

 

 

初診時に私が考えたこと&初診時外用薬

 

現在服用中の漢方煎じ薬の内容が不明である以上、(煎じ薬よりも安価な)エキス剤に変更する訳にはいかない。あるいは煎じ薬を続けているので、病情が安定しているのかも知れない。とりあえず、外用薬として西洋医学的には標準治療とされている処方+漢方エキス(養陰血剤+清熱涼血剤)を混合して処方しよう。次回来院時に、現在の煎じ漢方の処方内容を検証しよう。以上のように考えました。

 

二診(初診から1か月後)、皮膚の赤味と痒みは減少しました。患者さんが持参された某漢方医の処方。 以下

 

Photo

 

写真上が煎じ薬の処方内容です。乾癬1号と称する配伍は以下のものでした。

 

土茯苓(菝葜 山帰来と同じ、甘淡/平 清熱解毒除湿利関節)、槐花(涼血止血)、金銀花(清熱解毒)、菊花(清肝明目 肝陽上亢による頭痛や眩暈に用います)、芍薬(白芍なら養血斂陰に赤芍なら清熱涼血 祛瘀止痛に作用します)、牡丹皮(清熱涼血 活血祛瘀)、地黄(熟地黄なら補肝腎養血滋陰、補精益髄に作用し、生地黄なら養陰清熱に作用します)蘇葉(発表散寒、行気寛中、解魚蟹毒 辛温解表薬に分類されます)、甘草(調和諸薬)、牛蒡子(清熱解毒利湿 抗ウイルス作用 辛涼解表薬に分類されます)

 

寒熱弁証から言えば、やや涼に偏した処方です。基本的な芍薬と地黄の細分化がありません。これは欠落ともいえる事項です。

 

次に、四物湯の配伍でも、当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便)、芍薬、川芎(活血行気、祛風止痛)、地黄という具合に芍薬と地黄の細分化が省略されています。ここまでは許容範囲ですが、

 

炮附子(辛熱 補火助陽 散寒止痛 回陽救逆) 乾姜(辛熱 温中 回陽)になると、治療の一貫性が疑われてきます。熱薬である附子と乾姜の配伍理由が私には理解できないというか、矛盾する配伍です。冷やしてみたり、逆に熱してみたりで一貫性が欠如しています。

 

さらに、桂枝茯苓丸の配伍に至っては、先ず、桂枝(辛温 発汗解表、温通、袪風寒湿邪、温経通絡)と桂皮肉桂(辛甘大熱 温裏散寒、補火助陽、引火帰源)の区別が誤っています。桂皮とすれば、大温ですから、そもそもの乾癬1号方と矛盾してきます。さらに非難するつもりではありませんが、乾癬1号方の牡丹皮(清熱涼血 活血祛瘀)、芍薬が重複しているのです。四物湯の芍薬とも重複があります。炮附子、乾姜、桂皮と並ぶと生姜にしても大いに疑問です。

 

 

 

漢方の弁証で最も基本的な弁証は寒熱弁証です。全体として温め、熱するに傾いた処方になっています。感覚的に「馬鹿馬鹿しい誤処方」という印象を受けました。漢方の専門家からすれば、一貫性が最も重要なのですが、微塵も一貫性がありません。

 

桂枝茯苓丸を子宮筋腫の適応と考えても、納得がいきません。なぜなら、既に患者さんは筋腫摘出術をはるか6年前に受けているのです。一般的にも、閉経になりつつある年齢ですから、極言すれば子宮筋腫は縮小する時期なのです。

 

 

 

治療経過:煎じ漢方薬を即時停止させました。安価なエキス剤として、滋陰降火湯当帰飲子7.5gを処方しました。ペミロラストカリウム製剤20mgを併用。

 

 

 

第八診(平成2693日)所見

 

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乾癬皮膚病変はほぼ消失しています。背部の一部分のみに皮膚炎の所見が認められるまでに改善しました。

 

 

本症例を以て、乾癬の漢方治療の標準を強調するつもりは全くありません。私自身まだ最適な治療法を発見してはいないと感じているのです。

 

 

パソコンのキーを打てば自動的に処方が表記されるというような効率化の診療には賛成できません。出鱈目過ぎます。殆ど、頭脳を働かせたという形跡が認められなく、漢方生薬を馬鹿にした(甘くみた)処方を見せつけられ、いつもながら、同業の漢方医として気分が悪くなります。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014929日(月)

 

 


皮膚のトラブルは女性につきもの(続報4)アトピー類似性皮膚炎(アレルギー性鼻炎、の合併例) 中西医結

2014-09-26 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 問診票の既往歴に、アトピー性皮膚炎、慢性鼻炎、気管支喘息を列記される患者さんは実際多いものの、臨床現場での印象では、アトピー性皮膚炎と気管支喘息が同程度に活動性が有る場合は少なく、殆どの場合には、小児期に喘息、(成人例では)成人になってからの皮膚炎、アレルギー性鼻炎の残存例が多いようです。患者さんが、以前にアトピー性皮膚炎で治療を受けたとおっしゃる場合に、既に、典型的なアトピー性皮膚病変は消退していて、アトピーとは別種の皮膚アレルギーが新たに出現してくると思われる場合もあります。私がアトピー類似性皮膚炎とタイトルに記載した理由は、そのような別種の皮膚アレルギーを疑ったからです。

 

症例30代女性です。

初診:平成248月上旬 

主訴:現在治療中の全身の皮膚の痒みを治してほしい(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎と言われている)。痒みのために睡眠不良。眠っている間にも無意識で掻いてしまう。

 

初診時所見:呼吸音は正常。ここ数年は、喘息発作は有りません。患者さんが持参した血液検査では、末梢血液検査で好酸球の軽度の増加(13%)が認められる他に、生化学検査は異常なし。

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3か月ほど前から痒みが酷い顔面(特に眼瞼周囲)の発赤疹。色素沈着無し。炎症性の浮腫が認められます。ステロイド剤多用によるムーンフェイス(満月様顔貌)の可能性も存在します。全身的にステロイドを多剤外用すれば、それだけでもムーンフェイスが出現することがあります。眼球結膜の発赤無く、鼻症状(鼻汁)軽度有り。

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前胸部特に乳房上部に痒疹が顕著。

 

 

 

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アトピー性皮膚炎とは異なり、前腕、下腿の伸側に痒疹(一部丘疹化)が存在。

 

某皮膚科の処方内容:抗アレルギー剤としてオロパタジン5mg(副作用については前報に記載しました)、ネリゾナユニバーサルクリームステロイド)、デキサンVG軟膏ステロイド)、アンテベート軟膏ステロイド)、パスタロンソフト軟膏(尿素軟膏 保湿剤)、エンペラシン錠剤(抗ヒスタミン剤とステロイドベタメサゾンの合材)と、同時に3種類のステロイド外用、合剤とは言え、ステロイド内服と非常に偏った処方でした。しかも薬の効能、注意事項にはステロイドであるという情報は一切記載がありませんでした。「湿疹や皮膚の炎症や痒みを抑える塗り薬です」という薬剤説明は、故意にステロイドという情報を除いたものでしょうか。

 

特異的IgE検査結果:ヤケヒョウダニ、ハウスダスト、スギに強陽性、ミルク、小麦、カニ、エビ、アサリに弱~中等度陽性

 

初診時に私が考え指導したこと

 

アトピー性皮膚炎ではなく、アレルギー性湿疹と診断。現に皮膚局面の改善が無い以上、皮膚科の服用薬、塗り薬の残薬は減量すべきである。ステロイド減量による反跳(リバウンド)が危惧されるので、ステロイドは漸減して、一部継続する一方で、即座に食事療法を開始する。皮膚の痒みを悪化させる辛い食品の禁食(代表はカレーとキムチ、ニンニク、ニラ、生の玉ねぎの類、うどんを食べてもいいが唐辛子を入れない、ラーメンの際の胡椒も避ける。餃子の具に豚の挽肉、生姜やニラ、ニンニクを入れないように特に注意する、餃子のタレにラー油は禁物)と、チョコレート類はなるべく食べない。入浴温度を低めにするのが良い。飲み物は麦茶か緑茶にする。紅茶は避ける。生姜(しょうが)紅茶は禁止(シナモン紅茶も禁止)。外食もなるべく避ける。焼肉食べ放題などのイベントには参加しない。牛肉、豚肉、羊肉は避ける。特に羊肉は禁止とする。鶏肉は食べてもいいが、タレは塩味にする。カニ、エビ、アサリは食べなくても十分に栄養は摂れる。太刀魚やウナギは経験上食べない方がよい。アナゴも同様に避ける。外食、特に寿司屋などでうっかりして禁食が崩れないようにする。うっかり食べてしまった場合は、残りは(注文してもったいないと思うかもしれないが)食べないようにする。野菜ジュースでも成分的に香辛料の配合があるものが存在するので中身を吟味して買う。サプルメント服用には特に注意が必要であり、私と相談の上で購入する。高麗ニンジンは飲んではならない。外出時やエアコンの掃除などの際には花粉症マスクを着用し、可能であれば空気清浄器を購入する。徹底的にダニ退治を行う。趣味でダンスをしているとことで、運動後の発汗には、すぐにシャワーがベストであるが、シャワーが不可能ならウェットティシューで汗自体をふき取るのが良い。睡眠中に無意識に皮膚を掻いてしまうのを防止するためには、抗アレルギー剤のロラタジン10mg1錠を眠前に服用するのが良いであろう。それでも痒みが強ければ、一時期抗ヒスタミン剤とステロイドの合剤(セレスタミン等、それこそジェネリックのエンペラシン錠剤でもよいのですが)を1錠、眠前に短期服用しても支障はないであろう。等、等です。

 

 

処方内容連翹(清熱解毒、清癰散結) 生地黄(養陰清熱) 黄柏(清熱解毒燥湿 退虚熱 堅陰) 知母(清熱潤燥) 麦門冬(養陰潤肺 益胃生津 清心除煩) 北沙参(清肺養陰、益胃生津) 当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便) 白芍(養血斂陰) 蝉脱(疏風熱 抗アレルギー) 烏梅(抗アレルギーの意味で使用) 茯苓(健脾利水) 荊芥(祛風止痒) 防風(祛風止痒) 白蒺藜(平肝潜陽、疏肝解鬱、疏散風熱、明目止痒) 白鮮皮(清熱解毒祛湿止痒)等

 

経過

 

外用薬は途中から康仁堂慢性アレルギー性皮膚炎方に変更。多剤ステロイドは漸減。オロパタジンは他剤に変更しました。

 

 

 

第5診察(平成249月末日)皮膚所見

 

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顔面の痒疹、全身の痒疹は消失。下肢の痒丘疹も消失。ムーンフェィスの改善なのか、炎症性浮腫の改善なのかは判別できませんが、顔面のスッキリ感が生じてきました。

 

 

 

直近 平成267月某日の前胸部乳房上部所見。写真下。

 

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乳房上部から前胸部にかけての痒疹は再発無く、すでに消失。色素沈着も有りません。四肢の痒疹再発も無く、鼻炎症状も無く、病情穏定と判断しました。

 

 

 

後記

 

ダニや埃(ほこり)の無い世界に移住することは不可能です。ましてや杉花粉は日本のいたるところで飛散します。カニ、エビ、アサリは食べなくても生命維持には問題ありませんが、ミルクや小麦はあらゆる加工食品に配合されています。逃れられないアレルゲンの環境の中で生活していくしか無いのが実情です。適時、西洋医学と漢方医学を併用して症状の改善を目指していくしか有りません。しかしながら、苦し紛れのステロイド多剤外用と内服は大いに疑問のある治療法ではないでしょうか。素晴らしい効能を持つステロイド外用剤でも、乱用に近い処方は「開業医処方」であると「ステロイド外用剤の専門家」から揶揄されても仕方ないと感じます。

 

私の治療指針は、中西医結合(漢方&西洋医学結合)治療を以て、人体の自然治癒力のお手伝いをするのを基本としています。

 

いつも申しあげているように、皮膚科領域では効果が一目瞭然ですから、「論より証拠」なのです。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014926日(金)

 

 


皮膚のトラブルは女性につきもの(続報3)皮膚科に通院しても改善しないアトピー性皮膚炎、色素沈着症、慢

2014-09-23 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

経過は前方(920日記)と非常に似ている37歳女性です。皮膚病変も類似しています。

 

初診(平成26430日)時の皮膚所見をご覧ください。

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炎症性の浮腫があり、顔面は少し浮腫んでいます。但し、皮膚表面はザラザラして乾燥しています。いわゆる苔癬化局面と言えるでしょう。前額部には色素沈着があります。眉毛部分にも痒疹が存在し、苔癬化のために眉毛の末梢部の脱毛が認められます。

 

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顔面から顎下、全頸部、鎖骨周囲、肩甲部の苔癬化を伴う痒疹、色素沈着が認められます。

 

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後頚部にも同様の苔癬化アトピー局面と色素沈着が顕著です。左肩の皮膚には苔癬化の特徴である皮膚の硬化と厚化、乾燥が観察されます。

 

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肘部の苔癬化皮膚病変です。一部に色素が脱出して白斑化しています。色素沈着、発赤を伴う痒疹の程度は上の写真部位よりも軽度です。

 

皮膚科、眼科等で治療中でしたが、皮膚の苔癬化は進む一方で、痒みを伴う痒疹も改善しないので当院を受診されました。

 

かつて、ステロイド剤による対症療法と中止後の反跳(リバウンド)を繰り返してきたために「ステロイドは使いたくないです」と問診票に記載がありました。

 

某皮膚科での直近の治療内容

 

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抗アレルギー剤としてオロパタジンが1日2錠処方されています。私は、オロパタジンは使用しません。というのは、重大な副作用情報が報告されているからです。以下、

 

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急激に肝機能が悪化して劇症肝炎で死亡する報告があったのです。このような副作用情報は当該薬剤が薬価収載された後での報告ですから、死因との「直接的な因果関係」は不明なものも含むでしょうが、死亡例の副作用情報があった以上、私は使用を即時中止します。幸いにも、私はオロパタジンの使用経験はありませんでした。ある薬剤の適応症(保険が効く病状)が拡大した場合にも、後になって深刻な副作用情報が報告される場合があります。帯状疱疹後神経痛の薬剤「リリカ」(一般名・プレガバリン)を服用した後、劇症肝炎や肝機能障害の重い副作用を発症する症例が確認され、肝機能障害の注意を促す記述を薬の添付文書に加えるよう厚労省の指示があったのも最近の話です。適応症の拡大が副作用事例の拡大につながる例です。

 

某皮膚科処方続き:

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漢方薬として白虎加人参湯1日9g(量が多いですし、意味が不明です)、治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)17.5gが処方されています。苔癬化アトピーでは論外でしょう。理由は前稿で述べたように、養陰剤の配伍がないこと、蒼朮(燥湿健脾)は温燥の性質を持つこと。大黄の配伍目的が不明なこと、過去に著効した経験が無いことなどです。白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)1日9gの処方も疑問です。傷寒論に忠実に記載すれば、白虎湯(びゃっことう):石膏 知母 生甘草 粳米(こうべい 中国語でジンミー)に人参を加えた白虎加人参湯証は大熱、大汗、大煩渇、欲飲水数升、背微悪寒、舌質紅、舌苔乾燥白、或いは黄燥、脈洪大やや無力あるいは浮滑となります。八綱弁証で表現すれば、陽明経燥熱実症と気津損傷が加わった虚実挟雑症です。9gの大量を30日分処方とありますが、清熱潤燥の作用は知母のみであり、石膏と、治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)17.5g中の大黄で、ひたすら冷やせばよいと考えているズブの素人の幼稚な発想です。方薬説明も「体質(素体)を変える」とか、「いろいろな効果」とか処方医同様の全くの素人的な説明です。患者のどこに、じくじくした「湿疹」があるというのでしょうか?全く無いです。

 

初診時の治療方針と処方:抗アレルギー剤のオロパタジンは副作用の危険性がある以上中止する。白虎加人参湯、治頭瘡一方は効果が無い以上中止する。外用剤としては、保湿剤、何よりも痒み止めが必須、加えて、康仁堂漢方薬エキス(養陰血、清熱涼血剤)、極少量のステロイド剤(通常の1/15濃度)を混合して処方。経口剤として、養陰血/祛風止痒剤(康仁堂苔癬化アトピー方)を13回午前中、午後空腹時と眠前に服用、西洋抗アレルギー剤(オロパタジンやステロイドを含まない)はエバスチン(エバステル後発品)OD2錠に変更、シナール(ビタミンC製剤)3錠、ビオチン1.0g(以上1日量)を併用。康仁堂慢性アトピー禁食、養陰方による食事指導。康仁堂苔癬化アトピー方の一部を紹介しますと、生地黄 黄柏 知母 天門冬 麦門冬 沙参 当帰 白芍 炙甘草 白朮 白蒺藜 荊芥 防風 何首烏 玄参 黄耆{加 玉竹(滋陰潤肺、生津養胃、白花蛇舌草(清熱解毒利湿 静菌 免疫調整)、川芎(活血行気、祛風止痛)、丹参(涼血活血祛瘀)など)}です。

 

治療経過

 

第6診(平成26626日)

 

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顔面の乾燥した苔癬化痒疹は大幅に改善されました。炎症性浮腫は消失しました。

 

 

第7診(平成26726日)

 

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顎下、全頸部、鎖骨周囲、肩甲部の乾燥した苔癬化を伴う痒疹はほぼ消失、皮膚に潤いが生じてきました。色素沈着も改善しつつあります。

 

第8診(平成26829日)

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初診時から4か月後です。

 

後頚部の苔癬化アトピー局面と色素沈着の改善が顕著です。初診時の皮膚の硬化と厚化、乾燥した皮膚には一転して「潤い」と「しっとり感」が生じてきています。

 

再び、同部位の初診時写真を載せますので、比較なさってください。

 

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4か月前の同部位です。改善は一目瞭然ですね。

 

 

 

いつも申しあげているように、皮膚科領域では効果が一目瞭然ですから、「論より証拠」なのです。臨床家としての経験が決まりきった一つ覚えの「標準的治療」より大切な分野です。

 

本症例は、幸いにも治療経過中に気管支喘息の発作は出現しませんでした。もし喘息発作が出現したら、私は西洋医としてβ刺激剤の吸入を短期使用、寛解期には吸入ステロイド剤を最小限度使用する予定でした。

 

気管支喘息とアトピー性皮膚炎の併発の際に、「漢方薬を甘く見る」結果としての誤った漢方処方は多く認められます。皮膚を診ないで、喘息だけを診るというような専門外来の場合です。麻黄附子細辛湯、小青竜湯などは、喘息発作時でも使用すべきではありません。必ず、皮膚病変が悪化するからです。ましてや、喘息寛解期にだらだらと処方を続け、患者は皮膚病変で苦しむという例を数多く経験してきました。ピント外れの処方というよりも、狂人に刃物になりかねません。

 

 

 

患者の自然治癒力のお手伝いをするという基本姿勢が何よりも大切なことなのです。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014923日(火)

 

 

 


皮膚のトラブルは女性につきもの(続報2) 10年間のアトピー性皮膚炎、色素沈着症、通年性のアレルギー

2014-09-20 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

通常の医療環境であれば、アトピー性皮膚炎、色素沈着、手荒れ(手湿疹)は皮膚科、アレルギー性鼻炎は耳鼻咽喉科、アレルギー性結膜炎は眼科、喘息様咳嗽は呼吸器内科という具合に4つの医療機関か、同一病院であれば複数科を受診しなければならない若い女性をいわゆる漢方併用アレルギー科である当院にて治療して、予想以上の治療効果を得ましたのでご報告したいと思います。

 

症例29歳女性 職業:医療関係(石鹸や消毒液による手洗いが多い)

 

病歴10年前からアトピー性皮膚炎、春、秋を問わない通年性のアレルギー性鼻炎、目の痒み、喀痰を伴わない咳嗽、頑固な手荒れが出現、皮膚病変に対しては病院務めである関係で、プロトピック軟膏、アンテベート(ステロイド)軟膏などで対症療法を行ってきた。漢方薬は治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)を1年間服用したが効果無く、当院受診前に中止した。

 

初診時(平成23112日)皮膚所見をご覧ください。(写真下)

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前額部、眼瞼周囲、特に右側口回に痒みを伴う発赤疹が著名です。この写真でも手首、から手掌、手背の痒疹が観察されます。皮膚は乾燥傾向にあります。

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顎から前胸部にかけて、いわゆる苔癬化「乾燥、ゴワゴワ、ツッパリ感を伴う」皮膚病変と、色素沈着が顕著です。

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後頚部にも同様の痒疹が顕著ですが、色素沈着や苔癬化は軽度です。

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右肩部分の乾燥した痒疹と腋下周囲の色素沈着が認められます。痒疹の表面が乾燥しているのが観察されます。

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同様に、左側腋下周囲にも色素沈着が目立ちますが、右側に比較して肩部分の痒疹は軽度です。

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アトピー性皮膚炎に典型的な肘部の痒疹と色素沈着が認められます。右手首にも痒疹があります。

 

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両側手背部、指の慢性痒疹があります。皮膚は湿潤ではなく、乾燥傾向があります。患者さんは右利きですが、慢性炎症のために左の中指、薬指に炎症性の浮腫があります。

 

初診時に私が考えたこと

 

赤みや痒みには、清熱解毒祛風は当然ながら、副作用としての皮膚の乾燥は避けなくてはならない。従って、養陰清熱が必須であり、祛風止痒と同時に、皮膚を潤さなくてはならない。漢方用語で言えば、養陰清熱潤膚祛風止痒が治療の基本である。治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)は論外に置く{理由:養陰剤の配伍なし、蒼朮(燥湿健脾)は温燥の性質を持つ。大黄の配伍目的が不明、過去に著効した経験が無い等}。接触性皮膚炎にも似た手荒れに対しては、保湿が必須であり、皮脂を失わせてはならない。治療がうまくいけば、色素沈着は自然に回復するはずである。鼻や目のアレルギー症状に対しては、その都度、対症療法をすればいい。先ずは皮膚病変の改善を第一目標とすべきである。慢性の咳嗽に対しては、肺陰を補いつつ止咳し、以て潤膚にも働く。以上のように治療方針を立てました。

 

初診時処方:プロトピックは無効であるから継続は疑問であり中止。ステロイド軟膏を直に皮膚に塗ることも悪循環の苔癬化を防止する目的の為に中止。保湿剤、痒み止め、康仁堂漢方薬エキス(養陰血、清熱涼血剤)、極少量のステロイド剤(通常の1/15濃度)を混合して外用剤として処方。経口剤として、養陰血/祛風止痒剤(康仁堂慢性アトピー方)を12回午前中空腹時と眠前に服用、西洋抗アレルギー剤(オロパタジンやステロイドを含まない)を眠前服用。康仁堂慢性アトピー禁食方による食事指導。

 

治療経過

 

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治療開始後3か月:第6診

 

前額部、眼瞼周囲、口回の痒みを伴う発赤疹は大いに減軽。皮膚の乾燥傾向は改善されました。頬が赤いのは頬紅のお化粧のためであり、病的ではありません。

 

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後頚部の痒疹は消失、色素沈着も有りません。

 

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27診:平成24926:背部のブラジャーに接する皮膚部分と腋下の色素沈着はまだ残存しています。他の痒疹はほぼ消失しました。(写真上)

 

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30診(平成24128日):背部の色素沈着は大幅に改善されました。(写真上)

 

平成25年度に入ってからは、皮膚病変、色素沈着の改善が一層顕著になりました。

 

35診(平成25326日)

 

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背部の色素沈着、腋下の色素沈着がほぼ消失。

 

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顔面痒疹は消失、別人のようです。関西では「ベッピンさん」と言います。

 

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後頚部の皮膚は正常化して、美しい項(うなじ)になりました。ベッピンさんの項(うなじ)です。

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肩部分の痒疹も腋下周囲の色素沈着も消失。顎下から前胸部にかけての苔癬化病変と色素沈着は消失。矢印(?)部分の手甲部分も綺麗な肌になりました。皮膚が美しくなったのは一目瞭然です。

 

 

漢方医としての責務である色素沈着を残さないで、皮膚病変を改善することが出来た症例です。大変にお美しい「ベッピンさん」になられました。咳嗽は勿論のことですが、鼻、目アレルギー症状も改善したのです。私自身驚いています。

 

 

皮膚科領域では効果が一目瞭然ですから、「論より証拠」なのです。臨床家としての経験が決まりきった「標準的治療」より大切な分野です。高度に専門的になりますので、方薬と加減は省略させていただきました。

 

数字を並べる臨床データはいくらでも改ざんが可能です。皮膚病変は写真という証拠が残りますから、捏造は特殊機関でもなければ不可能です。捏造は詐欺です。朝日新聞は「(国民ではなく)読者にお詫び申し上げます」と記者会見を開きましたが、大泣き元県議、秘書給与詐欺の現民主党女性議員よりも詐欺の性質(たち)が悪いですね。組織的な悪意を持った捏造に、国民はどれだけ長い間、騙されていたのでしょうか。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014920日(土)

 

 

 

 


皮膚のトラブルは女性につきもの。挫創(ざそう、ニキビ)様皮膚病変、蕁麻疹、湿疹を乗り越えて結婚式に臨

2014-09-17 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

女性に皮膚のトラブルはつきものです。乾燥肌、逆に脂漏肌、湿疹、蕁麻疹、挫創(ざそう、ニキビ)などです。その都度、治療を行い、色素沈着を残さずに改善させていくのが開業医としての責務なのです。アトピー性皮膚炎、気管支喘息などの既往が存在すると治療が難しくなります。

 

本稿では、種々な皮膚のトラブルに随時対応しながら、色素沈着を残すことなく、綺麗な肌を保ちながら結婚式に臨んだ女性の報告をします。

 

初診は平成229月、患者さんが21歳の時です。

まず、写真をご覧ください。

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挫創(ざそう ニキビ)様の病変が頸部に認められます。

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挫創(ざそう ニキビ)様の病変は両側肩の部分にも存在します。

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挫創(ざそう ニキビ)様の病変は前胸部にも多数認められ、色素沈着もあり、慢性化しています。左前胸部には小範囲に皮膚の発赤も存在します。ちょうど初診の数日前に蕁麻疹が出現して、診察時には消失していました。18歳ごろから、挫創、湿疹、皮膚の掻痒があり、次第に悪化してきたとのことでした。小児期にはアトピー性皮膚炎、気管支喘息があったとのこと。

 

初診時の治療方針:基本的にアレルギー体質(アトピー性皮膚炎、気管支喘息の既往)があることは確かであるが、先ずは挫創様病変の治療と、蕁麻疹の予防を行い、とりあえずは皮膚のブツブツ病変を無くする。

 

初診時の処方荊芥連翹湯5.0g 十味敗毒湯5.0g(以上1日量、午前の食間、眠前に2回に分けて服用)、エバスチン(エバステル後発品)OD錠1錠眠前服用、外用剤としてクロタミトン(オイラックス後発品)、ナジフロキサシンクリーム、極少量のクロベタゾールプロピオン酸エステルをミックスして使用開始しました。

 

 

その後、蕁麻疹の発生頻度が減少、挫創様病変は軽快に向かいました。色素沈着改善を目的に、シナール(ビタミンC製剤)3錠、ビオチン1.0g(以上1日量)を併用開始、しばらくは小康状態でしたが、下肢に痒みを伴う湿疹が出現したとのことで、エバスチン(エバステル後発品)OD錠を2錠に増量、朝食後と眠前に服用していただきました。

 

 

平成23年の3月頃になると、蕁麻疹、挫創病変は軽快してきましたが、いわゆる皮膚炎症状が出現しました。写真下。

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うなじ部分の痒みを伴う発赤疹が認められます。

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 アトピーとは対照的に肘部、前腕の伸側に痒疹が観察されます。

 

冬場から皮膚の乾燥を自覚していたということで、外用剤として保湿クリームを併用し、経口剤は当帰飲子5.0g消風散5.0g((以上1日量、午前の食間、眠前に2回に分けて服用)、エバスチン(エバステル後発品)OD2錠、シナール(ビタミンC製剤)3錠、ビオチン1.0g(以上1日量)は継続、睡眠中に無意識に引っ掻いてしまうとのことで、ロラタジン(Loratadine)10mg1錠を眠前に服用していただきました。外用剤はそのままです。

 

その後、皮膚炎症状は改善されました。写真下。

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 後頚部の発赤疹は消失、皮膚は正常化し、産毛(うぶげ)の発毛も正常です。

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肘部外側部痒疹、前腕部伸側痒疹も消失しました。

 

但し、23年の猛暑多湿の時期に前胸部の汗疹から一部、挫創様変化が出現しましたので、経口漢方薬を初診時の荊芥連翹湯5.0g 十味敗毒湯5.0g(以上1日量、午前の食間、眠前に2回に分けて服用)に戻しました。

 

平成24年度は、皮膚病変は落ち着いていました。

 

平成25年8月に再度皮膚の掻痒感が出現し、軽い皮膚炎の所見が生じました。経口漢方薬は再度、当帰飲子5.0g消風散5.0g((以上1日量、午前の食間、眠前に2回に分けて服用)に変更しました。11月までに症状は消失。

 

その後、今年に入ってからは、病情は安定し、受診は無かったのですが、結婚式を控えて、予防的に漢方薬を服用したいとのことで7月にご来院されました。

 

直近の写真(平成26717日)

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挫創(ざそう ニキビ)様の病変の完全消失 色素沈着無し。

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挫創(ざそう ニキビ)様の病変は完全消失。色素沈着無し。

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初診時写真と比較すれば、多数存在した挫創(ざそう ニキビ)様の病変は消失、色素沈着も無く、慢性化病変はほぼ寛解しています。皮膚の発赤もありません。

 

何度も、食事療法を行いましたが、内容は省略させていただきます。

 

 

21歳から25歳まで診させていただいている患者さんですが、大変に「お美しく」なりました。

 

漢方医の心がけとして申し上げたいことは、長年の体質(素体)を一挙に改善するというような「功を急ぐべきではない」ということです。人体の自然治癒力の回復のお手伝いをするという意識が大切です。私は痤瘡に対して常に、経口抗生物質を投与しないので、勿論、本症例に抗生物質の経口投与は行いませんでした。

 

 

皮膚科領域では効果が一目瞭然ですから、「論より証拠」なのです。臨床家としての経験が決まりきった「標準的治療」より大切な分野です。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014917日(水)