直径0.8cmより小さい結石の処理:病の早期は多くは実証に属し、実則其の標を治療するを原則とし、即ち清熱利湿、通淋排石、活血化瘀を法とします;病の後期には虚実挟雑の証に属し、治療は標本兼治を原則とし、利湿清熱通淋と同時に、補脾益腎、或いは滋陰清熱法を併用し治療効果を高めます。<o:p></o:p>
直径0.8cmより大きい結石あるいは合併症の処理:大きな結石や、尿路感染、尿路閉塞、腎積液、腎不全等の合併症には、西洋抗生物質、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)或いは手術治療を行い、中薬は同時、或いは補助的に用いられます。中医弁証の基礎の上に、西洋医学的な結石治療を参照しながら、排石、溶石、対症治療を行い、合併症の処理も可能です。<o:p></o:p>
中薬排石:現代の薬理学研究で排石作用のある中薬:金銭草 海金沙 石葦 萹蓄 滑石 琥珀 瞿麦 車前草 牛膝 冬葵子 玉米須 木賊 威霊仙 大黄 虎杖 番瀉葉等、必ずしも弁証は必要無く選択される薬剤です。<o:p></o:p>
中薬溶石:溶石作用を併せ持つ中薬:石葦 金銭草 海金沙 鶏内金 威霊仙 琥珀 陳皮 熊胆 胡桃肉 夏枯草 玄明粉 米糠 桑樹根 硝石 魚脳石等、これらも弁証基礎に立って選択されます。<o:p></o:p>
緩急止痛:緩急止痛効果のある中薬:丁香 木香 沈香 佛手 藿香 青皮 陳皮 延胡索 両面針 赤芍 白芷 細辛 威霊仙 枳殻 葛根 烏梅等は弁証を根拠に選択されます。他には、鍼治療として、腎?、三陰交に鍼を打ち、比較的強く連続波の通電留置20分で顕著な止痛効果を得られることもあります。<o:p></o:p>
解除閉塞:結石は往々にして尿路を閉塞し、無症状の場合もありますが、両側の尿管結石は急性腎不全を惹起することもあります。尿管カテーテルで結石を挟んで引導し、直接結石を取るか、或いは手術にて閉塞の解除を行うと共に中薬治療を配合します。<o:p></o:p>
防止感染:結石の存在や尿路閉塞は細菌の増殖を起こし、尿路感染症を伴えば、結石のサイズの増大と腎実質の損害を加速させます。故に、感染の防治も重要な課題です。<o:p></o:p>
尿路感染の原因菌は大腸桿菌と変形桿菌が最も常見されます。大腸桿菌の抑制作用のある中薬:車前草 秦皮 大黄 黄芩 黄連 黄柏 金銀花 夏枯草 苦参 馬歯? 知母 厚朴 木香 劉寄奴 白芷 赤芍 当帰 百部 麦門冬等であり;変形桿菌の抑制作用のある中薬:黄連 黄芩 大黄 金銀花 連翹 夏枯草 魚腥草 虎杖 苦参 牡丹皮 知母 秦艽 丁香 白芷 厚朴 白芍 当帰等になります。整体弁証治療中に、或いは弁病治療中に抗菌中薬を選択します。当然のことながら、若し感染が重複悪化している場合には則、薬剤感受性検査に基づく抗生物質を使用します。<o:p></o:p>
張琪氏の自創方消堅排石湯は上記理論に沿う方薬です。組成は金銭草(甘淡/平 利水通淋、除湿退黄、解毒消腫)50~75g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 丹参(活血化瘀)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 紅花(温経活血)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g 車前子(清熱利水)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15gから成ります。清利湿熱 行気活血軟堅化積の原則です。気血通暢のほか結石溶化作用が治療効果に繋がります。<o:p></o:p>
結石が大きく排出困難な場合には、穿山甲 皂角刺を加味し散結消堅を強化し、病程が長く、腎陰虚の証を合併すれば、熟地黄 枸杞子 山茱萸等を、腎陽不足には肉桂 附子 茴香を、気虚には黄耆 党参を加味すると排石が可能になる場合があります。<o:p></o:p>
病程が長く、反復感染を起こすものは、多くは腎陽不足、気化効能不足、湿熱毒邪薀蓄不除によるものであり、消堅排石湯を基礎にして、附子 桂枝 肉桂を加味し温陽を以って気化を助け、薏苡仁 敗醤草 金銀花 連翹等の利湿清熱解毒の剤を加味すると良い結果が得られます。以上は扶正駆邪兼顧の法となります。<o:p></o:p>
海金沙(邦名 海金砂 甘寒 利水通淋 利水消腫:カニクサ科カニクサの成熟胞子)は張琪氏の医案では95年以降に登場して来るようです。勿論、尿路結石症には弁証抜きでも配伍しても構わないでしょう。<o:p></o:p>
三金湯(さんきんとう)」組成:鶏内金 海金沙 金銭草 石葦 冬葵子(とうきし 甘寒 アオイ科フユアオイの成熟種子 利水通淋) 瞿麦を再度記載して、尿路結石症の漢方治療の最終稿とします。<o:p></o:p>
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2014年6月12日(木)<o:p></o:p>