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尿路結石の漢方薬 4 弁証と弁病相結合(腎病漢方治療 384報)

2014-06-12 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

直径0.8cmより小さい結石の処理:病の早期は多くは実証に属し、実則其の標を治療するを原則とし、即ち清熱利湿、通淋排石、活血化瘀を法とします;病の後期には虚実挟雑の証に属し、治療は標本兼治を原則とし、利湿清熱通淋と同時に、補脾益腎、或いは滋陰清熱法を併用し治療効果を高めます。<o:p></o:p>

 

直径0.8cmより大きい結石あるいは合併症の処理:大きな結石や、尿路感染、尿路閉塞、腎積液、腎不全等の合併症には、西洋抗生物質、体外衝撃波結石破砕術(ESWL或いは手術治療を行い、中薬は同時、或いは補助的に用いられます。中医弁証の基礎の上に、西洋医学的な結石治療を参照しながら、排石、溶石、対症治療を行い、合併症の処理も可能です。<o:p></o:p>

 

中薬排石:現代の薬理学研究で排石作用のある中薬:金銭草 海金沙 石葦 萹蓄 滑石 琥珀 瞿麦 車前草 牛膝 冬葵子 玉米須 木賊 威霊仙 大黄 虎杖 番瀉葉等、必ずしも弁証は必要無く選択される薬剤です。<o:p></o:p>

 

中薬溶石:溶石作用を併せ持つ中薬:石葦 金銭草 海金沙 鶏内金 威霊仙 琥珀 陳皮 熊胆 胡桃肉 夏枯草 玄明粉 米糠 桑樹根 硝石 魚脳石等、これらも弁証基礎に立って選択されます。<o:p></o:p>

 

緩急止痛:緩急止痛効果のある中薬:丁香 木香 沈香 佛手 藿香 青皮 陳皮 延胡索 両面針 赤芍 白芷 細辛 威霊仙 枳殻 葛根 烏梅等は弁証を根拠に選択されます。他には、鍼治療として、腎?、三陰交に鍼を打ち、比較的強く連続波の通電留置20分で顕著な止痛効果を得られることもあります。<o:p></o:p>

 

解除閉塞:結石は往々にして尿路を閉塞し、無症状の場合もありますが、両側の尿管結石は急性腎不全を惹起することもあります。尿管カテーテルで結石を挟んで引導し、直接結石を取るか、或いは手術にて閉塞の解除を行うと共に中薬治療を配合します。<o:p></o:p>

 

防止感染:結石の存在や尿路閉塞は細菌の増殖を起こし、尿路感染症を伴えば、結石のサイズの増大と腎実質の損害を加速させます。故に、感染の防治も重要な課題です。<o:p></o:p>

 

尿路感染の原因菌は大腸桿菌と変形桿菌が最も常見されます。大腸桿菌の抑制作用のある中薬:車前草 秦皮 大黄 黄芩 黄連 黄柏 金銀花 夏枯草 苦参 馬歯? 知母 厚朴 木香 劉寄奴 白芷 赤芍 当帰 百部 麦門冬等であり;変形桿菌の抑制作用のある中薬:黄連 黄芩 大黄 金銀花 連翹 夏枯草 魚腥草 虎杖 苦参 牡丹皮 知母 秦艽 丁香 白芷 厚朴 白芍 当帰等になります。整体弁証治療中に、或いは弁病治療中に抗菌中薬を選択します。当然のことながら、若し感染が重複悪化している場合には則、薬剤感受性検査に基づく抗生物質を使用します。<o:p></o:p>

 

張琪氏の自創方消堅排石湯は上記理論に沿う方薬です。組成は金銭草(甘淡/平 利水通淋、除湿退黄、解毒消腫)5075g 三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15g 鶏内金(破積軟堅行気)15g 丹参(活血化瘀)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 紅花(温経活血)15g 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱)15g 瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 滑石(清熱利湿 下焦湿熱の要薬)20g 車前子(清熱利水)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15gから成ります。清利湿熱 行気活血軟堅化積の原則です。気血通暢のほか結石溶化作用が治療効果に繋がります。<o:p></o:p>

 

結石が大きく排出困難な場合には、穿山甲 皂角刺を加味し散結消堅を強化し、病程が長く、腎陰虚の証を合併すれば、熟地黄 枸杞子 山茱萸等を、腎陽不足には肉桂 附子 茴香を、気虚には黄耆 党参を加味すると排石が可能になる場合があります。<o:p></o:p>

 

病程が長く、反復感染を起こすものは、多くは腎陽不足、気化効能不足、湿熱毒邪薀蓄不除によるものであり、消堅排石湯を基礎にして、附子 桂枝 肉桂を加味し温陽を以って気化を助け、薏苡仁 敗醤草 金銀花 連翹等の利湿清熱解毒の剤を加味すると良い結果が得られます。以上は扶正駆邪兼顧の法となります。<o:p></o:p>

 

海金沙(邦名 海金砂 甘寒 利水通淋 利水消腫:カニクサ科カニクサの成熟胞子)は張琪氏の医案では95年以降に登場して来るようです。勿論、尿路結石症には弁証抜きでも配伍しても構わないでしょう。<o:p></o:p>

 

三金湯(さんきんとう)」組成:鶏内金 海金沙 金銭草 石葦 冬葵子(とうきし 甘寒 アオイ科フユアオイの成熟種子 利水通淋) 瞿麦を再度記載して、尿路結石症の漢方治療の最終稿とします。<o:p></o:p>

 

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2014612日(木)<o:p></o:p>

 


尿路結石の漢方薬 3 攻補兼施論(腎病漢方治療 383報)

2014-06-11 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

前方までに、尿路結石は久病であれ、新病であれ、湿熱の邪が終始重要な因素であり、治療は清熱利湿の視点が重要であると共に、調理気血の重要性についてお話しました。本日は尿路結石の治療での攻補兼施論について中医の考え方をご紹介します。<o:p></o:p>

 

腎気(陽)に最も重きを置きます。その中医学的な根拠は、腎は水を主り、二便(大便と小便)を司ることから、腎は水液調節の枢軸(要かなめ)です。腎陽が旺盛ならば、腎の開合蒸化は乱れることなく、「濁中の清」は肺に上昇し、全身に輸布され、「濁中の濁」は膀胱に下注し体外に排出され、湿熱は蘊結することなく、結石は形成されないと考えます。<o:p></o:p>

 

若し、腎陽が虚弱になると、腎は開合蒸化の機能を失い、清濁の泌別が悪化し、尿液は下注することが出来ず、沈積し結石となります、この理論から、清利通淋の品を単純に使用するだけでは不十分、或いは不可であり、温補腎気の薬剤を兼施することが必須であり、補を以って通となし、人体の陰陽平衡をもたらし、気化即ち結石の排出が可能となります。<o:p></o:p>

 

温腎助陽の品は命火を旺盛にし、蒸騰を有力にさせ、水液代謝を復常させ、結石の溶解や排出を加速させると中医は考えます。<o:p></o:p>

 

この他に、結石の存在部位によって攻補の原則があります。腎内に結石がある場合には、補腎が欠かせず、結石が尿管に存在する場合には、溶石下降を治療原則とします。<o:p></o:p>

 

今回も簡潔に過ぎたきらいがありますが、以上のような中医論は経験医学の後付理論でもあります。今回は具体的な生薬については言及しません。次回の尿路結石の弁証と弁病相結合にて最終的なマトメにしたいと思います。<o:p></o:p>

 

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2014611日(水)<o:p></o:p>

 


尿路結石の漢方薬 2 調理気血の重要性(腎病漢方治療 382報)

2014-06-10 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

前方では尿路結石が久病であれ、新病であれ、湿熱の邪が終始重要な因素であり、治療は清熱利湿の視点が重要であるとお話しました。本日は短く簡潔に調理気血の重要性についてお話します。<o:p></o:p>

 

気血阻遏(気血が詰まって滞り流れない、ピンインではqì xuè zǔ è)を結石が停滞し下行しない理由であると中医は考えます。気血を宣通させ結石を推動させることが結石の排出に寄与すると考えます。実際、理気(行気)活血薬の配伍が、往々にして良好な治療結果につながります。<o:p></o:p>

 

調理気血の薬剤の具体例としては、三棱(活血化瘀) 莪朮(活血化瘀) 川楝子(せんれんし 苦/寒 行気止痛) 鶏内金(破積軟堅行気 化堅消石)等は破積軟堅行気に作用し、赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛) 牡丹皮(清熱活血涼血 退虚熱) 丹参(活血化瘀) 紅花(温経活血)等は活血化瘀散痛消腫に作用する薬剤です。<o:p></o:p>

 

気血が疏通(そつう:滞り無く流暢に流れる意味)すれば、湿熱も滞留せず、結石も排出が可能になるという理論です。そもそも湿熱が蘊結しなければ結石も形成されないとする理論になるでしょう。気血の中医基礎理論については省略します。あまりにも簡潔過ぎましたか?<o:p></o:p>

 

次回は尿路結石の攻補兼施論についてお話します。<o:p></o:p>

 

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2014610日(火)<o:p></o:p>

 


尿路結石の漢方薬 1(腎病漢方治療 381報)

2014-06-09 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

昨日まで計10例の漢方治療の実際をご紹介しました。本日から、マトメにかかります。<o:p></o:p>

 

中医学の考え方:尿路結石は凡そ4方面の認識が漢方治療に欠かせません。即ち、下焦湿熱、気滞血瘀、陰虚火旺、脾腎気虚の4方面です。湿熱の邪は外受あるいは内生し、外受とは六淫の湿邪或いは濁気が、人体に入裏化熱し、下焦に蘊結することであり、内生とは肥甘厚味の飲食を続けると体内に湿熱が醸生され、「湿は陰邪であり、その性は急いで下降する」とあるように下焦に流注します。下焦湿熱が慢性化すれば気血を阻滞し、気滞血瘀、或いは熱灼陰傷し、尿液を灼し結石となると考えます。陰損が陽にまで及ぶか、或いは清利の薬剤の過用により脾腎の陽気を損傷すれば、気虚は即ち鼓動無力、陽虚は即ち温化失調、結果として更に結石の増加、大きさの増大を招くと考えます。(このような理論は中医にとってはビジュアル化されて脳裏に焼きついているほどです。)<o:p></o:p>

 

次に情志の関与に話を進めますが、思い悩むが度を過ぎると気結となり、気機不暢、血停湿聚となり、慢性化すれば化熱し湿熱になります。房労所傷者(過度のセックスで消耗している者)は腎の精気を耗損し、腎虚不運、温化無権、水失気化、聚して湿濁となり、久しくなれば、また化熱し湿熱となります。極少数の患者には、単純な気虚、陰虚、気滞血瘀の証のみ伴うものがありますが、疾病の後期にはさまざまな挟有湿熱の証になります。<o:p></o:p>

 

久病であれ、新病であれ、湿熱の邪が終始重要な因素です。疾病の病期により多少の違いがあるにせよ、清熱利湿の基本的な視点が重要なのです。<o:p></o:p>

 

次回尿路結石の調理気血の理論と生薬についてお話します。<o:p></o:p>

 

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201469日(月)<o:p></o:p>

 


尿路結石症 消堅排石湯(しょうけんはいせきとう)加減による治療 9(腎病漢方治療 380報)

2014-06-08 00:15:00 | 尿路結石症 漢方

 

本日は張琪氏の尿路結石医案では最も近年の2004年の症例をご紹介します。尿路結石の最新の治療法である体外衝撃波結石破砕術(ESWLは中国では2000年には既に導入されたようです。ESWLは、体外から衝撃波を発生させ、その衝撃波を楕円状の反射鏡で収束させ焦点を目的の結石に当てて破砕する方法で、結石を砂状にして尿と一緒に体外へと排出させる治療法です。しかし全ての尿路結石が一回のESWL治療にて自然排尿で排出されるほど細かく破砕されるわけではありません。加えて結石の存在部位により、衝撃波の焦点部位が異なってきますので、複数回のESWLを要する症例もあります。それでは医案に進みましょう。<o:p></o:p>

 

患者:杜某 52歳 女性 党幹部 初診年月日2004113<o:p></o:p>

 

病歴:患者は脳CT検査で多発性脳梗塞を指摘されたが、特別な中枢神経症状は無く、右腰部痛あり、小便の量がやや少ない、浮腫は無し。某病院で超音波検査を受けたところ、右腎結石、右腎盂大量積液、結石破砕術(ESWL)を受けたが、排石が起こらず(破砕回数は不明、恐らくは1回と思われます)、大量の腎盂積液も下らず、遂に中医治療を求め氏を受診。<o:p></o:p>

 

初診時所見:腰痛、小便量やや少なく、舌苔白、脈象弦滑<o:p></o:p>

 

中医診断:石淋<o:p></o:p>

 

西医診断:右腎結石、右腎盂大量積液<o:p></o:p>

 

治法:排石利水<o:p></o:p>

 

方薬金銭草(清熱解毒利尿排石、活血散瘀)30g 海金沙(邦名 海金砂 甘寒 利水通淋 利水消腫:カニクサ科カニクサの成熟胞子)20g 鶏内金(破積軟堅行気 化堅消石)15g 石葦(利水通淋、止咳 涼血止血)20g 車前子(清熱利水)30g 王不留行(苦/平 おうふるぎょう 活血化瘀 通経 下乳)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)20g 丹参(活血化瘀)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 紅花(温経活血)15g 益母草(活血利水消腫)30g 澤瀉(利水滲湿 泄腎濁)20g 茯苓(健脾利水)20g 桂枝(通陽)15g 甘草(調和諸薬)15g 水煎服用。<o:p></o:p>

 

二診129日。服薬七剤、小便の量が増加、一昼夜約2000ml、さらに七剤継続服用。<o:p></o:p>

 

三診27日。超音波検査:腎盂に微粒結石三塊、腎盂積液大減。前方に三棱(活血化瘀)15g 莪朮(活血化瘀)15gを加味<o:p></o:p>

 

四診220日。上方服用14剤、超音波検査で結石は既に無く、腎盂積液極く微量、停薬した。<o:p></o:p>

 

ドクター康仁の印象<o:p></o:p>

 

三金湯の三金(金銭草 海金沙 鶏内金)が使用され、計28剤で、結石が全部排出され、積液もまた消除されましたね。見事な治療結果でした。尿量を増加させる目的で通陽利水の方である五苓散(白朮 桂枝 澤瀉 茯苓 猪苓)(去る猪苓、白朮)が配伍されていることを申し添えます。活血化瘀薬の三棱 莪朮に関しての四文字熟語、消堅化瘀も合わせて申し添えます。消堅は化堅とほぼ同意ですが、化堅化瘀と表記するのは化が繰り返しになりますので、消堅化瘀と表記するのが通常です。<o:p></o:p>

 

「三金湯+五苓散+活血化瘀」の組み合わせは、臨床上最も多い尿路結石の治療法の一つと言えるでしょう。<o:p></o:p>

 

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201468日(日)<o:p></o:p>