本日も昨日に引き続き「理血湯」の症例をご紹介します。( )内に適時、私の印象やコメントを挿入します。「理血湯」は尿血に対する方剤です。
それでは医案に進みましょう。
患者:王某 46歳 女性
初診年月日:2006年11月3日
病歴:
2004年12月 高血圧症にて某医院受診時、尿RBC満視野/HP、血圧230/130mmHg。2005年6月尿蛋白が出現。高血圧の家族歴有り。
初診時所見:
疲労が重なると腰痛、舌紅苔薄黄、脈滑。尿潜血3+、RBC6~7個/HP、尿蛋白2+。腎機能、血中脂質、血糖正常。降圧剤服用にて血圧は正常になっていた。腎エコーで異常なし。
中医弁証:気陰両虚、血失統摂、挟有熱邪
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:益気養陰固渋、清熱(涼血、収斂、化瘀)止血
方薬:理血湯加減:
海螵蛸(烏賊骨に同じ、収斂止血、固精止帯、収温斂瘡、制酸止痛)20g 茜草(涼血化瘀止血)20g 竜骨(収斂固渋止血)20g 牡蠣(収斂固渋止血)20g 生山薬20g 白芍30g 白頭翁(清熱解毒利湿)15g 仙鶴草(収斂止血 補虚強壮)30g 小薊(涼血止血、解毒消癰)30g 三七粉(化瘀止血 活血定痛)10g 焦梔子(清熱止血)15g 石蓮子(益腎固渋 収斂止血 清心火)20g 地骨皮(退虚熱)15g 黄蓍30g 太子参20g 地楡(涼血止血、解毒収斂)20g 蒲黄(収渋止血、行血祛瘀)20g 藕節(収斂止血)20g 劉寄奴(破血散瘀)20g 甘草15g
水煎、毎日2回に分服。
付記 山梔子(清熱解毒利湿)を加熱して焦がしたものが焦山梔子(止血作用が生じる)です。中医案には焦梔子と三文字で記載される場合が殆どです。
印象 いつものことで恐縮ですが、
腎病:気陰両虚、湿熱内蘊に益気養陰、清利湿熱の
清心蓮子飲(せいしんれんしいん)(参蓍茯車麦冬黄芩地骨石蓮子(さんぎぶくしゃ ばくとうおうごん じこつせきれんし)
人参 黄蓍 茯苓 車前子(或いは車前草) 麦門冬 黄芩 地骨皮 石蓮子 甘草
方中の人参は太子参で、黄蓍、地骨皮、石蓮子が初診の方薬の理血湯加減に含まれていますので、理血湯と清心蓮子飲の合方加減になっていますね。浮腫が無いので利水剤は必要ないのです。
二診 2006年12月1日
眼瞼浮腫(浮腫が出てきましたが部分的です)、腰酸痛、服薬後腹瀉、大便5~6回/日。