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慢性腎炎 理血湯(りけつとう)加減治療 張琪氏漢方治療2(腎病漢方治療280報)

2014-02-28 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

本日も昨日に引き続き「理血湯」の症例をご紹介します。( )内に適時、私の印象やコメントを挿入します。「理血湯」は尿血に対する方剤です。

それでは医案に進みましょう。

患者:王某 46歳 女性

初診年月日2006113

病歴

200412月 高血圧症にて某医院受診時、尿RBC満視野/HP、血圧230/130mmHg20056月尿蛋白が出現。高血圧の家族歴有り。

初診時所見

疲労が重なると腰痛、舌紅苔薄黄、脈滑。尿潜血3+、RBC6~7個/HP、尿蛋白2+。腎機能、血中脂質、血糖正常。降圧剤服用にて血圧は正常になっていた。腎エコーで異常なし。

中医弁証:気陰両虚、血失統摂、挟有熱邪

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:益気養陰固渋、清熱(涼血、収斂、化瘀)止血

方薬:理血湯加減:

海螵蛸烏賊骨に同じ、収斂止血、固精止帯、収温斂瘡、制酸止痛)20g 茜草(涼血化瘀止血)20g 竜骨収斂固渋止血)20g 牡蠣収斂固渋止血)20g 生山薬20g 白芍30g 白頭翁(清熱解毒利湿)15g 仙鶴草(収斂止血 補虚強壮)30g 小薊涼血止血、解毒消癰)30g 三七(化瘀止血 活血定痛)10g 焦梔子(清熱止血)15g 石蓮子益腎固渋 収斂止血 清心火)20g 地骨皮(退虚熱)15g 黄蓍30g 太子参20g 地楡涼血止血、解毒収斂)20g 蒲黄収渋止血、行血祛瘀)20g 藕節(収斂止血)20g 劉寄奴(破血散瘀)20g 甘草15

水煎、毎日2回に分服。

付記 山梔子(清熱解毒利湿)を加熱して焦がしたものが焦山梔子(止血作用が生じる)です。中医案には焦梔子と三文字で記載される場合が殆どです。

印象 いつものことで恐縮ですが、

腎病:気陰両虚、湿熱内蘊に益気養陰、清利湿熱の

清心蓮子飲(せいしんれんしいん)(参蓍茯車麦冬黄芩地骨石蓮子(さんぎぶくしゃ ばくとうおうごん じこつせきれんし)

人参 黄蓍 茯苓 車前子(或いは車前草) 麦門冬 黄芩 地骨皮 石蓮子 甘草

方中の人参は太子参で、黄蓍、地骨皮、石蓮子が初診の方薬の理血湯加減に含まれていますので、理血湯清心蓮子飲の合方加減になっていますね。浮腫が無いので利水剤は必要ないのです。

二診 2006121

眼瞼浮腫(浮腫が出てきましたが部分的です)、腰酸痛、服薬後腹瀉、大便5~6回/日。


慢性腎炎 理血湯(りけつとう)加減治療 張琪氏漢方治療1(腎病漢方治療279報)

2014-02-27 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

「加味理血湯」に関しては既に、以下にご紹介しました。

IgA腎炎 2003年度症例 加味理血湯による血尿治療1(腎病漢方治療226報)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140105

IgA腎炎 2005年度症例 加味理血湯による血尿治療2(腎病漢方治療227報)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140106

IgA腎炎 2005年度症例 補腎法治療3(腎病漢方治療230報)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140109

上記医案中で「加味理血湯」と記載されたのは以下の処方です。

海螵蛸20g 茜草20g 竜骨20g 牡蠣20g 生山薬30g 白芍30g 白頭翁15g 地楡20g 血余炭30g 棕櫚炭(収斂止血)15g 孩儿茶(清熱 生津 止血)10g 赤石脂渋腸止瀉、止血)15g 焦山梔子15g 烏梅炭(生津 渋腸 収斂止血)15g 甘草15g

中医弁証:尿血(腎陰欠耗、相火迫血 兼挟瘀滞)に対して

治法:補腎固渋を主として、清熱涼血、化瘀止血を補佐とする加減でした。

或いは227報では

方薬加味理血湯

熟地黄25g 山茱萸20g 山薬20g 茯苓15g 牡丹皮15g 澤瀉15g 知母15g 黄柏15g 亀板滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)20g 女貞子20g 旱蓮草20g 側柏葉20g 血余炭止血散瘀、補陰利尿)15g 黄耆30g 党参20g

(付記:熟地黄から始まり黄柏までは知柏地黄丸の組成です。亀板、女貞子、旱蓮草は養陰剤になりますが旱蓮草には止血作用もあり、側柏葉。血余炭と協調します。黄耆と人参(党参 太子参など)の組み合わせは典型的な益気剤となります。)

そもそもの 理血湯とはどのような組成でしょうか?

これから紹介する「理血湯」は「加味」がついていませんので、理屈上は本案の「理血湯」が歴史的に古く「加味理血湯」がより近代になるはずですが、医案に進みましょう。( )内に適時、私の印象やコメントを挿入します。

患者


慢性腎炎 桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療278報)

2014-02-26 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

桂枝湯(桂枝 白芍 生姜 大棗 甘草)に黄耆を加えた方剤です。

医案に進みましょう。

患者:程某 48歳 男性

初診年月日1998115

病歴及び初診時所見

慢性糸球体腎炎歴3年、血清蛋白が低下気味で、尿蛋白3+、浮腫は明らかでない程度、身倦乏力、面色皓白、気短、心中空虚不快を自覚、大便後に加重する、患者は涼薬には耐えられない、舌淡紅、苔白、脈滑。

中医弁証:久病後営衛受損、陰陽失調

西医診断:慢性糸球体腎炎

方薬桂枝加黄耆湯加味:(付記、益気調和営衛の目的でしょう)

桂枝20g 黄耆30g 白芍30g 大棗5枚 生姜10g 小麦50g 甘草15

水煎服用、毎日二回に分服

経過

服用6剤後、諸症は全て好転を見る、この後、上方に利湿清熱、固摂薬治療100剤近く行う。尿蛋白±、諸症消失して病は緩解した。

ドクター康仁の印象

営衛不和(えいえいふわ)という漢方用語があります。

傷寒論の太陽病脈証并治に出典された用語です。現代中医学では衛強営弱(えきょうえいじゃく)に加え、衛弱営強(えじゃくえいきょう)という概念も提供しています。衛気が虚弱で、汗が自然に出てくる。発熱がなく、時々自汗がある。という概念です。

調和営衛(ちょうわえいえい)という漢方用語があります。

これは桂枝湯の治療目的のひとつと考えるとよいようです。

通陽発散の桂枝と養営斂陰の白芍、生姜と益気脾胃の大棗の2組で調和営衛します。営衛不和を改善する方法とも言い換えられます。衛強営弱を調和するものです。

はて、本案は衛営倶弱かもしれません。

現象を説明するには理論が必要です。独自の用語も出現してきます。中国伝統医学の基礎理論や独自な用語は、いわば、言語体系とも言うべきもので、英語を理解するときに英単語と文法の知識が必要であるのに似ていると私は考えます。しかし定義が概念的である用語での現象表現はあくまで概念的にならざるを得ません。

小麦とは浮小麦で甘/涼で益気止汗に作用します。黄耆の益気固表と一緒にすれば自汗に対応し、寝汗(盗汗)には単味あるいは養陰薬と配伍します。本案では養陰薬の配伍は無く、養営斂陰の白芍が配伍された桂枝湯ですから、黄耆と小麦で益気固表止汗と考えるべきでしょう。つまり衛弱に対する治療といえるでしょう。

固表により、風邪を予防し、腎炎の再発を防ぐ目的であろうと思います。もしくは診察の時点で、何らかの印象、例えば風邪を引き易い、風邪を引くと蛋白尿が増えるという印象を強く受けたのでしょう。

保険の効くエキス剤でしたら甘麦大棗湯(甘草、小麦、大棗)と桂枝湯を合わせて服用すればいいでしょう。

単独では6剤しか服用していないのですから、果たして慢性腎炎の基本治療方剤といえるかどうか疑問です。

本格的な治療をする前のコンディショニング(下地作り)の意味合いが強いと感じます。

2014226日(水)


慢性腎炎 桂枝去芍薬加麻黄細辛附子湯(けいしきょしゃくやくかまおうぶしさいしんとう)加減治療 張琪氏

2014-02-25 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

注意点は、桂枝去芍薬とは桂枝湯から芍薬を去るの意味です。名称が桂枝湯去芍薬麻黄附子細辛湯と長くなるので「湯」を省いて表現してあります。

医案に進みましょう。

患者:趙某 28歳 女性 工場労働者

初診年月日200032

病歴

患者腎炎歴一年余、全身浮腫、尿少、尿量300ml/24hr、嘗て23回入院し浮腫治療を受けたが浮腫は不消失、浮腫は軽重を繰り返す。尿蛋白3+~4+、顆粒円柱23/LP、某医院を退院して、氏の治療を求め受診。

初診時所見

浮腫は比較的重く、頭面および下肢が全て浮腫、腹張満し食べると張満が甚だしくなる。面色無華、畏寒肢冷、舌潤苔滑、脈沈。

中医診断:陽虚にして肺脾腎効能失調

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法桂枝去芍薬加麻黄細辛附子湯

方薬

桂枝15g 麻黄15g 附子15g 細辛3g 生姜15g 紅棗4個 甘草10

水煎服用、毎日2回に分服

経過

上方3剤で、尿量は1500ml/24hrに増加。

さらに継続服用5剤で、尿量は3000ml/24hrに達した。水腫全消、腹張大減、諸症は全て好転した。尿蛋白2+、他は皆陰性。胃納がやや不良、下肢に無力、指で押すとやや指痕があり、腹部はわずかに不快、まだ脾虚運化が不十分の症候であり、遂に健脾利湿法の調剤20余剤で諸症は基本的に消失、尿蛋白±、病情は緩解した。後の追跡調査でずっと再発無し。

ドクター康仁の印象

温熱薬一辺倒の方剤です。

麻黄により宣肺利尿消腫をはかり、桂枝、附子で通陽助陽温腎をはかり、桂枝 甘草 生姜 大棗で温脾し運化を助け、細辛は麻黄の宣肺を助けるという役回りです。

肺脾腎の三臓合治となります。白芍を除く理由は利湿に対する白芍の斂陰を嫌ったためでしょう。原典は金匱要略「水気病」中の桂枝去芍薬加麻辛附子湯です。

古典的処方で急場を凌いだわけです。証が合えば僅か8剤でも効果抜群の典型ですね。完全な中医弁証の典型例です。参考になりますね。よほど陽虚(肺脾腎)の印象が強い症例だったのでしょう!

中医とは言ってもピンキリがあるわけです。勿論、張琪氏はピンです。

最近感じ始めているのですが、慢性糸球体腎炎と中国の西洋医が診断する中には、組織病理学的変化を伴う腎炎と異なるものを含むということです。歴史的に中医学では水腫論が先行し、先人があまりにも偉大なために異論を唱える学問体系が育たないことも危惧されます。

2014225日(火)


慢性腎炎 利湿解毒飲(りしつげどくいん)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療276報)

2014-02-24 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

( )内に付記や私の印象を適時いれます。

利湿解毒飲(りしつげどくいん)については、ネフローゼ症候群 利湿解毒飲(りしつげどくいん)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療259報)で紹介しました。

中医弁証:湿熱毒邪蘊結下焦に対して、清熱利湿解毒を以って治療するとあり、

方薬:利湿解毒飲加減:(張琪氏の創方)、方意は活血利水消腫、清熱解毒利湿利咽、組成は

瞿麦(活血利水通淋)20g 萆薢(苦/平 利水滲湿)20g 土茯苓(菝葜 山帰来に同じ、清熱解毒泄濁除湿利関節50g 白花蛇舌草30g 薏苡仁25g(健脾利水滲湿) 滑石20g 白茅根凉血止血、清熱利尿25g 山薬20g 益母草(活血利水消腫)30g 金桜子(酸渋/平 固精、縮尿、渋陽止瀉)15g 萹蓄(利水通淋)20g 竹葉清熱除煩、生津、利尿)15 山豆根20g(清熱解熱毒利湿利咽) 重楼30g(清熱解熱毒利湿利咽)

さて医案に進みましょう。

患者:楊某 38歳 男性

初診年月日1991619

病歴

1ヶ月前にに腰痛、尿蛋白4+、RBC満視野/HP、顆粒円柱2~3個/HP。ハルピン市某医院で「慢性糸球体腎炎。急性発作」と診断され、入院治療1ヶ月、(浮腫は消退し)腰痛軽減。但し蛋白尿は2+~3+、RBC1020/HP、顆粒円柱01/HP。血圧21.3/13.9pK(159,75/104.25mmHg)

初診時所見

腰痛 腰痛は軽度、尿色深黄、尿混濁、咽干、全身乏力、眩暈、舌質紅、舌苔厚膩微黄、脈滑。

中医診断:脾腎陽虚 湿熱内蘊

西医診断:慢性糸球体腎炎

治法:急即治標、補脾益腎利湿熱併用

方薬:利湿解毒飲加減

茯苓25g 萆薢20g 白花蛇舌草30g 萹蓄(利水通淋)20g 白茅根凉血止血、清熱利尿30g 竹葉清熱除煩、生津、利尿)15g 生山薬25g 薏苡仁20g 小薊涼血止血、解毒消癰)25g 甘草10

水煎服用 毎日1

経過

前方7剤を服用、尿の混濁は減軽、尿色は転浅した。余症の変化は顕著なものは無い。さらに継続服用7剤で、尿は既に混濁無し、尿色淡黄、尿蛋白2+、RBC5~10個/HP、舌苔黄白膩、脈はまだ滑。

この後、益気養陰、清利湿熱法、標本兼治2ヶ月余、尿蛋白マイナス~±、その他正常、自覚症状無し、清心蓮子飲を服用して治療効果を固めた。半年後再検、病情穏定。

ドクター康仁の印象

茯苓は土茯苓の誤植ではないかと思います。健脾利水もさることながら、清熱解毒泄濁除湿利関節の土茯苓が本案には適していると思いますし、過去の医案からも、土茯苓と萆薢のカップルの配伍が多いからです。茯苓の配伍が間違っていると指摘しているのではありません。誤植があったのでは?と推測しているだけです。

利湿解毒飲→清心蓮子飲の流れは覚えておいていいと思います。

それにしても、本体の腎病が一体何なのか、ただの慢性糸球体腎炎で済まされるのかですね。1991年ですから弁証と弁病の端境期です。

氏のお気に入りの活血利水消腫の益母草の配伍が無いのも不思議ですね。

「補脾益腎利湿熱併用」と記載されていますが、どの生薬が益腎なのでしょう。単に字面では金桜子などの益腎固渋薬に益腎という用語が出てきますが、配伍しても、残存蛋白尿に対してなんら不思議ではないですね。

2014224日(月)