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麦門冬湯の臨床

2008-08-16 16:42:58 | COPD

肺陰を補うだけでなく、胃陰を補い、止嘔の効果がある

前のブログで滋陰至宝湯、滋陰降火湯について述べた。どちらも肺陰を補い、滋陰至宝湯は逍遥散加方、滋陰降火湯は逍遥散から離れた別個のものであり、ともに益気健脾作用、滋陰退虚熱の効果がある。同じく補肺陰の作用を持つ麦門冬湯の組成の最大の特徴は半夏の配合にある。

麦門冬湯金匱要略 肺痿肺?咳嗽上気病に記載)

麦門冬 半夏 党参 甘草 大棗 粳米が組成である。

現代日本ではエキス剤が市販されているが、ほとんどの医師は麦門冬湯=肺陰虚の漢方薬というやや視野狭窄的な方程式にのっとって使用しており、とくに半夏が温燥の性質を持ちながらも、何故、麦門冬湯に配合されているのかを知らない。

最初に、麦門冬湯を理解するためには「肺痿(はいい)」と「嘔吐」の中の「胃陰不足」の理解が必要だ。

金匱要略では

肺痿(はいい)という概念があり、慢性の肺の津液不足(肺陰不足)をさし、①咳嗽 ②気喘 ③咽干 ④ 紅舌燥少苔を麦門冬湯証としている。付記すれば肺痿には虚熱型と虚寒型があり、それぞれ麦門冬湯、甘草干姜湯が主方とされている。

近代中医学の肺痿(はいい)の概念

肺痿は、肺葉の慢性虚損性器質性の病症を指し、各種の肺疾患:肺化膿症、肺結核、久咳を起こす肺疾患、喘、哮などが治癒されず久病となり長期に傷肺すると最終的に肺痿となる。肺痿に陥った状態では、肺と全身の津液不足を伴う場会が多く、初期には肺虚熱(麦門冬証:咳嗽、気喘、咽干、紅舌少苔)が目立ち、虚熱肺痿症とも言う。後期には虚寒証(甘草干姜湯証:濁唾涎沫、不口渇、尿失禁、頻尿、眩暈)が目立つことが多くなり、虚寒肺痿症として捉えることが可能である。肺痿は独立した疾患概念ではなく、肺葉の慢性虚損性器質性の病症である。

無気肺、肺繊維症、肺繊維症が高度進行したもの、ケイ肺症など肺の慢性虚損性疾患の治療には肺痿を参照すればいい。西洋医学でいうCOPDと一部オーバーラップしているが、COPDが基礎疾患を気管支喘息、肺気腫においている点が異なる。COPDは中医学では「肺張」の疾患分野に属する。

 

肺陰不足の症状と治療

(症状)乾咳、或は少痰、血痰、咯血、口乾咽燥、午後潮熱、顴部が赤く、五心煩熱、不眠、寝汗、痩せ、倦怠、舌質が赤く、少苔、脈が細数である。

証候を分析すると、肺陰不足で、肺の滋潤を失い、肺気上逆のため、乾咳少痰、口乾咽燥が見られ、肺絡損傷で血痰或は咯血が現われる。午後潮熱、顴部が赤く、五心煩熱、不眠、寝汗、痩せ、倦怠、舌質が赤く、少苔、脈が細数は陰虚火旺の症候である。

治療法は養陰潤肺、止咳化痰であり

方薬は麦門冬湯よりも沙参麦門冬湯(沙参 麦門冬 玉竹 生甘草 桑葉 白扁豆 天花粉 百合)加減が中国では用いられる。中医内科学には、沙参、麦門冬、天花粉、玉竹、百合は養陰生津、潤肺止咳し、扁豆、甘草は健脾和中する。化痰止咳を強化するに貝母、杏仁を加え、止血剤としては側柏葉、仙鶴草、田七、山梔子、藕節を加える。午後潮熱には銀柴胡、地骨皮を選用するとある。

嘔吐(おうと)

中医学では嘔吐は胃失和降、気機逆乱による病症を指す。ちなみに、物を吐き出す際にゲーっと音がするものを「嘔」、音がしないものを「吐」と称する。単に音のみで、吐物を伴わないものを「乾吐(乾嘔)」と称する。嘔吐には実証と虚証による嘔吐がある。

実証には(1)外邪犯胃(2)飲食停滞(3)痰飲内阻(4)肝気犯胃

虚証には(1)脾胃虚寒(2)胃陰不足がある。麦門冬湯が効果を示すのが胃陰不足である。

胃陰不足による嘔吐の特徴

反復性の嘔吐発作があり、喉は渇き、飢餓感はあっても食欲が無く、舌が赤い、脈が細数などの陰虚証を示す。

証候を分析すると、胃陰損傷、胃失濡養、気失和降のため、反復の嘔吐発作、或いは時々乾嘔があり、飢餓感はあるも食べたがらない。胃陰不足、津液上昇不能のため、口乾咽燥が生じる。舌が赤く、少津、脈が細数は津傷虚熱の症候である。

治療法は滋養胃陰、降逆止嘔である。

麦門冬湯(麦門冬 半夏 党参 甘草 大棗 粳米)を主方とする。人参(平性で、生津養血に作用する党参を使用する)麦門冬、粳米、甘草で滋養胃陰、半夏で降逆止嘔の効能を求める。過剰な津傷を見る者には、温燥の半夏を減量し、石斛、天花粉、知母、竹茹を加え、生津養胃の効能を期し、大便乾結の者に、白麻仁、蜂蜜を加え、潤腸通便をはかると中医内科学にはある。元方に従い、党参に代え、温薬である人参を使用する場合もある。大量の麦門冬が半夏の温燥の性質を消失させるといい、半夏の止嘔効果を残存させたまま、肺陰不足、胃陰不足を悪化させないと方剤学は述べている。

なかなか理解しがたい「方意」と「半夏」の効用

上海時代に薬学の文教授から教えてもらったが、「胃気なくばヒトは死ぬ」といい、末期に近づくとヒトは胃気が無くなる前に、「一種独特の音声を伴う息を吐く」という。その息をみると「数日以内に亡くなる」と予測できるという。「へー、そうしたものかぁ」と感心したものである。

中国医学には「胃熱」「胃気」「胃陰」と胃のつく概念が多い。「胃気は肺気の母」という言葉もある。「およそ肺病みて胃気あらばすなわち生き、胃気なくばすなわち死す」とは医宗金鑑(90巻。1749年の成立。乾隆帝 高宗の勅により,医官が「傷寒論」「金匱要略」を中心として治療医学を編纂中の名言とされるが、「麦門冬湯は胃中の津液乾枯し、虚火上炎するを治し、治本の良方なり」と記載されている。「半夏は辛温であるが胃を開き、津液をめぐらせるをもって潤肺す」とも記載されているが、胃の虚火上炎といい、半夏の効用といい、現代のデジタル思考的な頭ではなかなか感得できないものである。漢方にはある種の「悟り」が必要であるとは、上海曙光病院の蒋副院長の言葉である。

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アンチエイジングの為の薬酒

2008-07-20 19:19:31 | COPD

周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ) 中国最古の薬酒

3000年ほど前の最古の薬酒だ。市販はされていない。しかし古文書にしたがって家庭で作ることは可能だ。中国の薬酒の必要条件である味 香り 効能の3つがそろっている最古のものである。2千数百年前の東周時代の名君主、周公旦が愛用したので周公百歳酒といわれているが、それ以前に原型があったと思われる。

老化防止と周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ)の関係

老化とは漢方用語で言うならば、気血両虚 気陰両虚 陰陽両虚と何もかもが不足してくる状態である。代わって、痰濁、水湿などの病理産物が体内に蓄積してくる状態である。 したがって総合薬酒としての役割は気陰双補 陰陽双補 痰化濁 健脾湿などの作用がバランスよく配慮されていなくてはならない。これらの観点から周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ)を見てみると、そのバランスの良さに驚く。補陽にやや欠けるものの十分な補陰血作用と痰化濁 健脾湿作用はアンチエイジングに最適である。また現代医学的な観点からも免疫力増強や防癌効果も予測される。

材料となる漢方薬

茯神(茯苓の中心部)黄耆 各40g 

当帰 生地黄 干地黄 各30g

(地黄には熟地黄もあるが熟地黄を入れると、薬酒が黒くなる。十全大補酒と異なり熟地黄を使わない。)

党参 枸杞子 山薬(乾燥させた漢方薬用を用いる) 陳皮 川芎 防風 白朮 麦門冬 茯苓 亀板 各25g

肉桂 五味子 干姜(あるいは生姜) 各20g

中国元方では高梁酒 5リットル

作成方法

以上の漢方薬を細かく砕き、絹の袋に入れ、高梁酒 5リットルに漬け込む。酒が少なければ、量に応じて薬材の量も少なくする。高梁酒 1リットルならば各薬剤を5分の1の量にすればいい。漬け込んでから2ヶ月ほどで十分に薬効成分が酒に移るが、口当たりが良くなるには1年以上が必要だ。絹袋は漬け込んでから2ヶ月ほどで引き出してもいい。日本で高梁酒が手に入らなければマオタイでもいい。焼酎なら度の高いものがいい。35度あれば十分である。 私見だが、沖縄には土南(どなん)という70度の蒸留酒がある。試されてもいいかもしれない。

薬酒は強い酒ほど薬剤の有効成分が滲みだすのが速く、さらに成熟も早まるといわれている。薬剤の部分によって有効成分の滲みだすのに要する期間が異なる。地上部分にある花、葉、茎の部分は約10日、樹皮、根になると1~2ヶ月を要する。種子になれば2ヶ月は必要だ。周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ)の薬剤には種子類は比較的柔らかい五味子だけであるの2ヶ月で絹袋を取り出していいことになる。

党参とは?

補気薬人参の仲間であるが、安価である。人参と同じく脾、肺に帰経を持つ。特徴は健脾作用に優れ、補中益気の効能があるということだ。薬性が平性なので長期連用に適する。胃腸の機能をアップさせ、渇きを癒し、血を養う。補中益気(健脾)、生津養血という。生津(しょうしん)作用とは、体液を維持し増やす作用である。

免疫力のアップ 黄耆(おうぎ)の効用

黄耆(おうぎ)は人参、霊芝、冬虫夏草とともに補気薬の代表的な生薬である。がん患者の多くは気陰両虚の状態である。党参は補気に益陰も兼ねるのでがん患者には適するが、黄耆は補気作用のほかに、助火作用があるために、陰虚が基本的に存在するがん患者の場合、陰虚火旺の状態を誘発したり助長したりするので、使用されるべきでないといわれてきた。

しかし、適切な滋陰薬を併用することで、黄耆の免疫賦活作用や抗腫瘍作用を利用することが可能だ。周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ)に使われている麦門冬、枸杞子、亀板などは養陰滋陰薬である。老人にありがちな陰虚火旺にも安心して使用できるわけである。

黄耆の免疫賦活作用は、抗がん剤使用によるリンパ球やマクロファージ機能の回復が報告されている。黄耆の抗腫瘍作用は癌をもつ動物実験で生存期間の延長が認められ、LAKlymphokine activated killer cell)活性を増強することが報告されている。その他に、黄耆には抗アレルギー作用、各種の出血防止と止血作用、浮腫みや、尿量の減少を改善する作用などがある。

茯苓(ブクリョウ)はサルノコシカケ科

キノコは体にいいと言われて久しい。免疫力のアップといえば、サルノコシカケ科の霊芝が有名である。ただし霊芝は独自の苦味があり薬酒に向かない。

茯苓(ブクリョウ)は利水滲湿薬に分類されている。

現代医学風に言えば、「利尿薬」といってもいい。

茯苓の作用として、中医学では①健脾利水②寧心安神と説いている。健脾利水とは、中医学の理論に従えば、胃腸を丈夫にして体の余分な水分“湿”を除くという意味である。つまり湿に働く。白朮(ビャクジュツ)と併用すればよりいっそうの健脾作用が期待できる。寧心安神とは精神安定作用と考えていいだろう。特に茯苓の中心部の茯神(ブクシン)にその作用が強い。茯苓は心、脾、腎に働く。

茯苓はサルノコシカケ科のマツホドであり、キノコ由来の多糖類が免疫力に関与していると考えられている。茯苓から抽出される多糖類は抗腫瘍効果がある。

実験的にマウス肉腫、骨髄性白血病細胞に対して増殖抑制効果が報告されている。

茯苓抽出の直鎖状多糖類の一種は細胞性免疫力をアップさせる。

当帰(とうき)は養血活血の要薬

甘 辛 温、肝 心 脾の3経に入る。補血 養血の要薬である。養血剤である四物湯は熟地黄 川芎 白芍 当帰の4薬からなる。周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ)には川芎も地黄も使用されている。 当帰には活血作用があり、淤血による痛みを除く作用がある。打撲による痛み、淤血による生理痛などに有効だ。婦人科領域でもっとも多く使用される薬剤のひとつで、補血活血調経の作用は血虚、淤血による生理不順に効く。当帰は補薬の一般的な性質とされる滋?でなく不滋?である。当帰の副作用ともいえるものは便通が良くなることだ。腸を潤す潤腸作用は老人性の便秘にも有効である。

中国漢方病院では腎陽虚の便秘には補腎剤で潤腸作用のある肉従蓉を、血虚に便秘を合併した場合には当帰を配合することが当たり前のように行われている。当帰の根塊の尾のほうを当帰尾と呼び、活血作用に優れているといわれています。中央部分は当帰身といい、養血作用に優れる。周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ)に使用される当帰は全当帰といい、当帰身と当帰尾を含む。

山芋は食料であり薬でもある

中国では山芋を「山薬」と呼ぶ。河南地方が名産地である。性味は甘 平で脾 肺 腎に働き益気養陰 滋補脾肺作用があり、脾胃虚弱、食欲不振、肺虚久咳、大便溏滑、小便頻数、遺精、脾虚型帯下、倦怠感などの様々な症状に用いられている。

癌治療との関係は、山薬に含まれるアミラーゼ、ポリフェノール酸化酵素が消化を促進し、食欲を増進させることから、放射線、化学療法を受けている患者さんに比較的大量に食べさせている。胸部の放射線療法の際に常に発生する痰が少ない「から咳」が特徴の「熱毒傷陰」の症状に対して滋養肺陰作用を持つ山薬が有効だ。山薬抽出多糖類成分がマウスのT細胞の免疫機能を賦活することや、マクロファージの貪食能を亢進させることが確認されている。さらに、山薬に含まれるムコ多糖類は軟骨組織や関節液の生成と関係しているとの報告がある。結合組織の萎縮を防止する作用があると言われている。 ムコ多糖類とともに山薬に含まれる多糖蛋白は、血管の弾力性の維持、血管壁への脂肪沈着の防止などの効果があると報告がある。周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ)に使用される山薬は乾燥品で薄片にしたものだ。生の山薬を使用してはならないことは言うまでも無い。

生地黄 干地黄は養陰清熱作用がある
地黄は加工過程により新鮮地黄 生地黄 干地黄 熟地黄になる。新鮮地黄は清熱涼血作用が強い。生地黄の清熱瀉火 滋陰潤燥の作用は知母の作用と類似するが、知母より清熱作用は弱い。熱邪に対しては必ず生地黄を入れたほうがいいとする中国漢方の伝統がある。地黄の根を乾燥させ、酒につけて蒸してつくるのが熟地黄である。熟地黄は手で触れると特有の粘りがあり、指が黒くなる。熟地黄に加工すると、生地黄にある、養陰清熱(消炎解熱)作用が消失し、補血作用が強くなる。

煎じ薬にしても薬酒にしても、熟地黄を配合すると、液が黒くなり、どろどろと粘りが生じるのが難点である。いわゆる「もたれ」である胃障害をひき起こすこともある。

枸杞子は長寿の元

甘 平 で肝 腎 肺の3経に入り、滋補肝腎、明目、潤肺に作用する。

枸杞子は古来より長寿をもたらす食品として尊ばれてきた。寧夏の枸杞子が有名で薬酒の「寧夏紅」も人気商品である。肝腎虧損、遺精不孕、肝気不足による視力減退などに使用される補陰食品である。成分中のベタインは脂肪の肝臓沈着を抑制し、肝硬化を予防するとされ、肝細胞を保護する。アルコール性肝炎が国民病になりつつある日本や中国ではますます重用されてくるだろう。動物実験では四塩化炭素によるマウスの肝臓脂肪変性作用を防止し肝機能を保護する作用が認められるほか、血中脂質や血糖を一定の効果で低下させる効能が確認されている。

枸杞子抽出物がインターロイキン2を介してリンパ球の腫瘍細胞壊死因子の生成を増加させることが報告されている。また、枸杞子から抽出された多糖類には、放射線によるマウスの骨髄抑制を防止し、白血球を増加させる働きがあることが最近の研究で示された。

枸杞子の薬性は滋?であることから胃腸障害のある場合に量を多くしないことが肝要だが、周公百歳酒(ジョウゴンバイソイジュウ)に使われている陳皮は滋?(ジニ=胃腸のもたれ)を改善する効果がある。枸杞を枸杞子と「子」をつけて呼ぶのにはわけがある。枸杞の「根」からは地骨皮という漢方薬が採取され、虚熱を除くのに利用されているからである。

亀板(きばん、グイバン)は漢方薬専門店で購入する。

亀板とは水亀(シュイグイ)の甲羅で、乾燥させ、破砕し、砕片の状態で使用する。亀の甲羅は現在では簡単に入手できない。細かく砕くのも容易ではない。したがって、中国の友人などから送ってもらうのがいいだろう。

甘、咸、寒で心 肝、腎の帰経であり、滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心に働く。鼈甲(べっこう)との共通点は、共に補陰薬であり、平肝作用があり、肝風を抑え、潜陽作用があるために高血圧症などに有効とされる。

亀板は心、肝、腎、の3経に入るために、先天不足に対する補陰填精、

骨が弱い場合の益腎健骨に作用すると共に、不眠症にも有効な養血補心作用がある。

五味子(ゴミシ)は老人性のCOPDなど呼吸器疾患に効果がある

五味子が呼吸器疾患に使用される理由は、その斂肺益腎(補腎作用により腎の納気作用を強め、肺の気逆を押さえる作用)の効果にある。

五味子は独自の酸っぱい匂いがある。噛みしめると順に酸味、次第に独自の苦味、渋みを感じ、次に甘み、と少しの塩辛さを感じます。これらが五味子の名前の由来である。

古来より五味子と?梅には下痢を止める止瀉作用と、体の陰液を増やす生津作用のほかに、肺気逆を抑える斂肺作用があることが知られていた。また精液の漏れる遺精に効果があることも経験的に知られており、五味子の補腎作用の根拠になった。五味子の帰経は肺 心 腎の3経です。心経から由来する効能の特徴としては不眠症に有効な養心安神作用である。また、自汗や盗汗(寝汗)をとめる斂汗作用も有名だ。

いかがであろうか?3000年前の薬酒の漢方薬の配合の妙は驚嘆させられる。

材料さえ入手できれば誰にでも作れる薬酒である。

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アンチエイジングの為の薬酒

2008-07-16 19:05:13 | COPD

① 蛤蚧 酒(ハージエジュウ ごうかい酒)

一杯の酒は万古の憂いを消すと言う。古来より中国では「薬酒」を重宝とした。

薬酒の分野で日本は中国に勝るものは無い。日本酒は新酒が良いとされ、一方大陸では、陳酒が良いとされる。有名な紹興酒(シャオシンジュウ)は老酒(ラオジュウ)ともいい、薬酒である。紹興酒には甘草 陳皮 八角茴香 桂皮 杜仲など10数種類の生薬が用いられているというが、処方はいまだ明らかにされていない。有名な花彫(ホアフオ)は、娘が生まれた時に酒を造り、地中に埋めて置いて、嫁に行く時に取り出して、かめにめでたい字や絵を彫り、華やかな色を施して娘に持たせる陳酒である。本日は薬酒のひとつ蛤蚧 酒を紹介したい。

蛤蚧 酒といえば梧州市(ごしゅうし)が有名である。広西チワン族自治区にある。亜熱帯気候に属し、蛤蚧 がよく捕獲される。田七人参も梧州産が有名だ。

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蛤蚧 (ごうかい)雄(蛤)雌(蚧 )一対の乾燥品が販売されている。薬性は平であり、長期連用が可能である。

蛤蚧 酒は梧州が有名だ。日本でも時々見かける。大ヤモリが酒に浸かっている姿は少々グロテスクで日本人にはうけつけないことが多いようだが、中国では霊験あらたかで珍重する。はツガイで売っている。夫婦仲がいいことでも有名で、一度、契りを交わすと終生一緒で、オス雌どちらかが先に死ぬと、なきがらから離れようとはしないそうである。漢方薬としては雄雌一緒に服用するのが原則だ。薬酒にする場合も原則ツガイで入れる。

有効成分は尾の部分に多い。以前、米国人の内科医に蛤蚧 の尾を処方したことがある。その際に、powder of dried tales of Tokay, a kind of big gecko lizardと説明したことがある。

老化とともに、ぜこぜこと咳が多くなる。痰も絡むようになる。

以前のブログ

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080524

で老化と慢性閉塞性肺疾患(COPD)について述べた。蛤は肺気を補い、定喘嗽といい、咳や呼吸困難を軽減する。精血を補い、老化による腎陽虚衰による冷えに効果がある。肺に帰経を持つ人参と一緒に老人の喘咳に使用する。また、小児科領域では子供の食べすぎによる胃腸障害(食積)には頭の部分を粉にして服用させると効果があるといわれている。私は子供に使った経験は無い。

中国の南、特に香港、広州では「蛤鶏血藤水魚湯」というA級グルメのスープがある。水魚とはすっぽんのことである。作用は滋陰補肺,止咳化痰であり、材料は沙参 玉竹 陳皮 鶏血藤 水魚 蛤蚧 であり、味付けはコックの腕の見せ所だ。

蛤蚧 酒はアンチエイジングにはもってこいだ。加えて、なんといっても、興奮性の強壮剤として連用をすすめる。夜を豪快(ごうかい)に過ごしたいなら蛤蚧 (ごうかい)酒をお勧めする。漬け込む酒はアルコール度数が高い蒸留酒が望ましい。中国ではマオタイに代表される白酒(バイジュウ)が良く、日本では焼酎がお勧めである。

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慢性気管支炎に参苓白朮散を使用する理由

2008-06-10 19:48:49 | COPD

老人性咳嗽の基本的漢方治療

以前のブログhttp://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080524 で、

老人性COPD(慢性閉塞性肺疾患)に対する補肺湯、平喘固本湯の話をしました。

今回は参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)についてご紹介します。

参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)「和剤局方」は胃腸の薬として知られています。また、慢性の肺疾患とくに慢性気管支炎などの治療薬でもあるのです。

組成を見てみましょう。赤は温薬 グリーンは平薬 ブルーは涼寒薬です。
人参 白朮 茯苓 炙甘草 山薬 蓮子肉 砂仁 白扁豆 
苡仁 桔梗

補気薬の代表方剤である四君子湯(人参 茯苓 白朮 炙甘草の4薬)は、脾気虚の基本方剤です。これに、胃腸機能を補い下痢をとめる補脾止瀉作用を持つ、山薬と蓮子肉が加味されています。蓮子肉は益腎固精、養心安神の作用も併せ持ちます。 さらに健脾化湿といい、胃腸機能を活発化させることにより、体内の異常な水分停滞を除く白扁豆と、利水滲湿作用(利尿作用)をもつ苡仁を配合させることにより、消化吸収作用を健全化させるとともに、下痢を改善させる効能を増強させます。

参苓白朮散は一般には、脾気虚によって、消化吸収の働きが衰えて、比較的慢性の下痢をする時の方剤とされます。

加えて

中国医学では肺気虚で慢性の咳が続き、痰が多い、特に老人の慢性気管支炎などのベースになる治療薬でもあります。

呼吸器の病気に胃腸薬を用いるのはどういう根拠なのでしょうか?


理解するためには中医学の臓腑学説を垣間見る必要があります。

中国伝統医学の脾の臓腑学説

脾は西洋医学で言う脾臓とは異なります。まずこの点をはじめに考慮しておかないといけません。中国伝統医学で言う「脾」とは胃よりも下位に位置する消化器系全体を指すのです。そこには大腸は含まれません。西洋医学で言う「肝臓」は含まれません。

脾は運化を司り、清を上昇させる(運化昇清)

食べ物や水分は口から食道を経て、胃に入ります。胃では食べ物の初期の段階の消化が始まります。これを中国医学では初歩消化といいます。水分や食物の栄養素を「水穀精微物質」と呼びます。

脾は水穀運化作用により水穀精微から後天の精の本を吸収します。その水穀精微の栄養部分は営気(えいき)となり脈内に分布し肺、心を経て血(けつ)となると中国医学は考えます。水穀精微物質の「力」の部分は衛気(えき)となり肺の主気作用により全身の脈外に分布し、体の免疫機能を張り巡らすと考えます。また脾は水湿を肺と腎に運ぶ水湿運化作用を持ち、肺と腎は気化作用(代謝作用)により水湿を汗液と尿液に変えて体外に排出させます。このように脾は津液の生成、代謝に深く関与すると考えます。脾は水穀精微物質より濁なるものを腸に降ろすと考えます。

体内の生理的な液体を津液(シンエキ)と言います。異常な液体を中国医学では 痰(タン)飲(イン)湿(シツ)などに分類して考えます。脾虚によって津液の運化が出来なくなって体内に産生された異常な水質を「内湿」といいます。肺、脾、腎などの水液代謝が失調し、津液の運化と輸布が出来なくなって、停滞、あるいは濃縮されることによって発生する病理産物のひとつが「痰」です。目に見える喀痰はその一部です。中国医学には「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」という考えがあります。肺の痰もその起源は脾虚にあるという考え方です。脾虚によって内湿が生じると、やがては痰に変化するという「脾湿生痰」と考えるのです。肺の痰症の症状は咳、呼吸困難、多痰などでわかりやすいのですが、しこり、結節など、具体的にはリンパ腫、甲状腺腫なども痰核と称し、経絡の痰症の症状であると考えます。また、目に見えない「痰」の存在も中国伝統医学では想定しており、たとえば痰が心窮をふさぐと精神異常や意識障害をおこすという具合に考えます。

内臓下垂を中医は中気下陷といい治療は健脾により脾の上昇作用を強くすることです。脱肛や胃下垂、子宮脱傾向がある場合には、脾の上昇作用機能を強化する目的で補中益気湯を用います。また、一般に中国では習慣性早流産に対しては補中益気湯を服用させます。脾の上昇作用を強くすることが目的です。

脾は統血(とうけつ)作用により血を固摂(こせつ)する。

統血作用とは血を脈管(血管)の中に保持する作用を意味します。この作用を血の固摂作用といいます。現代医学的には、血液細胞の中の血小板が減少したり、凝固因子が不足するといわゆる「出血傾向」が出現しますが、中医学でいう碑の統血作用と対応する西洋医学的な検査データの厳密な対応は残念ながら明確ではありません。その「対応付け」は今後の中医学の大きな課題であろうかと思います。

十二指腸潰瘍による出血を例に取れば、

初期には何をさておいても止血に治療の重点を置き、緩和期には健脾により、脾の統血作用の強化を図ることになります。

脾は口に開竅し、その華は唇、五行では土、志は思、液は涎(えん)、筋肉と四肢を主る

これらは次のように考えれば、中医学を身近なものに感じられるようになります。

まず、消化管の入り口は口です。胃腸機能が悪いと、唇が荒れたり、唇の周囲に吹き出物などが出現します。思い悩みが過ぎれば胃腸障害が発生します。栄養の消化吸収が悪化すれば筋肉は痩せ、四肢は軟弱になります。

脾と肺の関係 

 

「気」からの理解

脾は水穀精微物質から営気、衛気を吸収し、営気は血管の中に、衛気は血管の外に分布し、それらの気は、宋気の分布する肺の全ての気を司る機能の下に置かれています。

「津液の代謝」からの理解

非常に観念的ですが、中国伝統医学では体液(津液)の生成と輸布に関して、次のよう述べています。

津液は脾の水湿運化作用により水穀から小腸、大腸より吸収され、脾の昇清作用により肺に運ばれ、肝の疏泄作用とともに肺の主気作用、宣発粛降作用(通調水道作用)により三焦(全身)をめぐり、肺の宣発作用の一部として汗になるとともに、腎の気化作用により、利尿(降濁作用)によってその量が調節されると。

脾は津液の元、肺は水の上源であり、脾は生痰の元、肺は貯痰の器という教えがあります。

五行学説では脾は土、肺は金であり、脾と肺の関係は脾が母とすれば、肺は子の関係です。

中国医学の治療原則に、「虚即補其母」という概念があります。ある臓が弱ったら、其の臓の母に当たる臓を強化するという意味です。参苓白朮散は虚即補其母」の代表方剤とされます。肺気虚によって生じる慢性の咳嗽や喀痰の治療には、肺の母である脾を健全強化させるという意味になります。「培土生金」と呼ばれる方法です。漢方には急即治標、緩即治元の治療原則があります。病気の急性期にはまず其の症状を緩和し、症状が緩和されている慢性期には、病気の原因を治療するという意味です。喘息や慢性気管支炎の治療を例に取れば、急性期には去痰、気管支拡張、清熱解毒などを行い、まず症状の緩和を図り、慢性期には健脾「培土生金」を行うということになるのです。

少しはご理解いただけたでしょうか?

それでは参苓白朮散の各生薬について説明します。

人参(にんじん)

人参については以前のブログを参考にしていただきたいと思います。

人参についてご紹介することは沢山あります。興味のある方は以下のURLを参考にしてください。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20060825

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20060826

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20060828

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20060922

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20061017

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20061021

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20061101


老化現象の漢方治療 COPD

2008-05-24 17:38:20 | COPD

老人性咳嗽(COPD)の漢方治療 

老化現象を漢方用語で語る上で、どうしても避けて通れないのが「腎」についての中国医学のものの考え方です。以下、簡単に中国伝統医学での「腎」の機能についてお話しします。

腎は精を蔵する

狭義の精とは生殖の精のことであるが腎は広義の精を蔵する。広義の精とは、先天的な精と脾胃が吸収する水穀精微物質の精)を指す。

精の作用は生殖、成長、発育であり、腎の精が衰えると、老化現象つまり白髪、脱毛、歯、骨格、生殖 の衰えが出現する。

    腎は水を司る:

腎はその気化作用により尿を生む。浮腫みについての中国医学の考え方は、

全身性の水腫(浮腫)は脾の昇清作用が損なわれた時と肺の宣発粛降作用が損なわれた時に認められる。下半身の水腫は腎の気化作用が損なわれた時に認められる。慢性腎炎の治療原則は健脾利湿=脾の運化昇清を強め湿をとることに加え、腎の気化作用を強め水をとる補腎利水である。

    腎は納気(ナーチー)する: 

肺に吸入された清気を受納する腎の働きを納気という。肺は気の主で、腎は気の本で、肺は出気を司り、腎は納気を司る。陰陽相交わり、呼吸すなわち和す。呼吸は肺の機能だけではなく腎の機能も関係するという考え方です。腎の納気作用が減退すると、気短、喘息などの「腎不納気」の症状が出現する。

腎は気の根元である。根元がしっかりしていないと気が浮いて老人性の呼吸困難などの原因となる。小児は腎気が完成していないので、喘息などが多い、老人は消耗の結果、腎気が不足して、老年性慢性気管支炎などが多くなる。古くから、肺と腎に作用する冬虫夏草を軽く炙り、香りが出てきたら火を止めて、冬虫夏草:山薬=30:50gを混ぜ粉末にして、1日1g程度服用すると老人性の咳嗽に効果があるとされています。

腎は命門である

在志は恐、驚であり、在液は唾であり、在体は骨、髄を生じ、華は髪、歯は骨の余りである。腎は耳と二陰(大小便の二陰)に開竅する。

ざっとこんな具合です。

私は純粋な日本人です。几帳面な日本人、しかも純粋な西洋医学オンリーの医師としての成長過程や私自身の性格からすれば、受け入れ難い箇所も多々ありました。江戸時代末期に「古人の諸説みな空言にて、信じがたきことのみなり」と言い放った杉田玄白の気分にもなったものです。明治に入り「脱亜入欧」を説いた福沢諭吉は「陰陽五行の惑溺を払わざれば窮理の道に入る可らず」と中国思想の排除を強調しました。同じ気分にも、最初のころにはなったものです。

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杉田玄白

江戸末期の蘭学者。本邦初の解剖学書「解体新書」を記す。「古人の諸説みな空言にて、信じがたきことのみなり」と伝統医学をほぼ完全否定した。

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福沢諭吉

日本の近代化に果たした貢献は大であるが、「陰陽五行の惑溺を払わざれば窮理の道に入る可らず」と徹底的に「脱亜入欧」を説いた。主に政治機構や教育機構の西洋化の必要性を強調した。(中国伝統医学などは眼中に無かったことは容易に想像できる)。

          しかしである、、

いい年齢になってのこのこと中国に出かけた日本人である私は、留学中に思い直しました。「西洋医学を最初に学んで実践してきたことはまことにラッキーだった。今度は思想医学として中国医学を勉強しよう。患者にとっては治る治療が最善であるのだから、役に立つ理論(思想)、膨大な薬学、治療法はそのまま受け入れて、治療に応用することにしよう。ともかく理詰めで白黒つけるという態度と、これが最善で唯一の方法だと思い込むことは止めよう」と。以来、その態度は崩していません。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?

症状と診断、西洋医学的治療

体を動かすと息切れがひどくなる、慢性的に咳や痰がでる。重症化すると、呼吸困難が生じる。息を吐きにくくなる。血液に十分な酸素が取り入れられず低酸素血症になります。また、血液中の炭酸ガスが呼気によって排泄させずに高炭酸ガス血症に陥る。最終的に、意識障害をおこし、死亡する場合もある。感染症を合併しやすく、肺炎を起こし、重症になりやすい。嫌ですねえ。

昔、肺活量を測った記憶があるでしょうか?あの機械をちょっと医学的にしたのがスパイロメトリー検査です。ハアーっと息を吐き出させ、1秒率が70%未満であった場合は、気管支拡張薬(β刺激薬)を吸入させ気管支を拡張させて、もう一度ハアーっと息を吐き出して検査をします。その結果が再び1秒率70%未満であった場合、COPDが強く疑われるわけです。要は、息を吐き出す能力が衰えているわけです。気管支喘息では気管支拡張剤で1秒量が大きく改善しますので、COPDではないとされます。肺気腫や慢性気管支炎がCOPDに含まれます。

COPDは西洋医学的な手法では治癒しません。禁煙、気管支拡張剤、去痰剤、咳止めなどを症状緩和のために使用しますが、最終的には在宅酸素療法を行わなくてはならなくなります。いつも、酸素マスクや経鼻カテーテルを顔面につけているのはうっとうしいものですが仕方がないのが実情です。

COPDの最大の原因は喫煙です。患者の90%は喫煙者です。そして加齢とともに発症頻度が上昇してきます。喫煙の他に、大気汚染、有害化学物質や粉塵の吸入、一種遺伝によるもの、若いころに重症肺炎、気管支炎の後遺症などがあります。

正確な医学統計が無いのですが、中国には潜在的なCOPDが多いのではないのかという印象を持っています。喫煙率ではおそらく世界一でしょう。室内の空気も石炭、薪などできれいとはいえません。大気汚染に関しては、ご存知の通り、北京五輪でのマラソンを棄権する選手もいるくらいですし、粉塵や黄砂の被害も多いのです。ところが、私の印象では、確かにCOPDの中等症(スパイロメトリーで一秒率70%未満かつ1秒量が正常値の50%以上80%未満)までは見かけるけれど、慢性呼吸不全や右心不全を合併するような重症例は少ないようです。今後の医学統計の完成を待たなければならないところですが、何か秘密があるかもしれません。私は、漢方薬や食養生にその秘密があるのではないかと思っています。

肺気腫に一番近い中国漢方内科学の範疇は「肺脹」

そもそも「肺気腫」は、イタリアの解剖学者ジョバンニが記載したように、解剖時に患者の肺が開胸してもしぼまないように肺の膨張と硬化を特徴とします。つまり「病理学的」疾患概念です。

中医内科学での「肺脹」とは多種の肺疾患が慢性化し、反復発作を繰り返すことが原因で肺気脹満、肺の収斂粛降失司を来たす、つまり呼吸困難をきたすようになった病証を指します。特に高齢者によく見られる慢性病、多発病の一種であると記載されています。肺気腫、心疾患の合併を中国語では慢性肺源性心臓病(肺性心)といいますが、これらの治療は「肺脹」を参照すると説いています。

慢性の痰と咳が主体の「痰濁壅肺(たんだくようはい)」、感染症を合併した「痰熱鬱肺(たんねつうつはい)」、老人の熱の無いCOPDにほぼ相当する「肺腎気虚(はいじんききょ)」、重症COPDで心不全をきたした「陽虚水氾(ようきょすいはん)」などに分類されます。

このうち漢方治療の真髄ともいえる「肺腎気虚(はいじんききょ)」についてお話します。

肺腎気虚

 【症状】呼吸促拍、呼吸は浅く、はっはっと呼吸数は多くなります。肺気虚のために声が小さく低く、重症になると張口抬肩といい、口を大きく開けて肩を上げて呼吸するようになり、慢性の咳や切れにくい痰が多くなり、動悸が生じます。舌質は淡、紫暗であり、脈は沈細、無力、或いは不整脈の場合があります。これらは、腎の納気作用と肺の主気作用が損なわれたために生じます。

 【治療法】は補肺納腎(ほはいのうじん)、降気平喘(こうきへいぜん)です。

代表的な方薬として、補肺湯や平喘固本湯や補肺湯があります。

補肺湯

温薬を赤 寒涼薬をブルーで表記すると

人参  黄耆  熟地黄 五味子 桑白皮 が基本組成です。

肺気を補う人参と黄耆、腎の納気作用を強める熟地黄と五味子、咳を鎮め、呼吸を楽にする桑白皮と紫菀の組み合わせになっています。

中医内科学での分類的に従えば、肺腎気虚タイプの肺脹、喘症に用いられます。