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慢性腎不全 張琪氏漢方治療22 帰芍六君子湯 貧血治療2(腎病漢方治療221報)

2013-12-30 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方

前稿に引き続き、慢性腎不全に併発する貧血の漢方治療の張琪氏医案を紹介します。

患者:王某 47歳 女性

初診年月日1993813

主訴:反復性浮腫5年余、乏力6ヶ月余。

病歴

慢性腎炎の病歴が5年、治療にて病情穏定であったが、ここ半年、全身の乏力を自覚し、嫌食、時に悪心、頭昏頭痛、心煩あり、氏を受診した。

初診時所見

眼瞼浮腫、腰酸唇淡、大便溏2~4/日、倦怠乏力、舌淡滑潤、苔白、脈沈。尿蛋白(2+)、Cre445μmol/L5.03m/dL)、BUN21mmol/L126m/dL)、二酸化炭素結合力21mmol/L。ヘモグロビン8.0g/dl

中医弁証脾腎虚衰、陰陽気血倶虚

西医診断:慢性糸球体腎炎、慢性腎不全

治法:健脾養血、補腎化濁

方薬:

紅参20g 白朮15g 茯苓15g 当帰15g 白芍20g 半夏15g 陳皮15g 砂仁(化湿行気和中)15g 草果仁(温中燥湿散寒)15g 公丁香温中降逆、温腎助陽に作用、胃寒による嘔吐、呃逆に対する要薬とされる5g

水煎服用、11剤。

(付記:甘草が配伍されていませんが、起稿の段階で見落としたのかも知れません。)

二診

上方服用10剤、諸症倶減、納可、精神転佳、体力やや強化、なお腰酸乏力あり、益気健脾補腎の剤を継続する。

方薬

紅参20g 白朮15g 茯苓15g 当帰15g 白芍20g 半夏15g 陳皮15g 砂仁15g 草果仁15g 公丁香5g 加味以下 熟地黄(養血)20g 枸杞子20g(養陰) 莵絲子15g(補陽) 女貞子15g(補陰) 淫羊藿補腎壮陽、祛風除湿15g

水煎服用、11剤。

三診

上方を連続服用45剤で諸症倶除、病情穏定、再検値Cre252μmol/L2.85m/dL)、BUN9.0mmol/L54m/dL)、ヘモグロビン11.5/dl、精神体力飲食共に佳なり、間もなく仕事に復帰した。

ドクター康仁の印象

初診時のデータ:Cre445μmol/L5.03m/dL)、BUN21mmol/L126m/dL)、ヘモグロビン8.0g/dl

55剤後のデータ:Cre252μmol/L2.85m/dL)、BUN9.0mmol/L54m/dL)、ヘモグロビン11.5/dl

改善が見事です。何よりも、自覚症状が消失したのには感嘆させられますね。

慢性腎不全の病の根源は腎にあることは勿論ですが、陰陽論で言えば、陰陽倶虚が多いと氏は認識しているのでしょう。直ちに温補剛燥にも甘寒養陰にも偏らず、まず脾胃の健運を正常化するようにさせ、昇清降濁機能を回復させ、気血の後天の源の脾胃を先に治療し、六君子湯で湿濁を除き、養血当帰、斂陰白芍で血を養う。次に滋膩の熟地黄を加味し、枸杞子、莵絲子、女貞子、淫羊藿等で陰陽のバランスを図ることが大切であるという主旨の医案であると思います。

年末年始の休診に入りました。今年1年間御愛読いただきまして厚く御礼申し上げます。「漢方市民講座 うんちく漢方塾」は新年仕事始めまでお休みさせていただきます。皆様にとって良い新年が明けますように祈念しております。

20131229() 記

さようなら 2013


慢性腎不全 張琪氏漢方治療21 帰芍六君子湯 貧血治療1(腎病漢方治療220報)

2013-12-29 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方

慢性腎不全に貧血が伴うのは「腎性貧血」として良く知られています。現代日本では、遺伝子組み換えのエリスロポイエチンの投与が一般的になっています。本案では、腎性貧血の漢方治療を紹介します。残存腎機能がある程度期待できる場合には、漢方治療でも十分に貧血に対処が可能であるという医案内容です。

患者?某 34歳 女性

初診年月日1992515

主訴:持続性蛋白尿5年、乏力半年

病歴

5年前腰痛にて検査:尿蛋白(3+)、尚志市人民病院で慢性腎炎と診断され、断続的に中薬治療を受ける。持続性蛋白尿(3+)。半年前、乏力にて検査、Cre300μmol/L3.39m/dL)に上昇、慢性腎不全と診断され、中薬治療と対症治療にて乏力減軽、Creは次第に増高、系統的治療を求め氏を受診。

初診時所見

面色皓白無華、乏力倦怠、食少納呆、腹張便溏、時に悪心、腰酸、双下肢無力、舌質淡歯痕有り、脈沈細。BUN21mmol/L126m/dL)、Cre424μmol/L4.79m/dL)、ヘモグロビン6.5/dL

中医弁証:脾腎虚衰、陰陽気血倶虚

西医診断:慢性糸球体腎炎、慢性腎不全

治法:健脾養血、化濁

方薬:

紅参15g 白朮15g 茯苓15g 甘草10g 当帰15g 白芍15g 半夏15g 陳皮15g 何首烏15g 砂仁(化湿行気和中)10g 蒼朮(燥湿健脾)10g 紫蘇15g

水煎服用、11剤。

二診

上方服用十剤、嘔悪便溏消失、腹張軽減、舌質淡歯痕有り、脈沈細。上薬を継続服用。

方薬:

紅参15g 白朮15g 茯苓15g 甘草10g 当帰15g 白芍15g 半夏15g 陳皮15g 何首烏15g 砂仁10g 蒼朮10g 紫蘇15g

水煎服用、11剤。

三診

前方再度服用14剤、全身は以前に比し有力、食欲増強、面色は転潤、精神状態も前に比し増強。前方加熟地黄20g 山茱萸20g 枸杞子20gを継続服用。

方薬:

紅参15g 白朮15g 茯苓15g 甘草10g 当帰15g 白芍15g 半夏15g 陳皮15g 何首烏15g 砂仁10g 蒼朮10g 紫蘇15g 熟地黄20g 山茱萸20g 枸杞子20g

水煎服用、11剤。

四診

連続服用1ヶ月後、患者の全身は有力、食欲転好、面色と口唇は以前に比し紅潤となった。ヘモグロビン9.0/dlBUN15mmol/L90m/dL)、Cre284μmol/L3.21m/dL)。この後、2ヶ月服用、病情穏定、一般家庭労働が可能になった。

ドクター康仁の印象

紅参は生干人参に比べ温脾作用が強く、脾虚寒湿(痰濁)内停に向いています。当帰、白芍、何首烏(不滋膩)は養血に、砂仁 蒼朮 紫蘇は燥湿に作用します。紫蘇は止嘔の目的もあるでしょう。嘔悪便溏消失、腹張軽減の後に、胃にもたれ易い滋膩の熟地黄を加え更に養血を強め、山茱萸 枸杞子で補腎陰する投薬の順番が見事ですね。

20131228() 記


慢性腎不全 張琪氏漢方治療20.脾腎双補方治療(腎病漢方治療219報)

2013-12-28 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方

またまた腎病の張琪氏医案の紹介です。なぜ拘るのかと言えば、CKD(慢性腎疾患)の患者が日本国内でも1330万人いると厚生労働省の報告があるのです。漢方治療も有効な治療手段であると信じているからです。張琪氏の医案には捏造データがありません。私がお勧めする理由は氏の医案には透明性があるからです。

患者:呉某 39歳 男性

初診年月日19981225

主訴:持続性蛋白尿5年、双下肢浮腫半年

病歴

5年前の検診で蛋白尿(3+)、浮腫は無く、患者は重要視しなかった。半年前、双下肢浮腫出現、尿蛋白(3+)、血圧170/105mmHg、Cre364μmol/L4.11m/dL)、現地の病院で対症治療を受け、浮腫は減軽、系統的治療を求め氏を受診。

初診時所見

面色皓白、肢体軽度浮腫、脘腹張、不思飲食、大便1日4~5回、舌淡胖、腰痛膝軟、畏寒(寒がる)、夜尿頻多、脈沈弱。尿蛋白(3+)、顆粒円柱13/低倍視野、潜血(+)、Cre445μmol/L5.03m/dL)、BUN27.9mmol/L167.4m/dL)。ヘモグロビン7g/dl。血圧170/95mmHg

中医弁証:脾腎両虚、湿濁内停

西医診断:慢性糸球体腎炎、慢性腎不全

治法:益気健脾、補腎活血

方薬

黄蓍30g 党参20g 山薬20g 山茱萸20g 白朮20g 当帰20g 何首烏20g 菟絲子20g 補骨脂(辛苦大温 補腎壮陽 温脾止瀉 固精縮尿)15g 女貞子20g 淫羊藿15g 炮姜(乾姜を炮じて炭化したもの、温裏効果は乾姜に劣るが、温経止血作用がある)20g 白豆蔲15g 肉桂7g 丹参15g 紅花15g 益母草30g

水煎服用、11剤。

二診

上薬14剤服用後肢体の浮腫消失、脘腹張、不思飲食減軽、大便23/日、舌淡胖、腰痛膝軟、畏寒、夜尿頻多、脈沈弱。続上方加減。

方薬:

黄蓍30g 党参20g 山薬20g 山茱萸20g 白朮20g 当帰20g 何首烏20g 菟絲子20g 補骨脂15g 女貞子20g 淫羊藿15g 炮姜20g 白豆蔲15g 肉桂7g 丹参15g 紅花15g 去る益母草30g 加味草果仁(温中燥湿散寒)15g

水煎服用、11剤。

三診

上方加減治療4ヶ月、大便毎日1回形を成す、全身有力、食欲増進、脘腹張満ともに除かれる、腰はまだ僅かに痛むが治療前に比し大減、すでに畏寒現象無し、脈沈滑舌潤、尿蛋白(+)、Cre230μmol/L2.6m/dL)、BUN8.5mmol/L51m/dL)、精神体力は普通人の如し、既に復職。

ドクター康仁の印象

見事な治療結果でした。中医学での典型的な脾腎陽虚証です。治法は脾腎双補で、陰陽調整にて腎気を助け、腎機能を回復させ、後天の気血の源である脾を温め、腎血流量を改善する目的で、活血化瘀剤を配伍します。ポイントは陽虚が進んだ腎不全では苦寒の大黄を配伍していないところです。さらに腎不全が進み、症状が複雑になり、寒熱挟雑、虚実併見ともなれば、大黄を適時配伍し通腑泄濁を図る状況も出現してきます。方中の何首烏は胃にもたれにくいので熟地黄の代わりに使用されたと推測します。

20131227日(金) 記


慢性腎不全 張琪氏漢方治療19.清熱利湿治療 高尿酸血症(腎病漢方治療219報)

2013-12-26 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方

土茯苓(菝葜、山帰来)は清熱解毒と萆薢は化湿濁、祛(風)湿に作用しますが、尿酸を下げる効果があるとされます。張琪氏の今までの医案でもカップルで使用されているようです。( )内に私の印象を付記します。

患者:黄某 70歳 女性

初診年月日2006426

主訴:乏力、腰酸不快1年間。

病歴

1年前軽度乏力、腰酸不快、診察治療を受けず。20051115日検査にて腎機能やや悪化、Cre146μmol/L1.65m/dL)、BUN9.06mmol/L54.36m/dL)、ハルピン工業大学病院で腎衰寧などの中薬治療を受けた。200512月、血尿が生じたが未治療。平時、腎衰寧を服用していた。(付記:腎衰宁は中成薬の一つ。丹参、大黄、太子参、黄連、牛膝、半夏()、紅花、茯苓、陳皮、甘草からなるカプセル製剤)2006124日:Cre131μmol/L1.48m/dL)、410日、Cre132μmol/L1.49m/dL)、BUN7.05mmol/L42.3m/dL)、尿酸522μmol/L8.77m/dL)、二酸化炭素結合力19.6mmol/L。系統的治療を求め氏を受診。

初診時所見

乏力、腰酸あり、時に関節痛、舌質紅、苔白厚、脈沈滑。尿沈渣RBC満視野/HP、潜血(2+)、尿蛋白(+)。血清脂質、心電図、末梢血検査正常域。超音波検査:双腎結石(直径0.70.5mm)。Cre132μmol/L1.49m/dL)、BUN7.0542.3m/dL)、尿酸522μmol/L8.77m/dL)、二酸化炭素結合力19.6mmol/L

(付記:410日と初診426日の検査値がほぼ一致しています。強い顕微鏡学的血尿を伴う腎機能障害がありますが、腎不全状態は軽度です。腎結石の存在場所と個数が不明です。超音波検査で直径1mm以下の結石の個数を確定することはやや難しい作業です。尿酸値が高いことと、結石があることから、腎結石を伴った慢性腎炎という診断も可能です。ただし、痛風腎の診断まで可能かと言えば、まだ不可能でしょう。いわゆる典型的な痛風の関節症状はありません。私は、尿酸値の高い慢性腎炎の症例は可及的にアロプリノール等で尿酸値を下げるようにしています。尿酸沈着による腎機能の低下を予防するためです。)

中医弁証:脾腎両虚 湿熱内蘊

西医診断:慢性腎不全

治法:清熱利湿涼血 補脾腎

方薬

土茯苓30g 萆薢20g 桃仁20g 赤芍20g 丹参20g 大黄10g 小薊30g 白茅根30g 側柏葉20g 茜草20g 藕節(収斂止血)20g 蒲黄15g 山茱萸20g 熟地黄20g 山薬20g 茯苓20g 牡丹皮15g 澤瀉15g甘草15g 紅花15g

水煎服用11剤。

(付記:下焦熱盛、舌質紅 苔白厚から湿熱内蘊の診断になります。尿路結石、腎結石は湿熱が原因であるとは中医診断学の基礎事項です。土茯苓(菝葜、山帰来)は清熱解毒と萆薢は化湿濁、祛(風)湿に、桃仁、赤芍、丹参、紅花は活血祛瘀に、大黄は通腑泄濁、活血に、小薊から蒲黄までは(涼血、収斂、活血)止血に、山茱萸以下甘草までの六味は六味地黄湯の組成です。標本の立場からすれば標本兼治、標本同治の方薬内容です。)

二診 2006510日。

上薬服用後病症減軽、身体は以前に比べ有力、関節痛の発作無し。内因性クレアチニンクリアランス97.9ml/minCre121.9μmol/L1.38m/dL)。弁証同前、上方加減治療を継続。

方薬:

土茯苓30g 萆薢20g 桃仁20g 赤芍20g 丹参20g 大黄10g 小薊


慢性腎不全 張琪氏漢方治療18.補脾腎化湿、通腑瀉濁法治療 (腎病漢方治療218報)

2013-12-24 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方

慢性腎不全の治療の大綱は益気健脾補腎、通腑泄濁、活血化瘀、清熱解毒祛湿であることに変わりは無いようですが、自覚症状の改善目的には降逆止嘔、濁湿化熱防止、腰痛の軽減などが必要です。どのような順序で治療するのかが課題なのです。本日も飽きないで張琪氏の医案を紹介します。

患者:孫某 53歳 女性

初診年月日2005823

主訴:全身乏力2年間

病歴

2年前、疲労が重なった後に乏力出現、ヘモグロビン6.0g/dl20047月腎機能検査:Cre7809μmol/L8.82m/dL)、二酸化炭素結合力16.6mmol/L、診断“腎不全”。20058月:Cre710μmol/L8.02m/dL)。中医治療を求めて氏を受診。

初診時所見

全身乏力、納少、腰酸、顔面少華、唇白色淡、大便1/日、舌質淡、苔白、脈弦細。ヘモグロビン9.7/dlCre6408μmol/L7.12m/dL)、BUN20.96mmol/L125.76m/dL)。超音波検査:双腎萎縮。

中医弁証:脾腎両虚 濁毒内蘊

西医診断:慢性間質性腎炎 慢性腎不全

治法:補腎健脾 活血化濁

方薬

熟地黄25g 山茱萸20g 巴戟天15g 肉蓯蓉15g 女貞子20g 淫羊藿15g 枸杞子20g 山薬20g 白朮20g 茯苓20g 黄耆30g 党参20g 鶏内金15g 砂仁15g 陳皮15g 紫蘇15g 桃仁20g 丹参20g 川芎15g 紅花15g 大黄10g 黄連15g 黄芩15g 甘草15g 当帰20g 生姜15g

水煎服用 11剤。

(付記:熟地黄から党参までと当帰はいわゆる補薬群です。鶏内金は消食、砂仁 陳皮は行気和中化湿、桃仁から紅花までは活血化瘀薬、大黄は通腑泄濁、活血に作用し、黄芩 黄連は清熱解毒燥湿に働きます。以上から標本兼治の意味合いの方薬組成になっています。)

二診

服薬14剤後、まだ倦怠乏力、発熱無し、納尚可、時に咳嗽あり、舌淡、苔白、脈細、血圧115/70mmHg、症状寛解は不明瞭、化濁活血解毒を主とする。

方薬:

桃仁20g 赤芍20g 丹参20g 川芎15g 枳実15g 厚朴20g 大黄15g 生地黄20g 山茱萸20g 枸杞子20g 女貞子20g 巴戟天15g 肉蓯蓉15g 黄連15g 黄芩15g 金銀花30g 桔梗15g