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「馬」のつく漢方薬

2013-08-28 00:15:00 | ブログ

小生の夏ばてはカリカリと歯ごたえのある高田梅と滋養豊富な馬刺しで乗り切りました。

同郷の旧友のNagamine和栄氏が弟さんに「すっぱく塩辛い高田のカリカリ梅と会津名産の馬刺しを康仁に送ってやってくれ」と親切にも連絡してくれたおかげで、カリカリ梅で食欲は回復し、馬刺しで消耗感も消失したようです。あらためてご兄弟に感謝する次第です。

会津の馬刺しはルイベ状ではなく、加えて、脂肪のサシが入っておらず、綺麗な赤身で、大変美味しいものです。くせがなく、生姜醤油も会うし、ニンニク辛し味噌もまた相性がよろしいのです。

ところで、

「日本人は馬を生で食べるのか」と行きつけの料理屋で、福建省からの中国人に驚かれたのですが、「鯨も生で食べるんだよ」と言うと絶句していました。

以前、中国からの教授連に神戸牛で接待したことがありますが、どなたも、神戸牛刺しには怪訝そうな顔つきで手を出しませんでした。生肉は食べない習慣なのでしょうね。あるいは、店の裏庭で殺して解体してきたばかりと誤解されたかもしれません。

さて本日の「漢方市民講座」は「馬」がつく漢方薬です。さらりとお話します。

馬勃(ばぼつ マーボ)

/平 帰経肺 効能:清肺利咽 涼血収斂止血

ホコリタケ科Lycoperdaceaeのキノコです。キノコの本体を指で押すと上部の穴からホコリが吹きでます。胞子がホコリのように見えるのです。湯をかけて溶かして飲みます、一回量は5個程度。野菜として食用としても(昔は)安全でした。咽にいいのです。本品は清肺熱、利咽喉の作用があります。咽頭痛や咳嗽発熱などに使用しますが、近年では西洋薬が発達しているのでわざわざ馬勃を使用することは無いようです。

馬歯莧(ばしけん マーチシァン)

/寒 帰経 心大腸 効能:清熱解毒 涼血止血

スベリヒユ科Portulacaceaeのスベリヒユの全草

湿熱性の下痢に有効であるとされていますが、抗生物質が有る以上、わざわざ馬歯莧をすりつぶしてどろどろの液体を患者に飲ませた経験はありません。加えて黄連丸単独でも十分に効果があるからです。さてねばねばした液体をアトピー病変に塗ると痒みや赤みが消えて効果が良いと「ステロイドを目の敵」にしている日本の漢方医(薬剤師)もいますが、私自身は、使ってみて、うまくいきませんでした。ステロイドの使い方と濃度変化、痒み止め、保湿剤との配合比率を研究したほうが、馬歯莧に頼るよりも「まし」なようです。

馬銭子(ばせんし マーチェンズ)

/寒 大毒 過量に服用すると振顫、痙攣、意識障害など中毒症状を引き起こします。妊婦には禁忌です。手を出さないほうがいい漢方薬です。

フジウツギ科 LoganiaceaeのホミカStrychnos nux-vomica Lの成熟種子を生薬としますが、砂と一緒に炒めるか油で揚げる炮制が必要です。風寒湿の痺症(関節痛)に他薬と一緒に用います。外用の方が危険性という意味で低いのです。

馬鞭草(ばべんそう マービンツァオ)

/微寒 帰経 肝脾 効能:活血通経、利水消腫、截瘧(さいぎゃく)、清熱解毒
活血化瘀薬に分類されます。

クマツヅラ科のクマツヅラ Verbena officinalis L.の全草を生薬とします。

活血通経とは瘀血を除き生理痛や無月経などを改善することを指します。外傷性の打撲血腫などにも使用されます。活血利水消腫作用は腎炎によく使用されます。
以前には瘧疾(マラリアなど)に、単味の煎剤を用いました。日本では流通がありません。

馬兜鈴(ばとうれい マートゥリン)

止咳平喘薬に分類されますが、毒性報告が相次ぎ、現在では使用しません。毒性成分はアリストロキア酸馬兜鈴酸)で、馬兜鈴に限らず以下のような報告があります。

日本では、1996年から97年に関西で関木通(カンモクツウ)とよばれる中国製生薬を配合した健康食品を摂取した人に腎炎の発生が報告され、該当の健康食品からアリストロキア酸が検出されました。その他にも以下のような報告があります。

報告:19歳女性、約20種の自然薬草よりなる「中国製漢方薬」を個人輸入、約3年間アトピー性皮膚炎に使用、アリストロキア腎症を起こした。商品には関木通が添加されており、アリストロキア酸が検出された。

報告:58歳女性、クレスト症候群(皮膚硬化症の一種)と診断され、40歳時よりレイノー現象が出現、43歳より57歳まで中国ハーブを飲用。ハーブを分析したところアリストロキア酸が検出された。

報告:48歳男性、尿酸値を下げる目的で。薬局で「生薬製剤」を購入、内服開始6ヵ月後より多飲多尿、全身の脱力感が出現、9ヵ月後に筋痙攣が出現。尿蛋白、尿糖、著明な貧血、高度の腎機能障害、高カリウム血症、代謝性アシドーシスがみられ、腎不全による尿毒症症状により血液透析に導入され、慢性間質性腎炎と診断された。服用薬にアリストロキア酸が高濃度に含有されており、アリストロキア酸腎症と診断された。


報告:33歳女性、5ヵ月前から不妊症、近医の指示で中国ハーブから抽出したアリストロキア酸を含む「漢方薬」を服用、1ヵ月前から食欲不振、微熱、頭重が起り、著しい貧血、代謝性アシドーシス、低リン血症、アミノ酸尿、糖尿があり、入院した。腎不全が進行し、18ヵ月後血液透析に導入された。

日本の薬局方で認められている生薬にはアリストロキア酸は含まれていませんので安心してください。ただし、生薬の場合、名称が似たようなものが多く、使用部位や植物が国の各地によって異なることがありますので、海外から「健康食品」や「漢方薬」を個人輸入する場合は注意してください。

購買者の健康に配慮するより銭儲けに走るのが販売者の常です。日本人の常識、性善説は通用しません。動物の甲状腺末を混入させて痩せ薬と称した中国漢方薬が死者まで出す騒ぎになったことは直近(約1012年前)の関西の事件でした。

海馬(かいば ハイマー)

タツノオトシゴDreid hippocampus coronatus(sea horse)(after removal of visceral organs)、性味 咸甘温 帰経 腎肝 功能:補腎壮陽、活血散結消腫止痛

現在では絶滅危惧種で取り扱いが禁止されています。勿論以前は高価でしたが、時々使用しました。腎陽虚(インポテンツ)、不孕(不妊症)に効きます。補腎陽の強壮薬(補肝腎 補精血)として有名です。日本人の冷え性とストレスや過労での不眠にも海馬が有効の報告があります。腎虚更年期障害には補腎の海馬、鹿茸が有効であると中医は言います。

老化にともなう視力障害には、沙苑子、海馬(タツノオトシゴ)、鹿茸、冬虫夏草、黒蟻、黄精が効果的とも言われています。

桑螵蛸 鹿茸 海馬の組み合わせが、腎精不足タイプの不妊症に有効であるとの報告もあります。

そのうち養殖された海馬が出回るかも知れませんが、功能は天然ものと比較して落ちることは確かでしょうね。

結語

現在でもよく使用されているのが馬鞭草(ばべんそう)の活血利水消腫剤ですが、日本では流通が無いのが難点です。馬がついた生薬で温薬は海馬だけです。これとて現在は取引禁止ですし、馬兜鈴に到っては毒物ですし、馬銭子(ばせんし)も大毒ですから、手の出せる薬剤は少ないですね。馬歯莧ぐらいですか。でもいくらでも西洋薬で代役が可能ですので、利用価値は少ないですね。

2013828日(水) 記


診療拒否とは「患者の言い分?」

2013-08-27 00:15:00 | ブログ

医者は「平穏に冷静に」が常日頃の心構えである。

全身性の蕁麻疹の初診の中年男性。

「ここ3ヶ月他の医者に診てもらってるんやが、だんだんひどうなるばかりで」

「内臓悪いかもしれんといわれていろいろ検査したんだがなあ」

「これとこれとこれとこれ」データを沢山目の前に突き出してくる。

こういう場合は、食生活やサプルメントの影響が多い。

私「辛くてかっかと火照るものはしばらくいけませんよ」

患者「アルコールは1週間やめたがな」

私「アルコールは勿論、香辛料、例えばキムチなどはいけませんよ」

患者「そんなもん食べても関係あらへんわ」

私「直接アレルギーの元ではなくても、炎症を促進するものは、これ、これこういうものです」と丁寧に紙に書いて説明した。

私「何かサプルメントお飲みですか?」

患者「べつに」「食い物と関係あらへんがな」

私「診療経過を診るために写真を撮っておきましょうね。」

患者は膝下と二の腕しか見せない。

私「寒くなかったら、上半身脱いでくれますか?」

患者は面倒臭そうに脱ぐ、そこで、写真を2枚撮った。

途端に患者が「切れた」のである。

患者「もうええわ、診療拒否だわ」

私「食事制限は無理強いするわけじゃないんですよ」

患者「もうええ、診療拒否」

写真を撮られるのを極端に避ける人物には何か必ず問題があると私は思っている。

私「そうですか?それじゃ仕方ないですね。」

患者は逃げるように診察料も払わずに出て行った。

合計診察時間25分、他病院の検査の説明もして、投薬内容の説明もして、

挙句の果てが「患者からの診療拒否」。

こんな患者とは初めから付き合うのはごめんこうむりたい。医者は患者を選べない。

患者が「診療拒否」と大口叩く時代になったのか。

2013826日(月) 記


口干咽燥(こうがんいんそう)に適する飲み物とは?

2013-08-22 00:15:00 | うんちく・小ネタ

漢方用語に口干咽燥があります。口が渇いて咽(のど)の乾燥感を覚えるという意味です。治療原則は清熱、養陰、生津(しょうしん)ということになります。

清熱(せいねつ)とは解熱とほぼ同意ですが、熱性疾患に伴う口干咽燥に対して、原因である熱邪を実熱、虚熱を問わず清熱祛邪するという治療方法になります。虚熱、実熱を問わず、口干咽燥には体液「津液(しんえき)」が不足している場合が多いので、養陰、生津を加えて治療すれば効果的です。

直接的な補陰法はともかく水を飲むことです。

ただし、

未治療の高血糖を伴う糖尿病では、いくら水を飲んでも、高血糖は改善しなく、浸透圧利尿により尿量だけが増え、高血糖は改善しませんので、口干は水を飲めば一時的に改善するでしょうが、咽燥は続きます。基本的な糖尿病の治療が必要です。加えて養陰、生津の治療法を加味すれば更に効果が上がります。

また、

慢性の鼻炎があって、口を開けて寝る場合には、口呼吸のために、咽燥が生じることが有ります。通鼻の治療が欠かせません。

さらに、

乾燥症候群を伴うシェーグレン症候群(および類似疾患)の場合には、抗炎症、清熱、養陰、生津の漢方治療を全て行うと、唾液や涙の分泌量が多くなり、唾液分泌低下に伴う口干咽燥が軽減してきます。

さて、

実熱も虚熱の証もなく、糖尿病も無く、ましてや鼻炎や膠原病もない私が、近日来、咽燥に悩まされて来ました。部屋を閉め切って、除湿を24時間行っているためか、丁度、秋の乾燥時期に身を置いているような状態で「風燥」にやられたわけです。適度な湿潤な場所に移動すれば自然によくなるだろうと思いつつも暑湿なところには出向いて行きたくもないし、窓を開ければ臭い大気が侵入してくるので、あれやこれやと飲んでみて感じたことが有りましたのでご報告致します。

コーヒー:微寒?

熱いコーヒーでも、冷たいコーヒーでも、特に体調に変化を来たさないようです。もともとブラックコーヒーは好きじゃないので、私の場合は砂糖の過剰摂取につながる恐れがあります。咽燥に対しては一定の効果がありますが、一日中飲めるものではありません。

紅茶:温?

冷たい紅茶でも腹が冷える感じは無いのです。シナモンスティックを入れて飲むと勿論温まる感じがあります。無糖で冷やした紅茶は咽燥には効果が持続します。

麦茶:涼?

体は涼しくなることは確かです。しかし、好みのせいか、咽燥時にいつでも不味い麦茶を飲む気になれません。咽燥には一定の効果があります。

ホウジ茶:温?

体は温まります。冷房を長時間利かし続けた部屋にいて、鼻水が出てきたら、紅茶かほうじ茶を飲むと鼻水が退いていきます。咽燥に対しては一定の効果はありますが弱い印象です。

緑茶:涼

熱く火照った体を冷やす働きは麦茶同様ですが、不思議なことに、咽燥(感)は一向に改善しません。飲めば飲むほど咽の渇きが増すような、一種の刺激感があります。私自身の感覚の個人差なのかも知れませんが、その「刺激感」のために、緑茶からは自然に遠ざかることになっています。

結語

当院の構造上の問題から、二階と三階の冷房と除湿の利かし過ぎの場所から、皮膚が焼け付くような陽光と、むせ返るような高湿度の外気に当たって一階の診療室まで、数えてみると1日の間に15~17回の往復をしています。診療が終わると三階の居室に翌朝までこもりっきりの生活です。

それで、体を冷やし過ぎたのか、乾燥し過ぎているのか、或いは暑気あたりなのか、自分でも弁証困難な体調に陥っています。ともかく咽燥があるので、冷えすぎた体を温めて、かつ咽を潤す飲み物を捜したところ、冷えた紅茶がいいとわかりました。紅茶は冷やして飲んでも、体は温まる感じがするし、咽燥を十分に抑えてくれます。

酔い覚めの一杯の井戸水ほど旨いものは無い

と小生に教えてくれたのは、旧友のNagamine和栄氏です。昨日届いた彼のメールを紹介します。私の記憶する限り、当時彼が飲んでいた水道水は地下水のそれでしたので「井戸」は私の装飾です。

氏のメール本文 以下

一日遅れましたが、誕生日おめでとう。

しかし、貴ブログでぼやいておられるように、

この年になると眠りも浅くなり、疲れもたまりますね。

私も連日の熱帯夜に辟易しています。

布団に入ってもなかなか寝付けず、4時ころになって

ようやく半覚醒状態に陥いるがすぐに目覚めてしまい、

シーツの冷たい場所を探して輾転反側するうちに朝刊が届く、

というような毎日です。

まあ小生の場合は起きる必要がなく眠れるときに

寝ていればよいので、うとうとしながら昼近くまで

横になって最低限の睡眠時間を確保し、23日ごとに

深酒しては熟睡(と言うより気絶状態)して

睡眠不足を解消しています。

ところで、昔ながらの梅干を求めておられましたが、

時々母が送ってくれる高田梅はコリコリとして

歯ごたえも良く、酒のつまみにもなる逸品です。

(酸っぱいのと甘いのがあるそうで、小生は

酸っぱいほうをリクエストしています)

なんなら◎三に頼んで送らせましょうか?

博識でしょう?「輾転反側」しばらく目にしてない4文字熟語です。

「シーツの冷たい場所を探して輾転反側するうちに朝刊が届く」のくだりは凝縮された素晴らしい短文ですね。

和栄君 是非、甘いほうでなく、酸っぱい梅をお願いします。なにしろ、パンにつけるマーマレードのような軟弱で甘ったるい梅しかこの辺にはありませんので。◎三様によろしくお伝えください。お手数おかけいたします。(老母に頼むと張り切り過ぎての腰痛などを懸念しますので。)

本日のブログを以って貴兄電信文への、返信、御礼、暑中見舞い、頼み申すこと一件といたします。

敬具

2013821日(水) 記


熱中症の予防と夏ばて防止に漢方薬 「清暑益気湯」をどうぞ

2013-08-19 00:15:00 | ブログ

私の熱中症予防法

経過

ここ、1ヶ月、寝ている間に消耗している自分を感じていた。朝目を覚ましても、だるさが残っていて、とてもじゃないが仕事をする気になれない。早朝尿は濃い色をしており、喉は渇き、食欲も無く、頭がボーとしていている状態だった。

対処その一

そこで、寝る前に、ぬるい風呂に入り、バスタオルで軽く拭いて扇風機で体表の水分を蒸発させ、対表面の温度を下げ、水でぬらした小タオルを首に巻いて、脳へ行く血液の温度を少し下げてみようとしたら、入睡は安らかになった。しかし朝の消耗感はそのままで、だるさが取れない。

対処その二

枕元にペットボトルに氷水をいれて、夜中に目を覚ました時に必ず飲むようにした。

歳だから夜間排尿が1度はある。排尿したら排尿量以上の水分を補給して再度寝る。早朝尿の色を確認する。通常は濃縮されて濃くなっているが程度が軽くなってきた。

対処その三

酸っぱく甘いものは陰になるという中医理論がある。酸甘化陰という。そこで、朝は、なるべく酸っぱくて塩辛い梅干1個を丸かじりして、冷たい麦茶を甘くして飲むようにしたら、よほど症状は軽くなった。いっそのこと夜間のペットボトルの飲料にはレモン汁と蜂蜜でも入れてみようと実行したら具合がいい。しかし、「やる気」が出てこない。漢方理論では、汗や尿と共に気も一緒に漏れ出るという「気随津脱」(きずいしんだつ)論がある。そこで益気(気を増す)必要性を感じたのである。

対処その四

金元四大家の一人李東垣(1180年生まれ1251年没)の夏ばて方剤「清暑益気湯」と同名の保険の効くエキス剤がある。ただし生薬の配合は清代の清暑益気湯に近い。其のエキス剤を15g2.5gずつ2回に分けて1週間服用している最中である。具合がいい。

李東垣 清暑益気湯脾胃論

黄蓍 蒼朮 升麻 人参 神鞠 陳皮 白朮 麦門冬 当帰 炙甘草 青皮 黄柏 葛根 澤瀉 五味子 全体として清暑益気 養陰生津に働く。

青皮は陳皮より薬性が強い。柴胡の代わりに升麻 葛根が配合され昇陽散邪に働き、利湿健脾作用に優れる蒼朮が配合されている。当帰 麦門冬 五味子は養陰生津に作用する。五味子には斂肺益腎 養心益気 収斂固渋 生津止渇の作用がある。黄柏が配合され、清暑化湿に作用する。

近代に近づくにつれ、清暑益気湯は変化が見られる。

明代 清暑益気湯医学六要1585年 張三錫

黄蓍 人参 麦門冬 白朮 当帰 五味子 陳皮 黄柏 炙甘草

これは東垣翁の清暑益気湯の簡素版とも言える。

清代 清暑益気湯温熱経緯1852年 王士雄

西洋参 石斛 麦門冬 黄連 竹葉 荷梗 知母 炙甘草 粳米 西瓜皮の組成である。温薬が一つもないのが特徴です。

西洋人参は補気養陰、清火生津に働き涼の性質を持つ人参です。石斛 麦門冬は養陰剤であり涼、微寒の性質です。黄連は苦寒、竹葉は辛甘寒で清熱に、荷梗はほぼ荷葉と効能が同じで、苦平で清覚醒脾に作用し、知母は苦甘寒で清熱瀉火 滋陰潤燥に作用し、西瓜皮も甘涼、清熱解暑に働きます。清代の温病学の発展とともに、涼寒薬による清熱養陰剤が目立つようになるのです。「益胃湯」が沙参 麦門冬 生地黄 玉竹 氷砂糖と涼薬養陰剤で構成されているのに符合します。

現代医学からの「熱中症」の診断治療も含めたキイワードは異常発汗、逆に無汗、体温上昇、脱水、補液(点滴)、冷却、体温調節機能の障害、意識障害、皮膚の乾燥、低ナトリウム血症、ICU、肝腎不全などです。

清代の温病学、気血津液弁証にはすでに、熱中症的症状の分析と治療法の考察があるようです。酸甘化陰の中医理論とミネラルの補給の意味からも、甘酸っぱく、塩分を含む飲み物が予防には良いと考えますが、最近の梅干は酸っぱくも無ければ、塩辛くもないですね。

梅干ももう僅かになってしまいました。

どなたか、昔ながらの梅干を神戸市で売っているところをご存知ですか?

2013819日(月) 記


黄のつく漢方薬 漢方市民講座

2013-08-17 00:15:00 | ブログ

黄は皇帝の色で最も尊く、五行学説では脾胃を示す「黄」です。

今回の市民講座では方剤までは拡大せずに、各漢方薬の性質のみお話します。キイワード(紫)については興味がありましたら、各自でお調べください。

麻黄(まおう マーフアン)

辛温解表薬の代表です。帰経は肺、膀胱。功能は発汗解表 宣肺平喘 利水消腫

同じ辛温解表薬である桂枝は血脈に入るが、麻黄は血脈に入らない

一般に肺寒に用いられるが、麻黄+杏仁+石膏の組み合わせで肺熱にも使用できる。

蜂蜜炒麻黄は潤肺作用が増強され、喘息、水腫に効果がある。

生麻黄は発汗作用が強い、蜂蜜とあぶった炙麻黄は喘息に使用、

普通量:1.5g-10g

3年ほどねかせた麻黄新鮮麻黄と比較して效力が大である。

生麻黄(新鮮麻黄)は発汗作用、中枢神経興奮作用あるので不眠症のある場合は悪化する。もしくは不眠傾向が出現する。血管収縮作用があるために心臓病、高血圧には慎重に使用する。

蜂蜜炒麻黄は潤肺作用強くなり喘息によい、利水消腫も良く、水腫にも効果がある。

遺尿に補腎剤+麻黄が有効との報告がある。

急性中毒治療

頭髪、体温より低温度の水風呂に入る

糯米(もち米)を鉄なべで炒って粉末にしたものを体にかける

準備骨,牡蛎,藁本,防 各30以上を煎じて服用する。

麻黄により発汗がすぎると、血虚,虚になり心火が強くなり、皮膚に発疹がでる

麻黄は表実証に効く

桂枝は表虚症に効く

麻黄は小煎(浸す時間は30分、煎じる時間は沸騰してから10分程度)先に煎じる。他の解表薬は後に煎じる。

麻黄の利水消腫作用として有名な言い回しがある。「提壷テイフー掲蓋ジエガイ」急性腎炎などの際に宣肺利尿を行うこと

麻黄+杏仁で肺寒に 麻黄+杏仁+石膏 肺熱にと記憶しておくといい。

麻黄根(まおうこん マーファンゲン)

固表止汗薬(斂肺止汗薬)に分類されます。異常な発汗を抑えます。麻黄の根です。麻黄は発汗、麻黄根は止汗と反対に作用します。麻黄根は外用もできます。夏季の子供の汗疹などに発汗部位に粉を塗布します。

黄菊花(おうきっか)

清熱解毒薬の菊花の花弁の黄色いものを指します。疏清熱作用強く杭州産が良いとされます。目の充血に効果があります。

白菊花:清肝明目作用が強く安徽省産が良いとされます。肝火による目の充血や、目のかすみに効果があります。

野菊花は解毒作用が強い。

菊花の帰経は肺 肝で、功能は疏風清熱 清肝明目 清熱解毒になります。

黄連(おうれん) 黄芩(おうごん) 黄柏(おうばく) 大黄(だいおう)

黄連 黄芩 黄柏は性味はいずれも苦/寒、清熱解毒燥湿薬に分類されます。大黄も性味は苦/寒ですが、瀉下剤に分類されます。

黄連(おうれん)

四川省産の川連が有名です。帰経は心肝胃大腸。特に上焦心熱と中焦肝胃大腸に作用します。抗菌作用は黄芩 黄柏 山梔子中で最強といわれます。抗ウイルス作用や、抗不整脈の効能も報告されています。

肝火による肝胃不和「呑酸がみられる」の際に清心火除煩、清胃熱止嘔に働きます。左金丸(さきんがん)「寒黄連+辛苦熱吴茱萸」(清熱燥湿瀉火解毒+燥湿疏肝下気)}については前述しました。腸湿熱による細菌性の大腸炎に有効です。

木香黄連丸「苦寒黄連+苦辛木香」(清熱燥湿瀉火解毒 理気止痛)については前述しました。

熱毒による眼病、或いは皮膚の瘡にも効果があります。中枢神経には興奮鎮静の作用があります。胃液分泌抑制作用や胃粘膜の安定作用により抗潰瘍の効果が報告されています。一定の脳血流改善作用も存在するといわれています。

黄芩(おうごん)

帰経は肺胆胃大腸ですが、特に上焦の肺熱、肺火に作用するのが特徴で、中国では単味 30gを「清金散」と称し、清肺熱に用います。一定の抗炎症、抗菌作用、抗ウイルス作用が現代薬理学で確認されています。

降圧作用の他に、ケミカルメデエイターの遊離抑制により一定の抗アレルギー作用があることも確認されています。中焦の肝胆大腸の湿熱を除くと中医学は説いていますが、湿熱の概念が現代西洋医学に無いために、具体的に説明を加えるのが困難です。