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初期のアトピー性皮膚炎は早期に改善するのが通常という印象

2014-10-11 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

中医学に限らず、日本の漢方医学で用いられる方剤の特徴は、効能にしても、効果にしても定量化できないという難点があります。それぞれの学問の体系が、西洋医学とは異なる独自の言語体系で構成されていることに加え、時には30種類にもなる生薬の配伍は、実際に、投与群と非投与群のプロスペクティブな対照実験を行うにも、どれだけのコントロール群(対照群)を置くべきかと考えれば、配伍量の変化も加えれば、天文学的組み合わせになるのです。

 

そこで、宿命的になるのですが、過去の先達の症例報告と、個々の生薬の薬理作用を言語体系の中で照らし合わせて、言わば、臨床医の「悟り」に近い経験から試行(錯誤)を繰り返して満足のいく臨床効果を「手繰り寄せる」しかないのが現実なのです。

 

やや、下世話な話になりますが、開業医にとって、効果が表れなければ、患者さんは、再診しなくなります。とは言え、改善傾向を無理なく自然に醸し出すということは、実際には難しいことです。

 

本稿では、伝統的な言語体系を用いながら、早期のアトピー性皮膚炎をどのように治療していくかを紹介したいと思います。

 

患者さんは30代前半の女性です。1年ほど前から、顔面胸部背中前腕部分に痒みが出現しました。既往歴としてアレルギー性鼻炎、鶏肉、豚肉、牛肉(ハム、ベーコン)等で皮膚アレルギー症状が出現し、患者さんも、なるべく肉食を避け、皮膚科で処方されたアズノール軟膏、プロトピック軟膏、ステロイド剤の外用で対処してきましたが、皮膚の改善が「いまいち」であることから当院を受診されました。

 

時系列で各皮膚病変を比較します。

 

私が、ある程度「悟った」アトピー性皮膚炎の治療原則は、皮膚の赤味に対しては、燥に偏らない清熱解毒、養陰清熱です。痒みに対しては祛風止痒、勿論「治風先治血 血行風邪減」の基礎理論があります。皮膚の乾燥には養陰清熱潤膚です。白花蛇舌草(清熱解毒利湿 静菌 免疫調整)等による免疫操作も必要な場合があります。

 

 

初診(平成25514日)と20再診(平成26717日)、22再診(直近平成26104日)所見を比較してみましょう。

 

25514 初診

267172 第20再診

 

皮膚の湿疹は消失し、かつ、皮膚は潤であります。

 

強いステロイド軟膏で痒みや赤みを抑えるのは比較的簡単なことですが、必ず再発し、皮膚は乾燥し苔癬化局面に陥ることは多いのです。

 

261042 第22診

 

直近の頸部、顔面の皮膚は色素沈着も無く、潤いに満ちています。

 

 

 

同じ時系列で肘部の所見を比較してみましょう。

 

25514_2

明らかな湿疹と赤みがあります。

267171

赤みが消失し、痒みも消失、軽度の色素沈着を残すのみとなりました。

 

26104

 

色素沈着も消えて、正常な皮膚になり、再発は有りません。

 

 

 

後頚部の皮膚所見も同じ時系列で比較してみましょう。

 

25514_3

267173

 

赤みを伴う湿疹は消失し正常な皮膚となりました。アトピーの再発は有りません。

 

 

 

背部所見も同じ時系列で比較してみましょう。

 

25514_4

267174

 

色素沈着を伴う痒みの強い病変は完全に消失しています。再発は有りません。

 

 

 いつの時点で、アトピー免疫系のスイッチが、オンになったのかは不明ですが、30代からもアトピーの発症があるものと認識しています。アトピー免疫系のスイッチオンと簡単に記載しましたが、抑制系が失調したのかもしれませんし、今後は、その分野での基礎研究の発展が望まれますね。30代発症1年程度の早期のアトピー性皮膚炎は、適切な漢方治療により、ほぼ完治に導くことが出来るのではないか?という印象を強くしています。温熱性の香辛料の禁食は勿論のことです。

 

 

 

 

 ドクター康仁

 

20141011日(土)

 

 


閉経後も持続するアトピー性皮膚炎の中西医結合治療成功例

2014-10-08 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

45歳で閉経し、50歳になってもアトピー性皮膚炎に悩んでいた症例をご紹介します。直近の平成2610月4日まで計57回の診察をしていますが、平成241215日以降、アトピーの再発は無く、安定している症例です。

 

初診年月日:平成22721

 

病歴:幼少時期よりアトピー性皮膚炎が始まり、皮膚科で主としてステロイド外用で対処していたが、29歳頃から悪化傾向が出現、45歳で閉経。3年前(47歳)から皮膚病変が酷くなり、皮膚科ではステロイド軟膏、プロトピック軟膏を処方されたが改善傾向が少ないために、漢方薬局で、薬剤師に勧められ、オウゲインV(コタロー)、涼血清営顆粒(イスクラ)、瀉火利湿顆粒(イスクラ)を購入し、当院初診前の4か月間、朝オウゲインV6錠、瀉火利湿顆粒2包、夕にオウゲインV6錠、瀉火利湿顆粒1包、涼血清営顆粒1包を服用していた。アレルギー性鼻炎(通年型)があり、鯵(あじ)とセフェム系抗生物質ケフラールにてアレルギー性皮膚病変が出現したことがある。20代後半に腎盂腎炎の既往がある。外用剤として、皮膚科から処方されたステロイドは減量して主としてプロトピック軟膏を使用していた。

 

補足:温(熱)薬は赤、微温薬はオレンジ、平薬はグリーン、涼薬はライトブルー、寒薬はブルーで記載してあります。

 

オウゲインV黄連解毒湯の錠剤です。

 

組成:黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)黄連(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)黄柏(清熱解毒燥湿 退虚熱 堅陰)山梔子(瀉火除煩、清熱利湿、凉血解毒)

 

瀉火利湿顆粒(イスクラ):竜胆瀉肝湯の処方に基づいた9種の生薬からなる製剤です。

 

組成:当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便)熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)木通(苦/寒 泄熱利水通淋)黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)澤瀉(利水滲湿 泄腎濁)車前子(清熱利水通淋)龍胆草(清熱解毒燥湿 瀉肝火)山梔子(瀉火除煩、清熱利湿、凉血解毒)甘草(調和諸薬)

 

涼血清営顆粒(イスクラ):

 

組成:地黄{熟地黄(補肝腎養血滋陰、補精益髄)か生地黄(養陰清熱)か不明}芍薬{白芍(養血斂陰)か赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)か不明}黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)大黄(活血解毒通腑泄瘀濁下行)牡丹皮(清熱涼血 活血祛瘀)山梔子(瀉火除煩、清熱利湿、凉血解毒)

 

服用漢方薬に対する私の印象

 

 

苦寒薬の黄芩、山梔子の重複が明らかであり、清熱解毒は理解できるが、燥湿に傾く(皮膚が乾燥する)のは明らかである。当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便)の配伍は、中医基礎理論の「治風先治血 血行風邪減」の観点からは望ましい。しかし、何より痒み止め(祛風剤)の配伍が全く無い。慢性化したアトピー性皮膚炎に対する養陰(清熱)潤膚(陰を養い熱を清し肌を潤す)の原則からすれば養陰剤の配伍が無いに等しい。漢方薬局の薬剤師に勧められるままに、長期服用すれば、必ず「苦寒傷脾」、即ち、胃腸障害を起こす組み合わせであり、皮膚は粉をふいた様にガサガサに乾燥するであろうし、苔癬化皮膚病変の改善は望めない。

 

初診(平成22721日)時所見

2010721_001_2

 

前腕部皮膚表面は乾燥、発赤疹が多数存在するが、赤味は軽い。

2010721_003

上腕から前腕にかけて皮膚の硬化と厚化、表面の乾燥が著しく、ゴワゴワした苔癬化アトピーの所見を示す。

2010721_005

 

健常部分と苔癬化部分との境界部である。病変部分には赤味は少ないが、硬化と厚化が出現しており、表面は湿潤を失いつつある。

 

2010721_004

 

前頸部から前胸部の皮膚は、いわゆる「ツッパリ感」を伴


若い女性のアトピー性皮膚炎に対する開業医の責任は重大

2014-10-02 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

10代後半や20代前半の女性のアトピー性皮膚炎の治療は特に丁寧に行うべきであると、ドクター康仁は思います。というのは、就職や恋愛に皮膚病変は大きな障害になりえるからです。皮膚病変がダラダラと悪化していけば、精神的に不安定、消極的になり、出会いにも消極的となり、婚期(適齢期)を逃してしまった女性を数多く診てきたからです。従って、「見た目重視」と「病の寛解」を両立させていくことが、難しいことですが、医師の責任となると思うのです。

 

患者21歳女性です。15歳ごろからアトピー性皮膚炎を患い、穏解と再発を繰り返してきました。通年性のアレルギー性鼻炎の病歴があります。平成26年度は4月ごろから皮膚病変の悪化が進んで来たとのことです。他医での治療内容(多剤ステロイド単独)は省略します。通信販売で「アトピーラボ」(小生は知りませんでしたが)の製品である「ハーブジェル」、「APS(要冷蔵)」を購入して外用していたが、皮膚病変の改善傾向が無く、次第に悪化したので、他県から当院を初診されました。

 

 

 

初診時(平成26818日)所見

 

 

268181

典型的な肘部内側の慢性湿疹と色素沈着、両手首屈側部には痒みを伴う湿疹(一部化膿疹)と、同じく色素沈着を認めます。前腕伸側部にも痒疹が有りましたが、写真は省略します。

 

268183

 

顔面の痒疹の他、下顎部分から前頸部にかけて発赤を伴う痒疹と、前頸部の軽度の色素沈着を認めます。

 

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後頚部には項(うなじ)部分の発赤を伴う痒疹、背部には、慢性化した苔癬化アトピー局面に交じり、活動性のある発赤疹が散在し、色素沈着も部分的に認められます。

268185_3

 右膝裏から大下腿部後面にかけて、痒みを伴う湿疹と色素沈着、左側にも色素沈着が認められます。膝裏は、部分的に皮膚は粗造で柔軟性を失い、硬くなっています。

 

初診時に私が考えたこと、食事指導処方

 

年齢が若いことから、その分、皮膚の再生力が強いので、改善も速いであろうから、苔癬化局面も色素沈着も改善するであろう。要は再発傾向を抑え込むことと、皮膚を掻かないようにするために、辛辣厚味の食品を避ける必要がある。(康仁堂慢性アトピー禁食方に従う)

 

反跳(リバウンド)を警戒しながら低濃度のステロイドは必要である。外用薬として、1/15程度のマイルドなステロイド、保湿剤、痒み止め、漢方エキス剤(清熱涼血、養陰血)、極少量の抗生物質、タクロリムスも少量使用すればよいかもしれない。全部を混合して塗り薬とする。(ベリーストロングからマイルドなステロイドまでの軟膏、クリーム、ローションを数本処方して、部分的に塗り分けるというような皮膚科の処方も見かけられますが、殆ど長続きしなく、苔癬化アトピーに陥る症例を見てきました。)経口剤として、当帰飲子、消風散各5.0g{両剤には当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便)と防風(祛風解表、勝湿、止痛、解痙)の重複があるものの許容範囲である}、エバステル20mg、シナール3錠、ビオチン1.0g。患者が購入していたハーブジェル、APS(要冷蔵)は中止。

 

 

 

 

二診時(平成2696日)所見

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前腕部(肘部、手首等)皮膚の発赤疹は消退、色素沈着も大減しました。

 

26963

 

下顎から頸部にかけての発赤疹が大減、色素沈着も目立たなくなりました。

 

 

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項部分の発赤疹も消退、背部も「調子が良い」とのこと。

 

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僅か3週間の治療後の両側膝裏の所見です。右膝裏から大下腿部後面にかけての、痒みを伴う湿疹は大いに改善してきました。色素沈着も軽減傾向にあります。初診時の膝裏の部分的な皮膚の粗造、硬化は改善し、患部には潤いが生じています。

 

 

 

直近 三診時(平成26929日)所見

 

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顔面の痒疹、下顎部分から前頸部にかけて発赤を伴う痒疹は消失・前頸部の軽度の色素沈着も消失しました。

 

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項(うなじ)部分の発赤疹の再発は無く、ほぼ正常な皮膚になりました。

 

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背部には軽度の色素沈着が残存していますが、活動性の湿疹は無く、苔癬化の改善傾向が著しい。

 

再度、初診時の背部所見と比較なさってください。以下

 

 

 

268184_2

 

三診時より秋の花粉症を考慮して、エバステルをペミロラストカリウムに変更しました。目や鼻の症状は、すぐに皮膚にも反映されるという印象を持つからです。

 

 

 

私の治療指針は、中西医結合(漢方&西洋医学結合)治療を以て、人体の自然治癒力のお手伝いをするのを基本としています。医師を職人に例えれば、道具は多い方が良いのです。

 

いつも申しあげているように、皮膚科領域では効果が一目瞭然ですから、「論より証拠」なのです。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014102日(木)

 

 

 


皮膚のトラブルは女性につきもの(続報4)アトピー類似性皮膚炎(アレルギー性鼻炎、の合併例) 中西医結

2014-09-26 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 問診票の既往歴に、アトピー性皮膚炎、慢性鼻炎、気管支喘息を列記される患者さんは実際多いものの、臨床現場での印象では、アトピー性皮膚炎と気管支喘息が同程度に活動性が有る場合は少なく、殆どの場合には、小児期に喘息、(成人例では)成人になってからの皮膚炎、アレルギー性鼻炎の残存例が多いようです。患者さんが、以前にアトピー性皮膚炎で治療を受けたとおっしゃる場合に、既に、典型的なアトピー性皮膚病変は消退していて、アトピーとは別種の皮膚アレルギーが新たに出現してくると思われる場合もあります。私がアトピー類似性皮膚炎とタイトルに記載した理由は、そのような別種の皮膚アレルギーを疑ったからです。

 

症例30代女性です。

初診:平成248月上旬 

主訴:現在治療中の全身の皮膚の痒みを治してほしい(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎と言われている)。痒みのために睡眠不良。眠っている間にも無意識で掻いてしまう。

 

初診時所見:呼吸音は正常。ここ数年は、喘息発作は有りません。患者さんが持参した血液検査では、末梢血液検査で好酸球の軽度の増加(13%)が認められる他に、生化学検査は異常なし。

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3か月ほど前から痒みが酷い顔面(特に眼瞼周囲)の発赤疹。色素沈着無し。炎症性の浮腫が認められます。ステロイド剤多用によるムーンフェイス(満月様顔貌)の可能性も存在します。全身的にステロイドを多剤外用すれば、それだけでもムーンフェイスが出現することがあります。眼球結膜の発赤無く、鼻症状(鼻汁)軽度有り。

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前胸部特に乳房上部に痒疹が顕著。

 

 

 

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アトピー性皮膚炎とは異なり、前腕、下腿の伸側に痒疹(一部丘疹化)が存在。

 

某皮膚科の処方内容:抗アレルギー剤としてオロパタジン5mg(副作用については前報に記載しました)、ネリゾナユニバーサルクリームステロイド)、デキサンVG軟膏ステロイド)、アンテベート軟膏ステロイド)、パスタロンソフト軟膏(尿素軟膏 保湿剤)、エンペラシン錠剤(抗ヒスタミン剤とステロイドベタメサゾンの合材)と、同時に3種類のステロイド外用、合剤とは言え、ステロイド内服と非常に偏った処方でした。しかも薬の効能、注意事項にはステロイドであるという情報は一切記載がありませんでした。「湿疹や皮膚の炎症や痒みを抑える塗り薬です」という薬剤説明は、故意にステロイドという情報を除いたものでしょうか。

 

特異的IgE検査結果:ヤケヒョウダニ、ハウスダスト、スギに強陽性、ミルク、小麦、カニ、エビ、アサリに弱~中等度陽性

 

初診時に私が考え指導したこと

 

アトピー性皮膚炎ではなく、アレルギー性湿疹と診断。現に皮膚局面の改善が無い以上、皮膚科の服用薬、塗り薬の残薬は減量すべきである。ステロイド減量による反跳(リバウンド)が危惧されるので、ステロイドは漸減して、一部継続する一方で、即座に食事療法を開始する。皮膚の痒みを悪化させる辛い食品の禁食(代表はカレーとキムチ、ニンニク、ニラ、生の玉ねぎの類、うどんを食べてもいいが唐辛子を入れない、ラーメンの際の胡椒も避ける。餃子の具に豚の挽肉、生姜やニラ、ニンニクを入れないように特に注意する、餃子のタレにラー油は禁物)と、チョコレート類はなるべく食べない。入浴温度を低めにするのが良い。飲み物は麦茶か緑茶にする。紅茶は避ける。生姜(しょうが)紅茶は禁止(シナモン紅茶も禁止)。外食もなるべく避ける。焼肉食べ放題などのイベントには参加しない。牛肉、豚肉、羊肉は避ける。特に羊肉は禁止とする。鶏肉は食べてもいいが、タレは塩味にする。カニ、エビ、アサリは食べなくても十分に栄養は摂れる。太刀魚やウナギは経験上食べない方がよい。アナゴも同様に避ける。外食、特に寿司屋などでうっかりして禁食が崩れないようにする。うっかり食べてしまった場合は、残りは(注文してもったいないと思うかもしれないが)食べないようにする。野菜ジュースでも成分的に香辛料の配合があるものが存在するので中身を吟味して買う。サプルメント服用には特に注意が必要であり、私と相談の上で購入する。高麗ニンジンは飲んではならない。外出時やエアコンの掃除などの際には花粉症マスクを着用し、可能であれば空気清浄器を購入する。徹底的にダニ退治を行う。趣味でダンスをしているとことで、運動後の発汗には、すぐにシャワーがベストであるが、シャワーが不可能ならウェットティシューで汗自体をふき取るのが良い。睡眠中に無意識に皮膚を掻いてしまうのを防止するためには、抗アレルギー剤のロラタジン10mg1錠を眠前に服用するのが良いであろう。それでも痒みが強ければ、一時期抗ヒスタミン剤とステロイドの合剤(セレスタミン等、それこそジェネリックのエンペラシン錠剤でもよいのですが)を1錠、眠前に短期服用しても支障はないであろう。等、等です。

 

 

処方内容連翹(清熱解毒、清癰散結) 生地黄(養陰清熱) 黄柏(清熱解毒燥湿 退虚熱 堅陰) 知母(清熱潤燥) 麦門冬(養陰潤肺 益胃生津 清心除煩) 北沙参(清肺養陰、益胃生津) 当帰(養血、活血、止痛、潤腸通便) 白芍(養血斂陰) 蝉脱(疏風熱 抗アレルギー) 烏梅(抗アレルギーの意味で使用) 茯苓(健脾利水) 荊芥(祛風止痒) 防風(祛風止痒) 白蒺藜(平肝潜陽、疏肝解鬱、疏散風熱、明目止痒) 白鮮皮(清熱解毒祛湿止痒)等

 

経過

 

外用薬は途中から康仁堂慢性アレルギー性皮膚炎方に変更。多剤ステロイドは漸減。オロパタジンは他剤に変更しました。

 

 

 

第5診察(平成249月末日)皮膚所見

 

24924

 

顔面の痒疹、全身の痒疹は消失。下肢の痒丘疹も消失。ムーンフェィスの改善なのか、炎症性浮腫の改善なのかは判別できませんが、顔面のスッキリ感が生じてきました。

 

 

 

直近 平成267月某日の前胸部乳房上部所見。写真下。

 

26730

 

乳房上部から前胸部にかけての痒疹は再発無く、すでに消失。色素沈着も有りません。四肢の痒疹再発も無く、鼻炎症状も無く、病情穏定と判断しました。

 

 

 

後記

 

ダニや埃(ほこり)の無い世界に移住することは不可能です。ましてや杉花粉は日本のいたるところで飛散します。カニ、エビ、アサリは食べなくても生命維持には問題ありませんが、ミルクや小麦はあらゆる加工食品に配合されています。逃れられないアレルゲンの環境の中で生活していくしか無いのが実情です。適時、西洋医学と漢方医学を併用して症状の改善を目指していくしか有りません。しかしながら、苦し紛れのステロイド多剤外用と内服は大いに疑問のある治療法ではないでしょうか。素晴らしい効能を持つステロイド外用剤でも、乱用に近い処方は「開業医処方」であると「ステロイド外用剤の専門家」から揶揄されても仕方ないと感じます。

 

私の治療指針は、中西医結合(漢方&西洋医学結合)治療を以て、人体の自然治癒力のお手伝いをするのを基本としています。

 

いつも申しあげているように、皮膚科領域では効果が一目瞭然ですから、「論より証拠」なのです。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014926日(金)

 

 


皮膚のトラブルは女性につきもの(続報3)皮膚科に通院しても改善しないアトピー性皮膚炎、色素沈着症、慢

2014-09-23 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

経過は前方(920日記)と非常に似ている37歳女性です。皮膚病変も類似しています。

 

初診(平成26430日)時の皮膚所見をご覧ください。

26430

 

炎症性の浮腫があり、顔面は少し浮腫んでいます。但し、皮膚表面はザラザラして乾燥しています。いわゆる苔癬化局面と言えるでしょう。前額部には色素沈着があります。眉毛部分にも痒疹が存在し、苔癬化のために眉毛の末梢部の脱毛が認められます。

 

26430_2

 

顔面から顎下、全頸部、鎖骨周囲、肩甲部の苔癬化を伴う痒疹、色素沈着が認められます。

 

26430_3

 

後頚部にも同様の苔癬化アトピー局面と色素沈着が顕著です。左肩の皮膚には苔癬化の特徴である皮膚の硬化と厚化、乾燥が観察されます。

 

26430_4

 

肘部の苔癬化皮膚病変です。一部に色素が脱出して白斑化しています。色素沈着、発赤を伴う痒疹の程度は上の写真部位よりも軽度です。

 

皮膚科、眼科等で治療中でしたが、皮膚の苔癬化は進む一方で、痒みを伴う痒疹も改善しないので当院を受診されました。

 

かつて、ステロイド剤による対症療法と中止後の反跳(リバウンド)を繰り返してきたために「ステロイドは使いたくないです」と問診票に記載がありました。

 

某皮膚科での直近の治療内容

 

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抗アレルギー剤としてオロパタジンが1日2錠処方されています。私は、オロパタジンは使用しません。というのは、重大な副作用情報が報告されているからです。以下、

 

2

 

急激に肝機能が悪化して劇症肝炎で死亡する報告があったのです。このような副作用情報は当該薬剤が薬価収載された後での報告ですから、死因との「直接的な因果関係」は不明なものも含むでしょうが、死亡例の副作用情報があった以上、私は使用を即時中止します。幸いにも、私はオロパタジンの使用経験はありませんでした。ある薬剤の適応症(保険が効く病状)が拡大した場合にも、後になって深刻な副作用情報が報告される場合があります。帯状疱疹後神経痛の薬剤「リリカ」(一般名・プレガバリン)を服用した後、劇症肝炎や肝機能障害の重い副作用を発症する症例が確認され、肝機能障害の注意を促す記述を薬の添付文書に加えるよう厚労省の指示があったのも最近の話です。適応症の拡大が副作用事例の拡大につながる例です。

 

某皮膚科処方続き:

1

 

漢方薬として白虎加人参湯1日9g(量が多いですし、意味が不明です)、治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)17.5gが処方されています。苔癬化アトピーでは論外でしょう。理由は前稿で述べたように、養陰剤の配伍がないこと、蒼朮(燥湿健脾)は温燥の性質を持つこと。大黄の配伍目的が不明なこと、過去に著効した経験が無いことなどです。白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)1日9gの処方も疑問です。傷寒論に忠実に記載すれば、白虎湯(びゃっことう):石膏 知母 生甘草 粳米(こうべい 中国語でジンミー)に人参を加えた白虎加人参湯証は大熱、大汗、大煩渇、欲飲水数升、背微悪寒、舌質紅、舌苔乾燥白、或いは黄燥、脈洪大やや無力あるいは浮滑となります。八綱弁証で表現すれば、陽明経燥熱実症と気津損傷が加わった虚実挟雑症です。9gの大量を30日分処方とありますが、清熱潤燥の作用は知母のみであり、石膏と、治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)17.5g中の大黄で、ひたすら冷やせばよいと考えているズブの素人の幼稚な発想です。方薬説明も「体質(素体)を変える」とか、「いろいろな効果」とか処方医同様の全くの素人的な説明です。患者のどこに、じくじくした「湿疹」があるというのでしょうか?全く無いです。

 

初診時の治療方針と処方:抗アレルギー剤のオロパタジンは副作用の危険性がある以上中止する。白虎加人参湯、治頭瘡一方は効果が無い以上中止する。外用剤としては、保湿剤、何よりも痒み止めが必須、加えて、康仁堂漢方薬エキス(養陰血、清熱涼血剤)、極少量のステロイド剤(通常の1/15濃度)を混合して処方。経口剤として、養陰血/祛風止痒剤(康仁堂苔癬化アトピー方)を13回午前中、午後空腹時と眠前に服用、西洋抗アレルギー剤(オロパタジンやステロイドを含まない)はエバスチン(エバステル後発品)OD2錠に変更、シナール(ビタミンC製剤)3錠、ビオチン1.0g(以上1日量)を併用。康仁堂慢性アトピー禁食、養陰方による食事指導。康仁堂苔癬化アトピー方の一部を紹介しますと、生地黄 黄柏 知母 天門冬 麦門冬 沙参 当帰 白芍 炙甘草 白朮 白蒺藜 荊芥 防風 何首烏 玄参 黄耆{加 玉竹(滋陰潤肺、生津養胃、白花蛇舌草(清熱解毒利湿 静菌 免疫調整)、川芎(活血行気、祛風止痛)、丹参(涼血活血祛瘀)など)}です。

 

治療経過

 

第6診(平成26626日)

 

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顔面の乾燥した苔癬化痒疹は大幅に改善されました。炎症性浮腫は消失しました。

 

 

第7診(平成26726日)

 

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顎下、全頸部、鎖骨周囲、肩甲部の乾燥した苔癬化を伴う痒疹はほぼ消失、皮膚に潤いが生じてきました。色素沈着も改善しつつあります。

 

第8診(平成26829日)

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初診時から4か月後です。

 

後頚部の苔癬化アトピー局面と色素沈着の改善が顕著です。初診時の皮膚の硬化と厚化、乾燥した皮膚には一転して「潤い」と「しっとり感」が生じてきています。

 

再び、同部位の初診時写真を載せますので、比較なさってください。

 

26430_5

 

4か月前の同部位です。改善は一目瞭然ですね。

 

 

 

いつも申しあげているように、皮膚科領域では効果が一目瞭然ですから、「論より証拠」なのです。臨床家としての経験が決まりきった一つ覚えの「標準的治療」より大切な分野です。

 

本症例は、幸いにも治療経過中に気管支喘息の発作は出現しませんでした。もし喘息発作が出現したら、私は西洋医としてβ刺激剤の吸入を短期使用、寛解期には吸入ステロイド剤を最小限度使用する予定でした。

 

気管支喘息とアトピー性皮膚炎の併発の際に、「漢方薬を甘く見る」結果としての誤った漢方処方は多く認められます。皮膚を診ないで、喘息だけを診るというような専門外来の場合です。麻黄附子細辛湯、小青竜湯などは、喘息発作時でも使用すべきではありません。必ず、皮膚病変が悪化するからです。ましてや、喘息寛解期にだらだらと処方を続け、患者は皮膚病変で苦しむという例を数多く経験してきました。ピント外れの処方というよりも、狂人に刃物になりかねません。

 

 

 

患者の自然治癒力のお手伝いをするという基本姿勢が何よりも大切なことなのです。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014923日(火)